Category Archives: セクハラ・パワハラ

セクハラ・パワハラ18(学校法人関東学院事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ハラスメントの調査・認定申立てに対する調査委員会の不設置等の配慮義務違反性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人関東学院事件(東京高裁平成28年5月19日)

【事案の概要】

本件は、Y社が運営する大学の事務職員であるXが、所属する部署の上司からパワー・ハラスメント及びセクシャル・ハラスメントを受けたとして、同大学のハラスメント防止委員会に対して申立てを行ったところ、①同委員会がハラスメント防止規程に則って調査委員会を設置しないなど、適切な措置を執らず、②ハラスメント防止委員会の審議における同委員会の委員によるXを侮辱しかつ名誉を毀損する発言により、Xの人格権が侵害され、③Xと同じく上記上司からハラスメントを受けていた嘱託社員についてXが同委員会等に対応を求めたところ、Y社は同嘱託社員を当該上司の所属する部署に異動させ、Xをハラスメントの申立てをしたことに対する報復措置として異動が命じられるのではないかとの恐怖にさらしたと主張して、Y社に対し、Y社の安全配慮義務違反又は同委員会の委員の不法行為に係る使用者責任による損害賠償請求権に基づいて、慰謝料200万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、①Y社のハラスメント委員会は、Xの申立てがハラスメントの問題と人事の問題が混在し、申立期間の制限に抵触している可能性があると思われたことから、開始手続を取るか否かを含めて、当事者双方に事情聴取をしたところ、同申立てが適切であることを確認できなかったことから、調査を開始することは難しい旨決定し、問題の原因は当事者間のコミュニケーション不足にあると判断し、同委員会の委員長立会の上でXと面談する機会を設け、また、人事に関する事項について大学事務長に対し事情聴取を行うとともに、同人からXに対して人事に関する説明をしたことが認められるから、同委員会が規程に則り、適切に対処したものと評価することができ、Y社に安全配慮義務違反があるとは認められない、②Xが証拠として提出する同委員会の委員の発言を録音したものは、非公開である同委員会の審議内容を何者かが無断で録音したものであって、不法に収集された証拠であり、訴訟上の信義則に反し、証拠能力を認めることができず仮に同委員会の審議においてXが主張する同委員会の委員の発言があったとしても、その発言は多角的に検討されるべき議論の範囲内のものであるということができ、また、そもそも非公開の会議である審議中のものであるから、名誉毀損ないし侮辱といった不法行為上の故意又は過失は認められない、③嘱託社員の異動は、異動先の課に所属していた他の職員が専任職員の登用試験に合格し、慣例上、他部署へ異動させなければならないことから、同課の職員を補充する必要があったことによるものであり、Xが同嘱託社員の受けているハラスメントに対する対応を求めてから約4年が経過した後であったことからすると、同嘱託職員の異動が報復としての人事措置であるということはできない旨それぞれ判断し、Xの主張は理由がないとして、Xの請求を全部棄却する判決をした。Xは、原審の上記判断を不服として、控訴した。

【判例のポイント】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 民事訴訟法は、自由心証主義を採用し(247条)、一般的に証拠能力を制限する規定を設けていないことからすれば、違法収集証拠であっても、それだけで直ちに証拠能力が否定されることはないというべきである。しかしながら、いかなる違法収集証拠もその証拠能力を否定されることはないとすると、私人による違法行為を助長し、法秩序の維持を目的とする裁判制度の趣旨に悖る結果ともなりかねないのであり、民事訴訟における公正性の要請、当事者の信義誠実義務に照らすと、当該証拠の収集の方法及び態様、違法な証拠収集によって侵害される権利利益の要保護性、当該証拠の訴訟における証拠としての重要性等の諸般の事情を総合考慮し、当該証拠を採用することが訴訟上の信義則(民事訴訟法2条)に反するといえる場合には、例外として、当該違法収集証拠の証拠能力が否定されると解するのが相当である。

2 Xによれば、本件録音体は、平成21年7月7日に行われた委員会の審議内容が録音されたものであり、本件録音体であるCD-ROM2枚の入った差出人の記載の無い封筒が、平成25年1月31日、学内便により、Xに届けられたというものであるところ、そうであるとすると、本件録音体は、非公開の手続であり、録音をしない運用がされている委員会の審議の内容を無断で録音したものであり、・・・録音がされた委員会の審議は第一次申立てに係るものであることになる。しかして、第一次申立てについては、平成21年12月7日、委員長からXに対し、同年6月22日付けでXに通知された第一次決定をもって委員会の最終的な結論とする旨が伝えられているのであるから、Xが本件録音体を取得したのは、録音時から約3年半後で、第一次申立てが最終的に終局してからでも約3年2か月後を経過した時点であることになり、このことについても、また、差出人不明者から本件録音体が送付されたというのも、いかにも唐突で不自然である
以上の点に鑑みると、Xが本件録音体を取得した経緯に関するXの供述はにわかに採用することができない。
なお、Xが、本件録音体の無断録音が行われたという同年7月7日からわずか8日後の同月15日に行われた委員長らとXとの面談内容を無断録音していたこと、Xが本件録音体及び上記面談内容を無断で録音した録音体を所持し、それぞれの反訳書を証拠として提出していることに鑑みると、本件録音体の無断録音についてもXの関与が疑われるところである

3 次に、委員会は、ハラスメントの調査及びそれに基づくハラスメント認定という職務を担い、その際にハラスメントに関係する者のセンシティブな情報や事実関係を扱うものであるところ、このような職務を行う委員会の認定判断の客観性、信頼性を確保するには、審議において自由に発言し、討議できることが保障されている必要がある一方、その扱う事項や情報等の点において、ハラスメントの申立人及び被申立人並びに関係者のプライバシーや人格権の保護も重要課題の一つであり、そのためには各委員の守秘義務、審議の秘密は欠くことのできないものというべきである。委員会が、その審議を非公開で行い、録音しない運用とし、防止規程13条が各委員の守秘義務を定めているのも、かかる趣旨によるものと解される。そうすると、委員会における審議の秘密は、委員会制度の根幹に関わるものであり、秘匿されるべき必要性が特に高いものといわなければならない
他方、委員会の審議の結果は、ハラスメント申立てに対する回答としてその申立人に伝えられ、委員会は審議の結果に対して責任を持つものであり、審議中の具体的討議の内容はその過程にすぎないものであるから、結論に至る過程の議論にすぎない本件録音体の内容は、争点(1)のXの主張ア及びウに係る第一次申立ての事案の解明において、その証拠としての価値は乏しいものである。
・・・以上によれば、委員会の審議内容の秘密は、委員会制度の根幹に関わるものであって、特に保護の必要性の高いものであり、委員会の審議を無断録音することの違法性の程度は極めて高いものといえること、本件事案においては、本件録音体の証拠価値は乏しいものといえることに鑑みると、本件録音体の取得自体にXが関与している場合は言うまでもなく、また、関与していない場合であっても、Xが本件録音体を証拠として提出することは、訴訟法上の信義則に反し許されないというべきであり、証拠から排除するのが相当である。

ニュースとしても取り上げられた有名な事件です。

民事裁判で無断録音の内容が証拠として提出されることは少なくありませんが、事案によっては違法収集証拠として排除すべきとの判断がなされるわけです。

あまり多くはありませんが。

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セクハラ・パワハラ17(M社事件)

おはようございます。

今日は、パワハラを理由とする降格処分が有効とされた裁判例を見てみましょう。

M社事件(東京地裁平成27年8月7日・労経速2263号2頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に現在も勤務するXが、過去のパワーハラスメントを理由にY社から降格処分を受けたところ、同処分が違法・無効であるとして、同処分の無効確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの一連の言動は、一般仲介事業グループ担当役員補佐の地位に基づいて、部下である数多くの管理職、従業員に対して、長期間にわたり継続的に行ったパワハラである。Xは、成果の挙がらない従業員らに対して、適切な教育的指導を施すのではなく、単にその結果をもって従業員らの能力等を否定し、それどころか、退職を強要しこれを執拗に迫ったものであって、極めて悪質である

2 部下である従業員の立場にしてみれば、真面目に頑張っていても営業成績が残せないことはあり得ることであるが、さりとて、それをやむを得ないとか、それでも良しとは通常は考えないはずである。成績を挙げられないことに悩み、苦しんでいるはずである。にもかかわらず、数字が挙げられないことをただ非難するのは無益であるどころか、いたずらに部下に精神的苦痛を与える有害な行為である。部下の悩みを汲み取って適切な気付きを与え、業務改善につなげるのが上司としての本来の役目ではないかと考える。
X自身も営業職として苦労した経験はあるだろうし、それを基に、伸び悩む部下に気付きを与え指導すべきものである。簡単に部下のやる気の問題に責任転嫁できるような話ではない。証拠調べ後の和解の席で、Y社から「退職勧奨」を受けたことは当裁判所に顕著な事実であるが、これをもってようやく部下らの精神的苦痛を身をもって知ったというのなら、あまりに遅きに失する。

3 Y社は、パワハラについての指導啓発を継続して行い、ハラスメントのない職場作りがY社の経営上の指針であることも明確にしていたところ、Xは幹部としての地位、職責を忘れ、かえって、相反する言動を取り続けたものであるから、降格処分を受けることはいわば当然のことであり、本件処分は相当である。

裁判官が「上司はこうあるべき」ということについて熱く語っています。

上司のみなさん、是非、参考にしてください。

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セクハラ・パワハラ16(T大学事件)

おはようございます。

今日は、大学の准教授、教授に対するパワハラを理由とする懲戒処分が無効とされた裁判例を見てみましょう。

T大学事件(東京地裁平成27年9月25日・労経速2260号13頁)

【事案の概要】

本件は、学校法人であるY社との間で雇用契約を締結し、Y社の設置する大学で准教授又は教授を務めていたXらが、同僚の教員や事務職員に対し、パワハラ行為若しくはこれを助長する行為、又は、これらを隠ぺいする目的で口止め行為をしたこと等を理由に、Y社から停職を内容とする懲戒処分を受けたことから、同処分が無効であるとして、Y社に対し、①同処分の無効確認、②停職とされていた期間の給与の支払い、③停職とされたことを理由とする賞与の減額分の支払、④解嘱されたY大学の入学試験問題出題委員会の委員の地位にあることの確認、⑤④の委員報酬の支払、⑥不当な懲戒処分を受けたことにより精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用)の支払、⑦以上のうち、金銭支払請求については、遅延損害金の支払を、それぞれ求めている事案である。

【裁判所の判断】

懲戒処分は無効
→①、②、③認容

【判例のポイント】

1 X1に対する約2か月の停職についてみると、既に判断したとおり、X1懲戒理由については、G准教授が外面的にはXらとの良好な関係を保っており、その深刻な被害感情に思いが及ばなかったとしてもやむを得ないところがあり、Gの健康状態への影響も客観的には明らかではないことからすると、Gの心情等をX1に理解・自覚させた上で改善を待つなどの機会を与えないまま、いきなり停職という重い処分を科すことの相当性には疑問を持たざるを得ない。なるほど、Y社懲戒規程によれば、懲戒処分には停職よりも重い諭旨・懲戒解雇もあり、X1に対する停職期間も定め得る期間の上限と対比すれば重いものではないという見方も可能である。しかし、停職期間中の給与支払の停止、これに伴う賞与の減額分を合わせると、X1の被る損失は189万3028円にも達するものであり、こうした事情も踏まえるならば、約2か月の停職はX1懲戒理由と均衡を欠いた不相当なものといわざるを得ない

2 Xらは、本件各処分が不法行為を構成するとして慰謝料等の支払を求めている。しかし、既に判断したところによれば、Xらはそれぞれについて懲戒理由とされた事実のうちの一部が認められ、停職よりも軽い懲戒処分であれば適法かつ有効にすることができたと考えられることからすれば、本件各処分が無効であることを前提として、X1については処分の無効確認、Xらについて停職期間中の給与等の支払が認められることに加えて、Xらに精神的苦痛が発生したものとして慰謝料等の請求を認めるのは相当でない。本件各処分が量定上重すぎることを理由に無効とされたものであることを勘案すると、本件各処分が学内報に掲載され公表されている点も上記結論を左右しないというべきである。

懲戒処分に理由があったとしても、処分が重すぎるということで無効とされています。

処分の相当性の問題は、本当に難しいですね。

裁判になった場合にいかなる判決となるのか、事前に予測することがとても難しいです。

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セクハラ・パワハラ15(神奈川SR経営労務センターほか事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、前訴和解条項の不履行と名誉毀損行為に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

神奈川SR経営労務センターほか事件(東京高裁平成27年8月26日・労判1122号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、職場のパワーハラスメント等による損害の賠償を求めてY社及びB他1名を被告として提起した訴訟において、平成24年11月26日に裁判上の和解が成立したにもかかわらず、その後、Y社、その代表者会長であるB及び副会長であるその余の被控訴人らが、前訴和解の合意事項を遵守しないばかりか、平成25年6月4日に開催されたY社の平成25年度通常総会等において、共同してXに対する名誉毀損行為を行ったため、著しい精神的苦痛を受けたとして、被控訴人らに対し、債務不履行又は共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、連帯して慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円の損害賠償+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

原審がXの請求をいずれも棄却したので、Xが各控訴した。

【裁判所の判断】

被控訴人らは、Xに対し、連帯して330万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Cの本件総会におけるXに関する発言は、「いきなり声を張り上げて、一方的に同じ内容を繰り返し、約1時間近くしゃべりまくって全然こちらの意見を聞こうとしないというふうな状況があった」、「一層激しくなってきて、一方的にまくし立てるというようなこともございます。その間、その甲野さんの会話に職員のHさんが一緒に加わって、二人でワーワー騒ぐというような事態が起こっております。実際に職場の秩序がだんだん失われていくような状況だった」といったものであったことが認められる。
これらの発言は、本件総会に出席した会員らに、Xが問題行動をする職員であるとの印象を持たせ、その社会的評価を著しく低下させる行為である。そして、その発言内容は、総会における議案の説明又は質問に対する答弁として必要かつ相当な範囲を超えているから、違法にXの名誉を毀損していると認められる

2 ・・・そうであるにもかかわらず、これら被控訴人らは、自らが当事者又はその役員として関係する労働事件である前件訴訟において成立した前訴和解について、本来なら、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場に立ち、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないにもかかわらず、専門分野であるはずの労務管理上の対応を誤り、裁判上合意して成立した前訴和解に基づく再発防止義務及び周知義務の履行を怠るというY社の不相当な皆無執行を助長したか、少なくとも放置したというべきである。
したがって、その責任は重大であって、いずれも共同して義務違反の責任を負うところ、上記義務違反は、Y社に対する忠実義務違反の責任を伴うほか、Xに対する関係でも、違法であって、故意又は少なくとも過失が認められることから、共同不法行為の責任を負うものというべきである。

3 CのXに対する名誉毀損に係る発言は、本件総会において、会長及び副会長で構成される執行部の立場を代表してされたものであり、これら被控訴人らは、本件総会に先だって、正副会長会議なる会合を持って答弁内容等を打ち合わせたことがうかがわれるから、理事であるCの名誉毀損行為について、Y社は、権利能力なき社団として不法行為責任を負い、Bを始めとする他の被控訴人は、故意又は少なくとも過失が認められることから、Cと共同して、いずれもXに対する名誉毀損の共同不法行為責任を負う。

非常に厳しい判決ですね。

前訴和解での約束の不履行の程度や当事者の職業などからこのような結果になったのでしょう。

上記判例のポイント2は、弁護士・社労士としては十分理解しておかなければなりません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

セクハラ・パワハラ14(公立八鹿病院組合ほか事件)

おはようございます。

今日は、上司らのパワハラ等によりうつ病発症・自殺と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

公立八鹿病院組合ほか事件(広島高裁松江支部平成27年3月18日・労判1118号25頁)

【事案の概要】

本件の原審は、Xの遺族が、Y社らに対し、病院に医師として勤務していたXが、同病院における過重労働や上司らのパワーハラスメントにより、遅くとも平成19年12月上旬には、うつ病を発症し、自殺に至ったとして、債務不履行又は不法行為に基づき、合計2億1220万3317円+遅延損害金を求めた事案である。

原判決は、Y社に対し、約8000万円+遅延損害金の支払を命じた。

これに対し、双方が各敗訴部分を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約1億円+遅延損害金の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 本件病院において、Xが従事していた業務は、それ自体、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となる程度の長時間労働を強いられていた上、質的にも医師免許取得から3年目(研修医の2年間を除くと専門医として1年目)で、整形外科医としては大学病院で6か月の勤務経験しかなく、市井の総合病院における診療に携わって1、2か月目というXの経歴を前提とした場合、相当過重なものであったばかりか、AやBによるパワハラを継続的に受けていたことが加わり、これらが重層的かつ相乗的に作用して一層過酷な状況に陥ったものと評価される。

2 Xは、本件病院赴任後、本件病院の関係者に悩みを打ち明けたり、前任者のように派遣元の大学病院に対し転属を願い出るといった対応をしていないのであるが、使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関する労働環境等に十分注意を払うべき安全配慮義務を負っており、労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、体調の異変等について労働者本人からの積極的な申告は期待し難いものであって、このことを踏まえた上で、必要に応じた業務軽減などの労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきであるから(最高裁平成26年3月24日判決)、前任者がそうであったからといって、Xが本件疾病を発症する以前に、責任感から自ら職務を放棄したり、転属を願い出る等しなかったことを捉えて、Xの落ち度ということはできない。

3 公共団体や企業等に雇用される労働者の性格が多様なものであり、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の加重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものというべきであるから、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、被害者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を心因的要因としてしんしゃくすることはできないというべきである(最高裁平成12年3月24日判決)。

使用者は、上記判例のポイント2を十分理解しておかなければなりません。

従業員から申し出がない場合であっても、様子がおかしかったり、欠勤が多い場合には、業務軽減等の配慮をする必要があります。

言うは易しですが、訴訟になれば、このような判断がなされますので注意しましょう。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

セクハラ・パワハラ13(アンシス・ジャパン事件)

おはようございます。

今日は、心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に違反したとして損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

アンシス・ジャパン事件(東京地裁平成27年3月27日・労経速2251号12頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社がXとの労働契約上の義務として負う安全配慮義務又は労働者が労働しやすい職場環境を整える義務を怠った旨を主張し、Y社に対し、民法715条の不法行為責任又は同法415条の債務不履行責任に基づく損害賠償(慰謝料)等として合計700万円を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、50万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 CがXをパワハラで訴えるという出来事が生じたのは、主として、インストールサポートをXとCとの二人体制とした上でXをチームリーダーとする体制が維持されてきたことに起因するものと解されるのであり、人事部においてパワハラの事実はないと判断されたことも踏まえれば、この出来事の発生に関してXに特段の帰責性はないというべきである。
本件のように二人体制で業務を担当する他方の同僚からパワハラで訴えられるという出来事(トラブル)は、同僚との間での対立が非常に大きく、深刻であると解される点で、客観的にみてもXに相当強い心理的負荷を与えたと認めるのが相当であり、X自身、Xをパワハラで訴えたCと一緒に仕事をするのは精神的にも非常に苦痛であり不可能である旨を繰り返しD部長らに訴えているのであるから、Y社は、上記のように強い心理的負荷を与えるようなトラブルの再発を防止し、Xの心理的負荷等が過度に蓄積することがないように適切な対応をとるべきであり、具体的には、X又はCを他部署へ配転してXとCとを業務上完全に分離するか、又は少なくともXとCとの業務上の関わりを極力少なくし、Xに業務の負担が偏ることのない体制をとる必要があったというべきである。

2 ・・・そうすると、D部長が、Xに対し、その心理的負荷等が過度に蓄積することがないように注意して指揮監督権限を行使していたと認めることはできないから、使用者であるY社としても、Y社がXに対して負う注意義務(業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう注意する義務。)を果たしていないと認めざるを得ないというべきである。

3 Y社は、Xに対し、インストールサポートに伴い疲労や心理的負荷等を過度に蓄積してXの心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負っているところ、同義務に違反したものと認められるが、このY社の注意義務違反によりXが心身の健康を損なったものとまでは認められない。しかし、Xは、Cからのパワハラの訴えによって相当強い心理的負荷を受けたと認められるものであり、その後も、Cとの協働は精神的にも無理である旨をD部長らに繰り返し訴えていたものの、この訴えに沿った対応がとられないまま、最終的には、D部長から「この会社を辞めるか、この状況の中でやるべき仕事をやるか。」と言われ、Y社を退職するに至ったとの経緯からすれば、Xが心身の健康を損なったと認められるまでに至っていないからといって直ちにXの損害を否定することはできず、上記の事実経過に照らせば、Y社の注意義務違反によりXが精神的苦痛を被ったことは明らかというべきであるから、かかる精神的損害については50万円をもって慰謝するのが相当である。

上記判例のポイント1は、是非参考にしてください。

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セクハラ・パワハラ12(Y事件)

おはようございます。

今日は、性的発言等のセクハラ等を理由とする懲戒処分等が有効とされた最高裁判例を見てみましょう。

Y事件(最高裁平成27年2月26日・労経速2243号3頁)

【事案の概要】

本件は、男性従業員であるXらが、それぞれ複数の女性従業員に対して性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」)等をしたことを懲戒事由としてY社から出勤停止の懲戒処分を受けるとともに、これらを受けたことを理由に下位の等級に降格されたことから、Y社に対し、上記各出勤停止処分は懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効であり、上記各降格もまた無効であるなどと主張して、上記各出勤停止処分の無効確認や上記各降格前の等級を有する地位にあることの確認等を求めている事案である。

【裁判所の判断】

懲戒処分は有効

【判例のポイント】

1 X1は、営業部サービスチームの責任者の立場にありながら、従業員Aが精算室において1人で勤務している際に、同人に対し、自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器、性欲等について殊更に具体的な話をするなど、極めて露骨で卑わいな発言等を繰り返すなどしたものであり、また、X2は、上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていたにもかかわらず、従業員Aの年齢や従業員Aらがいまだ結婚をしていないことなどを殊更に取り上げて著しく侮辱的ないし下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し、派遣社員である従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどとやゆする発言をするなどしたものである。このように、同一部署内において勤務していた従業員Aらに対し、Xらが職場において1年余にわたり繰り返した上記の発言等の内容は、いずれも女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感ないし屈辱感等を与えるもので、職場における女性従業員に対する言動として極めて不適切なものであって、その執務環境を著しく害するものであったというべきであり、当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものといえる

2 しかも、Y社においては、職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付け、セクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させるとともに、セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなど、セクハラの防止のために種々の研修を受けていただけでなく、Y社の管理職として上記のようなY社の方針や取組を十分に理解し、セクハラの防止のために部下職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず、派遣労働者等の立場にある女性従業員らに対し、職場内において1年余にわたり上記のような多数回のセクハラ行為等を繰り返したものであって、その職責や立場に照らしても著しく不適切なものといわなければならない

3 そして、従業員Aは、Xらのこのような本件各行為が一因となって、本件水族館での勤務を辞めることを余儀なくされているのであり、管理職であるXらが女性従業員らに対して反復継続的に行った上記のような極めて不適切なセクハラ行為等がY社の企業秩序や職場規律に及ぼした有害な影響は看過し難いものというべきである。

4 原審は、Xらが従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず、本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたなどとして、これらをXらに有利な事情としてしんしゃくするが、職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや、本件各行為の内容等に照らせば、仮に上記のような事情があったとしても、そのことをもってXらに有利にしんしゃくすることは相当ではないというべきである

非常に重要な判例です。

セクハラ事案では、原告から上記判例のポイント4のような主張がなされますが、この最高裁判例を前提とするかぎり、採用される可能性は低いと思われます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

セクハラ・パワハラ11(暁産業ほか事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、上司の発言が不法行為に当たるとして損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

暁産業ほか事件(福井地裁平成26年11月28日・労判1110号34頁)

【事案の概要】

本件は、Xが自殺したのは、C及びDのパワハラ、Y社による加重な心理的負担を強いる業務体制等によるものであるとして、XがY社らに対し、C及びDに対しては不法行為責任、Y社に対して主位的には不法行為責任、予備的には債務不履行責任に基づき、損害金1億1121万8429円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社及びCは、連帯して7261万2557円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 ・・・「会社辞めたほうが皆のためになるんじゃないか、辞めてもどうせ再就職はできないだろ、自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば、店でも出せば、どうせ働きたくないんだろう」「いつまでも甘甘、学生気分はさっさと捨てろ」「死んでしまえばいい」「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」
これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Xの人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為に当たると認められる

2 CのXに対する不法行為は、外形上は、Xの上司としての業務上の指導としてなされたものであるから、事業の執行についてなされた不法行為である。本件において、Y社がCに対する監督について相当の注意をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから、Y社はXに対し民法715条1項の責任を負うこととなる。

3 Xは、Cから注意を受けた内容のメモを作成するように命じられ、誠実にミスをなくそうと努力していた中で、Cから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。Xは、高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、Cの前記言動から受ける心理的負荷の内容や程度に照らせば、Cの前記言動はXに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。そして、Xには、業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないし、既往症、生活史、アルコール依存症などいずれにおいても問題はないのであって、性格的な偏りもなく、むしろ、上記手帳の記載を見れば、きまじめな好青年であるといえる。
そうすると、・・・本件自殺とCの不法行為との間の相当因果関係が認められる。

叱責の域を超えて、人格を否定したり、威迫したと評価される場合には不法行為と認定されます。

上司も人間ですから、感情的になってしまうこともあります。だからこそ、このような裁判例を参考にして、冷静な対応が求められます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

セクハラ・パワハラ10(N社事件)

おはようございます。

今日は、労働条件の説明義務違反、パワハラを理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

N社事件(東京地裁平成26年8月13日・労経速2237号24頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社に対し、労働契約締結時において労働内容について説明する義務を怠り、また、Y社担当者からパワーハラスメントを受け、損害を被ったとして、民法709条及び715条に基づいて損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労契法4条1項は、使用者に対し、労働条件及び労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにすべきことを定めているものの、同条項は使用者の努力義務規定あるいは訓示規定であって具体的な権利義務を定めたものとは言い難く、同条項から直ちに使用者の説明義務が認められるものではない

2 労基法15条1項は、使用者に対し、労働契約を締結する際、労働条件を明示することを義務付けており、労働条件には、労働者が従事すべき業務も含まれる。しかしながら、同条項違反の効果としては、即時解除権の発生と帰郷旅費請求権の発生とされており(労基法15条2項、3項)、労基法15条1項をもって、直ちに使用者に対して、労働条件に関して、違反した場合に損害賠償義務が生じるような私法上の具体的な説明義務を課したものとは解しがたい。また、実際問題としても、求人募集の時点と労働契約の締結時点においては、時間的な間隔があるため、求人募集の時点において示される労働条件と労働契約の締結時点において示される労働条件が食い違うことは往々にして生じうるところでもある。したがって、労基法15条1項は、労働契約を締結する際における労働条件を明示する義務を使用者に課したものといえるが、具体的な説明義務を使用者に課したものとまで解することはできず、同条項に反したからといって直ちに説明義務違反が生じると解することはできない

3 もっとも、求人募集に応募する労働者は、募集条件として示された内容が労働契約締結時に大きく変更されることはないであろうと期待して応募しているのであるから、使用者としては、かかる労働者の期待に著しく反してはならないという信義誠実義務を負うものと解することはできる

4 パワハラについては、一応の定義付けがなされ、行為の類型化が図られているものの、極めて抽象的な概念であり、これが不法行為を構成するためには、質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。具体的にはパワハラを行ったとされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様等を総合考慮の上、企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合に限り、被害者の人格権を侵害するものとして民法709条の所定の不法行為を構成するものと解するのが相当である。
本件についてみると、そもそも、Xがパワハラを受けたと主張する時期や前後の経緯などは明確でなく、そもそも、Xの主張するところをもって、民法上の不法行為が成立しえるものといえるのか疑問であるし、その点をおくとしても、CやEは、Xに対して、Xが主張するような言動をとったことはないと否定しており、Xの供述以外に、Xの主張を裏付ける客観的な証拠もない

上記判例のポイント1、2は驚くような内容ではありませんが、労使ともに理解しておくべき内容です。

パワハラについては、立証不十分のため認定してもらえませんでした。

十分に準備をしてから戦いに挑まないと、多くの言動は立証できないことをいいことに事実を否定されてしまいます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

セクハラ・パワハラ9(サントリーホールディングスほか事件)

おはようございます。

今日は、パワハラでうつ病発症・休職等を理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

サントリーホールディングスほか事件(東京地裁平成26年7月31日・労判1107号55頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Xの上司であったAからパワーハラスメントを受けたことにより鬱病の診断を受けて休職を余儀なくされるなどし、また、Y社の○○室長であったBがAの上記パワーハラスメント行為に対して適切な対応を取らなかったことによりXの精神的苦痛を拡大させたとして、A及びBには不法行為(民法709条、719条1項)が成立すると主張するとともに、Y社にはXに対する良好な作業環境を形成等すべき職場環境保持義務違反を理由とした債務不履行及びAの使用者であること等を理由とした不法行為(民法715条1項、719条1項)が成立する等と主張して、Y社らに対し、休業損害等合計2424万6488円の損害賠償金及び遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社及びAは、連帯して297万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Aの言動は、AがXを注意、指導する中で行われたものであったと認められるものであるが、一方、Aの上記言動について、AがXに対する嫌がらせ等の意図を有していたものとは認めることはできない
しかしながら、「新入社員以下だ。もう任せられない。」というような発言はXに対して屈辱を与え心理的負担を過度に加える行為であり、「何で分からない。おまえは馬鹿」というような言動はXの名誉感情をいたずらに害する行為であるといえることからすると、これらのAの言動は、Xに対する注意又は指導のための言動として許容される限度を超え、相当性を欠くものであったと評価せざるを得ないというべきであるから、Xに対する不法行為を構成するものと認められる。

2 Aの上記言動は、本件診断書を見ることにより、Aの部下であるXが鬱病に罹患したことを認識したにもかかわらず、Xの休職の申出を阻害する結果を生じさせるものであって、Xの上司の立場にある者として、部下であるXの心身に対する配慮を欠く言動として不法行為を構成するものといわざるを得ない。

3 Bは、X及びA双方に事情を聞くとともに、複数の関係者に対して当時の状況を確認するなどして適切な調査を行ったものといえる。そして、Y社においては通報・相談内容及び調査過程で得られた個人情報やプライバシー情報を正当な事由なく開示してはならないとされていることからすると、Bにおいて調査結果や判断過程等の開示を文書でしなかったことには合理性があったものといえ、しかも、Bは、Xに対し、Aへの調査内容等を示しながら、口頭でAの行為がパワーハラスメントに当たらないとの判断を示すなどしていたものであって、Bに違法があったということはできず、原告の上記主張は理由がない。

4 AのXに対する行為は、Y社の事業の執行について行われたものであって、不法行為を構成する以上、Aの使用者であるY社には使用者責任が成立する。
なお、本件全証拠を検討しても、Y社に職場環境保持義務違反及びY社自身のXに対する不法行為を認めるに足りる証拠はなく、Y社の債務不履行責任及び共同不法行為責任に係るXの主張はいずれも理由がない

損害としては、887万3642円を認定し、その後、素因減額(4割)、損益相殺をした後、270万円+弁護士費用(1割)という結論になりました。

どの会社でも起こり得る話です。

特に上司のみなさんは、成績不良な部下を持った場合には、感情的な対応をしないようにくれぐれも注意してください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。