Daily Archives: 2013年5月7日

労働災害61(J株式会社事件)

おはようございます GWも終わりましたね。また今週も一週間がんばっていきましょう!!
__←先日、事務所の近くにオープンした「韓国家庭料理 韓旅(kantabi)」に行ってきました

写真は、「海鮮チヂミ」です。外はカリッと、中はフワッとしており、おいしいです。

新しいお店ができたら、とりあえず一度行ってみるのです。

今日は、午前中は、不動産に関する裁判が1件入っています。

午後は、交通事故等の裁判が2件、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、石綿で精神障害発病・自殺と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

J株式会社事件((岡山地裁平成24年9月26日・労判1062号84頁)

【事案の概要】

本件は、業務上の疾病である石綿肺を患っていたXが精神障害を発病し自殺したことに関し、Xの妻が、倉敷労基署長に対し、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金および葬祭料の支給を請求したところ、同署長から、上記自殺による死亡が業務上の死亡に当たらないことを理由として、これらをいずれも支給しない旨の決定を受けたことから、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

倉敷労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労働基準法及び労災保険法上の災害補償制度が業務に内在する危険が現実化して労働者に損害を生じた場合には使用者の故意・過失を問うことなくその損害を補償すべきであるという危険責任の法理に基づくものであることに鑑みれば、上記相当因果関係の存在を肯定するためには、当該負傷又は疾病が当該業務に内在する危険が現実化したことによるものであると認められることが必要であると解される(最高裁平成8年1月23日判決)。当該疾病が精神障害の場合、精神障害の成因について環境由来の心理的負荷(ストレス)と個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生ずるかどうかが決まるという「ストレス-脆弱性」理論が精神医学上の知見として広く受け入れられていると認められることからすれば、業務による心理的負荷が、社会通念上、客観的にみて当該精神障害を発病させる程度に過重といえる場合に、業務に内在する危険が現実化したものとして、上記相当因果関係の存在を肯定し得るものと解するのが相当である。
また、精神障害を発病した者の自殺による死亡については、精神障害によって、正常の認識、行動選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されていた状態で自殺したと認められる場合に、精神障害が原因となって死亡したと認めることができるというべきである。

2 これを本件についてみると、Xは、Y社において、高濃度の石綿暴露作業とされる石綿吹付け作業に従事していたため、昭和62年に石綿肺を発病した。・・・このような、平成2年から10年以上の期間にわたり続く咳や痰の症状や、次第に悪化していく息切れなどの症状は、Xに心理的負荷を与え続け、かつその心理的負荷は次第に大きくなっていったものということができる。また、石綿肺は、根治療法がなく、慢性的な苦しみを与え続け最終的には死に至る危険の高い疾病であるが、Xは、そのことを悲惨な姿で死んでいった同僚らの姿を通じて認識せざるを得ない状況にあり、石綿肺の病状が悪化していく度に、一生続くであろう苦しみや死に対する恐怖を強く感じていたというべきである
・・・以上のことに加えて、じん肺を始めとする慢性呼吸器疾患の患者が精神障害を発病することについての研究報告等が存在することなどをも考慮すれば、石綿肺の病状等によるXの心理的負荷は、社会通念上、客観的にみて本件精神障害を発病させる程度に過重であったというべきである。そして、Xには、石綿肺による病状以外の心理的負荷や個体側の脆弱性、遺伝素因など他に発病因子となり得るような事情が証拠上明らかにはうかがわれないことからすれば、本件精神障害の発病と石綿肺の病状等との間、ひいては本件精神障害の発病と石綿肺発病の原因である業務との間に相当因果関係を認めることができる

本件は、石綿肺→精神障害発症→自殺という因果関係を認めています。

長時間労働→精神障害発症→自殺という因果関係よりもハードルが高いですが、裁判所は肯定しました。