Daily Archives: 2016年2月19日

有期労働契約61(警備会社A事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、3か月ごと14回更新してきた準社員に対する雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

警備会社A事件(東京地裁立川支部平成27年3月26日・労判1123号144頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間の有期雇用契約が期間の定めのないものに転化したか、そうでないとしても、実質的に期間の定めのない雇用契約と同視できるから、Y社がした雇用契約を更新しない旨の通知は解雇権の濫用に当たり許されないとして、Y社に対し、’(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、雇用契約の更新を拒絶されたとする平成25年1月以降毎月11万7270円の賃金の支払いを求めるとともに、(2)Y社の不当解雇により精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく慰謝料160万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件雇用契約に係る雇用契約書には、契約の更新に関する記載はなく、3か月の雇用期間が終了する前に、新たに雇用期間を3か月とする雇用契約書を作成しており、当然更新を重ねたことはないこと、訴外会社とXとの間の雇用契約は、訴外会社が警備業務を受託しなくなったことにより、雇止めを受けて終了したのであり、本件雇用契約は、訴外会社とXとの間の雇用契約とは、法的には全く別のものと評価されること、本件雇用契約の更新回数は、14回にわたっているものの、本件雇用契約の期間は3か月であるから、通算して3年9か月であること、Xは、上記のような経緯でY社に採用された際に、既に65歳になっており、Xと同様に、Y社に採用されることになった者の中には、Xよりも高齢の者も複数いたが、いずれも、既に退職しており、Y社から雇止めを受けた者もいること、Xは、本件雇止めの当時、本件施設の派遣隊員の中では最高齢の68歳で、次回の更新をすれば69歳に達するという者であったこと、本件施設は、複雑な構造をしており、かつ、車両認証システムや専門の管制室が備えられており、これらの点に適切に対応し得る判断力や俊敏さが求められていることが認められこれらの事情に照らせば、本件雇用契約は、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在しているとも、期間満了後にY社が雇用を継続すべきものと期待することに合理性があるものともいえないから、いわゆる解雇権濫用法理を類推適用する余地はない

2 これに対して、Xは、更新に合理的期待があったとして、①Y社が、採用面接や新任研修時に、元気であればいつまででも働いてもらってよい、F社K店では75歳を過ぎても元気で頑張っている人がいるなどの発言をしたこと、②Y社が、本件雇用契約の次回の更新後の日に予定されている警備員現任教育受講案内をXに送付したこと、③Dが、平成25年1月のシフト表の変更を命じなかったり、Xが同月1日及び2日に出勤したにもかかわらず、強い指導をしなかったこと等と主張する。
しかし、①については、Y社代表者は、そのような発言をしたことを否定しており、また、Y社が当時から、ISO9001の認証を受けており、その登録継続や競合他社との競争力の強化のために、正社員の構成比率を高め、若返りを図ることを進めていたと推認されるところ、Y社代表者が、Y社の企業方針に沿わない趣旨の言動をするとは考えにくい。また、②については、Dが甲7の送付は、単にY社本部における事務手続き上の間違いに過ぎない旨の供述をしていることに照らせば、上記の事実を過度に評価すべきではない。さらに、③については、Dは、既に、平成24年9月に、Xに対し、本件雇止めについて告げていること、平成25年1月分のシフト表にXが記載されていることに気付かなかったこと、平成25年1月1日、2日に、Xに対し、出勤の必要はない旨を重ねて述べていることは、上記認定のとおりである。したがって、Xの上記主張は、いずれも採用することができない。

有期雇用の場合は、雇用期間満了ごとに、自動更新にせずに、しっかりと新たに雇用契約書を作成することが大切です。

また、雇止めに期待を抱かせる言動は安易にしないことが大切です。

加えて、過去の裁判例を研究し、裁判所が重要視している点を頭にしっかり入れておくことが求められます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。