Author Archives: 栗田 勇

派遣労働16(パナソニック・プラズマディスプレイ(パスコ)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣法違反の雇用契約で働く労働者と派遣元・派遣先との法律関係に関する最高裁判決を見てみましょう。

パナソニック・プラズマディスプレイ(パスコ)事件(最高裁平成21年12月18日・労判993号5頁)

【事案の概要】

本件は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の製造を業とするY社の工場で平成16年1月からPDP製造の封着工程に従事し、遅くとも同17年8月以降は、Y社に直接雇用されて同月から同18年1月末まで不良PDPのリペア作業に従事していたXが、Y社によるXの解雇及びリペア作業への配置転換命令は無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有することの確認、賃金の支払、リペア作業に就労する義務のないことの確認、不法行為に基づく損害賠償を請求している事案である。

【裁判所の判断】

本件派遣は派遣法違反であるが、派遣先会社との黙示の労働契約の成立は否定

【判例のポイント】

1 請負契約においては、請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが、請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は専ら請負人にゆだねられている。よって、請負人による労働者に対する指揮命令がなく、注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には、たとい請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても、これを請負契約と評価することはできない。

2 Y社は、上記派遣が労働者派遣として適法であることを何ら具体的に主張立証しないというのであるから、これは労働者派遣法の規定に違反していたといわざるを得ない。しかしながら、労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである

3 XとY社との法律関係についてみると、Y社はC社によるXの採用に関与していたとは認められないというであり、XがC社から支給を受けていた給与等の額をY社が事実上決定していたといえるような事情もうかがわれず、かえって、C社は、Xに本件工場のデバイス部門から他の部門に移るよう打診するなど、配置を含むXの具体的な就業態様を一定の程度で決定し得る地位にあったものと認められるのであって、Y社とXとの間において雇用契約関係が黙示に成立していたものと評価することはできない

派遣先との黙示の労働契約の成否については、この最高裁判例をベースに考えることになります。

マツダ防府工場事件の地裁判例が出されましたが、あくまでまだ地裁レベルです。

現時点では、最高裁判決が示した規範に従うのが無難です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介250 修業論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。
 修業論 (光文社新書)

タイトルがいいですね。 そそられます。

「修業」という言葉が死語化している中、「トレーニング」とは異なる「修業」の意味について書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

修業とは、長期にわたる『意味のわからないルーティン』の反復のことである。まれに天才という人がいるけれど、それは修業が不要な人のことではない。天才とは、自分がしているルーティンの意味を修業の早い段階で悟り、それゆえ、傍から見ると『同じことの繰り返し』のように見える稽古のうちに、日々発見と驚きと感動を経験できる人のことである。
武道修業のかんどころは、このいつ終わるとも知れず、その目的も明示されない修業のルーティンを、どうやって高いモチベーションを維持して継続するか、にある。」(191頁)

一見すると、無意味に思えてしまうあらゆる行為に自分なりのプラスの意味付けができる人というのは、日常生活すべてが「修業」になります。

向上心が強い人は、無意識にこういう思考をしているものです。

スーパーに買い物に行った帰り道、重たい袋を上下に上げ下げしている男子、見ませんか?

これ、修業ですよね(笑) 上腕二頭筋の。

「人生に無駄なことはない」と言いますが、これは、客観的事実ではなく、主観的事実なのです。

解雇119(医療法人社団こうかん会(日本鋼管病院)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、患者の暴力で休職した看護師への期間満了による解雇の効力に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人社団こうかん会(日本鋼管病院)事件(東京地裁平成25年2月19日・労判1073号26頁)

【事案の概要】

Xは、Y社が経営する日本鋼管病院の看護師であったが、平成18年1月28日に業務中に入院間患者からの暴力のより傷害を受けて休職し、復職後の平成19年8月8日にも入院患者の食事介助中に入院患者から暴力を振るわれたとして、医師により適応障害の診断を受け、就労が困難な状況に至って休職したところ、Y社から平成21年10月11日付けで休職期間満了による解雇通告を受けた。

本件は、Xが、上記平成18年1月28日の事故及び平成19年8月8日の事故に遭ったことにつき、いずれもY社に雇用契約上の安全配慮義務違反があると主張して、Y社に対し、債務不履行に基づく損害賠償を請求するとともに、Xの上記適応障害が業務上の傷病であることから、Y社による上記解雇は労基法19条に違反するもので無効であるとして、解雇後の賃金を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、1931万2120円及びこれに対する平成19年12月24日から支払済みまで年5%の遅延損害金を支払いを命じた(Y社は医療法人社団であって商人ではないから、遅延損害金の割合については年5%)。

解雇は有効

【判例のポイント】

1 R看護師及びS看護師の供述内容に照らすと、Y社の第○北病棟においては、看護師がせん妄状態、認知症等により不穏な状態にある入院患者から暴行を受けることはごく日常的な事態であったということができる。したがって、このような状況下において、Y社としては、看護師が患者からこのような暴行を受け、傷害を負うことについて予見可能性があったというべきである

2 そして、入院患者中にかような不穏な状態になる者がいることもやむを得ない面があり、完全にこのような入院患者による暴力行為を回避、根絶することは不可能であるといえるが、事柄が看護師の身体、最悪の場合生命の危険に関わる可能性もあるものである以上、Y社としては、看護師の身体に危害が及ぶことを回避すべく最善を尽くすべき義務があったというべきである。したがって、Y社としては、このような不穏な患者による暴力行為があり得ることを前提に、看護師全員に対し、ナースコールが鳴った際、(患者が看護師を呼んでいることのみを想定するのではなく、)看護師が患者から暴力を受けている可能性があるということをも念頭に置き、事故が担当する部屋からのナースコールでなかったとしても、直ちに応援に駆けつけることを周知徹底すべき注意義務を負っていたというべきである
しかるに、第1事故の当時、Y社は、このような義務を怠った結果、Fから暴行を受けたXがナースコールを押しているにもかかわらず、他の看護師2名は直ちに駆けつけることなく、その対応が遅れた結果、Xにかかる傷害ないし後遺障害を負わせる結果を招いたものであって、この点で、Y社には、Xに対する安全配慮義務違反があったといわざるを得ない。

3 第1事故にみられるように、病院内で不穏な患者による暴力が日常的に起こっているという状況下において、看護師が患者から暴力を振るわれることにより傷害を負うということ自体は一般的に予見可能であるということができるが、同じ状況下であっても、患者から暴力を振るわれたことによる心理的負荷を原因として精神障害を発症するということが当然に予見可能であるということはできないから、本件の事実関係の下で、Xの本件適応障害発症について、Y社に予見可能性があったということはできない
このように、Xを病棟勤務としたこと自体が、Y社の安全配慮義務違反であるということはできない。そして、病棟勤務となれば、いずれは何らかの形で入院患者と接することが不可避というべきであるところ、Y社病院側としては、復職後、Xの勤務状況を観察しつつ、徐々にXに依頼する業務を増やしていき、その中で入院間がに対する食事介助を依頼したという経緯があるのであるから、Xの心情にかんがみ、それなりに慎重に対応していたということができる。したがって、Y社病院側が、同僚看護師らに対し、Xについて就労可能な業務が限定されている旨伝えていなかったことをもって、Y社の安全配慮義務違反があるということはできない。

4 第2事故については、第1事故の後遺障害が残る状況下で発生したものではあるものの、客観的にみて、これが精神障害発症の引き金になるほどの重度の心理的負荷をもたらすものであったとは認め難いし、復帰後の配属先を第△北病棟としたことについても、それによりXが多大な精神的負荷を受けていたと認めることはできない
したがって、平均的労働者にとって精神障害を発症させる危険性のある心理的負荷をもたらすものであったと認めることはできないから、Xの従事していた業務と本件適応障害発症との間に、相当因果関係を認めることはできないというべきであり、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
以上のとおり、Xの本件適応障害が、労基法19条1項の「業務上」の傷病であると認めることはできないから、本件休職期間満了を理由としてなされた本件解雇は有効と認められる

非常に重要な論点が複数含まれています。

勉強会の題材にしようと思います。

最近、流行り(?)の労基法19条1項の争点ですが、労働者側からすると、思いの外、ハードルが高いことがわかると思います。

条文から受ける印象と実際の審理とでは、大きな隔たりがありますので、安易に考えるのは危険です。

なお、Xは、別訴において、行政処分取消訴訟を提起しているようですが、1審では、棄却され、現在、二審の審理が係属中だそうです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介249 負けない議論術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、七間町にある「こはく」に行ってきました。

写真は、「里芋とれんこんの煮もの」です。

落ち着きます。癒されますね。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、顧問先会社でセミナーを行います。

テーマは、「第9回 契約書作成に必要なリーガルマインド習得講座」です。

午後は、家裁で遺産分割調停が1件、弁護団会議が1件入っています。

夜は、社労士の先生方を対象としたセミナーです。

テーマは、「マツダ防府工場事件判決から読み解く『黙示の労働契約』の成否のポイント」です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 

世界の凄腕ビジネスマンと渡り合う日本人弁護士の 負けない議論術

著者は、ニューヨーク州弁護士の方です。

この本とは別に「負けない交渉術」という本も出されています。

こちらも読んでみましたが、どちらの本もとても参考になります。

交渉のしかた、議論のしかたを勉強するにはいい本ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

議論においては、相手と「ウィン・ウィン」の関係を築くことを目指すべき。一方的に相手をねじ伏せるのは得策ではない。ねじ伏せられた相手は恨みに思うし、周りに与える印象もよくない。どんな議論にせよ、相手との関係は何らかの形で続くことが多い。相手を満足させて議論を終えることができれば、相手の満足は自分にもプラスとなって跳ね返ってくる。・・・相手をリスペクトし、相手が気持ちよく議論できるように配慮している。どんな場面でも、常に「ウィン・ウィン」の議論となるように心がけよう。それは相手のためではなく、自分自身のためなのだ。」(142頁)

全く同感です。

このことは、議論に限らず、交渉事においても同じことが言えると思います。

どんな状況でも、なんでもかんでも相手をこてんぱんにすることがいいことだとは思いません。

場合によっては、あえて、相手に逃げ道を残してあげたり、こちらが(本来、譲歩する理由はないけれども)譲歩してあげることが必要なときもあると考えています。

また、これが、日本の文化に合致しているのだと思います。

大局的に見て、どのような議論・交渉のしかたがよいのかを判断すべきだと思います。

 

セクハラ・パワハラ4(アークレイファクトリー事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣先上司らによるパワハラ行為に対する損害賠償請求等に関する裁判例を見てみましょう。

アークレイファクトリー事件(大津地裁平成24年10月30日・労判1073号82頁)

【事案の概要】

本件は、派遣労働者として就労していたXが、その派遣先であったY社の従業員らから、度々、いわゆるパワハラに該当する行為を受け、同派遣先での労務に従事することを辞めざるを得なかったとの理由により、Y社に対し、①同従業員らの不法行為に関する使用者責任として、退職後の逸失利益、慰謝料および弁護士費用合計272万4085円、②固有の不法行為責任として、退職後の逸失利益、慰謝料及び弁護士費用合計272万4085円の総計442万4085円(なお、前記①および②の各退職後の逸失利益102万4085円の範囲につき、前記使用者責任とY社固有の不法行為責任は競合関係)および遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xの請求のうち、慰謝料88万円を認めた。

【判例のポイント】

1 Y社の正社員であるFおよびEが、Xに対し、ゴミ捨てなどの雑用を命じていたことにつき、他の仕事ができないと決めつけ、あえて行わせたとまでは推認することはできないが、他方、Y社の正社員であり、Xを含む派遣労働者を指示・監督する立場にあるFらは、指揮命令下にある部下に対する言動において、その人格を軽蔑、軽視するものと受け取られかねないよう留意し、特に、派遣労働者という、直接的な雇用関係がなく、派遣先の上司からの発言に対して、容易に反論することが困難であり、弱い立場にある部下に対しては、その立場、関係から生じかねない誤解を受けないよう、安易で、うかつな言動は慎むべきところ、FらのXに対する各言動は、いずれも、その配慮を極めて欠いた言動で、その内容からすると、Fらの主観はともかく、客観的には、反論が困難で、弱い立場にあるX(の人格)をいたぶる(軽蔑、軽視する)意図を有する言動と推認でき、その程度も、部下に対する指導、教育、注意といった視点から、社会通念上、許容される相当な限度を超える違法なものと認められるから、Y社従業員であるFらのXに対する不法行為があったと認めるのが相当である。

2 Y社は、Fらを従業員として使用する者で、Fらによる前記で認定した不法行為は、FらおよびXが、Y社業務である本件労務に従事する中で、Y社の支配領域内においてなされたY社の事業と密接な関連を有する行為で、Y社の事業の執行について行われたものであるから、Y社は使用者責任を負うと認められ、また、Fらは、Xを含む派遣労働者に対する言葉遣いについて、Y社の上司から指導・注意および教育を受けたことはなかったことを自認しており、Y社が、その従業員であるFらの選任・監督について、相当の注意を怠ったと認めるのが相当である。

3 派遣先であるY社は、派遣労働者であるXを、本件労務に従事させるにあたり、これを指揮監督する立場で、Y社の正社員であるFらに対し、弱い立場、関係から生じかねない誤解を受けないよう、安易で、うかつな言動を慎み、その言動に注意するよう指導、教育をすべきところ、本件では、Fらに対して、本件苦情申出に至まで、何らの指導、教育をしていなかったことからすると、少なくとも、職場環境維持義務を怠った程度が、社会通念に照らし、相当性を逸脱する程度のもので、その結果、Xは、Fら、Y社の従業員らから、人格権侵害といえる言動等を被ったものと評価できるから、同義務違反に基づく、Y社固有の不法行為責任を認めるのが相当である

4 Xは、前記不法行為により、本件労務に従事することを辞めざるを得なかった旨主張するが、本件労務に従事するにあたり、派遣会社との間で、雇用契約を結んでいたものにすぎず、前記不法行為の結果、本件派遣期間満了後も、同派遣期間を更新し、Fらのもとで、就労することは困難であったことのみならず、前記不法行為の結果、派遣会社との間における雇用契約関係も終了せざるを得なかったことを認めるに足る証拠は何ら存在せず、かつ、本件派遣期間満了後、少なくとも、派遣会社から、他の派遣先に、派遣してもらって、就労することができなかったことを認めるに足る証拠もないことから、本件派遣期間満了後、Xが、再就職するまでの逸失利益につき、前記不法行為と相当因果関係があるとは認められない

Xは、派遣先会社の上司の発言を録音しており、これを証拠としたために、裁判所はパワハラを認定しやすかったわけです。

派遣先会社の方は、上記判例のポイント1を参考にしてください。

また、使用者責任のほかに会社の固有の不法行為責任を問われることがありますので、ご注意ください。

金額はそれほど大きなものではありませんが、会社のイメージを壊すものですので、安易には考えないことをおすすめします。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介248 迷ったら、二つとも買え!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今日から10月です。今年も残すところあと3か月ですね。

さて、今日は本の紹介です。

 迷ったら、二つとも買え! シマジ流 無駄遣いのススメ (朝日新書)

 サブタイトルは「シマジ流 無駄遣いのススメ」です。

帯には「お金と鼻クソは貯め込むなかれ」、「使ったお金を後悔するな」、「貯金は免疫力を低下させる」などと書かれています。

小さい頃から、お母さんに言われてきた「無駄遣いはダメよ」の真逆を行く本です(笑)

おすすめです。 是非、読んでみて下さい。

もっとも、性格的または経済的に、できる人とできない人に分かれるとは思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

金は天下の回りものというのは、よくいったものだ。よく『お金をちゃんと貯めておけ』などというが、あれは人間のスケールを小さくするだけのことだ。1000万円の貯金を作るのがいかに大変なことかは、わたし自身、骨身に沁みてわかっている。・・・ただひとついえるのは、1000万円を貯めた人のところには、大した額のお金は流れていかないということだ。・・・つまり、お金は手放すことによってはじめて入ってくる。それは呼吸法と同じだ。呼吸法というと、多くの人は「吸って吐く」というイメージを持っていると思うが、あれは逆である。「吐いて吸う」ものなのである。だから、金払いのいい人には、再びそれに見合った額のお金がブーメランのように戻ってくる。」(101~102頁)

この感覚、よくわかります。

仕事の関係でも、けちな人というのは、お付き合いがしづらいですよね。

使うときには、使う。出し惜しみしない。

こういうメリハリのあるお金の使い方をする経営者の方は、とても魅力があります。

私のまわりには、このようなお金を使い方をする経営者がいっぱいいるため、勉強になります。

プライベートはさておき、人をもてなすときくらいは、目一杯、おもてなしをしましょう。

また、がんばって働けばいいのですから。

セクハラ・パワハラ3(C社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、事務職員へのパワハラ・セクハラと解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

C社事件(大阪地裁平成24年11月29日・労判1068号59頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、①Y社の代表者であるAからパワハラを、②Y社の従業員(専務)であるBからセクハラを、それぞれ受けたとして、不法行為に基づき、Y社及びA、そしてY社及びBに対し、それぞれ連帯して慰謝料の支払い(なお、Y社に対しては、いずれも債務不履行に基づく請求を選択的に併合している。)、③Y社から不当に解雇されたとして、不法行為に基づく損害賠償等を求めている事案である。

【裁判所の判断】

Y社と代表者Aは、Xに対し、連帯して30万円を支払え。

Y社と専務Bは、Xに対し、連帯して30万円を支払え。

解雇は無効→ただし、解雇による逸失利益の損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 証拠によれば、AがXに送信したメールにも、AがXに乱暴な口調や解雇をちらつかせたりして命令したり、行き過ぎた表現でミスを責めているものが認められるなど、Xの前記供述を裏付ける事実が認められるのに対して、それを否定するAやBの各供述は後述するように直ちには採用することができないことや、本件減給分の9万円を後にXに支払っていることなどを総合考慮すれば、Xの供述等はおおむね信用することができ、Xの前記主張は主要な点について認めることができる。

2 Xが供述している内容は、具体的かつ詳細で、証拠によれば、本件解雇後約1か月後から一貫して主張していることが認められる上、XがBと仕事以外の連絡を取るようになった経緯や、本件解雇をされたと主張する日の前日にBと一緒に食事をするなどの経緯、翌日も出勤するやBから事務室に呼び出されたことなど、主要な点は、Bにおいても認めている。そして、Xにおいて、むしろ退職を相談し、それを親身にのっていたBのセクハラを捏造してBを窮地に追いやる動機も特段認められないのに対して、セクハラを否定するBの供述は後述するように直ちには採用することができないことからすれば、Xの供述等はおおむね信用することができ、Xの上記主張は認めることができる。

3 XはY社から本件解雇をされたことが認められ、しかも、その原因は、Bから自分と交際するかY社を退職するかとの二者択一を執拗に迫られた結果、XがY社の退職を選択し、その一部始終をAに報告したところ、本件解雇をされたというものであって、Xが解雇されなければならない理由は何らないことは明らかである。

4 たとえ、Aにおいて、BがXにそのようなセクハラを行ったとは到底思えず、XのBに関する報告は嘘だと思ったとしても、Bの当該セクハラ行為はXと二人きりの場で行われたものであり、そのように断定するだけの客観的な根拠があるわけではないのであるから女性従業員のXが代表者のAにBからのセクハラ被害を報告し、Aもそれにより初めてそのような事実が存在する可能性を認知した以上、事業主であるAは、まず、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するために、当事者のXとB双方から事実関係について充分聴取した上で、いずれの主張が信用できるか慎重に検討すべきである。にもかかわらず、Aは、はなからXの被害申告が虚偽であると決めつけているのであって、Aには重過失があることは明らかであるから、本件解雇は、社会的相当性を欠くものとして違法というべきである。

セクハラ・パワハラともに事実を認定してもらうのは、想像以上に大変なことです。

裁判所がどのような点に着目して、事実を認定しているのかを参考にしてください。

もっとも、この裁判例は、セクハラ・パワハラ認定に厳密さが欠ける感は否めませんが・・・。

また、従業員からセクハラ・パワハラの報告を受けた際の事業主の対応方法については、上記判例のポイント4を参考にしてください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介247 京大理系教授の伝える技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は本の紹介です。
 京大理系教授の伝える技術 (PHP新書)

著者は、京大の火山学の教授です。

鎌田先生の本は、これまでも何冊か読んできましたが、どの本もわかりやすく書かれており、私は好きです。

今回は、「伝える技術」についてです。 火山学からは想像もできません(笑)

分野を超えて本を書く、というバイタリティに共感を覚えます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世の中にはモテる人とモテない人が厳然として存在します。その差異は何でしょうか。ここに、『相手の関心に関心をもっているか』どうかが関係しているのです。世の中には男女を問わず、相手の関心のないことを延々と話しつづける人がいます。・・・こういう人は絶対に異性にモテないでしょう。・・・恋する相手から気に入られたいと願うときに見つめるのは、自分の気持ちであってはなりません。逸る自分を抑えて、冷静に相手の気持ちを推し量るのです。相手が何を欲しがっているのかを考えて相手にとって好ましい状況を用意する。『相手の関心に関心をもつ』ことができてはじめて、片思いから両思いへと進展させることができるのです。」(86~87頁)

よくわかります(笑)

でも、これって、恋愛だけではないですよね。

日常生活や仕事でも全く同じことが言えます。

相手の関心のないことを延々と話す人というのは、相手の関心事かどうかには関心がなく、単に自分が話したいことを話しているだけですよね。

相手は、話に相づちをうちながらも、「で?」とか「また始まった。早く終わらないかな・・・」と内心思っているのです(笑)

こういう話し方をする人は、一事が万事、「相手の関心に関心をもつ」という姿勢に欠ける傾向にあります。

逆に、相手が求めていることを、相手のちょっとした行動、表情、しぐさなどから察して、臨機応変に対応できる人もいます。

こういう人は、プライベートでも仕事でもモテますよね。

この違いは、どこからくるのでしょうか?

少なくとも言えるのは、このような違いは、性格や能力の違いではなく、習慣の違いだということです。

「相手の関心に関心をもつ」ということを意識して生活をすることで、誰でも変わることはできると確信しています。

「相手が求めるものを与える」

これが王道です。

「自分が与えたいものを与える」ではないのです。

有期労働契約42(いすゞ自動車(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、有期労働契約社員の一時休業時の賃金請求権、雇止めの効力に関する裁判例を見てみましょう。

いすゞ自動車(雇止め)事件(東京地裁平成24年4月16日・ジュリ1459号127頁)

【事案の概要】

Y社は、第1グループXらについて、各人の契約期間満了日までの所定労働日について休業として、その間労基法26条、臨時従業員就業規則43条及び労働契約法8条に基づき、平均賃金6割の休業手当を支給した。

Xらは、休業期間中の賃金請求をした。

【裁判所の判断】

XらのY社に対する休業期間中の賃金請求を認めた。

その他は請求棄却。

【判例のポイント】

1 一般に使用者が企業を運営するに当たり、企業運営の必要の範囲内で、それに見合う人数の労働者と、相応の労働条件の下で労働契約を締結しているのが通常なのであり、使用者が労務を受領しないのは、例外的な事態であるから、本件休業のように、労働者が労働を提供し、使用者がこれを受領しないことが、使用者の責に帰すべき自由に基づくものと推認されると解するのが相当である。そして、この意味での帰責事由がないというためには、休業の必要性、両当事者の状況等の事情に照らして、休業がやむを得ないものと認められることが必要である

2 一般に、Y社での臨時従業員のように、期間の定めのある労働契約を締結している労働者は、正社員(期間の定めのない従業員)に比して長期雇用に対する合理的期待は相対的に低くなると考えられるが、その一方で、当該契約期間内の雇用継続及びそれに伴う賃金債権の維持については合理的期待が高いものと評価すべきである。そして、第1グループXらは、Y社の臨時従業員として、労働期間内での昇級、昇進等の期待なく、固定された賃金収入を主な目的として短期間の期間労働契約を締結、更新しているのであって、その意味でも、雇用継続期間中の賃金債権の維持についての期待は高度の合理性を有するというべきである。そうすると、本件休業命令は、合意退職に応じなかった臨時従業員全員を対象として、その契約期間の満了日までとする包括的、かつ一律に定め、第1グループXらは、3か月以上もの間、その平均賃金の4割相当額を支給しないとするもので、本件休業により第1グループXらが被る不利益は重大かつ顕著であるというべきである。以上のような、第1グループXらの置かれた状況に鑑みれば、このような期間の途中に一定の期間の休業を命じるについては、より高度の必要性が認められなければならないというべきである

3 一方、Y社は、正社員及び定年後再雇用従業員については、本件休業期間中、平成21年3月の1か月に4日間の個別の休業日を設定、実施するのみで、それに伴い支給される休業手当の金額についても、基本日給の100%を支給している。これは、上記のとおり、期間の定めのある労働契約によって職務に従事する労働者が置かれている状況に照らして考えると、著しく均衡を欠くとの評価を免れないといわざるを得ない。

4 以上によると、Y社に本件休業によって、平均賃金の4割カットによらなければならないというだけの、上記の高度の必要性までをも認めることは困難であるといわなければならない。そうすると、本件休業がやむを得ないものであると認めることはできない
以上によれば、本件休業によるY社の労務提供の受領拒絶については、「債権者の責めに帰すべき事由」によるとの推認を覆すに足りる事由はないから、第1グループXらのY社に対する民法536条2項に基づく賃金請求権は、これを認めることができる。

上記判例のポイント1の規範は、実務においても使う場面があります。

支払う賃金額を抑えるという理由から、なんでもかんでも休業にするというのはダメなわけです。

もっとも、1、2か月という短期間の休業の場合には、仮に当該休業がやむを得ないものとは認められなかったとしても、会社が従業員に支払うべき金額は、平均賃金の40%分にとどまる(つまり、それほど大きな金額にはならない)こと、それゆえ訴訟リスクが必ずしも高いとはいえないことなどの理由から、「ダメもと」で休業とする場合もありうると思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介246 マッキンゼー式世界最強の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
マッキンゼー式 世界最強の仕事術

10年以上前の本ですが、今読んでも、全く古さを感じさせません。

合理的な仕事術を参考にしたいという方には、非常にいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんな問題でも、どこかのだれかが、すでに似たような問題に取り組んでいる可能性が高い。もしかしたら社内にそういう人がいて、電話一本で知りたいことがすべて聞けるかもしれない。あるいは、同じ専門分野、他の部署、他社のだれかが、すでに同じ問題に遭遇しているかもしれない。そういう人を探し出して知り合いになろう。自分になりに調べて質問する。これで時間と労力を大いに節約できる。時間は貴重なので、よけいな手間ひまをかけて、むだにしてはならない。」(122頁)

真面目な人に限って、いちいちすべてを自分の頭で考えなければならないと思ってしまいがち。

でも、それははっきり言って、時間の無駄です。

使えるものはどんどん使う。

真似できるものはどんどん真似する。

この割り切りができるかどうかで、仕事の効率は格段に上がります。

すべてを1から作り上げられるほど、時間は有り余っていません。

時間は有効に使いましょう。