Daily Archives: 2013年6月6日

労働災害65(ニューメディア総研事件)

おはようございます。
__←先日、スタッフ全員と久しぶりに鷹匠の「TORATTORIA IL Paladino」にランチを食べに行ってきました。

写真は、「山田農園無農薬野菜のペペロンチーノ、アンチョビ風味」です。

やさしい味付けで、おいしゅうございました。

 

今日は、午前中は、沼津の裁判所で離婚調停です。

午後は、静岡に戻り、労働事件の裁判が1件、新規相談が2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、過重労働で突然死した女性SEの遺族による損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

ニューメディア総研事件(福岡地裁平成24年10月11日・労判1065号51頁)

【事案の概要】

本件は、Xの相続人らが、Xが死亡したのは承継前被告であるY社における業務の過重負荷に起因するものである旨主張し、不法行為に基づく損害賠償請求又は労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求として、Y社に対し、損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約6800万円の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである(最高裁平成12年3月24日判決)。そして、厚労省認定基準やその運用上の留意点においては、業務の過重性の具体的な評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、労働時間(時間外労働時間)を中心として、不規則の勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、作業環境(温度環境・騒音・時差)、精神的緊張を伴う業務等の他の負荷要因について十分検討するものとされ、専門検討会報告書においても、長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせ、その結果、血管病変等をその自然的経過を超えて増悪させる可能性のあること、また、過労が身体的ストレスのみならず精神的ストレス状態であり、突然死の大きな修飾因子となること、などが指摘されている。

2 Y社は、Xの業務は過重なものではなく、Xの死亡に対する予見可能性はなかった旨主張するが、労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところであり、かつ、本件事故当時におけるXの業務の量・内容が過重負荷なものであり、Y社はそのことを認識し、又は認識し得べき立場にあったのであるから、Y社にはXの死亡に対する予見可能性があったものというべきであり、Y社の上記主張を採用することはできない。

3 Xは、平成19年3月8日にUクリニックを受診しているところ、Y社は、Xや付添いをしていたXの相続人が、医師に自殺未遂の事実を伝えず、また、医師から指示のあった再診を受けず、処方された薬も服用しなかった、として、これが過失相殺事由に該当する旨主張する。
しかしながら、Xの自殺未遂は、Xの業務が脳・親族疾患の発症をもたらす過重なものであったことの顕れとして理解すべきものであるところ、Xは、同クリニックに対し、Y社に入社して10年間、土日にも出社して仕事をしており、オーバーワークの状態にある旨申告しているのであるから、Xが医師に対して自殺未遂の事実を伝えていたかどうかは本質的な問題ではない。また、同クリニックは心療内科であり、処方された薬も神経症(神経衰弱状態)との診断に対する抗不安剤にすぎないから、Xが、同クリニックを再受診し、また、医師から処方された薬を服用したとしても、そのことによって疲労の蓄積から解放され血管病変等をその自然的経過を超えて増悪させる可能性が減少したといえるかどうかには疑問があるといわざるを得ない。

4 Y社は、XがY社に対して再三にわたり回復した旨の連絡と復帰の申入れをし、相続人らもXの上記申入れ等を止めることなくむしろ勧めていた旨主張する
この点、労働者は、一般の社会人として、自己の健康の維持に配慮すべきことが期待されているのは当然であるけれども、Xによる復職の申入れが自身の健康を増悪させることを認識・認容してなされたものとは考えがたく、そのような事実を認め得る証拠は見当たらないし、そもそも、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っているのであるから、Y社としては、Xが復職をするに当たり、休職前におけるXの稼働状況に鑑み、新たな人員を配置してチームの人員を増やしたり、Xに休暇等を取らせたりしてその疲労の蓄積を解消させる措置をとるなど、業務の量・内容等が過度にならないようなものとする措置を具体的に講じなければならないのであり、Xが再三にわたり復職の申入れをしたとの一事をもって過失相殺事由が存在するということはできない

使用者側は、上記判例のポイント4を是非、参考にしてください。

裁判所としては、このような判断をすることになります。

従業員が復職を求めてきた際は、使用者は復職が客観的に可能か否か、仮に復職を認めるとして、就労環境等に十分に配慮する必要があります。