解雇312 うつ病の業務起因性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

79日目の栗坊トマト。実の数がどんどん増えてきました。

今日は、うつ病の業務起因性と解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

トヨタカローラ南海事件(大阪地裁令和元年6月4日・労判ジャーナル91号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、Y社の店舗に勤務していたXが、Y社から解雇されたが、同解雇は労働基準法19条に違反し無効であるなどとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金及び賞与の支払等を求め、また、本件店舗の店長であったAからセクシャルハラスメント行為又はパワーハラスメント行為を受けてうつ病に罹患し、その後Y社担当者の不適切な行為によりうつ病が悪化したとして、Y社及びAに対し、連帯して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①Aが、本件店舗の店長として着任後、時期は不明であるが、Xに対し、数回、彼氏との性的行為があったのかどうかといった性的な発言を行ったこと、②AとB係長は、X以外の人物について、「病んでるらしいで」などと発言し、笑ったことが認められるが、①の発言の時期は不明であること、①は、身体への直接の接触を伴うような性的行為を受けたという性質のものではなく、またその回数も数回に止まること、Xは、休職より前に、Y社に対し、セクハラ行為の相談をしていないこと、②の行為は、X以外の人物に関する発言であることから、①については、厚生労働省労働基準局長発出の「心理的負荷による精神的障害の認定基準について」別表1の「〔6〕セクシュアルハラスメント」「セクシュアルハラスメントを受けた」の中の、「強」の例示に該当する程度のものとはいえず、強くても「中」程度のものと評価され、②については「弱」の例示に該当する程度のものと評価され、これらを総合的に評価しても、「強」程度の心理的負荷を有するものと認めることはできないから、Aの行為により、Xが、うつ病と診断され、出勤が困難になり、休職した旨のXの主張は採用できない

2 Xは、Xのうつ病が業務起因性を有するから、本件解雇は労働基準法19条1項に違反する旨主張するが、Xのうつ病の発病ないし悪化が、業務に起因したものとは認められず、また、復職後のXの勤怠状況は、週4日以上のペースで欠勤を続け、頻繁に早退を重ね、平成28年8月14日以降は一切出勤しておらず、また、Xの欠勤理由は、Xや子どもの体調不良のみならず、子どものキャンプあるいはキャンプに備えて休むといった用事、猫の葬儀等、理由としてやむを得ないものと判断しかねる理由も見受けられ、遅くとも同年7月後半以降、Xは、Y社に対し、労務を提供する意思と能力を欠く状況にあったことは明らかといえ、そして、Y社が、Xの復職に際して、主治医の診断書の内容を踏まえ、本社の保険業務課に配属し、始業時刻を午前10時とする特例措置を行っていることをも併せ鑑みれば、Xの勤怠状況は、解雇事由である就業規則所定の「精神又は身体の障害によって業務に耐えられないと認められ、かつ、他部署への配置転換が困難な著しく正常でない場合」に該当するとともに、Y社が、Xに対し、本件解雇を行うことは、労働契約法17条の「やむを得ない事由」があるといえるから、本件解雇は有効である。

ハラスメントが原因で休職した場合でも、その程度によっては本件のような判断がされることがあります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。