Daily Archives: 2013年8月27日

有期労働契約41(ダイキン工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、直接雇用された請負会社社員らに対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

ダイキン工業事件(大阪地裁平成24年11月1日・労判1070号142頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として就労していたXらが、平成22年8月31日に労働契約の期間満了を理由として雇止めされたことにつき、労働契約における期間の定めは無効であり、仮に有効であるとしても本件雇止めは解雇権濫用法理の類推適用により無効であると主張し、労働契約上の地位確認及び未払賃金の支払を請求するとともに、Y社が同法理潜脱の目的でXらに期間の定めのある労働契約の締結を事実上強制し、不安定な状態に置き続けた末に本件雇止めに及んだ一連の行為が不法行為に当たると主張して、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを請求する事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 労働契約は、労働者ガ使用者の指揮命令下に労務を提供し、その対価として使用者が賃金を支払うことを本質とするものであって、これらの点につき意思表示が合致する限り、黙示の意思表示によっても労働契約の成立を認めることは可能であるが、そのためには、労務提供や賃金支払等の実態に照らして、二者間に事実上の使用従属関係が認められ、一方においては指揮命令下における労務提供の意思が、他方においては当該労務提供に対し賃金を支払う意思が、それぞれ客観的に推認されることが必要である。
そして、労働者派遣(労働者派遣法2条1号)が行われている場合であっても、派遣元が形骸化している反面、派遣先と派遣労働者の双方において、上記のような黙示の意思が労務提供や賃金支払等の実態から客観的に推認され、互いに合致している場合には、明示の契約形式にかかわらず、派遣先と派遣労働者との間に黙示の労働契約の成立を認める余地がある

2 XらのY社における労務提供の枠組みにおいて、請負会社はXらの採用、賃金等の就労条件に加え、その他一定限度の就業態様について決定し得る地位にあり、Y社との関係でも独立した企業としての実体を有しており、形骸化した存在と評価し得る実態にはなく、Xらと請負会社との間の労働契約を無効と解すべき特段の事情は見当たらない。他方で、Y社がXらの採用や賃金等の就労条件を事実上決定していたとは認められず、Xらも労働契約の相手方がI社等の請負会社であることを認識していたことが認められる。以上によれば、Xらの就労実態から、XらとY社との間に事実上の使用従属関係があるとは認められず、労働契約締結に向けられた黙示的な意思を推認させる事情もまた認められない。

3 Y社は、従前労働契約関係になかったXら支援従業員との間で新たに労働契約を締結するに当たり、生産量の増減に合わせた人員数の調整の必要性や、契機の先行きが不透明な当時の経済情勢を踏まえ、明確な意思をもって、2年6か月を更新の限度とすることとし、本件直用化の前後を通じ書面等も配布しつつそのことを一貫して説明し、就業規則にもその旨の規定を設け、その代わり無期の正社員として登用するための試験を実施していたことに照らすと、Xらにおいて、本件労働契約が2年6か月を超えて更新されることに対する合理的期待を有する余地はなかったというべきである

明確に更新限度を設けていることが、本件結論に大きく影響しています。

本田技研工業事件とともに参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。