解雇276 不正行為を理由とする懲戒解雇と事前調査の相当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、不正行為等に基づく懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

埼玉県森林組合連合会事件(さいたま地裁平成30年4月20日・労判ジャーナル77号30頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社がした懲戒解雇及び普通解雇は無効であるとして、雇用契約上の地位の確認並びに未払賃金及び未払賞与等の支払及び、Y社の理事を務める理事らが、一体となって本件解雇を画策し、極めて悪性の強いパワーハラスメントを行い、Y社をして、本件解雇を行わせたとして、連帯して、慰謝料等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇及び普通解雇は無効

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社が主張する事由のうち、西川広域森林組合への発注、公印の無断使用(農協分受託契約)及び扶養手当の受給に関しては、Xの行為は、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき」に当たり、Xに懲戒の事由があると認めることができるものの、西川広域森林組合への発注については、Y社に実損害を生じさせたと認めることはできず、また、公印の無断使用(農協分受託契約)については、3件中2件につき事後の決裁が得られており、扶養手当の受給についても、Xはその過誤を認め返納を申し出ているから、これらを懲戒解雇を相当とするほどの事由であると認めることはできず、Xには一定の懲戒事由がある上、代理人弁護士による相当の弁明の機会も行われているが、その前提となる調査委員会の調査は十分なものでなく、前記懲戒事由が、それ自体で懲戒解雇を相当とするほどの事由であるとは解されないことからすれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、懲戒権の濫用に当たるから、労働契約法15条に反し、無効である。

2 Xは、理事らは、何らの解雇理由もないのに、一体となってXを解雇しようと画策し、極めて悪性の強いパワーハラスメントを行って、結論ありきで解雇の手続を推し進め、Xを不当解雇したと主張するが、Xには一定の懲戒事由があることからすれば、理事らが何らの事由もなく一体となってXを解雇しようと画策したなどと認めることはできないこと等から、Y社のXに対する本件解雇は違法であるものの、理事らのXに対する不法行為の存在は認められず、そして、Y社がした本件解雇が違法であるとしても、Xには一定の懲戒事由の存在が認められることからすれば、本件解雇により賃金及びその遅延損害金の支払によってまかなわれない精神的損害を生じたと認めることはできないから、Xの不法行為に基づく慰謝料請求には理由がない。

相当性の要件の判断を使用者自ら適切に行うことは本当に難しいです。

顧問弁護士の客観的な判断を参考にして判断するというのが現実的だと思います。