Category Archives: 労働時間

労働時間70(ルーチェ事件)

おはようございます。

今日は、美容師の練習会参加の労働時間該当性が否定された裁判例を見てみましょう。

ルーチェ事件(東京地裁令和2年9月17日・労経速2435号21頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して就労していたXが、①平成27年8月16日から平成29年9月3日までの間(以下「本件請求期間」という。)に時間外労働及び深夜労働をした旨主張して、Y社に対し、労働契約に基づく上記の時間外労働等に対する割増賃金の支払及び労基法114条に基づく付加金の支払を求め、②Y社の代表取締役であるY2からいわゆるパワーハラスメントを受けて人格権を侵害された旨主張して、Y社らに対し、不法行為(Y社に対しては会社法350条又は債務不履行)による損害賠償金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、44万0450円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金30万9027円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、3万3000円+遅延損害金を支払え。

Y社らは、Xに対し、連帯して、5万5000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社がアシスタントである従業員に対してスタイリストに昇格しないことによる不利益を課していたなどの事情は証拠上見当たらないのであって、仮にスタイリストに昇格するための経験を積む機会が練習会のほかにないとしても、このことから直ちにアシスタントである従業員が練習会への参加を余儀なくされていたということはできない。加えて、証拠及び弁論の全趣旨によれば、練習会に参加する従業員は、練習のためのカットモデルとなる者を各自で調達し、カットモデルを調達できないこともあったこと、従業員は練習会でカラー剤等の費用相当額をカットモデルとなった者から徴収してY社に支払っていたが、カットモデルとなった者から個人的な報酬を受け取ることができたことが認められる。
これらのことに照らすと、練習会は従業員の自主的な自己研さんの場という側面が強いものであったというべきである。
このような練習会の性格に鑑みると、Y2が練習会における練習の開始や終了に関する指示等をしていたとしても、店舗の施設管理上の指示等であった可能性を否定することができないし、XがY2から施術について注意等を受けた際に練習不足であるとの指摘を受けたことを契機として練習会に参加したとしても、これをもって練習会への参加を余儀なくされたとはいえない。
これに対し、Xは、練習会の途中で帰宅することは許されておらず、原則として従業員全員が練習会に参加しており、体調不良等を理由として練習会に参加しない場合にはY2の許可が必要であった、スタイリストに昇格した後にY2から練習が足りないと言われて練習会への参加を命じられた、練習会でのアシスタントの指導をする必要があった旨供述等するが、これを裏付ける的確な証拠はなく、Y2がXの上記供述等の内容を否定する供述等をしており、Y2の供述等の内容に特段不自然、不合理な点は見当たらないことに照らすと、Xの供述は直ちに採用することができない。
以上に述べたところによれば、Xが練習会に参加し、自らの練習や後輩の指導をしたことがあったとしても、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価することはできないのであって、Xが練習会に参加した時間が労基法上の労働時間に該当するとはいえない。

2 Y社の休憩時間に関する主張は、要するに、顧客の本件各店舗への来店状況(予約状況)及びカット等の施術の補助業務に要する時間に基づいてXの作業時間を推定し、当該作業時間を除く時間の大部分の時間が休憩時間であるというものである。
この点、証拠及び弁論の全趣旨によれば、青山店における客の多くはY2による施術の予約客であり、Xを含む各従業員の主たる業務は、Y2による施術の補助業務(カットの場合はシャンプーや髪を乾かすブロー)のほか、タオル等の洗濯や清掃等の業務であったが、1人の客に対する施術の補助業務は同時に複数の人数でする必要はなかったこと、Xが担当していたパソコンに関する業務は頻繁にあったわけではなかったことが認められる。そして、青山店では、Xのほかに3名の従業員がいたことに照らすと、少なくとも来客がない時間にはXが実際に業務をしていない時間が相当程度あったことが推認される。また、下北沢店におけるXの業務量が青山店におけるそれよりも多かったと認めるに足りる証拠はない。
しかしながら、本件各店舗では完全予約制が採用されているところ、当日予約も受け付けており、来客の有無にかかわらず営業終了まで継続して開店し、かつ少なくとも客からの予約の電話等があり得る状態であったことが推認されることに照らすと、営業時間中にXが業務をしていない時間があったとしても、直ちに労働からの解放が保障されていたとみることはできない
このことに関し、Y2は、来客がない時間は従業員がそれぞれ自由に過ごすことを許しており従業員は自由に休憩を取得していたなどの旨供述等するが、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各店舗では、従業員間の取り決めで、それぞれ交代で1人ずつ順番に20分の休憩を取得し、1回目の休憩を「1番」、2回目の休憩を「2番」と呼称していたこと、Y2は上記取り決めに関与していないことが認められるのであり、来客がない時間に自由に休憩を取得することが許されているというのに、従業員が自発的に上記のような取り決めをして休憩を取得していたというのは不自然である。また、Y2の上記供述等を裏付ける的確な証拠はない。
したがって、Y2の上記供述等は直ちに採用することができず、Xの勤務日のうち来客がない時間帯の大部分において労働からの解放が保障されていたと認めることはできない
ところで、前記のとおり、従業員間の取り決めで、それぞれ交代で1人ずつ順番に20分の休憩を取得して、1回目の休憩を「1番」、2回目の休憩を「2番」と呼称していたことに関し、Xは、上記取り決めのとおり休憩を取得することができたわけではなく、予約が多いときには最初の20分の休憩を取ることもできなかったことがある旨供述等する。
この点、前記のとおり、青山店の従業員の主たる業務はY2による施術の補助業務であり、少なくとも来客がない時間は実際に業務をしていない時間が相当程度あったことが推認されるところ、本件サンプル期間中の勤務日のうち来客がない時間が合計1時間以上あったと考えられる日が半数を超えていることに照らすと、Xの上記供述等が休憩の取得が最長でも1日1回の20分のみであったとする趣旨であればそのまま採用することはできない。
一方で、本件サンプル期間中には来客のない時間がなかった日も存在し、かつY社では労働時間の管理は一切されておらず、取得すべき休憩時間も定めていなかったことに照らすと、Xが毎勤務日に必ず2回以上の休憩を取得していたと認めることもできない。
これらのことに照らすと、本件サンプル期間中の1勤務日当たりの休憩時間は平均して30分であったと認めるのが相当である。

この事案においても、休憩時間と手待時間に関する論点が登場します。

予約管理を従業員に行わせ、かつ、休憩時間中も対応させる場合には、本件同様の問題は生じます。

予約管理はすべてネットで行うようにすればこの問題は解決します。

労働時間に関する対応は、事前に顧問弁護士に相談したほうが間違いがないです。

労働時間69(北九州市事件)

おはようございます。

今日は、バス運転手の待機時間のうち1割は労働時間に当たるとした原判決を取り消し、請求がいずれも棄却された裁判例を見てみましょう。

北九州市事件(福岡高裁令和2年9月17日・労経速2435号3頁)

【事案の概要】

Y市は、交通局(交通局)を設置し、北九州市市営バス(北九州市バス)事業を経営しているところ交通局は、バスが一つの系統の路線の終点に到着した後、次の系統の路線の始点から出発するまでの時間の一部に対して1時間当たり140円の「待機加算」を支給していた。
本件は、交通局に雇用され、北九州市バスの定期路線バス(乗合バス)運転手として稼働していたXらが、上記待機加算が支給される時間(以下「本件待機時間」という。)は労基法32条の労働時間(労基法上の労働時間)であり、同時間に係るXらの賃金及び時間外割増賃金と支払済みの待機加算との差額が未払であると主張して、Y市に対し、未払賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条本文に基づき、上記未払賃金と同額の付加金+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件各控訴をいずれも棄却する。

原判決主文第1項中控訴人兼附帯被控訴人らに関する部分を取り消す。

上記の部分につき,控訴人兼附帯被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xら18名は,被控訴人が労基法上の休憩時間と待機加算の支給される本件待機時間とを明確に区別して取り扱ってきたことなどから、交通局の乗務員は、待機時間が労基法上の労働時間ではなく休憩時間として取り扱われていたことを認識しておらず、大半の乗務員は待機時間に労働から解放されているとの認識を有していなかったと主張する。
しかしながら、待機加算は、もともと交通局が、当時交通局で唯一の労働組合であったd労働組合との間で協定書(平成9年協定書)を作成し、労基法上の労働時間として扱っていた調整時間のうち転回時間を除く時間を労基法上の労働時間ではないことを前提として中休手当相当額を支給することとされたことから支給されるようになったものであり、その金額が1時間当たり140円と低額であることに照らすならば、その支払は本件待機時間が休憩時間であることを前提としてされていたものであるというべきである。

2 そして、Y市は、平成24年2月20日付けの本件通知により、待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱うことを乗務員に周知していたものであり、交通局の労働組合も、平成22年、a駅及びe郵便局の各転回場所における待機時間について、乗客が乗車している場合には実働時間とするよう要求し、平成25年4月及び平成26年4月にも、待機時間中の乗車等の勤務の申告を徹底させ、実働時間にすることを求めていたことに照らすならば、本件においてXら18名が支払を求めている未払賃金の期間において、交通局の乗務員は、Y市が待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱っており、待機時間には労働から解放されているとの認識を有していたものと認めるのが相当である。

3 Xら18名は、乗務員が、待機時間中、5分以上にわたってバスを離れることはなく、仮に離れていたとしても、それはトイレに行ったためであると主張する。
しかしながら、ドライブレコーダーの記録によれば、複数の乗務員が、休憩施設の有無にかかわらず、転回場所において5分以上バスから離れることがあったことを認めることができ、その全てがトイレに行く目的であったということはできないから、バスから離れることが許容されていたというべきである。ドライブレコーダーの記録の撮影範囲が限られていることなどXら18名の主張する事情は、いずれも同記録の信用性を失わせるものではなく、原審証人Bの証言及び前件訴訟におけるCの証言は、いずれも転回場所から5分以上バスから離れることがあることを否定するものではない。

休憩時間なのか手待時間なのかの議論は、今もなおさまざまな業種における残業代請求事件で論点となります。

日頃から労務管理に力を入れている会社はともかく、多く会社ではなあなあになってしまっているため、手待時間と判断されるリスクが高いといえます。

顧問弁護士に相談し、早急に対応することをおすすめします。

労働時間68(前原鎔断事件)

おはようございます。

今日は、勉強会への出席につき、労働基準法上の労働時間に該当するとされた裁判例を見てみましょう。

前原鎔断事件(大阪地裁令和2年3月3日・労経速2432号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結して稼働していたXが、①Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であると主張して、地位確認及び未払賃金(月給及び賞与)+遅延損害金の支払を、②Y社の従業員らからパワハラ行為を受けたと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償+遅延損害金の支払を、③時間外労働を行ったが、割増賃金が支払われていないと主張して、未払割増賃金+遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認は棄却

損害賠償請求は棄却

割増賃金2万0523円+遅延損害金を認容

【判例のポイント】

1 Xは、「勉強会」への出席も余儀なくされた旨主張し、Y社は、Xが「勉強会」に任意に参加していたことは明らかであり、労働時間には当たらない旨主張する。
確かに、「勉強会」は、本件組合の提案を受けて開催されるようになったものではあるものの、Xに対する指導内容等を振り返ることを内容とするものであるから、Xが参加せずに開催されることはそもそも予定されていない。また、Xは、D取締役が入社した平成20年の時点において、既に、Y社の従業員らから、なかなか仕事の技術が身に付かないと認識されていたものであり、Xが「勉強会」に参加せず、その後も技術が身に付かないままであれば、Xの賃金や賞与の査定如何、ひいては従業員としての地位如何にかかわるのは明らかである。加えて、Y社の就業規則には、「会社は、従業員に対し、業務上必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う。」、従業員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合は、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受講しなければならない。」と規定されていることをも併せ鑑みれば、Xが「勉強会」に参加する時間は、Y社の指揮命令下に置かれている時間、すなわち労働基準法上の労働時間に該当すると解するのが相当である。なお、「勉強会」の日時についてXの予定を考慮して決められたり、Xの都合により日程を変更したりしたこともあることによって、上記判断は左右されない。

2 勉強会の所要時間について、B主任は30分程度と証言し、Xは45分程度と供述する。証拠によれば、平成29年11月1日実施の「勉強会」は15分間であったと認められることを踏まえると、B主任が証言する30分の限度で認めるのが相当である。

勉強会や研修の労働時間性については昔から争点となってきましたが、多くの場合、参加・出席が任意であると評価できるかが鍵となります。

労働時間に関する問題は、事前に顧問弁護士に相談をして対応することを強くおすすめします。

労働時間67(イースタンエアポートモータース事件)

おはようございます。

今日は、変形労働時間性要件不充足と時間外割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

イースタンエアポートモータース事件(東京地裁令和2年6月25日・労判ジャーナル105号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXらが、Y社に対し、時間外労働(深夜労働も含む。)の対価としての割増賃金及び付加金の支払を求めた事案であり、(1)X1は、平成27年10月から平成31年1月までの割増賃金として総合計917万7998円+遅延損害金の支払、(2)X2は平成28年12月から平成31年1月までの割増賃金として総合計312万1647円+遅延損害金の支払、(3)X3は、平成29年4月から平成31年1月までの割増賃金として総合計223万8678円+遅延損害金の支払、(4)原告らそれぞれにつき、付加金として前記(1)(2)(3)の各賃金と同額の金員(ただし,原告X1については本件訴訟提起日から遡って2年前である平成28年4月12日以降に支払日が到来するもの)+遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、
X1に対し、917万7998円+遅延損害金、付加金223万8678円+遅延損害金
X2に対し、312万1647円+遅延損害金、付加金312万1647円+遅延損害金
X3に対し、223万8678円+遅延損害金、付加金223万8678円+遅延損害金
を支払え。

【判例のポイント】

1 変形労働時間制の定めは「就業規則その他これに準ずるもの」により定められることが必要とされるが(労基法32条の2)、Y社の○○事業所のように10人以上の労働者を常用する事業所については、就業規則によるべきである。そして、就業規則に変形労働時間制について定めることにより、使用者が労働者に対し1週間に40時間又は1日8時間を超えて労働させることができるようにするには、就業規則において、労働時間が1週間当たり40時間を超える週又は1日8時間を超える日を特定することが必要とされ(労基法32条の2)、月ごとに勤務割表を作成する必要がある場合には、労働者に対し、労働契約に基づく労働日、労働時間数及び時間帯を予測可能なものとするべく、就業規則において、少なくとも、各直勤務の始業終業時刻及び休憩時間、各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続及び周知の方法を記載する必要があると解される。
本件規則は、「配車職員の労働時間は毎月16日を起算日とする1箇月単位の変形労働時間制による。」旨記載するのみで、変形労働時間制をとる場合の各直勤務の始業終業時刻及び休憩時間、各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続及び周知の方法の記載を全く欠くものであったから労基法32条の2第1項の要件を満たすものとはいえない。また、本件規則は、○○事業所の従業員に対し周知させる措置がとられておらず、この点でも労基法32条の2第1項の要件を満たさない。

2 継続勤務は暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱うべきであるから、2暦日にわたる一勤務については、始業時刻の属する日の労働として当該日の1日の労働であると解される。そうすると、本件各契約における本件シフト表の定める勤務時間帯のうち、日勤その1及び夜勤その1は所定労働時間を1日11時間、その他1は所定労働時間を1日17.5時間とするものであったところ、前記のとおり所定労働時間の合意のうち1日につき8時間を超える部分の合意は、労基法32条2項に違反するため、労基法13条により1日8時間に短縮され、1日8時間を超えて労働したときは時間外労働となる。
そして、Y社がこれまでにXらに支払った賃金は、前記のとおり直律効により短縮された所定労働時間である1日8時間に対する対価としての賃金となり、無効になった所定労働時間3時間ないし9.5時間の労働については全く賃金が支払われていないことになるから、1日8時間を超える労働である3時間ないし9.5時間に対する割増賃金としては、労基法37条1項の「通常の労働時間の賃金」の1.25倍の賃金を支払う必要がある

3 X1に対し、1箇月の所定労働時間が170時間程度となっていることを認識させる事実であったといえるが、同時間数がX1の労働契約上の1箇月の所定労働時間の上限であるとか、これを超えないことが労働契約上の取り決めとなっているといった認識を持たせる事実であるとは認め難いから、これらの事実をもって、1箇月の所定労働時間を平均して1週間当たり40時間とする旨の黙示の合意が成立していたと認めることはできない。
また、仮にY社主張の内容の黙示の合意が成立したとしても、労基法32条の2第1項の要件を満たさないため、1日8時間を超えて所定労働時間を定めた部分は同法32条2項に反し無効となり(同法13条、その結果は、前記で判断したのと同様の結論となると解される。

日頃の労務管理がいかに大切がよくわかる事案です。

日常的に顧問弁護士から助言をもらえる体制を整えておけば、このような結果は回避できたものと思われます。

労働時間66(淀川勤労者厚生協会事件)

おはようございます。

今日は、就業時間前後の労働時間該当性に関する裁判例を見てみましょう。

淀川勤労者厚生協会事件(大阪地裁令和2年5月29日・労判ジャーナル102号30頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、雇用主であるY社に対し、①雇用契約に基づき、別紙1「集計表(原告請求分)」記載のとおりの未払時間外割増賃金等170万5546円(元本141万9006円及び確定遅延損害金28万6540円の合計額)+遅延損害金の支払、②労基法114条所定の付加金88万0960円+遅延損害金の支払、③Y社がX申請に係る年次有給休暇及び生理休暇の取得妨害等をしており、これが不法行為を構成するなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)10万円+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、130万2422円+遅延損害金を支払え。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、所定始業時刻よりも早い、本件出退勤システム上の記録時刻に依拠して、その始業時刻に関する主張を構成しており、先輩看護師から所定始業時刻前に出勤して患者情報を収集するよう指示された、看護師の「ほぼ全員」がそのようにしていたなどとこれに沿う供述をする。
そして、B師長がした平成28年3月時点の発言の中に、同年2月にした「日勤」時におけるPNS導入の下、午前8時45分以降に2名で情報収集から始めるよう指示しており、「早くから出勤する職員は減ってきている」というものが含まれているところ、これはPNS導入前、所定始業時刻前に出勤して患者情報の収集等をしていた看護師がX以外にも一定数いたことを示唆するものであり、B師長自身、所定始業時刻前に出勤していた看護師は「3分の1もいなかった」などと供述している。このような証拠関係に照らせば、Xが「ほぼ全員」と表現するまでの多数であったとは認められないにせよ、平成28年1月以前(PNS導入前)の「日勤」時には、一定数の看護師が所定始業時刻前に出勤して患者情報の収集等の業務に従事していたものと認定でき、ひいては、Y社において、このような一定数の看護師がしていた行動について、担当業務の遂行方法の一つとしてこれを容認していたとみられ、この点にY社による黙示の業務命令があったと認定でき、この認定を覆すに足りる証拠はない。
さらに、Xがそのような黙示の業務命令の下で労務提供をしていたか否かについてみるに、Xは、患者情報の収集をしていた旨供述するが、所定始業時刻前に一定数の看護師が出勤して、現に患者情報の収集等をしていたと認められるところ、Xが所定始業時刻前に出勤していた限りにおいて、そのような業務を行う者の一人であったことを否定する事情は見当たらない当時、Xは入職後間もない時期にあり、先輩看護師らが業務をする中で、あえて何の業務にも携わっていなかったというのもかえって不自然である。)。
そうすると、Xは、この期間における「日勤」時について、前記のとおりに認められる黙示の業務命令に基づき、本件病院建物への到着後間もなく、労務提供を開始していたと認定できる

2 Xは、本件出退勤システム上の記録時刻を前提として、平成27年4月10日から平成28年2月23日までについては、着替え等に要するものとして、さらに10分間早い時刻をもって始業時刻とする旨その主張を構成しているところ、Xは、この期間に限り、本件病院建物に到着後、着替え等をしてから本件出退勤システムへの時刻登録をしていたことが認められる。
そして、本件病院では、看護師の制服が採用されるとともに、Y社によってその更衣場所が定められるなどしており、清潔を保持すべき看護師という業務の性質等をも踏まえる限り、本件病院での看護師の制服への着替えは、その業務に不可欠な準備行為として、Y社から黙示的に義務付けられていると評価すべきである。このような本件における具体的事情に照らせば、この着替え等に要する時間についても、Y社の指揮命令下に置かれていたものとして、これを労働時間の一部と捉えることが相当である。
もっとも、着替え等に要する時間について,Xは10分間であるものと主張するが、これを裏付ける客観的証拠はなく、2分間くらいで、長くとも5分間もあれば十分であるといった、Xの供述に相反する趣旨の他の看護師の供述があるところ、2分間というのは短きに過ぎるものであるにせよ、5分間という内容は不自然不合理ということはできず、Xの主張は5分間の限度で認定できるにとどまる。

証人尋問での一言を拾われて、判決理由に使われている例です。

事案としては、黙示の指揮命令を認定しやすい類型だと思います。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労働時間65(前原鎔断事件)

おはようございます。

今日は、勉強会の労働基準法上の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

前原鎔断事件(大阪地裁令和2年3月3日・労判ジャーナル101号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していたXが、Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であると主張して、地位確認及び未払賃金等の支払を、Y社の従業員らからパワハラ行為を受けたと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償等の支払を、時間外労働を行ったが、割増賃金が支払われていないと主張して、未払割増賃金等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求棄却

損害賠償請求棄却

割増賃金支払請求一部認容

【判例のポイント】

1 確かに、「勉強会」は、本件組合の提案を受けて開催されるようになったものではあるものの、Xに対する指導内容等を振り返ることを内容とするものであるから、Xが参加せずに開催されることはそもそも予定されておらず、また、Xは、D取締役が入社した平成20年の時点において、既に、Y社の従業員らから、なかなか仕事の技術が身に付かないと認識されていたものであり、Xが「勉強会」に参加せず、その後も技術が身に付かないままであれば、Xの賃金や賞与の査定如何にかかわるのは明らかであり、加えて、Y社の就業規則には、「会社は、従業員に対し、業務上必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う」、「従業員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合は、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受講しなければならない」と規定されていることをも併せ鑑みれば、Xが「勉強会」に参加する時間は、Y社の指揮命令下に置かれている時間、すなわち労働基準法上の労働時間に該当すると解するのが相当である。

勉強会、研修会の労働時間性については昔から争点となってきましたが、いまだに訴訟上問題となります。

参加が任意なのか、(事実上も含め)強制されていたのかが基本的な判断基準となります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労働時間64(いわきオール事件)

おはようございます。

今日は、長時間労働と労働時間該当性に関する裁判例を見てみましょう。

いわきオール事件(福島地裁いわき支部令和2年3月26日・労判ジャーナル101号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結してY社の事業所や福島第一原発の廃炉工事現場内に設置された自動車整備工場で就労していた亡Xを相続した亡Xの妻が、Y社に対し、XとY社との労働契約に基づき、平成27年12月21日から平成29年10月26日までの期間における時間外労働に係る未払の割増賃金等の支払を求め、労働基準法114条に基づき、付加金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社事業所から1Fまでの移動時間について、1Fで作業するに当たっては、健康状態のチェックや1Fの入域に必要なIDカードを持ち出すために、Y社事業所に出勤してタイムカードを打刻し、血圧測定等を実施してから、宇徳広野町事務所を経て又はY社事業所から宇徳広野町事務所を経ず直接1Fに移動することが要求され、かつ、それが常態化していたと認められ、単なる通勤時間ではないY社の指揮監督下に置かれていた時間と評価できるから、労働時間に該当し、1F入域後、宇徳1F事務所までの移動時間及び宇徳1F事務所から整備工場への移動時間については、Y社の指揮命令下に置かれていた労働時間と評価できる上、宇徳1F事務所到着後、宇徳に対する健康状態の報告、ミーティング及び作業準備に要する時間は、1Fでの作業遂行に伴って行われた行為として、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価できるが、他方、ミーティング後の待機時間については、食事をするなど自由に利用することができていたと認められることから、待機時間20分についてはY社の指揮命令下にない休憩時間と評価すべきである。

2 就業規則には1年単位の変形労働時間制に関する規定が定められ、Y社とY社従業員の過半数代表者との間で、平成27年から平成29年までの各3月21日を起算日とする1年単位の変形労働時間制に関する労使協定が締結されていたこと、その上、Y社とXとの労働契約においてもその旨明示されていることが認められ、そして、上記就業規則及び労使協定に基づいて作成した休日カレンダーとXの勤務状況を比較すると、月に1日程度休日とされている土曜日に勤務していることを除き、おおむねその休日カレンダーのとおり、就労していたことが認められる上、変形労働時間制に関する協定届における常時使用する労働者数と該当労働者数は同数であり、Xをその適用対象から除外したとは認められないことからすれば、上記の変形労働時間制はXにも適用されていたと認められる。

珍しく変形労働時間制が認められています。

多くの事案では有効要件を満たしておらず、なかなか採用されません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労働時間63(有限会社スイス事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、在職中の割増賃金算定のベースとして、GPS移動記録に基づく労働時間が認められた裁判例を見てみましょう。

有限会社スイス事件(東京地裁令和元年10月23日・労経速2416号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していたXが、①Y社により平成29年11月13日付けで普通解雇されたことについて、本件解雇が無効である旨を主張して、Y社に対し、本件雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認や、本件解雇の後に生ずるバックペイとしての月額給与(下記②の合意による増額後の基本給)+遅延損害金の支払を求めるとともに、②XとY社はXの基本給を平成28年12月分から増額することを合意していた旨を主張して、Y社に対し、当該合意後の本件雇用契約に基づき、同月分から平成29年10月分までの当該合意による増額後の基本給額と実際に支給された基本給額との差額である52万1000円+遅延損害金の支払を求めるほか、③Y社は労働基準法所定の割増賃金を支払っていないなどと主張して、Y社に対し、労働基準法に従った平成28年10月から平成29年11月までの割増賃金+遅延損害金や、当該割増賃金に係る労働基準法第114条の付加金+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 解雇無効

2 Y社は、Xに対し、175万2535円+遅延損害金を支払え。

3 Y社は、Xに対し、付加金165万9435円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件タイムライン記録は、平成30年2月5日から同月16日にかけて、Xのスマートフォンの画面をスクリーンショットしたものであるところ、Y社が指摘するとおり、事後に編集可能なものであり、それ自体が完全に客観的な証拠であるとはいえない上、実際の記録についても、自宅から徒歩2分程の距離にある最寄り駅である○○駅までの間の移動記録がなかったり、○○駅からb店又はa店までの間の移動記録が省略されているものが多く、記録されていても、平成29年3月29日に、表参道駅で20分滞在した後、同駅からa店まで6分で移動した旨が記録されたりするなど、実際の移動状況の全てが余すことなくそのまま正確に記録されているとまではいえないものである。

2 もっとも、本件タイムライン記録に記載されたXのb店及びa店における滞在時間は、b店の営業時間及びa店における勤務時間や、B氏の証言及び原告の供述に沿うものである。・・・その他、本件タイムライン記録には、休日の移動記録や、b店及びa店以外の場所への移動記録のほか、退勤後に寄り道をした記録もあり、これらの事情によれば、Xが、本件解雇後に、Y社に対し割増賃金を請求するため、編集機能を利用して本件タイムライン記録を一から作出したとは考え難いものである。
他方で、Y社が本件タイムライン記録の不自然性として指摘する諸事情は、Xが主張するとおり、GPSの感度の問題やタイムライン機能の設定の問題等として一応の説明をすることが可能であるところ、本件においては、本来、労働者の労働時間を適切に把握して然るべきY社において、Xの主張する本件タイムライン記録に基づく各日の労働時間が実際のXの労働時間と異なることについて、個別具体的に指摘し、その裏付けとなる客観的な証拠を提出しているわけでもない

3 上記に検討したところによれば、本件タイムライン記録には信用性が認められるというべきであり、Xがb店及びa店に滞在していた時間中に、休憩時間を除き、Y社の業務以外の事項を行っていたと認めるに足りる客観的な証拠はないから、Xは、本件タイムライン記録に記録されたb店及びa店の滞在時間(休憩時間を除く。)に、Y社の業務に従事していたものと認めるのが相当である。

残業代請求の訴訟においては、本件のように実際の労働時間を何に基づいて認定するかが争われることがあります。

その際、上記判例のポイント2のように、会社側が積極的に労働時間の立証ができない場合には、裁判所としては、労働者側の証拠を拠り所にせざるを得なくなります。

日頃の労務管理をしっかり行うこと、これが王道です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労働時間62(白井グループ事件)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、管理監督者該当性と変形労働時間制の適用に関する裁判例を見てみましょう。

白井グループ事件(東京地裁令和元年12月4日・労判ジャーナル99号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の亡Xの相続人らが、亡XがY社において時間外労働に従事し死亡したため、亡Xの相続人らが亡Xの雇用契約に基づき賃金支払請求権及び労働基準法114条に基づく付加金請求権を相続したとして、法定相続分に応じて、未払割増賃金元金約1700万円等並びに付加金約1171万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社は、亡Xの管理監督者性が否定される場合には、一年単位の変形労働時間制の適用があると主張するが、Y社が労働者代表との協定により定めた適用対象者は、管理職を除く一般職であって、亡Xが含まれていたとはいえないことに加え、労基法上の管理監督者と会社の職制上の管理職は別であるから、労使協定において、労基法上の管理監督者性を否定されたY社の管理職を、変形労働時間制の適用対象者に含む合意をしたものとは認められず、また、明確な合意が認められないにもかかわらず、変形労働時間制の適用対象者に管理監督者性を否定された管理職を含むものと解することは、労働者に不利益な解釈を後付けで行うこととなって、変形労働時間制の適用に当たり労使協定等の締結を要件とした労基法の趣旨を没却するものであり、不相当であるから、亡Xには1年単位の変形労働時間制は適用されない。

2 亡Xは、管理監督者に当たらないため、時間外割増賃金が発生しているが、Y社は、法人格は異なるものの、亡従業員にA運輸の運転手の労務管理等の重要な職務を行わせていたこと、Y社を含むY系列各社全体において、167名中5番目の年収で処遇していたことなどを考慮すると、Y社が亡Xを管理監督者と扱っていたことに理由がないわけではなく、割増賃金の不払が悪質とはいえないから、Y社に付加金の支払を命ずることが相当とはいえない

上記判例のポイント1は興味深い内容です。

言うまでもなく、昨今、管理職の管理監督者性が肯定される例はほとんどありません。

そのような状況においても、多くの会社で従前通り、これを肯定した運用がなされています。

賃金の消滅時効が延長されたことのほかに今回の裁判例をような不利益についても十分考慮しなければなりません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

労働時間61(しんわコンビ事件)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、週6日・計48時間の労働契約の適法性と割増賃金の算定方法等に関する裁判例を見てみましょう。

しんわコンビ事件(横浜地裁令和元年6月27日・労判1216号38頁)

【事案の概要】

本件は、建築工事業等を業とする特例有限会社であるY社において就労していたXら5名が、Y社に対し、①未払の時間外割増賃金等+遅延損害金、②付加金+遅延損害金の各支払を求め、また、X1が、Y社に対し、③Y社がX1の健康保険料等を賃金から過剰に控除していたと主張して、主位的に未払賃金請求として、予備的に不法行為に基づく損害賠償請求として、過剰控除した金員の合計2万9378円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xらに対し、以下のとおりの金員を支払え。
1 X1:①460万8024円+遅延損害金、②付加金368万6154円+遅延損害金
2 X2:①106万6691円+遅延損害金、②付加金86万6538円+遅延損害金
3 X3:①208万4018円及び+遅延損害金、②付加金178万5775円+遅延損害金
4 X4:①212万8304円+遅延損害金、②付加金182万7817円+遅延損害金
5 X5:①138万1207円+遅延損害金、②付加金118万6189円+遅延損害金

【判例のポイント】

1 Y社における従業員の出退勤管理は、出勤簿に基づいてなされており、Xらは、原則として毎日これに出退勤時刻を記載し、毎月1回、X1を通じてY社に提出していたこと、Xらは日々の業務内容を、当該業務に従事した時間とともに、原則として毎日、日報に記載していたこと、この日報についても、X1を通じてY社に提出し、総務担当者やC、Bの決裁を得ていたことからすれば、出勤簿及び日報には、Xらの出退勤時刻が概ね正確に記載されているものと推認するのが相当である。
・・・Xらは、出勤簿について30分単位で出退勤時刻を記載していたのであるから、同じ時刻の記載が多く並んでいるからといって、何ら不自然ではなく,出勤簿等の記載内容の信用性を減殺するとはいえない。・・・Xら労働者の労働時間を管理する義務を負っているのは、使用者であるY社自身であることからすれば、およそ失当といわざるを得ない。その点は措くとしても、これらの出勤簿及び日報は、いずれもY社に提出され、毎日ではないにせよ、Y社側が決裁をした上で管理していたものであるところ、Y社からXらに対し、その記載内容に疑義があるなどの指摘をした等の事実も認められないことからすれば、これら出勤簿等の信用性がないとは到底いえない

2 XらとY社との間で締結された本件労働契約は、いずれも1日8時間、週6日勤務に対してその給与を月給制で支払うことを内容とするものであるところ、これは週48時間の勤務を所定労働時間とする点で、労基法32条1項に違反することが明らかである。そのため、本件労働契約の内容は、労基法13条、32条1項により、一週間当たりの所定労働時間を48時間と定める部分が無効となり、これが40時間(1日8時間、週5日勤務)へと修正されるものと解されるところ、月給制は原則として、月当たりの通常所定労働時間の労働への対価として当該金額が支払われる旨の合意であるから、Y社がXらに支払った月給は、上記のとおり労基法に従って修正された所定労働時間に対する対価として支払われたものと解するのが相当である。

3 Y社のXらに対する未払の割増賃金額は、最も少額であるX2についても確定遅延損害金を加えて100万円を超えており、最も高額であるX1については400万円にも上ること、Y社はXらとの間で、1日8時間,週6日勤務という明らかに労基法に違反した契約を締結させていることに加え、Y社においては就業規則や賃金規程が存在せず、Xらとの間でも労働契約書を作成していないこと、X1に対して健康保険料等を過剰に控除し、賃金の一部を支払っていなかったことからすれば、Y社は全体として労基法軽視の態度が著しく、賃金未払は悪質であるといわざるを得ない。したがって、Y社に対しては、各未払賃金計算書記載のとおりの付加金の支払を命じるのが相当である。

もはやどこから手をつけていいのかわからない状態です。

治外法権かのような状態ですので、いざ訴訟になるとこのような結果となってしまいます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。