Monthly Archives: 8月 2013

本の紹介239 人はなぜ勉強するのか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、お疲れ様でした。__

←先日、久しぶりに「かまど家ピュアカリ」に行ってきました。

僕は、ここのピザが大好きです。

写真は、鉄板の「マリナーラ」です。

3食マリナーラでもいいです。

今日は、午後から豊橋の裁判所で裁判が入っています。午前中から移動します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 人はなぜ勉強するのか―千秋の人 吉田松陰

吉田松陰さんに関する本です。

タイトルがいいですね。 子どもがお母さんに聞きそうなことです。

適切な答えを持ち合わせていないお母さんは、是非、読んでください。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

万巻の書を読むに非ざるよりは 寧んぞ千秋の人と為るを得ん 一己の労を軽んずるに非ざるよりは 寧んぞ兆民の安きを到すを得ん」(69頁)

現代語に直すと、以下のような意味になります。

一万巻に及ぶたくさんの書物を読まないでは、どうして千年の歴史に名を残す人となることができようか。自分一人の労苦を進んで負うのではなくして、どうして天下の人々を安らかにすることができようか

人一倍、勉強をし、かつ、苦労を進んで請け負うことができないで、世の中をよくすることなんてできません。

志が高い人は、みんな強い向上心を持っていますから、勉強熱心ですし、苦労を厭わないという共通点があります。

ここでいう勉強は、もちろん本を読むことも含まれますし、それにとどまらず、人の話を聞くことや実際に体験してみることもすべて勉強です。

心のどこかで「人の役に立ちたい」「社会に貢献したい」と願っている人は、吉田松陰さんの教えに従い、日々、勉強をしましょう。

解雇115(リーディング証券事件)

おはようございます。

さて、今日は、有期雇用契約における試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

リーディング証券事件(東京地裁平成25年1月31日・労経速2180号3頁)

【事案の概要】

本件は、雇用期間1年間の約定で採用され、試用期間中に解雇(留保解約権の行使)されたXが、使用者であるY社に対し、上記留保解約権の行使は労契法17条1項に違反し無効であるとして、地位確認、残存雇用期間の未払賃金等及び違法な留保解約権の行使等による慰謝料の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 有期労働契約は、企業における様々な労働力の臨時的需要に対応した雇用形態として機能しているが、実際上、使用者は、かかる労働受遺用が続く限り有期労働契約を更新し継続することが多い。したがって、かかる有期労働契約においても、期間の定めのない労働契約と同様に、入社採用後の調査・観察によって当該労働者に従業員としての適格性が欠如していることが判明した場合に、期間満了を待たずに当該労働契約を解約し、これを終了させる必要性があることは否定し難く、その意味で、本件雇用契約のような有期労働契約においても試用期間の定め(解約権の留保特約)をおくことに一定の合理性が認められる。しかし、その一方で、上記のとおり労働契約期間は、労働者にとって雇用保障的な意義が認められ、かつ、今日ではその強行法規性が確立していることにかんがみると、上記のような有期労働契約における試用期間の定めは、契約期間の強行法規的雇用保障性に抵触しない範囲で許容されるものというべきであり、当該労働者の従業員としての適格性を判断するのに必要かつ合理的な期間を定める限度で有効と解するのが相当である。

2 本件試用期間の定めは、雇用期間(1年間)の半分に相当する6か月間もの期間を定めており、それ自体、試用期間の定めとしては、かなり長い部類に属する上、Y社は、日本語に堪能な韓国人証券アナリストとして即戦力となり得ることを期待し、Xを採用したものと認められるところ、Xがそのような意味で即戦力たり得るか否かは、一定の期間を限定して、個別銘柄等につきアナリストレポートを作成、提出させてみれば容易に判明する事柄であって、その判定に要する期間は、多くとも3か月間もあれば十分であると考えられる。そうだとすると本件試用期間の定めのうち本件雇用契約の締結時から3か月間を超える部分は、Xの従業員としての適格性を判断するのに必要かつ合理的な期間を超えるものと認められ、その意味で、上記労働契約期間の有する強行法規的雇用保障性に抵触するものといわざるを得ない。したがって、本件試用期間の定めは、少なくともXとの関係では、試用期間3か月間の限度で有効と認められ、Y社は、その期間に限り、Xに対し、留保解約権を行使し得るものというべきである

3 労契法17条1項は、民法628条が定める契約期間中の解除のうち、使用者が労働者に対して行う解除、すなわち解雇は、「やむを得ない事由」がある場合でなければ行うことができないと規定し(強行法規)、その立証責任が使用者にあることを明らかにしているが、上記期間の定めの雇用保障的意義に照らすと、上記「やむを得ない事由」とは、当然、期間の定めのない労働契約における解雇に必要とされる「客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当と認められる場合」(労契法16条)よりも厳格に解すべきであるから、上記労契法16条所定の要件に加え、「当該契約期間は雇用するという約束にもかかわらず、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由」をいうものと解するのが相当である(菅野・234頁。ちなみに平成20・1・23基発0123004号)。

4 有期労働契約における留保解約権の行使は、使用者が、採用決定後の調査により、または試用中の勤務状況等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らし、①その者を引き続き当該企業に雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であること(労契法16条。「要件①」)に加え、②雇用期間の満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由が存在するものと認められる場合(労契法17条。「要件②」)に限り適法(有効)となるものと解するのが相当である。

5 もっとも、このように留保解約権の行使が労契法17条1項の規制に服することになれば、事実上とはいえ試用期間中の解雇は殆ど認められないことになりかねず、Y社が主張するように、実質的に試用期間の定めを設けた意味が失われるようにもみえる。しかし、上記のとおり使用者が労働者に対して行う解除という点では、就業規則における規定も仕方いかんにかかわらず、留保解約権と普通解雇権との間には基本的に性質上の差違は認められないものと解され、そうだとすると労契法17条1項による解雇・解約制限に関しても両者を同等に扱うのが合理的であって、これに差違を設けることは適当ではなく、その意味で、留保解約権の行使に対しても、労働契約期間の雇用保障的意義の効果は及ぶものと解すべきである

いろいろと参考になる判断ですね。

有期雇用で、試用期間を設けた場合、留保解約権の行使が労契法17条1項の規制に服するか、という問題はおもしろいですね。

この事件の担当裁判官は、肯定していますね。

本件事案では、解雇は有効と判断されていますが、一般的には、留保解約権の行使に「やむを得ない事由」を要求するとなると、試用期間中の解雇は、ほとんど有効にできないことになってしまうという使用者側代理人の意見はそのとおりだと思います。

とはいえ、本件のように有効と判断されることもあるわけですので、どうなんでしょうね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介238 未来の市場を創り出す(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 昨夜は、事務所でずっと書面を作成していました。 目がしぱしぱします。 
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←先日、税理士K山先生とDJ Roniさんたちと一緒に、鷹匠の「穂乃花」に行ってきました。

ラジオコンビです。

お寿司屋さんではないのに、お寿司が抜群においしいです。

おすすめです。

今日は、午前中は、不動産関係の裁判が1件と裁判の打合せが

1件入っています。

午後は、外部での法律相談、裁判の打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

未来の市場を創り出す ― 「サービスが先、利益は後」がめざすこと (日経ビジネス経営教室)

ヤマトホールディングス社長の本です。

「イノベーション」という言葉は知っているけれど、実際、どうやってやればいいのかわからないという人にはおすすめの本です。

次から次へと新しいサービスを生み出していることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

市場が成長している段階では、商品単体の機能を差別化することで競争に勝つ。事実、宅急便の誕生以降、立て続けに新サービスを導入している。一方で市場が成熟すると、商品の機能だけで差別化を図ることが難しくなるため、機能を組み合わせるなどして競争の土俵を変える必要がある。」(80頁)

ヤマトの新サービス導入の例としては、以下のものがあるそうです。

①「スキー宅急便」「ゴルフ宅急便」「コレクトサービス」「クール宅急便」

②「タイムサービス」「365日営業開始」「時間帯お届けサービス」「ドライバーダイレクト」「e-お知らせシリーズ」「店頭受け取りサービス」

③「会員制サービスクロネコメンバーズ」

①は送り手側のサービス向上、②は受け取り手側のサービス向上、③はサービスを組み合わせ「ソリューション」を提案するものであり、①、②は商品を改良し続ける段階、③は競争の「土俵」を変える段階です。

勉強になりますね。

自分の業界に置き換えて考えるといろんなアイデアが浮かんできます。

「立て続けに」新サービスを導入するというのがいいですね。

1つサービスが当たったとしても、そこに安住しない。

次から次へと休むことなくサービスを提供する。

この勢いを見習いたいと思います。

有期労働契約41(ダイキン工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、直接雇用された請負会社社員らに対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

ダイキン工業事件(大阪地裁平成24年11月1日・労判1070号142頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として就労していたXらが、平成22年8月31日に労働契約の期間満了を理由として雇止めされたことにつき、労働契約における期間の定めは無効であり、仮に有効であるとしても本件雇止めは解雇権濫用法理の類推適用により無効であると主張し、労働契約上の地位確認及び未払賃金の支払を請求するとともに、Y社が同法理潜脱の目的でXらに期間の定めのある労働契約の締結を事実上強制し、不安定な状態に置き続けた末に本件雇止めに及んだ一連の行為が不法行為に当たると主張して、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを請求する事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 労働契約は、労働者ガ使用者の指揮命令下に労務を提供し、その対価として使用者が賃金を支払うことを本質とするものであって、これらの点につき意思表示が合致する限り、黙示の意思表示によっても労働契約の成立を認めることは可能であるが、そのためには、労務提供や賃金支払等の実態に照らして、二者間に事実上の使用従属関係が認められ、一方においては指揮命令下における労務提供の意思が、他方においては当該労務提供に対し賃金を支払う意思が、それぞれ客観的に推認されることが必要である。
そして、労働者派遣(労働者派遣法2条1号)が行われている場合であっても、派遣元が形骸化している反面、派遣先と派遣労働者の双方において、上記のような黙示の意思が労務提供や賃金支払等の実態から客観的に推認され、互いに合致している場合には、明示の契約形式にかかわらず、派遣先と派遣労働者との間に黙示の労働契約の成立を認める余地がある

2 XらのY社における労務提供の枠組みにおいて、請負会社はXらの採用、賃金等の就労条件に加え、その他一定限度の就業態様について決定し得る地位にあり、Y社との関係でも独立した企業としての実体を有しており、形骸化した存在と評価し得る実態にはなく、Xらと請負会社との間の労働契約を無効と解すべき特段の事情は見当たらない。他方で、Y社がXらの採用や賃金等の就労条件を事実上決定していたとは認められず、Xらも労働契約の相手方がI社等の請負会社であることを認識していたことが認められる。以上によれば、Xらの就労実態から、XらとY社との間に事実上の使用従属関係があるとは認められず、労働契約締結に向けられた黙示的な意思を推認させる事情もまた認められない。

3 Y社は、従前労働契約関係になかったXら支援従業員との間で新たに労働契約を締結するに当たり、生産量の増減に合わせた人員数の調整の必要性や、契機の先行きが不透明な当時の経済情勢を踏まえ、明確な意思をもって、2年6か月を更新の限度とすることとし、本件直用化の前後を通じ書面等も配布しつつそのことを一貫して説明し、就業規則にもその旨の規定を設け、その代わり無期の正社員として登用するための試験を実施していたことに照らすと、Xらにおいて、本件労働契約が2年6か月を超えて更新されることに対する合理的期待を有する余地はなかったというべきである

明確に更新限度を設けていることが、本件結論に大きく影響しています。

本田技研工業事件とともに参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介237 ヤバい経営学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間、がんばりましょう!!

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←先日、事務所の近くの「吉野鮨」に行ってきました。

安定感が違います。 完全に大人のお店です。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、新規相談が1件と顧問先でのセミナーが入っています。

 

セミナーのテーマは、「第8回 契約書作成に必要なリーガルマインド習得講座」です。

午後は、離婚調停が1件、夕方から月一恒例のラジオです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

著者は、ロンドン・ビジネススクールの准教授の方です。

帯に「ビジネスの常識が次々と覆る」と書かれているとおり、これまでのビジネスの見方に多くの疑問を投げかけています。

硬直化した発想を柔軟にするには、とてもいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの会社が、自社だけで革新的になるのは難しいと気づいた。本当のイノベーションを起こすためには、当然さまざまな能力と知識、洞察力が必要だ。しかし一つの組織が、そのような多様性を持つ例は少ない。何か根本的に新しいものを見つけようとするならば、会社の外に目を向けたほうがよいだろう。そして、会社にとって有益なことを知っている人を探すべきだ。これは『イノベーションネットワーク』と呼ばれる。他社の知識リソースにアクセスし、自分たちのリソースに加える。そして、自社だけではできなかったことをやろうとする。」(259頁)

自分のイノベーションを他社に漏らさないこともできる。だけど、イノベーションを共有したほうがもっとメリットが大きい」(262頁)

異業種の会社とコラボすることにより、全く新しい発想が生まれることはよくあります。

すべてをゼロから作り出すよりも、やり方を知っている人と一緒にやった方が早いです。

もっとも、コラボをするときには、こちらかも相応のものを提供できることが前提条件です。

むしろ相手の方が多くのメリットを感じてもらえるくらいがちょうどいいのではないでしょうか。

不当労働行為70(パナソニック草津工場事件)

おはようございます。 

さて、今日は、労働者派遣個別契約が終了した組合員に対する派遣先の使用者性に関する命令を見てみましょう。

パナソニック草津工場事件(中労委平成25年2月6日・労判1070号172頁)

【事案の概要】

Xは、派遣社員としてY社の工場において、製品の検査業務等に従事してきた。

派遣元とY社との契約は、平成21年12月末に終了した。

Xが加入する組合は、Y社に対し、①Xの直接雇用、②労働者派遣法違反の状態で働かせていたことについての謝罪および金銭的解決等を求めて団交を申し入れた。

Y社は、Xと雇用関係がなく、黙示の労働契約も成立していないとして団交を拒否した。

組合は、本件救済を申し立てたところ、滋賀県労委は、Y社の団交拒否は不当労働行為にあたると判断した。

【労働委員会の判断】

団交拒否は不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 派遣可能期間を超える労働者派遣に関する直接雇用の申込義務の規定は私法上の義務を課すものではないから、同規定の要件を充足して直接雇用の申込義務が生じたからといって、「近い将来において派遣労働者との間に雇用関係が成立する可能性」が、直ちに現実的かつ具体的に生じるものではない。ただし、労働行政機関が労働者派遣法の規定に従って、派遣先事業主に対して、その労働者派遣の実態にかんがみ、当該派遣労働者の雇入れ(直接雇用)の行政勧告ないしその前段階としての行政指導を行うに至ったという場合には、派遣先事業主は当該派遣労働者の雇入れに応じることが法律上強く求められ、派遣先事業主が同雇入れに応じる可能性が現実的かつ具体的に生じるに至っている状況にあるといえるから、上記の雇用主以外の場合に関する法理に従い、当該派遣先事業主は、当該派遣労働者との間で近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者として労組法7条の使用者となり得ると解するのが相当である

2 ・・・以上からすると、Y社は、採用、配置及び雇用の終了という一連の雇用の管理に関する決定権について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたとは認められない。したがって、Y社は、本件交渉事項に関して、労組法7条の使用者に当たると解することもできない。

上記命令のポイント1の判断は、押さえておきたいですね。

派遣先会社の皆様、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介236 運命のバーカウンター(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、お付き合いのある法律事務所、税理士事務所、司法書士事務所のみなさんと、パルコ内の「ピッツァ サルバトーレ クオモ」に行ってきました。

総勢20名強! 大人数です。

写真は、「D.O.C~ドック~」です。

ピザ好きにはたまりません。毎日3食ピザでもいいです。

今日は、午前中は、弁護士会で法律相談です。

午後は、家裁で家事審判が1件、打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

運命のバーカウンター

著者は、エステサロンを経営する会社の社長です。

小説風に書かれていますが、著者の伝えたいことが随所に散りばめられています。

「レッドオーシャンを目指すやつが成功する」、「経営者に過去に休日は必要ない」、「説明好きな経営者ほどモテない」、「ベンチャーキャピタルに頼るならサラ金を使え」・・・など、タイトルがとてもおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

だいたいにおいて世の中の人間は考え過ぎだ。経営者なら特に考える時間なんて最少になるようにした方がいい。

急がば急げ。その時の判断が間違っててもいい。そのことにすら気付かないぐらいの速さと勢いでやってみろ。ぐだぐだ悩んで無駄に時間を過ごさない分、リカバリーの時間だってあるから大丈夫だ。確実な今日という日に賭け金を積み上げたところでリターンはたかが知れてる。それよりは不確実な明日に賭けた方が、面白いアイデアだって出るしリターンもでかい。それが経営者の発想ってことだ。」(59頁)

多くの経営者が、さまざまな言い回しで、決断と実行のスピードの重要性を説いています。

この著者もまさにその一人です。

普段、会話をしていたり、仕事で交渉をしているときに、「あ、この人、決断が早いな」と思う人は、好感が持てます。

決断に迷いがないというか、決断の結果に責任を持っている人なのだと思います。

仮に決断の結果、うまくいかなかったとしても、それはそれで受け入れます、という潔さみたいなものを感じます。

過度に失敗を恐れていない、どんな状況でもリカバーする自信がある、といった共通点があるようにも思います。

解雇114(全国建設厚生年金基金事件)

おはようございます。

さて、今日は、通勤手当の不正受給を理由とする諭旨退職処分に関する裁判例を見てみましょう。

全国建設厚生年金基金事件(東京地裁平成25年1月25日・労判1070号72頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、①平成24年2月9日付け諭旨退職処分が無効であるとして、Y社に対し、(1)地位確認、(2)平成24年2月分の未払賃金、(3)平成24年以降の賞与などを請求した事案である。

【裁判所の判断】

諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 Xによる本件不正受給は、「就業上必要な届出事項について、基金を偽ったとき」(職員就業規則56条(4))として懲戒事由該当行為であると認められるが、他方において、①Y社は、Xの自宅からY社事務所までの通勤方法として平成8年申告経路に記載された通勤方法及びこれに基づく所要額(定期代)を合理的なものと認定した上で同額の通勤手当を支給していたものであり、本件不正受給によりXが受給してきた通勤手当額は、その範囲内に収まっていること、②Y社においては、通勤手当が認定された後は、基本的にその支給継続に当たって特段の審査がされることがなく、本件不正受給のように、認定された通勤手当に係る定期券等を実際には購入していなくても通勤手当を受給し続けることができる状況にあったことや、職員が習い事のために迂回する経路であってもY社の裁量によって通勤手当の支給経路として認定されることがあることが認められ、このことからすれば、Y社内においては、本件不正受給当時、通勤のために真に合理的かつ必要な限度でのみ通勤手当を認めた上で、その支給の合理性の維持につきこれを厳守するという企業秩序が十分に形成されていたとは言い難いこと、③Y社において、①のとおり平成8年申告経路に記載された通勤方法及びこれに基づく所要額(定期代)を合理的なものと認定していたことのほか・・・本件不正受給によって、Y社が通常合理的な金額として認めない程の高額の通勤手当の支給を余儀なくされたという関係には立たない上、Y社らの主張を前提としても、本件不正受給による差額は、6か月当たり2万5330円、定期券購入時期につき平成21年4月から平成23年10月までととらえると合計15万1980円に過ぎないこと、以上からすれば、本件不正受給に対し、職員としての身分を剥奪する程の重大な懲戒処分をもって臨むことは、Y社における企業秩序維持の制裁として重きに過ぎるといわざるを得ない。

2 これに対し、Y社は、平成24年2月2日以降のXの態度について、退職願を提出した同月9日を除き、通勤手当の不正受給に関して虚偽の説明を繰り返して自己を正当化するばかりで反省の態度を示していなかったとして、そのことを本件処分の相当性を基礎付ける事情の一つとして主張する。
この点、確かに、・・・Xにおいて、本件不正受給の問題点と真摯に向き合った上で、反省する態度を示していたとは認められないというべきである。
しかしながら、他方において、・・・Y社のXに対する追及態度は、本件不正受給の具体的内容が明らかになっていない同月2日の段階から、厳しい処分になることを覚悟するようにとの趣旨を告げた上、同月8日の面談においても、当初の段階すなわち本件釈明書面等の提出前の段階では諭旨退職相当と考えたが、本件釈明書面等の提出を踏まえると懲戒解雇にせざるを得ない旨伝える等、発覚当初から本件不正受給が職員の身分剥奪を伴う懲戒処分相当事案であることを前面に出してXに接していたことが認められるのであって、これに対してXが、諭旨退職又は懲戒解雇処分を回避するために不自然、不合理な内容及び態度での弁解を一定程度継続したとしても、そのことをもって本件処分の相当性を基礎付ける事情として重視すべきではないと解される。加えて、Y社は、同月9日にXがそれまでの言動について反省の態度を示した上で自主退職の申出をした後に本件処分を断行しているのであって、このことからも、同月8日までのXの反省の態度の乏しさをもって本件処分の相当性を基礎付ける事情として重視すべきではない。

3 以上より、本件処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性を欠くものとして、無効というべきである。

相当性の要件でなんとかギリギリセーフという感じです。

会社側とすると、上記判例のポイント2の下線部については、参考になりますね。

このような評価がありうるということを知っておくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介235 「経営」が見える魔法のメガネ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、建設業の会社の社長と「つむらや」に言ってきました。

写真は、「鴨せいろ」です。

暑い日に鴨せいろ、最高です。

ここも、いつ行っても混んでますね。さすがです。

今日は、午前中は、債権者集会が1件入っています。

午後は、事務所で書面作成です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 「経営」が見える魔法のメガネ ― あらゆる課題が解決する究極の「見える化」教えます。 (日経ビジネス経営教室)

著者は、コマツの元社長、現相談役の方です。

この本を読むと、単に守っているだけでは、衰退していく、攻め続けなければ、会社を継続することはできないということがわかります。

生易しいものではありません。経営者の覚悟がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

顧客にとってなくてはならない会社になるという目標に向けて何をすべきか。それを示すのがトップの役割になります。明確なゴールを設定して、分かりやすく示す。そして、社内が同じ方向を向いて知恵を絞り、汗を流す仕組みを作ります。『着眼大局、着手小局』と言っていますが、トップは大きな方向性を示しつつ、何をすべきかを小さなレベルで具体的に示さなければ、社内に伝わりません。」(49頁)

「着眼大局、着手小局」。 勉強になります。

決して、「着手消極」になってはいけませんね(うまいこと言った!)。

仕事にしても受験勉強にしても、まずは、明確な目標(ゴール)を設定することが大切です。

ここで抽象的な目標設定をしてしまうと、なかなかうまくいかなくなるのです。

「英語が話せるようになりたい」「民法を理解したい」「簿記ができるようになりたい」など。

こんな感じの目標設定では、達成感をいつまでたっても感じることはできません。

だって、目標を達成したかどうか判断できないですよね。

だから、目標設定は、客観的に達成したかどうかわかるものにしなければ意味がないのです。

例えば・・・

「TOEICで900点をとるぞ!」「宅建の試験に合格するぞ!」「簿記3級に合格するぞ!」

のように。

最終的な目標を設定したら、あとは、より小さな目標を設定していけばいいだけですよね。

いかに小さな成功体験を積み重ねていくか。 

このことを勉強や仕事が得意な人は、意識的もしくは無意識のうちに日々、実践しているのだと思います。

解雇113(ボッシュ事件)

おはようございます。 

さて、今日は、執拗に内部通報メールを繰り返したこと等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ボッシュ事件(東京地裁平成25年3月26日・労判2179号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約関係にあったXが、Y社からの業務命令に反したことを理由に懲戒処分としての出勤停止処分を受け、その後解雇されたところ、同出勤停止処分及び解雇は、Xが内部告発(公益通報)を行ったことに対する報復であり、公益通報者保護法に違反するもので、いずれも無効ないし違法であるなどと主張して、Y社に対し、同出勤停止処分の無効確認請求、および出勤停止期間中の賃金の支払請求、雇用契約上の地位確認請求および解雇後の賃金、賞与請求、並びに不法行為に基づく損害賠償(慰謝料等)の請求をしたものである。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、平成23年初めころには、本件デジタルイラスト問題に関し、担当者に民事・刑事責任を問うことができないものであるという認識を有していたにもかかわらず、自らの法務室への異動希望を実現させるという個人的な目的のために、これを蒸し返し、同年7月22日には本件警告書による警告を受けたにもかかわらず、これに従うことなく、同月25日に、E社長に対し再度これを告発したと評価せざるを得ない。このように、Xは、自らの内部告発に理由がないことを知りつつ、かつ個人的目的実現のために通報を行ったものであって、Xが主張するように、社内のコンプライアンス維持のためにやむを得ない行為であったなどということはできないものであって、実質的に懲戒事由該当性がないということはできないし、かつ、公益通報者保護法2条にいう不正の目的に出た通報行為であると認めざるを得ない

2 確かに、同法の趣旨からして、事業者のコンプライアンスの増進という動機以外の動機が存すること自体をもって、その適用を否定するのは相当ではなく、かつ、再度の公益通報であること自体をもって、その適用を否定することは慎重であるべきである。
しかしながら、他方で、このような公益通報については、たとえ事業者内部における再度の通報であったとしても、多かれ少なかれ、その通報内容を理解、吟味し、ある程度の調査が必要になる場合もあるなど、相応の対応を要求されるものであって、業務の支障となる側面があることは否定できず、時に組織としての明確な意思決定を迫られることもあることからすれば、これが無制限に許されると解するのは相当ではない。したがって、少なくとも、本件のように、いったん是正勧告、関係者らに対する厳重注意という形で決着をみた通報内容について、長期間を経過した後に、専ら他の目的を実現するために再度通報するような場合において、これを「不正の目的」に出たものと認めることには、何ら問題がないというべきである

公益通報が絡む解雇や降格事案は、ときどきありますね。

公益通報者保護法では、「公益通報」を以下のとおり定義しています(2条1項)。

「公益通報」とは、労働者(労働基準法9条に規定する労働者をいう。)が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、その労務提供先又は当該労務提供先の事業に従事する場合におけるその役員、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該労務提供先若しくは当該労務提供先があらかじめ定めた者、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。)若しくは勧告等をする権限を有する行政機関又はその者に対し当該通報対象事実を通用することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。)に通報することをいう。

この他、公益通報の通報対象事実を巡り、争いになることもあります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。