Author Archives: 栗田 勇

本の紹介608 久保利英明ロースクール講義(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
久保利英明ロースクール講義 君は〈正義〉のために闘えるか?

本書は、久保利先生が桐蔭法科大学院で教授を務める「現代弁護士論」でのゲストスピーカーの講義録です。

ロースクール生、修習生に限らず、若手弁護士も必読の本だと思います。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・どんな業界でも時代の要請はすべて依頼者が知っているのです。だから私は、弁護士にとって依頼者がすべてだと言っています。お金などもらわなくてもいい。依頼者には無尽蔵の潜在的なキャパシティがある。だから、本当に依頼者、クライアントを大事にする。クライアントに教わる。これが一番意味があることだと私は思います。」(95頁)

久保利先生のお話です。

同感です。

私も頻繁に顧問先会社の社長や役員の方と会食をしますが、そこでの会話は、弁護士業務の宝となっています。

業界慣行や今後の業界動向、弁護士に求める役割等について話を聞く機会というのは、まさにプライスレスです。

大人数の会合ではなく、ごく少数での会食がベストだと思います。

2時間、じっくり話をするには、いわゆる異業種交流会は向いていないように思います。

名刺を交換して終わってしまいますし・・・。

不当労働行為157 組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

大石運輸事件(埼玉県労委平成28年7月28日・労判1139号90頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

時間外労働を命じなかったことは不当労働行為にあたらないが、運送業務を配車しなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社には、組合嫌悪の情があったことが認められる。
しかしながら、Y社の対応にはいずれも合理性が認められる。本件残業差別以降における会社の対応をも考え合わせれば、本件残業差別は、X2が本件36協定は無効であるとして残業拒否をしたこと、Y社がX2に対し時間外労働を命じた場合に、X2が当該命令に従わないことにより生じる会社の営業上のリスクを回避すること、及び後でX2から労基署に対して労基法違反である旨申告されることによるトラブルを回避すること、のために行われたものとみるのが相当である。
以上のことからして、Y社が、X2に対し、平成27年5月11日以降、時間外労働を命じなかったことは、組合員であるが故になされたものとは認められず、労組法7条1号の不当労働行為であると判断することはできない。

2 Y社には組合嫌悪の情が認められる。
もっとも、本件配車差別が開始された平成27年5月25日から第4回団体交渉が開催された同年6月19日までの会社の対応には合理性が認められる。この間の会社の対応は、X2が本件36協定の無効を主張する中で、X2に対して配車をするべく就業時間の繰上げ又は繰下げの提案をしつつ、平成27年5月22日のように会社の指示をX2が拒否しないかどうかを確認できなかったために、会社の被るリスクを避けるために配車を見合わせていたものとするのが相当である。X2に対して配車をしなかったことが不当労働行為によるものと認めることはできない
しかしながら、第4回団体交渉において、労組は、Y社に対して、X2に午前8時から午後5時までに収まるような配車をすることを要求し、それに対して、Y社は「努力する」と回答している。Xは、午前8時から午後5時までの運送業務を拒否したこともなかったそれにもかかわらず、平成28年3月31日までX2に対して配車をしなかったことはすでにみたとおりである
会社が、本件配車拒否を行った理由として述べる午前8時から午後5時までの運送業務はまれであったためにX2に対して配車できなかったことには合理性が認められない。
・・・以上のとおりであるから、Y社がX2に対し、平成27年6月23日から平成28年3月31日まで、運送業務を命じなかったことは、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。

組合員と非組合員で業務量に差があり、それが給与面に影響する場合には、注意が必要です。

業務量の差について合理的な理由を説明できなければ不当労働行為に該当する可能性が出てきます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介607 マスターの教え(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
マスターの教え 文庫版

物語を通じて、「富と知恵と成功」をもたらす秘訣について伝えています。

わかりやすい内容とはいえませんが、根気強く読むといわんとしていることがわかってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ですから、その力を向ける先がいくつもあると、力は分散されて、それぞれの目標はごく弱い刺激しか受けられず、その結果、反応が遅れ、時にはまったく何も起こらないというわけです。あなたは、いくつも小さな目標を達成してやっと到達できるような、大きな究極の目標を持っていますか?もしそうであれば、大部分の目標はそのまま置いておいて、今は、全力を最も手近な最初の目標に向けなさい。そして、その目標が実現したら、次の目標を取りあげればよいのです。」(96頁)

力を分散させないというのは、私がこのところよく考えていることです。

やりたいこと、やらなければならないことが多くあると、意識しないとすぐに力が分散してしまいます。

あれもこれもとなるとたいていすべてがうまくいかないことは経験上よくわかっています。

仮にうまくいったとしても、1つ1つにとても時間がかかります。

手を広げることは簡単です。

1つのことだけをずっとやり続けることのほうがよほど難しいです。

広げれば広げるほど、散らかし放題散らかして、何の結果も出ない、ということになりかねませんので。

1つ1つ着実に行う、という意識がとても大切ですね。

解雇214 法人解散に伴う整理解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、法人解散に伴う病院長の解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

一般財団法人厚生年金事業振興団事件(東京高裁平成28年2月17日・労判1139号37頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社が解散に伴う本件解雇は無効であると主張して、雇用契約に基づく賃金請求または不法行為に基づく損害賠償請求として、2000万円の支払請求をした事案である。

原審は、Xの請求を棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 (原審判断)Y社の解散自体は、RFOが改組されて新機構となり、新機構が本件病院等を自ら経営することが法改正により定まったことによるもので、やむを得ない事由によるものであったと評価されるところ、解散に伴い職員を解雇することもY社の解散手続に伴うやむを得ない措置であるというべきである解散に伴う解雇については、事業そのものがなくなるのであるから、法人が存続しつつ人員削減措置をとる整理解雇とは前提を異にしており、いわゆる整理解雇の四要件は適用されない
また、Y社は、Xを含む職員に対して、法改正に伴う対応について、十分な説明をしているものと認められることから手続上の瑕疵もない。そして、X・Y社間で雇用期間の保証があったとは認められないことから、Xの雇用期間の保証があったことを前提とする解雇無効の主張はその前提を欠く

2 Xの主張する解雇回避努力義務は、本件解雇後、新機構にXが本件病院の院長として再雇用されるよう努力する義務を実質的には意味するものと理解できるが、Xを再雇用するかどうかの判断は、新機構あるいは改組前のRFOが判断すべき事項である。そもそもRFOのC理事長がXを採用しなかった理由に対し、Y社がRFOにXの本件病院の院長として適任であることを説得できる材料を有していたことを認めるに足りる証拠はない。なお、本件調停及び本件仮処分の経過によれば、X自身は本件病院の非常勤医師として勤務することを望んでいないと考えられることから、Y社が本件病院の非常勤医師として勤務できるよう新機構あるいは改組前のRFOに働きかけることはXの主張する解雇回避努力には含まれないというべきである。ましてや、円満退職のための調整努力については、Xの心情に即すれば理解できる面もあるが、解雇無効とされるほどの違法事由であるとは認められない。
そうすると、本件解雇は、Y社の解散に伴う事業上の都合によるやむを得ない理由に基づくものとして有効であり、Xの主張は理由がない。

偽装解散等の特段の事情がない限り、上記判例のポイント1のように判断されることになります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介606 世界のエリートが教えるちょっとした仕事の心がけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
世界のエリートが教えるちょっとした仕事の心がけ (マイナビ新書)

帯には「ビールは0.2秒でつげ!」と書かれています。

キャッチーなので、このフレーズが選ばれたのでしょうが、本の内容は、もっと真面目な内容です。

あるべき姿勢・考え方について触れられており、いずれも王道の内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

量は質に転化します。成果が出ない人はやはり量をこなしていません。おもしろい仕事がない、自分には向いていない、だから会社をやめますなど、若い人でグジグジ言っている人がよくいます。試行錯誤もせず、努力の量が全然足りない段階でほかの会社に行ったって一緒です。・・・日本人は、自分たちは馬車馬のように働かされて蟻地獄のようだとよく言いますが、能動的にやっていないから、いつまでたってもラットレースから抜けられないんです。量は質に転化するので、やるときは徹底的にやらないといけません。」(69~70頁)

同感です。

能動的に仕事に取り組む人と受動的に仕事に取り組む人とでは、天と地ほど成果が異なることは争いがないところではないでしょうか。

目の前の仕事をいかに能動的に取り組めるか。

これは目の前の仕事それ自体の問題ではなく、その仕事に対するその人の解釈の問題です。

単にやらされている作業と解釈するのか、

その仕事に価値を見い出し、社会への影響等を想像できるか

そういう話なのだと思っています。

愚痴を言い出したらきりがありません。

幻冬舎の見城社長の言葉を借りるならば、「憂鬱でなければ、仕事じゃない。苦しくなければ、努力じゃない」と思うわけです。

能動的に仕事をすれば楽しくなるのか、と言われれば、決してそんなことはありません。

能動的だろうがなんだろうが、仕事は苦しいです。1日終わるとぐったりします。

まあ、でも仕事ってそういうものじゃないですか?

そう思うわけです。

解雇213 好待遇でヘッドハンティングされた従業員に対する勤務成績不良を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、勤務成績不良を理由とする解雇が有効と判断された裁判例を見てみましょう。

ドイツ証券事件(東京地裁平成28年6月1日・労判ジャーナル54号39頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していた元従業員Xが、Y社から解雇の意思表示を受けたものの、当該解雇は無効であるとして、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本判決確定の日まで、月額給与約305万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの収益結果は、金額自体も収益目標に対する達成率も減少を続けていることが認められるところ、外資系金融会社では、営業成績が労働能力及び勤務成績の評価に直結する面があることは否定できず(このため、営業成績が上がれば、これに連動して高額な基本給とは別に多大な裁量賞与が支給される)、評価者と被評価者の合意の下で設定される収益目標及びこれに対する達成率を労働能力及び勤務成績査定の重要部分として位置づけ、これを単年度ではなく複数年度でかつ前年比という水準を考慮して評価することに合理性はあるというべきであり、また、本件労働契約は、職種限定契約であり、Xは、上級の専門職として特定の職種・部門のために即戦力として高待遇で中途採用されたものであり、長期雇用システムを前提とした従業員とは根本的に異なるところ、期待される能力を有していなかった場合には、解雇回避措置を取らなかったとしても、それをもって直ちに解雇の相当性を欠くことにはならないというべきである

好待遇でのヘッドハンティング事案では、このような判断がなされることが多いですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介605 外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣

どれほどヨガが心の安定によいのかが書かれています。

ヨガにはあまり興味がありませんでしたが、ひとまず食わず嫌いをなくすために読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ビジネスマンが心身を整えないで仕事をするのは、アスリートがトレーニングしないで試合に出るようなもの」(142頁)

彼はヨガの呼吸法を実践し、深い腹式呼吸や速いペースの呼吸などを使い分けている。この呼吸法で集中力を高め、持久力を強化し、脳も活性化させていた。ヒクソンは『一番難しいのは心を鍛えることだ。どんなに実力があっても、心が弱いと勝てない』とメンタルの重要性を説いている。」(144頁)

ヒクソン・グレーシーの「一番難しいのは心を鍛えることだ。どんなに実力があっても、心が弱いと勝てない」という言葉、まさにそのとおりですね。

メンタルも含めて実力と言われればそれまでですが。

頭だけではなく、心を鍛えなければ、勝負に勝つことはできません。

ではどうしたら心を鍛えることができるのか?

当然のことながら、唯一絶対の方法はありません。

この本ではヨガをすすめていますね。

私は、体を鍛えることが心を鍛えることにつながっているように感じます。

弱い弱い自分だからこそ、少しでも強くなりたいと願い、日々、格闘しています。

労働災害87 労時間労働を理由とする従業員の自殺について使用者の安全配慮義務違反が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、従業員の自殺につき安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が認められなかった事案を見てみましょう。

ヤマダ電機事件(前橋地裁高崎支部平成28年5月19日・労経速2285号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として勤務していた亡Xが平成19年9月19日に自殺をしたことについて、同人の相続人である原告らが、亡Xの自殺はY社における長時間にわたる時間外労働や過度な業務の負担によりうつ病に罹患したためのものであると主張して、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づく損害賠償として、原告1に対し8620万4734円、原告2及び原告3に対しそれぞれ1736万7455円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・亡Xの業務上の負荷について、軽かったということはできず、一定の負荷が生じていたことは否定できない。
しかしながら、原告らが主張するような、亡Xが月100時間を超える時間外労働をしていたという事実が認められないのは前記のとおりであって、長時間労働と精神疾患の発症との明確な関連性はまだ十分には示されていないとの医学的知見に照らせば、亡Xの時間外労働時間が死亡直近の1か月でおおよそ94時間30分、死亡直近の1週間でおおよそ39時間55分に及んでいる点のみをもって、亡Xが極めて強い業務上の負荷を受けていたと直ちに評することはできない。 

2 亡Xの業務上の負荷については、フロアー長への昇格や短期間での労働時間の増加により、一定程度の心理的負荷が生じていたということは否定できないが、他方、開店準備作業に大幅な遅れが生じていたとは認められないこと、作業期間中の亡Xの具体的業務について、特段の負荷が生じる内容であるとは認められず、本件過誤についても強い心理的負担を生じるものとはいえないこと、Y社の支援・協力体制に不備があったとはいえない上、店舗内の人間関係についても特段問題はなかったことなどからすれば、亡Xについて、精神障害を発症させるほどの強い業務上の負荷が生じていたとはいえないというべきである。

3 ・・・以上の点を考慮すると、亡Xが9月15日の時点で重症うつ病エピソードを発症していたとの労災医員意見書は採用することはできず、その他、亡Xが上記精神障害を発症していたことを認めるに足る証拠はない。
そうすると、本件においては、亡Xが自殺をした動機や原因については結局のところ不明であるといわざるを得ないが、その交際関係など他に了解可能な動機がある可能性は否定できず、また、平成11年に警察庁が公表した自殺の動機に関する統計資料において、「不詳」とされているものが約7パーセント存在することも考慮すれば、亡Xが自殺した点のみをもって、何らかの精神障害を発症していたとみることもできない。

長時間労働等を理由として労災認定されているにもかかわらず、使用者が安全配慮義務違反を認めなかった裁判例です。

労働者側としては油断ならない判断です。

使用者側としては、労災認定がされていても訴訟では異なる事実認定がなされる可能性があることを理解し、先入観を持たずに主張立証をしなければなりません。

本の紹介604 この方法で、みんなお金持ちになった、人生の成功者となった(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
この方法で、みんなお金持ちになった、人生の成功者となった!―シュラー博士の7つのプログラミング

15年前の本です。

何かの本で紹介されていたので読んでみました。

王道の本です。

とてもわかりやすく書かれており、何をどうしたらいいのか多くの気付きを与えてくれます。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、人に目標を定めることの大切さを説くときに、よく、次のような公式を用いる。
『信念+集中+持続=成功』
目標の優先順位を決めるときには、この公式を念頭に置いておくとよい。」(66頁)

何事であれ、時間と労力を注ぐ優先順位を決めるようにしているんです。他の人間が自分と同等以上に得意としていることには、かかわらないようにしています。つまり自分だけができることをやっているんですよ」(67頁)

「信念+集中+持続」という公式の中で最も難しいのは、「持続」だと思います。

続けることというのは本当に大変です。

フィットネス会員になってはいるものの、通ったのは最初の1か月だけ・・・という方、いませんか?

続けることができる人というのは、決して意志が強い人というわけではありません。

続ける方法を知っている人なのです。

意志の強さや性格の話をした瞬間、もはやどうしようもない空気が漂ってしまいますが、決してそうではありません。

私は、つまるところ、続ける方法=成功する方法なのだと確信しています。

今も昔もこれからも「継続は力なり」です。

セクハラ・パワハラ20(さいたま市(環境局職員)事件)

おはようございます。

今日は、教育係のパワハラでうつ病発症・自殺に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

さいたま市(環境局職員)事件(さいたま地裁平成27年11月18日・労判1138号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に任用され環境局施設部Aセンターに勤務していた亡Xが、Xの指導係であったCから暴言及び暴力行為等のパワーハラスメントを受けたため、精神疾患を発症して自殺したなどとして、Xの両親が、Y社に対し、債務不履行又は国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき、それぞれ4047万5602円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、原告らに対し、それぞれ659万9333円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、平成23年4月25日、Dにおいて、Xから、Cによる暴力を受けていて、あざができており、その写真を撮ってあること、同月21日、Cと業務のことでぶつかり、言葉の暴力等のパワハラを受けたことなどの相談を受けたにもかかわらず、C又はXを配置転換したり、CをXの教育係から外すなどの措置を講じ、Xが、Cの言動によって心理的負荷等を過度に蓄積させ、本件既往症であるうつ病を増悪させることがないよう配慮すべき義務を怠った

2 Xには、本件既往症があり、Xが自殺する前年である平成22年の6月から8月にかけて90日間も休職したことがあったことからすれば、Xが、本件既往症を増悪させ、自殺するに至ったことについては、Xの本件既往症が重大な要因となっていることは明らかである
また、原告らは、Xの両親であり、Xと同居していたのであるから、Xに本件既往症があり、上記のとおり長期間にわたって休職をしたことを認識していた上、Cから、暴力を受けあざができるなどのパワハラを受けていたことなどを聞かされていたと認められること、遅くともXが借家から退去して実家に戻った平成23年11月5日以降は、Xの精神状況が悪化していることを認識し、又は認識し得たはずであること、Xは、原告ら宅において自殺したところ、その際、「もう嫌だ。」と叫んで、自宅の2階に駆け上がるなど以上な精神状態にあったことがうかがわれることなどに照らせば、原告らは、Xと身分上又は生活上一体関係にある者として、Xの病状を正確に把握した上で、本件センターのEやF医師等と連携して、Xを休職させるなどして、適切な医療を受けさせるよう働き掛けをしたり、Xの自殺を防ぐために必要な措置を採るべきであったということができる
以上によれば、過失相殺又は過失相殺の規定(民法722条2項)の類推適用により、X及び原告らに生じた損害の8割を減ずるのが相当である。

大幅に素因減額されています。

上記判例のポイント2は労働者側としては十分に注意しなければならない視点です。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。