Daily Archives: 2025年8月15日

解雇422 試用期間途中(実働日数10日)での解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、試用期間途中(実働日数10日)での解雇が有効とされた事案について見ていきましょう。

ダイトク事件(東京地裁令和6年9月18日・労経速2577号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金請求として、解雇日以降の未払賃金及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまでの民法所定の法定利率による各遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件契約上、3か月間の試用期間が定められており、本件解雇はその試用期間中にされているところ、本件退職証明書において、XにNC旋盤やノギス等による計測の経験があることから採用したが、その経験が浅いと判断した旨、指示事項に対する判断・理解に欠けていると思われることが多々あった旨、被告における機械加工には適していないと判断し、試用期間2週間ではあるが解雇とすることとした旨等の指摘がされていることにも鑑みれば、本件契約における試用期間の定めは、雇用契約の解約権を留保したものであり、本件解雇は留保解約権の行使としてされたものと認められる。この解約権の留保は、採用決定当初には、使用者が労働者の資質、能力、業務への適格性を十分に把握することができないため、後の調査や観察に基づき最終的に採否を決定する権利を留保する趣旨のものと解される。このような趣旨に照らすと、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲で認められると解され、留保解約権の行使は、上記の解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として許される場合に有効となると解される(最高裁判所昭和48年12月12日大法廷判決参照)。

2 Y社が製作しているのは、自動車のエンジンの部分の製造に必要なプランジャーチップ等であり、業務上、その加工品の寸法の計測が正確に行われることが必要かつ重要といえる。また、チャッキングして高速回転させた材料を刃物で削るNC旋盤での作業のミスは、作業者や周囲の従業員に怪我をさせたり、機械自体を毀損したりする危険がある。
Y社は、Xに対し、寸法計測の重要性やNC旋盤の危険性を説明・指導しているから、Xもそのことを理解し得たといえる。また、NC旋盤での具体的な作業は、指定された口径の材料をチャッキングし、作動ボタンを押すという単純なものであるし、Xは、その職歴において、NC旋盤での加工作業やノギス等の計測器具を用いた測定作業の経験を有しており、証人Aの前では計測器具を適切に使用できていたのであるから、上記のミスの改善に困難な事情があったということもできない。
それにもかかわらず、Xは、実働3日目頃以降、証人AやY社代表者から注意指導を繰り返し受けていながら、NC旋盤での加工作業におけるミス(2度目のミスは、機械の芯をずらしてしまうほどの事故につながっている)や寸法の計測ミスを繰り返しており、寸法の計測ミスについては本件解雇時まで改善されていない
以上からすれば、Xは、Y社の業務に関する資質や適格性等を欠いており、実働日数10日間で本件解雇がされたという事情を踏まえても、本件解雇は、本件契約の解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当と認められる。
したがって、本件解雇は有効である。

中途採用でそれなりの経験を有している方の場合と新卒の方の場合では資質や適格性等の判断が異なりますので、注意しましょう。

解雇を有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。