Daily Archives: 2011年3月28日

賃金21(福岡雙葉学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、人事院勧告に基づく期末手当引下げに関する最高裁判例を見てみましょう。

福岡雙葉学園事件(最高裁平成19年12月18日・労判951号5頁)

【事案の概要】

学校法人であるY社の就業規則には、「職員の給与ならびにその支給の方法については、給与規程によりこれを定める」との規定があり、これを受けた給与規程には、「期末勤勉手当は、6月30日、12月10日および3月15日にそれぞれ在職する職員に対して、その都度理事会が定める金額を支給する」との規定がある。

平成14年8月に発表された同年度の人事院勧告は、月例給を2.03%、期末勤務手当を0.05ヶ月引き下げる旨を勧告した。

Y社は、理事会において、同勧告に準拠して給与規程を改定し、職員の月例給を引き下げることを決定するとともに、同年度期末勤勉手当の支給額について、調整するとの決定をした。

これに対し、Y社の教職員であるXらは、Y社に対し、本件各期末勤勉手当の残額等の支払いを求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社の期末勤勉手当の支給については、具体的な支給額又はその算定方法の定めがないのであるから、前年度の支給実績を下回らない期末勤勉手当を支給する旨の労使慣行が存したなどの事情がない限り、期末勤勉手当の請求権は、理事会が支給すべき金額を定めることにより初めて具体的権利として発生する。

2 本件における12月期の期末勤勉手当の支給額については、各年度とも、5月理事会における議決で、算定基礎額及び乗率が一定決定されたものの、人事院勧告を受けて11月理事会で正式に決定する旨の留保が付されたというのであるから、本件各期末勤勉手当の請求権は、11月理事会の決定により初めて具体的権利として発生したものと解されるので、給与の引下げを内容とする人事院勧告を受け、本件各期末勤勉手当において本件調整をする旨の11月理事会の決定が、既に発生した具体的権利を処分し又は変更するものということはできない。

3 仮に、5月理事会において議決された本件各期末勤勉手当の支給額算定方法の定めが、Y社の就業規則の一部を成す給与規程の内容となったものと解し、11月理事会の決定がXらの労働条件を不利益に変更するものであると解する余地があるとしても、Y社においては、長年にわたり、人事院勧告に倣って毎年給与規程を増額改定し、それまでの給与増額相当分を別途支給する措置を採ってきたというのであって、増額の場合にのみ遡及的な調整が行われ、減額の場合にこれが許容されないとするのでは衡平を失するから、11月理事会の決定は合理性を有する。

国家公務員についての人事院勧告は、年度途中になされることが多いですが、近年の人事院勧告においては、給与等の引下げを勧告する例がみられるようになっており、これを受けて、勧告前に支払った金額に相当する額を減額したのと同様の結果となるように期末手当等において調整する場合があります。

そして、同勧告は、私立学校や社会福祉法人などにおける賃金等の決定においても準拠されることがあるため、このような調整措置が労働契約上どのように評価されるかという問題が生じます。

本件最高裁判例は、上記のとおり、給与引下げを内容とする勧告に基づき期末手当等により調整を図る措置を適法としました。

本件と同様の賃金システムを採用している会社としては、参考になる判例だと思います。

個人的には、結論はさておき、最高裁のとっている理屈がいまいちしっくりきません。

就業規則の不利益変更の問題とのバランスがとれているのでしょうか。

期末勤勉手当を賞与ではなく、あくまで給与として取り扱う以上、同手当について、完全に理事会の裁量とするのは、腑に落ちません。

不利益変更事案は、合理性の判断がいつも悩ましいですね。顧問弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。