Author Archives: 栗田 勇

労働時間24(ジェイアール総研サービス事件)

おはようございます。

今日は、守衛の休憩・仮眠時間と割増賃金等に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイアール総研サービス事件(東京高裁平成23年8月2日・労判1034号5頁)

【事案の概要】

Y社は、財団法人Aのビル管理等を目的等する会社であって、AからAの研究所における守衛業務を受託していた。

Xは、平成15年3月、Y社に嘱託社員として雇用され、同年4月には社員として総務部守衛室勤務を命じられた。

A研究所における守衛の業務は、守衛室において、受付、鍵の保管、火災報知器への対応、巡回、異常の有無の確認、門扉の施錠等のほか、地震や火災報知器の発報などに臨機に対応するものであった。

守衛の勤務は、一昼夜交代勤務で、休憩時間合計4時間、仮眠時間4時間であり、2人の守衛が交代で休憩・仮眠をとっていた。

Xは、平成17年1月18年12月までの間の休憩時間および仮眠時間が労働時間に当たると主張して、労働時間または労働基準法37条に基づき割増賃金等の支払を求めた。

【裁判所の判断】

休憩時間及び仮眠時間は、労基法上の労働時間に当たる。

【判例のポイント】

1 労働契約所定の賃金請求権は、不活動時間が労基法上の労働時間に当たることによって直ちに発生するものではなく、当該労働契約において休憩・仮眠時間に対していかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものと解されるが、労働契約は、労働者の労務提供と使用者の賃金支払とに基礎を置く有償双務契約であり、労働と賃金との対価関係は労働契約の本質的部分を構成しているというべきであるから、労働契約の合理的解釈としては、労基法上の労働時間に該当すれば、通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するが相当である。そして、時間外労働につき所定の賃金を支払う旨の一般的規定を有する就業規則等が定められている場合に、所定労働時間には含められていないが、労基法上の労働時間に当たる一定の時間について、明確な賃金支払規定がないことの一事をもって、当該労働契約において当該時間に対する賃金支払をしないものとされていると解することは相当でない(平成14年2月28日第1小法廷判決参照)。

2 ・・・したがって、Y社とXとの労働契約において、本件休憩・仮眠時間について残業手当、深夜手当を支払うことを定めていないとしても、本件休憩・仮眠時間について、労働基準法13条、37条に基づいて時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払うべき義務がある。

3 守衛らは、休憩時間に入ると、特段の事情がない限り、守衛室内の休憩室部分で、新聞や本を読んだり、テレビを見たりすることが可能とされていたが、実際には、受付に来ている来訪者が多数あって応対が長引き、所定の休憩時間帯に入っても直ちに休憩に入ることができない場合も度々あり、また、当務の守衛が来訪者に対応している間に電話があって休憩時間中の守衛が電話に対応することもあり、さらに、当務の守衛が貸出しを求められた鍵を見つけ出すことができずに休憩時間中の守衛が対応したり、近隣住人の来訪に休憩時間中の守衛が対応する必要が生ずることもあったことは前記認定のとおりである。
・・・以上のほか、前記認定の諸事実及び証拠関係を総合すると、休憩時間中の守衛については、緊急事態が発生した場合への対応はもとより、平常時においても、状況に応じて当務の守衛を補佐すべきことが予定されていたものというべきであって、労働からの解放が保障されていなかったものと認められる

4 また、仮眠時間中は、制服を脱いで、自由な服装を着用して守衛室のベッドで仮眠することも可能であったが、仮眠時間中に帰宅したりすることが許されていたものではなく、Xによると、Xは、用務があった時直ちに対応し得るようトレーナー等を着用して仮眠していたというのであり、仮眠時間中の守衛は、警報に対応することなど緊急の事態に応じた臨機の対応をすることが義務付けられていたものであり、現実に実作業に従事する必要が生ずることは、Xの場合も存在したことは前記認定のとおりであって、その必要が皆無に等しいものとして実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も認められない
したがって、本件休憩・仮眠時間は、Xは、労働からの解放が保障されていたとはいえず、具体的な状況に応じて役務の提供が義務付けられ、本件休憩・仮眠時間中の不活動時間もY社の指揮命令下に置かれていたと認められるから、本件休憩・仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。

会社とすれば納得できないかもしれませんが、現在の裁判所の判断はこのようになっています。

実際の訴訟では、「労働からの解放」が認められるか否かについて、労働者側は丁寧に主張立証する必要があります。

結局は事実認定の問題となるので、労働者側、会社側ともに気合いを入れて、主張立証しなければいけません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介23 アリストテレス マネジメント(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
アリストテレス マネジメント
アリストテレス マネジメント

ありがちな本ですが、とりあえず読んでみました。

むりくりアリストテレスと結びつけた感は否めません。

内容は、いたって普通です。

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

特にあてもなく、ただ考えているだけ。それでは何も動かない。実現したい目的を定め、そのために何をすべきかを考えろ。そうして初めて、物事は動き出す。」(6頁)

僕はどちらかというと、考えることよりも、決断すること、実行することの方が重要だと考えています。

いろいろと悩み、考え、結局、実行に移さない人をよく見ます。

たいていできない理由、失敗したときのリスクを過大に評価して、結局、やらない。

たぶん、もうそういうくせがついてしまっているのだと思います。

若手の経営者のみなさん、リスク、リスクって、呪文みたいに唱えていたって、何も始まりませんよ。

失敗したときのことばかり考えていないで、成功するためにはどうしたらよいか、もっと考えてみませんか。

僕も、みなさんに負けないように、日々、新しいことに挑戦しています。

新しいことに挑戦しているほうが生きている心地、しませんか?

競業避止義務15(K社ほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、在職中の守秘・競業避止義務違反等に関する裁判例を見てみましょう。

K社ほか事件(東京地裁平成23年6月15日・労判1034号29頁)

【事案の概要】

X社は、不動産賃貸借の管理受託およびこれらのコンサルタント等を業務とする会社であり、A社の100%子会社である。

A社の100%子会社のうち、X社はオーナー物件の賃貸・建物管理業務を行い、B社が区分所有建物の建物管理業務を行っていた。

Y1は、B社の従業員であった者であり、X社に出向して建物管理事業部リフレッシュ工事部に勤務していた。

Y1は、X社に出向していた間、業務上割り当てられた電子メールアドレスから、Y1が個人で使用する電子メールアドレスに添付送信する方法によって、X社の賃貸・建物管理業務に関する情報を、社外に持ち出した。

Y2社は、平成21年7月、不動産の売買・賃貸・管理およびその仲介業ならびに入居者募集に関する一切の業務等を行う会社として設立された会社であり、Y1は、Y2社の設立に伴い、その取締役に就任し、現在もY2社において取締役営業部長として勤務している。

X社は、賃貸・建物管理業務において、1物件1担当者制ではなく、分業制を採用しており、X社が取り扱う物件のオーナーの中にはX社が1物件1担当者制ではなく、分業制を採用していることに強い不満を持つ者がいた。

Y2社は、設立当初から、1物件1担当者制を採用することをY2社のコンセプトとして標榜し、E社物件のオーナーに対して、ダイレクトメールを送付し、オーナーに電話を直接かけるなどして、営業活動を行った。

X社は、Y1及びY2社に対し、在職中、X社の業務に関する情報を守秘義務に違反して持ち出したこと、競業避止義務に違反してY2社の営業を行ったことなどを理由として、労働契約または不法行為に基づき約5500万円の損害賠償等を請求した。

【裁判所の判断】

Y1及びY2に対し、連帯して約550万円の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 Y1は、平成21年8月まではX社の従業員としての立場を有していたというべきであるから、Y1が同年7月に設立されたY2社の取締役に就任してY2社の営業に関与したことが、従業員としての競業避止義務に違反することは明らかというべきである。

2 Y1は、従業員としての守秘義務に違反して取得した本件情報(6月分)を利用して営業活動を行ったものと一応推認できるものの、その具体的な利用態様については、Y2社がE社物件に対して営業活動をかける際、本件情報に含まれたE物件のオーナーの住所・連絡先等の情報を利用したという限度において認められる。

3 上記検討によれば、Y1は、従業員としての立場において、その守秘義務に違反して本件情報を漏洩した上、その競業避止義務に違反してY2社の営業活動に関与したものであり、さらに、不正に漏洩した本件情報を、E社物件に対する営業活動において、少なくともオーナーの住所・連絡先等を利用することにより、違法な営業活動(競業活動)を行ったというべきである。Y1による上記営業活動は、従業員であった者として負っている労働契約上の付随義務に違反するのみならず、不法行為としての違法性を有する行為であることは明らかである(そうである以上、Y2社も使用者責任を負うというべきである。)。

4 不法行為による損害の有無・額について検討するに、(1)Y2社は、E物件(合計76件)のうち49物件のオーナーに対して営業活動をかえて、その際に本件情報を利用したものと推認できること、(2)Y2社は、短期間の間に14件もの物件について契約切替に成功しているが、これは極めて高確率な営業活動であったといえること、(3)X社のE社物件のうち、Y2社が関与しない形で平成21年4月以降に契約解除に至った物件は3件であること、(4)上記(1)~(3)によれば、本件情報を用いて広範囲かつ効率的な営業活動を行ったからこそ、契約切替に至ったものであると評価できることを総合考慮すれば、Y1らの不法行為による損害の発生はこれを認めることができる

請求金額と裁判所の認容金額を比較するとわかるとおり、損害額については非常に謙抑的に判断されることが多いです。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介22 スティーブ・ジョブズのプレゼン術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
図解 スティーブ・ジョブスのプレゼン術
図解 スティーブ・ジョブスのプレゼン術

なんとなく買って読んでみました。

基本的には、プレゼンの方法論に関する本です。

ところどころ取り入れてみようと思う点がありました。 

セミナー等を多くやる機会のある方におすすめです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life.」(259頁)

「みなさんに与えられた時間には、限りがあります。他人の人生を生きて、時間を無駄にしないでください。」ということです。

ジョブズが言うから、説得力がある。また、ジョブズが亡くなった今だからこそ、説得力があります。

私は、昨年3月に独立し、弁護士として、自分がやりたいことを全てやっています。

これまで弁護士業界の常識になかったさまざまなサービスを提供することが私の目標です。

私が、弁護士としてばりばり仕事ができる時間は限られています。

年をとれば、経験は増えますが、体力や集中力は落ちていきます。

今だからできることを、誰に何と言われても、実行していこうと思います。

誰にも負けたくなりません。

限りある時間を精一杯生きようと思います。

本の紹介21 究極のドラッカー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
究極のドラッカー (角川oneテーマ21)
究極のドラッカー (角川oneテーマ21)

実は、今まで、ドラッカー本は、手付かずのままでした。

一度、読んでおきたいと思い、買ってみました。

結果、やはり、読んでおいてよかったです。

参考になる点がとても多いです。

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

ドラッカーは、組織はそれぞれの組織の目的と使命を果たすだけでは充分ではないと考えています。多くの人が組織で働く時代になり、組織で働く従業員を組織が幸せにできなかったら組織の存在意義はないと考えているのです。」(115頁)

僕も、一緒に働いているスタッフを幸せにできる経営者でありたいです。

近日中に、スタッフが1名増え、スタッフ4名で最高のリーガルサービスを提供していきます。

どこの法律事務所にも負けない事務所をつくりたいです。

どの弁護士よりも信頼される弁護士になりたいです。

これからも精一杯仕事をしていきます。

労災50(マルカキカイ事件)

おはようございます

昨日は、社労士勉強会の後、プチ忘年会をしました。

社労士の先生が1人新しく増えました! 興味のある社労士の先生方のご参加、歓迎いたします!

次回は、2月初旬です。テーマは、不当労働行為についてです。

今日は、午前中は、刑事裁判が入っています。

お昼は弁護士会で支部総会。

午後は、もう1つ、刑事裁判です。こちらは、恐喝未遂の否認事件の第2回証人尋問です。

準備は万全です!! 今回もどこまで証言の信用性を崩せるかがポイントです。

裁判終了後、事務所で新規相談が1件入っています。

夜は、弁護士M先生と税理士K山先生と忘年会です

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、執行役員部長の出張中の死亡と労災保険法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

マルカキカイ事件(東京地裁平成23年5月19日・労判1034号62頁)

【事案の概要】

Y社は、各種産業機械や建設機械の卸販売を業とする会社である。

Xは、昭和40年にY社に入社し、業務に従事していた者である。

平成10年12月、XはY社の理事に就任したが、この際、Y社はXが一般従業員を退職したとして取り扱い、退職金を支払っている。12年2月にXはY社の理事を退任して取締役に就任した。

13年12月、Y社において執行役員制度が導入されたことに伴い、Xは執行役員に就任した。

Xは、平成17年2月、商談のため福島県へ出張した。その際、橋出血(大脳と小脳を連絡する部位である「橋」での出血)により死亡した(当時62歳)。

Xの妻は、Xの死亡は業務(過重労働)に起因するものであるとして、労災保険法に基づく遺族補償給付等の請求をした。

これに対し、労基署長は、Xは労基法9条に該当する労働者とは認められないとして不支給とする決定をした。

【裁判所の判断】

船橋労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→Xの労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 労災保険法上の労働者とは、(1)使用者の指揮監督の下において労務を提供し、(2)使用者から労務に対する対償としての報酬が支払われる者をいうと解すべきであり、これに該当するかどうかは、実態に即して実質的に判断するのが相当である。

2 ・・・以上によれば、Xは、一般従業員であったときから、理事に就任し、次いで取締役に就任し、更に執行役員に就任したという一連の経過を通じて、その間に役職の異動はあったものの、船橋営業所を拠点として、一貫して、建設機械部門における一般従業員の管理職が行う営業・販売業務に従事してきたものであり、その業務実態に質的な変化はなかったものということができる

本件では、Xの労働者性を否定する事情がいくつもある中で、業務実態に質的な変化がなかったことを重視し、労働者性を肯定しています。

なお、原告の主張の中でも述べられている「執行役員」の位置付けですが、

執行役員については『業務執行に関しては相当の裁量権限を有するもの、法的には会社の機関ではなく、一種の重要な使用人(会社法362条4項3号)である。会社との契約が雇用契約か委任契約かの点については、通常は前者である』(江頭憲治郎「株式会社法(第3版)」380頁)、「会社法上は特に規定がない『執行役員』については『労働者』といえる場合が多いと考えられる。」(菅野和夫「労働法(第9版)」96頁)などと説明されており、執行役員を労働者と考えるのが、学者や実務家の一般的解釈であった。

ということです。

執行「役員」だから労基法上の「労働者」ではないという考えは、捨てましょう。

不当労働行為26(クボタ事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者の直雇用化前の団交申入れに関する裁判例を見てみましょう。

クボタ事件(東京地裁平成23年3月17日・労判1034号87頁)

【事案の概要】

Y社は、平成19年1月、Y社工場で就労している派遣労働者を、同年4月を目処に直接雇用することを決定した。

同年2月、上記派遣労働者が加入する労働組合であるX組合が、直雇用化実施前にY社に団体交渉を申し入れたところ、Y社は、1度は団体交渉に応じたが、その後のX組合からの団体交渉申入れには応じなかった。

X組合は、労働委員会に対し、救済申立てをし、不当労働行為であると判断された。

Y社は、命令を不服としてその取消を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却
→Y社の団交拒否は不当労働行為に該当する

【判例のポイント】

1 不当労働行為禁止規定(労組法7条)における「使用者」について、不当労働行為救済制度の目的が、労働者が団体交渉その他の団体行動のために労働組合を組織し運営することを擁護すること及び労働協約の締結を主目的とした団体交渉を助成することにあること(同法1条1項参照)や、団体労使関係が、労働契約関係又はそれに隣接ないし近接した関係をその基盤として労働者の労働関係上の諸利益についての交渉を中心として展開されることからすれば、ここでいう「使用者」は、労働契約関係ないしはそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的に該当するものの、雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する者もまた、これに該当するものと解すべきである。

2 本件団体交渉申入れは、交渉議題を(1)契約社員の就業規則、(2)有給休暇の引継ぎ、(3)平成19年4月以降の組合員の賃金、(4)契約社員の雇用期間の根拠と契約更新の具体的条件、(5)労働協約の締結、(6)その他であり、いずれも直雇用化後のX組合員の重要な労働条件に関するものである。

3 Y社は、現在に至るまで、本件団体交渉申入れの各時点において、自己が使用者に該当しないと主張し、かつ、本件団体交渉申入れに対し平成19年3月末日まで団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったと主張しているが、これらの主張がいずれも認められないことは前述のとおりである。
そして、直雇用下後のX組合とY社との間の団体交渉で、組合員の雇用期間等の問題について妥協点を見出せておらず、現時点でも、今後のY社とX組合との間の団体交渉に関し、Y社が労働組合法7条の使用者性や同条2号の「正当な理由」について適切に判断することにより適切な時期に団体交渉が実施されることを期するという観点から、本件の救済方法として、本件不当労働行為に関するY社の責任を明確にした上で、Y社に対し今後本件と同様の不当労働行為を繰り返さない旨の文書手交を命じる必要性(救済利益)があるというべきである

前回の住友ゴム工業事件と近い事案です。

労組法の趣旨を考慮した内容ですね。

十分納得できるものだと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為25(住友ゴム工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、団交応諾義務に関する最高裁判例を見てみましょう。

住友ゴム工業事件(最高裁平成23年11月10日・労判1034号98頁)

【事案の概要】

X組合には、Y社の元従業員A、B及び元従業員の妻Cが加入している。

X組合は、Y社に対し、(1)会社における石綿使用実態の明確化、(2)退職労働者全員に対する健康診断の実施、(3)定年後の老妻認定者に対する企業補償制度の創設を求めて団交の開催を申し入れた。

Y社は、X組合からの団交の申し入れに対し、X組合には、Y社と雇用関係にある労働者は含まれていないことを理由として申入れに応じなかった。

そのため、X組合は、労働委員会に対し不当労働行為の救済申立てを行ったが、労働委員会は救済申立てを却下する旨の決定をしたため、X組合はその取消しを求めて訴訟を提起した。

【裁判所の判断】

Y社の上告を棄却、上告受理申立も不受理
→Y社の団交応諾義務を肯定

【判例のポイント】

(一審判決)
1 労組法7条の目的は、労働者の団結権を侵害する一定の行為(不当労働行為)を排除、是正して正常な労使関係を回復することにある。

2 同条2号にいう「使用者が雇用する労働者」とは、基本的に、使用者との間に現に労働契約関係が存在する労働者をいうと解されるが、労働契約関係が存在した間に発生した事実を原因とする紛争(最も典型的なものは、退職労働者の退職金債権の有無・金額に関する紛争である。)に関する限り、当該紛争が顕在化した時点で当該労働者が既に退職していたとしても、未精算の労働契約関係が存在すると理解し、当該労働者も「使用者が雇用する労働者」であると解するのが相当である

3 本件では、A及びBは、労働契約関係が存在した間に業務により石綿を吸引したことにより健康被害が発生している可能性があると主張し、Y社に対し、石綿の使用実態を明らかにすることとともに、石綿による被害が生じている場合にはその補償を求めているのであり、両名の心配はもっともであるから、本件団交要求は、A及びBの在職中に発生した事実に起因する紛争に関してされたものであって、両名が加入しているX組合は「使用者が雇用する労働者」の代表者であると解される

4 ただし、死亡した元従業員については、同人がX組合に加入した事実はないから、その遺族であるCがX組合に加入しているとしても、Y社は、Cの代表者としてのX組合が団体交渉を求めても、これに応じる義務を負わない

(二審判決)
1 労組法7条2号にいう「使用者が雇用する労働者」とは、原則的には、現に当該使用者が雇用している労働者を前提としているが、雇用関係の前後にわたって生起する場合(雇い入れが反復される臨時的労働者の労働条件を巡る紛争等)においては、当該労働者を「使用者が雇用する労働者」と認めて、その加入する労組と使用者との団交を是認することが、むしろ労組法上の趣旨に沿う場合が多い

2 使用者がかつて存続した雇用関係から生じた労働条件を巡る紛争として、当該紛争を適正に処理することが可能であり、かつ、そのことが社会的にも期待される場合には、元従業員を「使用者が雇用する労働者」と認め、使用者に団体交渉応諾義務を負わせるのが相当であるといえる。

3 その要件としては、(1)当該紛争が雇用関係と密接に関連して発生したこと、(2)使用者において、当該紛争を処理することが可能かつ適当であること、(3)団体交渉の申入れが、雇用期間終了後、社会通念上合理的といえる期間内にされたことを挙げることができる。そして、上記合理的期間は、雇用期間中の労働条件を巡る通常の紛争の場合は、雇用期間終了後の近接した期間といえる場合が多いであろうが、紛争の形態は様々であり、結局は、個別事案に即して判断するほかはない

内容的にも非常に参考になるものですね。

高裁が示した判断基準(上記二審判決の判例のポイント3)は重要ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介20 面接ではウソをつけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、昨日に引き続きまして、面接通過の秘訣について書きたいと思います。

書類審査を通過された5名の方については、30~40分の面接を行います。

面接の際、どのような点を見ているかということを予め知っておくことは、非常に有利に働きますよね。

このブログを見ている方と見ていない方では、それだけで差がつきます。

実は、そういうところも見ているのです。

つまり、面接前にどれだけの下準備をしているかを見ているのです。

例えば、「私(栗田)について知っていることを教えて下さい。」という変な質問をしても、ちゃんと答えられる方もいます。

それは、事務所のホームページやブログを予めチェックしているからです。

いろいろな方法で熱意を見ているのです。

とはいえ、結局のところ、「この方と一緒に働きたい」と思えるかどうかです。

面接の際の話し方、雰囲気、表情等で「この方と一緒に働きたい」と思えば採用します。

なお、面接時に心得ておくべきことは、すべてこの本に載っています。

面接ではウソをつけ (星海社新書)
面接ではウソをつけ (星海社新書)

題名は胡散臭いですが、内容はしっかりしています。

実にいい本です。

まさにそのとおりです、ということが書かれています。

読んでもらえれば「面接ではうそを言ってください」という趣旨でないことはすぐにわかってもらえると思います。

面接官は、あなたの話の『内容』だけで合格・不合格を決めているわけではありません。もっと大事なのは、『話をするあなたが、実際にどういう人なのか?』ということなのです。」(79頁)

常に面接官の視点に立って、自分を見てください。」(150頁)

とにかく、質問の内容には敏感でいなければなりません。相手をイラッとさせることも多々あるのです。あなたが面接官なら、いきなり『休日は?』と質問してくる学生を採りたいと思うでしょうか?」(170頁)

ということです。

賃金39(技術翻訳事件)

おはようございます。

さて、今日は、賃金減額の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

技術翻訳事件(東京地裁平成23年5月17日・労判1033号42頁)

【事案の概要】

Y社は、翻訳、印刷及びその企画、制作等を行う会社である。

Xは、昭和56年、Y社に採用され、以来、Y社の制作部において、翻訳物の手配、編集等を行ってきたが、平成21年9月、Y社を退職した。

Y社は、会社の業績悪化を理由に、Y社の役職者全員を対象として、平成21年6月分以降の報酬ないし賃金を20%減額することを代表者会議等において提案し、実際にXの賃金は、同月分以降20%減額支給された。

本件賃金減額に際し、就業規則又は給与規程の改定が行われた事実はない。

【裁判所の判断】

本件賃金減額は無効

本件退職は、自己都合による退職である

【判例のポイント】

1 賃金の額が、雇用契約における最も重要な要素の一つであることは疑いがないところ、使用者に労働条件明示義務(労働基準法15条)及び労働契約の内容の理解促進の責務(労働契約法4条)があることを勘案すれば、いったん成立した労働契約について事後的に個別の合意によって賃金を減額しようとする場合においても、使用者は、労働者に対して、賃金減額の理由等を十分に説明し、対象となる労働者の理解を得るように努めた上、合意された内容をできる限り書面化しておくことが望ましいことは言うまでもない。加えて、就業規則に基づかない賃金の減額に対する労働者の承諾の意思表示は、賃金債権の放棄と同視すべきものであることに照らせば、労働基準法24条1項本文の定める賃金全額払の原則との関係においても慎重な判断が求められるというべきであり、本件のように、賃金減額について労働者の明示的な承諾がない場合において、黙示の承諾の事実を認定するには、書面等による明示的な承諾の事実がなくとも黙示の承諾があったと認め得るだけの積極的な事情として、使用者が労働者に対し書面等による明示的な承諾を求めなかったことについての合理的な理由の存在等が求められるものと解すべきである

2 Y社の退職金規程によると、退職金の支給率は、退職事由によりA、Bの2種類に区分され、会社都合の退職、在職中の死亡、業務上の負傷等による退職、定年退職の場合はA、それ以外の場合はBを適用するものとされているところ、そこでいう「会社の都合で退職したとき」とは、解雇、使用者の退職勧奨による退職等、使用者側の意向ないし発案に基づく退職を意味するものと解するのが相当である
本件退職は、確かにY社による本件雇用条件通告を契機とするものではあるが、最終的には、基本給の減額により退職金額が減額することを避けて、従来の基本給に基づいた比較的高額の退職金を得るという経済的目的に加え、「こういった環境にいたくない」、「一刻も早く辞めたい」というX自身の意思に基づく退職、すなわち自己都合による退職であったと認めるほかないというべきである。

3 Xは、Y社が本件賃金減額に引き続いて、本件雇用条件通告をしたことによりXは退職を余儀なくされたものであってこうしたY社の行為は、Xに対する不法行為に該当する旨を主張する。
そこで検討すると、本件賃金減額及び本件退職に関する経緯を総合すれば、Y社は、業績が近年下降線をたどる中、本件雇用条件通告により人件費を抑制することによって利益率を向上するとの意図を有していたものと見られるが、人件費の抑制を目指した労働条件の切下げ自体は、当事者の合意に基づくなど適法な方法で行われる限りは、許容されるというべきであるし、労働条件の切下げを労働者に提案する行為についても、その方法、態様が適法なものである限り、労働者に対する不法行為に該当しないことは言うまでもない

会社側としては、賃金を減額する際、上記判例のポイント1は参考になると思います。

要するに、そう簡単には賃金減額はできないよ、ということです。

ちゃんと準備をしなければ、裁判で争われた場合、たいてい負けることになりますので、顧問弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。