セクハラ・パワハラ17(M社事件)

おはようございます。

今日は、パワハラを理由とする降格処分が有効とされた裁判例を見てみましょう。

M社事件(東京地裁平成27年8月7日・労経速2263号2頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に現在も勤務するXが、過去のパワーハラスメントを理由にY社から降格処分を受けたところ、同処分が違法・無効であるとして、同処分の無効確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの一連の言動は、一般仲介事業グループ担当役員補佐の地位に基づいて、部下である数多くの管理職、従業員に対して、長期間にわたり継続的に行ったパワハラである。Xは、成果の挙がらない従業員らに対して、適切な教育的指導を施すのではなく、単にその結果をもって従業員らの能力等を否定し、それどころか、退職を強要しこれを執拗に迫ったものであって、極めて悪質である

2 部下である従業員の立場にしてみれば、真面目に頑張っていても営業成績が残せないことはあり得ることであるが、さりとて、それをやむを得ないとか、それでも良しとは通常は考えないはずである。成績を挙げられないことに悩み、苦しんでいるはずである。にもかかわらず、数字が挙げられないことをただ非難するのは無益であるどころか、いたずらに部下に精神的苦痛を与える有害な行為である。部下の悩みを汲み取って適切な気付きを与え、業務改善につなげるのが上司としての本来の役目ではないかと考える。
X自身も営業職として苦労した経験はあるだろうし、それを基に、伸び悩む部下に気付きを与え指導すべきものである。簡単に部下のやる気の問題に責任転嫁できるような話ではない。証拠調べ後の和解の席で、Y社から「退職勧奨」を受けたことは当裁判所に顕著な事実であるが、これをもってようやく部下らの精神的苦痛を身をもって知ったというのなら、あまりに遅きに失する。

3 Y社は、パワハラについての指導啓発を継続して行い、ハラスメントのない職場作りがY社の経営上の指針であることも明確にしていたところ、Xは幹部としての地位、職責を忘れ、かえって、相反する言動を取り続けたものであるから、降格処分を受けることはいわば当然のことであり、本件処分は相当である。

裁判官が「上司はこうあるべき」ということについて熱く語っています。

上司のみなさん、是非、参考にしてください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。