不当労働行為298 使用者による便宜供与にかかる確認書(労働協約)の解約が不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、使用者による便宜供与にかかる確認書(労働協約)の解約が不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

社会福祉法人ハートフル記念会事件(神奈川県労委令和4年4月8日・労判1271号94頁)

【事案の概要】

本件は、①使用者による便宜供与にかかる確認書(労働協約)の解約が不当労働行為にあたるか、また、②組合掲示板不設置が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①は不当労働行為にあたる

②は不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、本件協約に基づく便宜供与について業務上に支障がなく、ただちに本件協約を解約すべき必要性及び緊急性といった合理的な理由がないにもかかわらず、組合と一切労使協議を経ることなく、一方的に解約するに至っているのである。
したがって、Y社が確認書を一方的に解約したことは、組合組織の弱体化の意図のもとに行われた労組法7条3号の支配介入に当たると解される。

2 組合が掲示板を設置するよう要求したことに対し、Y社は、本件協約に基づく便宜供与について実情に即した内容になるよう組合とリモート方式により協議したい旨述べている。
新型コロナウイルス感染症の感染状況、Y社が老人福祉施設を運営していること等を勘案すると、施設内での感染拡大を危惧したY社が、リモート方式での団体交渉を希望したことに一定の合理的な理由があることは否定できない。しかしながら、組合は、結審日まで、リモート方式の団体交渉に消極的であった。このことが、老人ホームCの掲示板設置問題が解決しなかった一因であることは否定できない。
したがって、老人ホームCに掲示板が設置されず、組合が掲示板を利用できなかったことが、ただちにY社の組合の運営に対する支配介入によるものということはできない。

上記命令のポイント1は特に争いがないと思います。

上記命令のポイント2は、昨今の状況を踏まえた判断ですね。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。