セクハラ・パワハラ3(C社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、事務職員へのパワハラ・セクハラと解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

C社事件(大阪地裁平成24年11月29日・労判1068号59頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、①Y社の代表者であるAからパワハラを、②Y社の従業員(専務)であるBからセクハラを、それぞれ受けたとして、不法行為に基づき、Y社及びA、そしてY社及びBに対し、それぞれ連帯して慰謝料の支払い(なお、Y社に対しては、いずれも債務不履行に基づく請求を選択的に併合している。)、③Y社から不当に解雇されたとして、不法行為に基づく損害賠償等を求めている事案である。

【裁判所の判断】

Y社と代表者Aは、Xに対し、連帯して30万円を支払え。

Y社と専務Bは、Xに対し、連帯して30万円を支払え。

解雇は無効→ただし、解雇による逸失利益の損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 証拠によれば、AがXに送信したメールにも、AがXに乱暴な口調や解雇をちらつかせたりして命令したり、行き過ぎた表現でミスを責めているものが認められるなど、Xの前記供述を裏付ける事実が認められるのに対して、それを否定するAやBの各供述は後述するように直ちには採用することができないことや、本件減給分の9万円を後にXに支払っていることなどを総合考慮すれば、Xの供述等はおおむね信用することができ、Xの前記主張は主要な点について認めることができる。

2 Xが供述している内容は、具体的かつ詳細で、証拠によれば、本件解雇後約1か月後から一貫して主張していることが認められる上、XがBと仕事以外の連絡を取るようになった経緯や、本件解雇をされたと主張する日の前日にBと一緒に食事をするなどの経緯、翌日も出勤するやBから事務室に呼び出されたことなど、主要な点は、Bにおいても認めている。そして、Xにおいて、むしろ退職を相談し、それを親身にのっていたBのセクハラを捏造してBを窮地に追いやる動機も特段認められないのに対して、セクハラを否定するBの供述は後述するように直ちには採用することができないことからすれば、Xの供述等はおおむね信用することができ、Xの上記主張は認めることができる。

3 XはY社から本件解雇をされたことが認められ、しかも、その原因は、Bから自分と交際するかY社を退職するかとの二者択一を執拗に迫られた結果、XがY社の退職を選択し、その一部始終をAに報告したところ、本件解雇をされたというものであって、Xが解雇されなければならない理由は何らないことは明らかである。

4 たとえ、Aにおいて、BがXにそのようなセクハラを行ったとは到底思えず、XのBに関する報告は嘘だと思ったとしても、Bの当該セクハラ行為はXと二人きりの場で行われたものであり、そのように断定するだけの客観的な根拠があるわけではないのであるから女性従業員のXが代表者のAにBからのセクハラ被害を報告し、Aもそれにより初めてそのような事実が存在する可能性を認知した以上、事業主であるAは、まず、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するために、当事者のXとB双方から事実関係について充分聴取した上で、いずれの主張が信用できるか慎重に検討すべきである。にもかかわらず、Aは、はなからXの被害申告が虚偽であると決めつけているのであって、Aには重過失があることは明らかであるから、本件解雇は、社会的相当性を欠くものとして違法というべきである。

セクハラ・パワハラともに事実を認定してもらうのは、想像以上に大変なことです。

裁判所がどのような点に着目して、事実を認定しているのかを参考にしてください。

もっとも、この裁判例は、セクハラ・パワハラ認定に厳密さが欠ける感は否めませんが・・・。

また、従業員からセクハラ・パワハラの報告を受けた際の事業主の対応方法については、上記判例のポイント4を参考にしてください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。