同一労働同一賃金5 退職金に関する同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職金についてパートタイム労働法旧8条1項違反を肯定した裁判例を見てみましょう。

京都市立浴場運営財団ほか事件(京都地裁平成29年9月20日・ジュリ1513号4頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の嘱託職員のXらが、Y社が、嘱託職員の退職金規程を定めていなかったことが、パートタイム労働法旧8条1項に違反すると主張し、Y社に対し、主位的に規程に基づき、予備的に不法行為を理由として、嘱託職員の退職金規程が定められていれば嘱託職員のXらに支払われたであろう退職金相当額の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求一部認容

【判例のポイント】

1 正規職員には退職金が支給されるのに嘱託職員のXらが「退職金を支給されないことについての合理的理由は見当たらない。以上に照らし、Y社が嘱託職員のXらに退職金を支給しないことはパートタイム労働法旧8条1項に違反し、違法である。

2 旧パートタイム労働法には、労働基準法13条のような補充的効果を定めた条文は見当たらず、旧パートタイム労働法8条1項違反によって、規程に基づく退職金請求権が直ちに発生するとは認めがたい。しかし、同違反は不法行為に該当し損害賠償請求をなし得る。嘱託職員の基本給は正規職員のそれより低く抑えられていたこと、Y社の退職金が基本給に勤続年数に応じた係数をかけて機械的に算出されるものであることに鑑みれば、規程に基づき算出された退職金相当額が嘱託職員のXらの損害と認められる。

旧パートタイム労働法8条1項(現9条)は以下のとおりです。

「事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。」

最近流行りの同一労働同一賃金系の論点です。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。