Author Archives: 栗田 勇

不当労働行為78(ミカド観光センター事件)

おはようございます。

さて、今日は、ストを主導した組合役員らを懲戒解雇したこと等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ミカド観光センター事件(長崎県労委平成25年8月5日・労判1077号92頁)

【事案の概要】

X組合は、平成23年11月、ストライキを実施し、その後、ストライキを解除した。

Y社は、前日までストライキに参加していた組合員10名に対し、自宅待機を命じた。

Y社は、上記10名のうち、X2およびX3を懲戒解雇した。また、X5からX10に対し、ミカド市場等への配置転換を、X4に対してさらに1か月の自宅待機を命じた。その後、Y社はX4を懲戒解雇した。

これらのY社の行為および組合が求めた当該行為に関する団体交渉に対するY社の対応が、労組法7条1号から3号に該当する不当労働行為であるとしてX組合が救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

懲戒解雇、配置転換、自宅待機命令は、いずれも不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 本件自宅待機命令は、本件ストライキに最後まで参加した10名に対して行われたものであるが、本件ストライキが正当な組合活動と認められることは前述のとおりである。また、上記のとおり、本件自宅待機命令に合理的な理由が認められない一方で、Y社はX組合を嫌悪していたことが認められるのであるから、本件ストライキを違法と決め付けたY社が、組合嫌悪意思をもって本件自宅待機命令を行ったと認めるのが相当である

2 本件懲戒解雇についても合理的な理由が認められない一方で、Y社がX組合を嫌悪していたことが認められるのであるから、本件ストライキを違法と決め付けたY社が、組合嫌悪意思をもって本件懲戒解雇を行ったと認めるのが相当である。そして、X組合の要職にあった3名を懲戒解雇することにより会社内における組合活動を困難にさせ、組合のさらなる弱体化を図ったものと認めることができる。X組合組合員の減少が著しいことは前述のとおりである

3 本件配置転換は、本件自宅待機命令に引き続いて行われたものである。本件ストライキが正当な組合活動と認められること、本件自宅待機命令が不当労働行為に該当することは前述のとおりであり、また、上記のとおり、本件は移転命令について合理的な理由が認められない一方で、Y社がX組合を嫌悪していたことが認められるのであるから、本件ストライキを違法と決め付けたY社が、組合嫌悪意思をもって本件ストライキがなかったならば行うことのなかった配転をあえて行ったと認めるのが相当である

あまりコメントすることがないほど明白な不当労働行為ですね。

顧問弁護士や顧問社労士がいないのでしょうか。

「あのー、社長、100%不当労働行為ですよ・・・」とか言ってあげる人がいなかったのでしょうか。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介270 人を感動させる仕事(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

__

←先日、福井県に行った際、ロースクールの同期で、修習も同期の友人に「ヨーロッパ軒」に連れて行ってもらいました。

ソースかつ丼?です。

こう見えて、とてもおいしいです。びっくりしました。

あっくん、ご馳走様でした。

今日は、午前中は、離婚訴訟が2件、債権回収の裁判が1件、債務整理の打合せが1件入っています。

午後は、不動産関係の裁判が1件、労働事件の裁判が1件入っています。

今日だけで裁判が5件入っています。

夜は、弁護士会で、新規登録弁護士研修制度説明会に参加します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 人を感動させる仕事 ~僕がソニー、ディズニー、アップルで学んだこと~

めざましテレビでお馴染みの前刀さんの本です。

いろんな会社で働いてきたのですね。ソニー、ディズニー、アップルなど。

さまざまな会社で学んだことをまとめた本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life. …have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become.
(あなた方の時間は限られている。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしてはいけない。自分の心と直感に従う勇気を持つことだ。心と直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはずだ。)」(129~130頁)

これはジョブズの発言です。

ジョブズが言うからこそ、説得力がありますね。

私もこのブログでよく書くことですが、人生は本当に短いですし、いつ終わってしまうかわかりません。

平均寿命はあくまで平均であって、当然、その年齢まで生きられることが保証されているわけではありません。

そんな中、何か生きた証を残したい、生きている心地を味わいたい、と強く思うのであれば、自分がやりたいことをやる、という「自分勝手」な生き方でもいいのではないでしょうか。

私の場合、やる時間もないというのが本音ですが、やりたくもないゴルフをいやいやお付き合いで行くことほど無駄なことはありません(笑)

懇親会の二次会も同様。

すべてのお付き合いに参加していたら、本当にやるべきことに費やせる時間がなくなります。

人を感動させる仕事ができるかどうかは、つまるところ、その仕事にどれだけの時間を割けるかなんだと、今のところ考えています。

ゴルフをやって、裁判に勝てるのであれば、毎日、練習をしますが、そういうわけではなさそうなので、とりあえず、仕事を引退するまではやめておきまーす。

労働災害66(O社事件)

おはようございます。

__

←先日、顧問契約を結ばせていただいている福井県の社労士の先生にお会いしてきました。

写真は、先生にご馳走になった越前がにです。

このほか、カニのお刺身、焼きがに、せいこがに、かに雑炊などなどをいただきました。

めちゃくちゃおいしかったです!!

先生、今度は、静岡で倍返しですよ! 是非、静岡にお越し下さいませ。

今日は、午前中は、債権回収の裁判が1件、新規相談が2件入っています。

午後は、新規相談が1件、裁判の打合せが2件、刑事事件(否認事件)の証人尋問が入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、キッチンフロアチームリーダーの突然死と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

O社事件(神戸地裁平成25年3月13日・労判1076号72頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していたXがY社における過重な労働によって心臓性突然死したのは、Y社の安全配慮義務違反によるものであると主張して、Y社に対して、債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約1億円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Xにおいて、発症前2か月間にわたって80時間を超える時間外労働がなされており、当時の業務状況等も考慮すると身体的、精神的に負担のかかる過重な労働であったといえ、それによってXに対して過重とそれに伴う睡眠不足により、疲労を蓄積した状態に陥って心身の不調を来した末、心臓性突然死により死亡したものといえ、Xの業務と死亡との間に相当因果関係が認められる。

2 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の上記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。そして、使用者ないし上記権限者がこの義務に反した場合は、使用者の債務不履行を構成するとともに不法行為を構成する。
また、使用者が認識すべき予見義務の内容は、生命、健康という被害法益の重大性に鑑み、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り、必ずしも生命、健康に対する障害の性質、程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない

3 これを本件についてみると、以上の認定事実によれば、A店において、退勤打刻後残業が恒常的に行われていたことは、平成15年12月のQ事件によって明らかになり、退勤打刻後残業等により申告されていた労働時間を大幅に超えて残業していることをY社の労働時間を管理する者が認識し得たものといえるにもかかわらず、Y社は賃金不払い残業の原因について解明して、過重になっていた業務を軽減して適正化するなどの対策を執ることなく、単に退勤打刻後残業等の賃金不払い残業の規制を強化しただけであったから、Y社は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に反していたものといえる。したがって、Y社には上記義務違反による不法行為責任があるものと認められる。

残業時間が長い場合、使用者が具体的に労働者の健康状態を認識していないとしても、安全配慮義務違反に問われてしまいます。

労働時間の管理は、使用者の義務であることを再認識する必要がありますね。

本の紹介269 人に強くなる極意(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 12月が始まりましたね。残り1か月、がんばっていきましょう!!
__

←毎週日曜日の早朝恒例、海までのジョギングをしてきました。

早朝は、かなり寒くなってきましたね。

海は、風もなく、波も穏やかでした。

今日は、午前中は、島田の裁判所で、医療事故に関する民事調停です。

午後は、静岡に戻り、家裁で成年後見の事前審問が1件、裁判の打合せが2件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

人に強くなる極意 (青春新書インテリジェンス)

佐藤優さんの本です。 母校の大学が同じです。

佐藤さんの本は、これまでにも何冊か読んだことがありますが、博学さが尋常ではありません。

今回の本は、タイトルがいいですね。一般人向けです(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

嫌な話ですが、いまや世の中全体が相手を不安にさせ、びびらせることで回っているという現実があります。『いまの食生活では老化が進みます』とか『ガンになってしまいます』とか、消費者を不安にさせることで商品を買わせる。・・・不安になったりびびったりすると何が一番いけないか。冷静な判断ができなくなってしまうのが一番よくない。・・・相手を不安にさせて購買意欲を煽る現在の消費社会では、つねに自分が何に対してびびっているのかを意識するとともに、それが仕掛けられたものでないかどうかを検証することが肝要です。」(60~61頁)

まあ、そういうところは、ありますよね。

特に病気関係はそうですよね。

テレビCMを見ていると、どれだけのサプリメントを呑まないといけないのかと思ってしまいます(笑)

なんでもかんでも情報を信じてしまわずに、可能な限りの検証をするという姿勢が大切であるわけですね。

その点、私たち弁護士の仕事は、疑ってかかるということを日常業務の中で自然と行っています。

どこかの知事ではありませんが、借用書があると、それだけで金銭の授受があったと盲信してしまう弁護士はいません。

原本なの? 捺印はあるの? 実印なの? なんで借りた人が借用書持ってるの? 筆跡は本人のものなの?

などなど。

このような発想を持つかどうかも、日頃の習慣によるのです。

不当労働行為77(兵庫県・兵庫県労委(川崎重工業)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、使用者に当たらないとして救済申立棄却命令の取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

兵庫県・兵庫県労委(川崎重工業)事件(神戸地裁平成25年5月14日・労判1076号5頁)

【事案の概要】

Xの川崎分会に所属する組合員は、A社及びB社に雇用されて、労働者派遣契約や請負契約に基づき、Y社の工場で就労していたが、A社及びB社から解雇又は雇止めをされたため、Xが、Y社に対し、分会組合員の雇用に関する要求事項を掲げて団体交渉を申し入れたところ、Y社が分会組合員の使用者に当たらないことを理由に拒否したため、この行為が労働組合法7条2号(誠実交渉義務違反)の不当労働行為に当たるとして、処分行政庁に対し不当労働行為救済命令申立てを行ったが、処分行政庁は、Y社は分会組合員の使用者に当たらないと判断して本件申立てを棄却する命令をした。
本件は、Xが、本件命令を不服として、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 不当労働行為禁止規定(労働組合法7条)における「使用者」は、一般に、労働契約上の雇用主をいうものと解されるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、同事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である(最高裁平成7年2月28日判決)。

2 ここでいう「使用者」は、労働契約関係ないしそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者を意味し、雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する者もまた、これに該当するものと解すべきである

3 Y社が、派遣労働者であったDらと直接雇用契約を締結するかは、基本的にY社の有する採用の自由が及ぶ範囲内の事柄であり(このことはXも認めるところである。)、Y社が自ら直用化するか否かを決定することができるからといって、そのことから直ちにY社が使用者に当たると解することはできない。

4 労働者派遣が派遣法に違反する常体に至っている場合には、確かに派遣先において派遣労働者を直接雇用することは違法状態を解消し、派遣労働者の雇用の安定を図る一つの方策ではあるが、派遣労働者の雇用の安定を図る方策は直接雇用に限られるわけではないことに加え、派遣法40条の4は、派遣可能期間に抵触する等一定の要件を充たした場合に派遣先企業に派遣労働者に対する労働契約の申込みを義務付けているものの、当該申込義務は、派遣先企業が派遣労働者に対して負う私法上の義務ではなく、国に対して負う公法上の義務であって、派遣労働者はこれが履行された場合に反射的利益を受ける立場にあるにとどまると解される

5 本件では、A社が労働者を解雇する場面において、Y社は派遣解除通知をするに当たり減員人数を伝えるのみであり、派遣契約を解除される労働者を決定するのはA社であったことからすると、Y社は誰を解雇するかについてA社に対して影響力を及ぼしておらず、人選をA社の意向にゆだねていたものというべきであり、採用の場面でY社がA社に何らかの影響力を及ぼしていることはうかがえないのであって、単に業務の大半を依存しているという事実のみからY社を使用者と認めることはできない

労組法上の使用者性に関するオーソドックスな判断です。

違法派遣についての判断も、特に変わるところはありませんね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介268 No.1リーダーを支える英断の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

__

←先日、いつもお世話になっている社長と、ホテルセンチュリー内「けやき」の特別賞味会に行ってきました。

写真は、「富士山岡村牛サーロインとシャリアピンステーキに牛舌の厚切りステーキを レモンと黒胡椒で」です。 

タイトル、長いですね(笑)

やはり、お肉は、厚くないとおいしくありません。 牛タンもこのくらい厚いのがいいですね。

今日は、午前中は、フランチャイズ契約の打合せが1件、弁護士会での法律相談が1件、新規相談が2件入っています。

午後は、新規相談が1件です。

夜は、社労士の先生方を対象としたセミナーです。

テーマは、「重要判例から読み解く労基法19条(解雇制限)に関連する争点の整理」です。

労基法19条は、最近の流行ですね。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 No.1リーダーを支える 英断の言葉 (西田文郎の<究極の言葉>シリーズ)

西田さんの本です。

西田さんがこれまでに行ってきた講演やセミナー、出版された著書の中から50のことばを選んだものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

グチや悪口、不平不満、ネガティブな話というのが、ツキのない人間に共通の行動特性なのです。すぐ怒ったり、あっさり落ち込んだりするのも特徴です。つまり感情のコントロールが苦手。ですからツキのある人間のポジティブシンキングとはどうしても相容れず、なかなか付き合ってもらえません。ツキと運は必然であり、いわば自己責任なのです。」(76~77頁)

 「感情のコントロール」は、日常生活や仕事を円滑に進めるためのキーワードとなります。

自分が感情的になりやすいと感じる方は、意識して改善をしていかなければ、いつまでも感情的なままです。

「感情的でなにが悪いの?」と感情的にならず、自分とは別の「客観的な第三者としての自分」を常に意識することが大切だと思います。

みなさんは、他人へアドバイスをすることはできても、自分自身へアドバイスをすることはしませんよね。

自分が他人だと仮定して、日頃、他人にアドバイスをするように、自分自身にアドバイスをする。

それだけで、感情は相当程度コントロールできるのではないでしょうか。

また、あらゆる感情のうち、特に気をつけなければならないのは、「怒り」の感情です。

すぐにカッとして、冷静な判断ができなくなるようでは、何事もうまくいくはずがありません。

重要な場面だけ冷静になろうとしても、うまくいきません。

何事も日頃の習慣です。 日々の生活から、是非、試してみて下さい。

賃金70(北港観光バス(賃金減額)事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合活動を理由とする配車減による賃金・割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

北港観光バス(賃金減額)事件(大阪地裁平成25年4月19日・労判1076号37頁)

【事案の概要】

Xは、路線バス、観光バス、送迎バスなどの旅客自動車運送事業等を業とする株式会社であるY社においてバス運転手として勤務している者であり、Xの賃金は時給制である。

本件は、XがY社に対し、XとY社との間には少なくとも賃金月額が30万円を下らない金額となるよう仕事を与える合意があったにもかかわらず、XがY社の意に反した組合活動を行ったことから、何ら合理性なく、Xに対する仕事を減らしたことが、債務不履行及び不法行為に当たるとして、労働契約又は不法行為に基づき、月額30万円と平成22年7月から平成24年3月まで支払われた賃金との差額合計240万4468円、慰謝料200万円等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

賃金差額約236万円及び弁護士費用24万円の合計約260万円の支払を命じた

慰謝料については請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間の労働契約においては、Xの労働時間は予め定められていないから、一般的には、Xに対し一定時間以上の労働を命じることがY社の義務であるということはできない。しかしながら、Y社のバス従業員の給与は時給制であり、労働時間の多寡が各従業員の収入の多寡に直結するという本県事情の下においては、Y社が合理的な理由無く特定の従業員の業務の割り当てを減らすことによってその労働時間を削減することは、不法行為に当たり得ると解するのが相当である

2 ・・・このような事態を回避するために、各運転手の運転技術、接客態度その他の勤務態度を考慮して、配車するバスを決めるということには合理的な理由があると解され、Xには上記のような勤務態度上の問題があり、改善の意欲も十分ではないことも合わせ考慮すると、Xに対する配車を減らすという対応を取ることも理由がないとはいえない。
しかしながら、Xの月収は平成22年6月までは概ね30万円以上であったにもかかわらず、平成22年7月は25万円、平成22年3月までいずれも20万円を下回っており、Xの勤務態度に問題があったとしても、かかる大幅な配車の減少を長期にわたり続けることに合理的な理由があるかは疑問である

3 Y社は、無苦情・無事故手当、及び職務手当は、いずれも時間外労働に対する手当であるから、基礎賃金には含まれないと主張している。
ある手当が時間外労働に対する手当として基礎賃金から除外されるか否かは、名称の如何を問わず、実質的に判断されるべきであると解される。無苦情・無事故手当及び職務手当は、実際に時間外業務を行ったか否かにかかわらず支給されること、バス乗務を行った場合にのみ支給され、側乗業務、下車勤務を行った場合には支払われないことからすると、バス乗務という責任ある専門的な職務に従事することの対価として支給される手当であって、時間外労働の対価としての実質を有しないものと認めるのが相当である

非常に参考になる裁判例です。

上記判例のポイント1の視点は、是非、参考にしてください。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介267 仕事の大事は5分で決まる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

仕事の大事は5分で決まる

著者は、キャノングローバル戦略研究所研究主幹で元外務相中東アフリカ局参事官の宮家さんです。

外交官としての「人脈術」「語学術」「交渉術」「メモ術」「プレゼンテーション術」「発想術」「情報術」「危機管理術」がまとめられています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

知的プロセスを繰り返すためには、ふと思いついた興味深い発想を、タイミングよく書き留め、これを時間のある時に何度も見直すことが大切でしょう。その意味では、発想メモを『正しく取れるか、取れないか』で、あなたの『大局観』は大きく変わります。」(111頁)

メモの取り方は、人それぞれだと思います。

キーワードだけを書き留める人、一言一句を書き留める人など。

私は、できるだけたくさんメモをとるようにしています。

もっとも、録音が許される場面では、メモとともに録音もします。 この方法がもっとも正確だからです。

時間が経つと、メモを見返しても、正確に思い出せないのなら、いっそのこと、録音を聞き返した方が楽だからです。

みなさんも、是非、メモの取り方、残し方を研究してみてください。

意外と侮れませんので。

賃金69(帝産キャブ奈良事件)

おはようございます。今週も一週間がんばります!!

さて、今日は、タクシー乗務員らによる最賃との差額金・未払賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

帝産キャブ奈良事件(奈良地裁平成25年3月26日・労判1076号54頁)

【事案の概要】

本件は、Xら30名が、タクシー事業を営むY社に雇用されてタクシー乗務員として勤務していたが、平成20年6月21日から平成23年8月20日までの勤務に対してY社から支払われた賃金が最低賃金を下回っており、さらに、Xらの一部については割増賃金の一部に未払がある等と主張して、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金請求をした事案である。

【裁判所の判断】

1 合計約250万円の未払割増賃金の支払を命じた

2 付加金として、割増賃金と同額の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Y社及び組合は、平成22年12月13日、本件覚書を締結し、同月14日、Y社は、タクシー乗務員らに対し、精算金を支払った。本件覚書には、前記の期間に係るタクシー乗務員らの最低賃金の不足額について精算することとする旨の定めがあったが、同期間に係る債権債務関係が他に存在しないことを確認するような文言はない。
本件覚書及び第一次精算に至る経緯に照らすと、本件覚書を締結する際、組合は、平成20年6月21日から平成22年6月20日までの期間の勤務に係る未払賃金に関し、Y社が提示した額を受領するものの、残額があれば更に請求する意思があったことが認められる。そうすると、本件覚書の締結及び第一次精算の事実をもって、Xら乗務員が、Y社との間で、前記期間の勤務の賃金未払に掛かる争いをやめることを約したものと認めることはできない。
以上によれば、平成20年6月21日から平成22年6月20日までの期間の勤務に係る賃金の未払についてはY社とXら乗務員との間で和解が成立している旨のY社の主張は理由がない。

2 Y社は、X勤務乗務員らに対し、時間外労働に対する割増賃金及び深夜労働に対する割増賃金の支払を怠った違反がある。そして、本件において、Y社は、本訴提起前及び本訴提起後に一部未払賃金の存在を認め、口頭弁論終結時までにXらに対して一定の支払を行ってきたものの、本訴提起後においても、根拠を示さないまま不就労時間がある旨の主張を繰り返すなどしてきた。
かかる事情に照らすと、・・・割増賃金の合計額と同額の付加金の支払いを命じることが相当である。

この事件は、一審で確定しているようです。

ということは、付加金も全額支払うことになってしまいますね・・・。

控訴しておいて、その間に未払賃金を支払えば、付加金の支払いを免れることができるのですが、それはしなかったようです。律儀です。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介266 豊かさを導く31の「与え方」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。

 バリ島大富豪“兄貴"に学ぶ 豊かさを導く31の「与え方」

バリ島の大富豪兄貴の本です。 久しぶりです。

兄貴の考え方の根底には、常に「利他」の精神が見えるので、とても好きです。

この本は、ページ数も少なく、コンパクトなため、すぐに読めてしまいます。

タイトルがいいですよね。大切なのは「もらい方」ではなく「与え方」なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ほとんどの人がお金がほしい、お金もちになりたいと言うのは、フェラーリ持ちたい、持ち家がほしい、家族を豊かにしたいという『欲』を叶えたいんやろ。・・・自分の幸せしか考えんもんは、自分の幸せに至らん。でも、他人の幸せを考えとるもんは、自分も完全に幸せになれるんや。」(23頁)

いい車に乗りたい、いい時計をしたいという「欲」自体を否定するつもりはありません。

でも、これらの欲は、車屋さんと時計屋さん以外の他人を幸せにするものではありません。

他者を幸せにすることで自分も幸せになる、という考え方が王道ですよね。

自分のことは後回し。

まずは、周りの人をどうやって幸せにできるかを考える。

これが僕たち世代の常識です。