不当労働行為202 ストを行った組合員に対する遅刻届・始末書の要求と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、ストライキを行った組合員2名に対して遅刻届および始末書の提出を求めたことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

日本郵便(新大阪郵便局)事件(大阪府労委平成30年3月27日・労判1180号153頁)

【事案の概要】

本件は、ストライキを行った組合員2名に対して遅刻届および始末書の提出を求めたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 労働関係調整法第37条の規定は、抜き打ちストによる公衆の生活への被害の防止を図る規定であって、使用者自体の利益を保護する規定ではなく、労働組合が同条違反の争議行為を行った場合でも、争議行為予告がなされなかったことにより公衆に不当な損害を与え使用者にその損害補てんの責任を余儀なくさせるなどの特段の事情のない限り、使用者との関係において直ちに違法となるものではない。

2 Y社が、本件ストライキが違法なストライキであることを理由に、本件ストライキに参加した組合員らに対し、ストライキによる不就労について遅刻届及び始末書の提出を求めたことに、正当な理由は認められない

3 そもそも、遅刻届や始末書の提出を求めること自体に正当な理由が認められない上、始末書の提出は、それ自体が懲戒処分ではないとしても、Y社も主張するとおり非違行為に対する弁明の機会を与えるものである以上、本件ストライキが非違行為に該当するとの前提の下、何らかの懲戒処分が行われることを予期させるものであるし、また、遅刻届の提出についても、始末書と同時にその提出を求めることで、上記予期を一層強める効果を持つものであるといわざるを得ない。

4 Y社が本件ストライキについて組合員らに対して遅刻届及び始末書の提出を求めたことは、労働関係調整法所定の手続が採られていなかったことを盾に取って組合の活動をけん制するものであったといわざるを得ず、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

労働関係調整法37条は以下の内容です。

「公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも十日前までに、労働委員会及び厚生労働大臣又は都道府県知事にその旨を通知しなければならない。」

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。