労災47(フィット産業事件)

おはようございます

また一週間はじまりました! がんばっていきましょう!!

今日は、午前中、公証役場へ行き、その後、労災の裁判が1件入っています。

午後は、建物明渡等の裁判が2件入っています。

裁判終了後、月一恒例のK・MIXです。 今回は、浜松まで行ってきます

ずみさん、おてやわらかに・・・

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、派遣社員のうつ病と損害賠償に関する裁判例を見てみましょう。

フィット産業事件(大阪地裁平成22年9月15日・労判1020号50頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータシステムの受託・開発等を業とする会社である。

Xは、Y社に雇用され、平成13年8月から、A社にY社の派遣社員として派遣され、A社が受注していた運行制御システムの開発業務に従事していた。

Xの平成14年9月から15年3月までの労働時間数は相当長時間に及んでおり(1か月当たり約171時間ないし291時間)、特に15年1月および2月の労働時間は過重ともいうべき程度存在していた。

Xは、心療内科を受診したところ、「不眠症、うつ状態」。「遷延性うつ反応」と診断された。

Y社は、15年4月、Xを休職扱いとした。また、Y社は、同年6月、Xの休職期間が3か月になったことを理由として、就業規則に基づき、Xを退職とする取扱いをした。

労基署長は、18年12月、Xのうつ病発症について、業務起因性が認められると認定した。

Xは、Y社に対し、債務不履行ないし不法行為に基づき、休業損害、慰謝料等の損害賠償を請求した。

【裁判所の判断】

Y社に対し、約1500万円の損害賠償の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 一般的に、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていると解するのが相当である(最高裁平成12年3月24日判決参照)。

2 Xは、Y社の業務によってうつ病を発症したところ、同疾病発症に当たって、Y社は、平成14年9月から平成15年3月までの間におけるXの労働時間、特に、平成15年1月及び同年2月におけるXの時間外労働時間は、かなりの程度に及んでおり、Y社としても、勤務日報等により、かかるXの長時間労働については十分に把握することができたというべきである。また、Xが担当していた本件運行制御システムは、要件定義の確定と同システム完成納期との間の期間が短く、同システムに係る作業については、主としてXが担当していたところXに対するY社の支援体制が確立していなかった
以上の事実を総合すると、Y社は、Xについて、当該業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったということができ、Xがうつ病を発症したものと認めることが相当である。
そうすると、Y社は、Xに対する安全配慮義務違反により、Xがうつ病を発症したこと、それにより被った損害を賠償すべき責任があるというべきである。

3 ・・・以上の事実を踏まえると、Xのうつ病の発症及び発症後長期間経過したにもかかわらず治癒するに至っていないことに関しては、X自身の生活態度・業務態度が一定の範囲で寄与していたと認めるのが相当である。そうすると、X側にも過失があると認めるのが相当であって、上記したXの生活状況等を総合して勘案すると、その過失割合としては、2割とするのが相当である

本件では、先に労災の認定がされていたため、労働者側としては、比較的やりやすかったと思います。

今回も、裁判所は、会社側の「支援体制」の不存在について指摘しています。

その一方で、被災労働者の過失も認め、過失相殺を2割認めています。