Category Archives: 労働者性

労働者性35(日本代行事件)

おはようございます。

今日は、運転代行業に従事するドライバーの労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

日本代行事件(大阪地裁令和2年12月11日・労判ジャーナル109号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運営する運転代行業務に従事していたXらが、XらとY社との契約が雇用契約であるとの前提に立った上で、Xらが時間外労働を行ったとして、雇用契約に基づく割増賃金+遅延損害金、付加金の支払を求めるとともに、Y社が支払の際に、「共済会領収書」、「値引平日」、「クリーニング代」、「事故修理代等」の名目で控除したことが賠償予定の禁止に抵触する、賃金の全額払いの原則に反するとして、雇用契約に基づきその支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社においては、Xらを含むドライバーは、毎週木曜日までに翌週の出社予定について、定型の書式を用いて、各日ごとに「出社」、「連絡」、「休み」の三種類から選択して記入するという方法で連絡することになっていたところ、かかる体制から明らかなとおり、ドライバーは、出社する日を自由な意思で決定することができるとされていたものであり、Xらが出社を希望したにもかかわらず、被告から出社を拒否されたあるいはXらの意思に反して出社を命じられたというような事情はうかがわれない(このことは、Xらが「連絡」として届け出た日について、Y社から出社の打診があった場合についても同様であるといえる。)。
また、Y社においては、ドライバーのほかにオペレーター部、ビル管理部、経理部及びインターネット事業部所属の従業員がいるところ、同従業員はタイムカードを打刻することとされているのに対し、Xらを含むドライバーはタイムカードを打刻することとされていない
そうすると、Xらを含むドライバーは出社するか否かを自らの意思で自由に決定することができていたものであり、また、労働時間も把握されていなかったものであるから、勤務日・勤務時間について拘束されていなかったということができる。
また、Xらを含むドライバーは、番号札を取ったり、運転代行業務に使用する車両を手に入れるため最初に被告事務所に赴く必要があるが、その後は、Y社の事務所で待機して打診を待つことも、歓楽街等で打診を待つことも自由であったのだから(歓楽街で待機していれば、周囲の飲食店で飲酒して出てきた酔客から、直接代行業務の申込みを受けることが可能となり、番号札の順番に従って打診を受けるより早く代行業務に従事することもあり得るから、歓楽街で待機するということもあり得るといえる。)、勤務場所についても拘束されていなかったということができる。
Xらを含む各ドライバーはY社からの打診を受けて運転代行業務に従事するところ、どのような経路で顧客の指定する場所まで赴くか、運転代行業務終了後、どこで待機するか、待機場所まで戻る際に高速道路を使用するか否かなどは各ドライバーが自由に決めていたものである。
そうすると、運転代行という業務の遂行方法について、Y社から各ドライバーに対する個別具体的な指示はなされていなかったということができる。
Xらを含むドライバーが出社日を自由に決定することができていたことからすれば、Xらを含むドライバーはある日について業務を受けるか否かの諾否の自由を有していたといえる。
また、一般のドライバーではなく、Y社の本部長であるBがドライバーとして運転業務に従事したことがあるところ、Y社が、個々のドライバーに対して、具体的な個別の運転代行業務に従事することを命じることができるのであれば、「本部長」という高位の役職にあることがうかがわれるBを運転代行業務に従事させる必要はなく、ドライバーに命じて従事させれば足りるといえる。
それにもかかわらず、Bが運転代行業務に従事しているのは、Y社においては、Xらを含むドライバーが、Y社の営業時間内であっても、各ドライバーの事情(例えば、Y社での業務が副業であった場合、本業の出勤時間との兼ね合いなどが想定される。)から、一定の時間になれば自らの意思で以降の運転代行業務に従事しないこととするなどという諾否の自由を有していたからであることがうかがわれる。

2 Y社が、Xらを含むドライバーに対して支払う報酬は、運転代行業務の売上額に応じてその金額が決まる完全歩合制となっていたものであるから、労務提供時間の長さとは無関係なものであったといえる。そうすると、Xらが支払を受ける報酬は、労務対償性が弱かったことになる。
また、Y社は、各ドライバーに報酬を支払うにあたって、社会保険料及び公租公課の控除を行っておらず、事務室の談話室のトイレ横に紙を貼って、運送業一人親方特別加入を案内したり、確定申告の相談窓口として、税理士事務所を紹介するなどしているところ、これらの事情も報酬の労務対償性がなかったことをうかがわせる事情であるといえる。
Y社の営業時間が午後8時から午前4時という夜間であったこと、Y社が求人情報サイトに掲載していた情報においても「Wワークの方も歓迎」とされていたことからすれば、Y社で運転代行業務に従事するドライバーは、副業として従事している者が多かったことがうかがわれ、そうであれば、Y社で運転代行業務に従事していたドライバーには専属性がなかったことになる。

3 以上を総合考慮すれば、本件において、Xらが、Y社の指揮命令に従って労務を提供していたと評価することはできないから、XらとY社との契約が雇用契約であったということはできない。

非常に参考になる裁判例です。

裁判所がどのような要素を考慮して労働者性を判断しているのか理解しておきましょう。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性34(鑑定ソリュート大分ほか事件)

おはようございます。

今日は、元取締役の労働者性ならびに解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

鑑定ソリュート大分ほか事件(大分地裁令和2年3月19日・労判1231号143頁)

【事案の概要】

第1事件は、Y社の取締役として登記されていたXが、①実質はY社に雇用された労働者であり、Y社から不当に解雇された、②Y社は労働契約に基づきXが健康保険及び厚生年金保険の被保険者の資格を得たことを保険者に届け出るべき義務を負ったにもかかわらず、同義務を怠った、③Y社が本店を移転したことにより、本判決確定後に労働に従事するようになった際に通勤費用が増加する、④Y社の取締役であったAがパワーハラスメントの防止措置を講じなかったことにつき、Y社が労働契約上の職場環境配慮義務に違反したと主張し、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を、民法536条2項に基づく賃金請求として、解雇の日である平成30年1月17日から平成31年2月20日までの未払賃金合計257万4491円+遅延損害金等を求める事案である。

第2事件は、Xが、Y社の取締役であったAにおいてXに対してパワーハラスメントをしてY社に職場環境配慮義務違反をさせて任務を懈怠し、Y社の取締役であったBにおいて同パワーハラスメントの防止措置を講じずY社に職場環境配慮義務違反をさせて任務を懈怠したと主張し、A及びBに対し、会社法429条1項に基づく損害賠償請求として、慰謝料及び弁護士費用相当の損害合計220万円+遅延損害金の連帯支払い(Y社と連帯)を求める事案である。

【裁判所の判断】

労働者性肯定

解雇無効 他
→バックペイ 

【判例のポイント】

1 XについてY社の取締役就任登記がされており、Xは取締役就任の承諾書に署名押印しているが、同登記がされてから取締役解任登記がされるまでの約1年8箇月の間、XがY社の取締役としての権限を行使したことはなく、Y社の経営に関わることはなかったのであり、このことからすれば、本件契約締結に際し、Xには、Y社の取締役という立場に見合った権限はそもそも付与されておらず、取締役として活動することも予定されていなかったものと認められる
他方、Xは、Y社の取締役であったBから、大分事務所で業務を行うに当たってXが遵守すべき事項として午前9時から午後5時までを業務時間とする旨が規定された本件社内規程を交付され、実際に、兼業を除いては、基本的にその業務時間どおりに業務を行っていて、業務を行うに当たっては、その内容や納期等についてBから指示を受けるとともに、業務の進捗状況もBにより把握・管理され、業務に後れがあったときは、その遅れを取り戻すよう命じられるなどしており、また、Bにおいて、Xのスケジュールの把握が可能であった。これらのことからすれば、Xは、兼業を除いては、Bの指揮監督の下で、時間的場所的拘束を受けつつ業務に従事していたものと認められる。

2 兼業を認められていることから直ちに労働者性が否定されるものではないし、Xが依頼される業務について諾否の自由を有していたか、仮に諾否の自由を有していたとして、それがどの程度に自由であったかは証拠上明らかではなく、Xは、行うこととなった業務の遂行について、Aからの指揮命令を受けていたものであるから、Xが本件契約において裁量を有していたとしても、それが労働者性を否定するほどの広い裁量であったとは認められない

取締役にすることにより、労基法等の適用を除外するというやり方は、昔からありますが、取締役としての実態が伴っていない場合には、労働者性が肯定されますので注意が必要です。

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労働者性33(エアースタジオ事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、劇団員の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

エアースタジオ事件(東京高裁令和2年9月3日・労判ジャーナル106号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の下で劇団員として活動していたXが、Y社に対し、(1)法定労働時間に対する最低賃金法による賃金及び時間外労働に対する法定の割増率による割増賃金について未払があるとして、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づき、428万5143円+遅延損害金の支払並びに労基法114条に基づく付加金請求として355万6074円+遅延損害金の支払を、(2)長時間労働を強いられた上、劇団幹部らから暴言、脅迫を受けたなどとして、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料300万円+遅延損害金並びに弁護士費用30万円+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

原審は、(1)公演への出演は任意であり、労務の提供とはいえないものの、大道具、小道具及び音響照明業務等並びにY社が経営するカフェにおける業務は、労務の提供に当たるとして、その実労働時間及びそれに伴う割増賃金を算定し、未払賃金51万6502円+遅延損害金の限度でXの未払賃金等の請求を認容したが、(2)長時間労働や劇団幹部らからの暴言、脅迫等を理由とする慰謝料等請求は理由がないとして、これを棄却した。

Xは、原判決中敗訴部分を不服として、本件控訴を提起し、Y社は、原判決中敗訴部分を不服として、本件附帯控訴を提起した。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、185万6501円+遅延損害金を支払え。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 確かに、Xは、本件劇団の公演への出演を断ることはできるし、断ったことによる不利益が生じるといった事情は窺われない。
しかしながら、劇団員は事前に出演希望を提出することができるものの、まず出演者は外部の役者から決まっていき、残った配役について出演を検討することになり(原審におけるE及びDの証言によると1公演当たりの出演者数20から30人に対して劇団員の出演者数4人程度)、かつ劇団員らは公演への出演を希望して劇団員となっているのであり、これを断ることは通常考え難く、仮に断ることがあったとしても、それはY社の他の業務へ従事するためであって、劇団員らは、本件劇団及びY社から受けた仕事は最優先で遂行することとされ、Y社の指示には事実上従わざるを得なかったのであるから、諾否の自由があったとはいえない。また、劇団員らは、劇団以外の他の劇団の公演に出演することなども可能とはされていたものの、少なくともXについては、裏方業務に追われ(小道具のほか,大道具,衣装,制作等のうち何らかの課に所属することとされていた。)他の劇団の公演に出演することはもちろん、入団当初を除きアルバイトすらできない状況にあり、しかも外部の仕事を受ける場合は必ず副座長に相談することとされていたものである。その上、勤務時間及び場所や公演についてはすべてY社が決定しており、Y社の指示にしたがって業務に従事することとされていたことなどの事情も踏まえると、公演への出演、演出及び稽古についても、Y社の指揮命令に服する業務であったものと認めるのが相当である(Xが本件劇団を退団した後に制定されたY社の就業規則によれば、出演者が出演を取りやめる場合は代役を確保することが求められており、Xが本件劇団在籍中も同様であったものと窺われる。)。

2 Xは、本件劇団における業務について長時間労働を強いられた旨主張するが、一公演当たり稽古期間が10日間、本番期間が6日間であったことからすると、本件劇団における活動時間が長時間にわたっていたのは、X自身が自ら希望して出演者として参加するために必要な稽古等に相当な時間が割かれていたことが理由の一つであるといえるから、公演への出演を含む本件劇団の活動に多くの時間を割いていたとしても、そのことをもってY社に不法行為が成立するものとは認められない
また、Xは、Cが平成25年7月28日にXに対して暴行を加えたことが不法行為に当たると主張し、原審において、Cが遅刻してきたXに対して他の出演者の前において控訴人の胸倉をつかみ、右の平手で左頬を殴打したと供述ないし陳述しているが、Y社はCの暴行の事実を否認しているところ、顔面を殴打した具体的態様(顔面の部位や回数等)が明らかではなく、Xの上記供述及び陳述以外にこれを裏付ける証拠がないこと、本件訴訟提起まで長年にわたりCの暴行やそれによる損害の請求等をしていないことからすれば、暴行の事実を認めるには十分ではない。他に、Cの暴行を認めるに足りる証拠はない。
さらに、Xは、Fをして労基署への相談を取り下げさせたことが不法行為に当たるとも主張するが、FがXに対して労基署への相談を取り下げるよう求めた事実は認められるものの、それを超えて、脅迫によって上記取下げを強要したとまでは認めるには十分ではなく、他にFの脅迫を認めるに足りる証拠はない。

賛否両論あると思いますが、労働者性を肯定されるリスクを考えながら、経営をしていくほかありません。

雇用と業務委託等との区別は、契約書のタイトルによって決まるものではなく、実態により判断されますので注意が必要です。顧問弁護士に相談の上、慎重に対応してください。

労働者性32(岡地事件)

おはようございます。

今日は、商品先物取引の歩合登録外務員との契約が、労働基準法16条の「労働契約」にあたらないとされた裁判例を見てみましょう。

岡地事件(東京地裁令和2年1月15日・労経速2419号23頁)

【事案の概要】

本件は、商品先物取引等を業とするY社の外務員であったXが、Y社に対し、雇用契約又は不当利得に基づき、外務員であった期間中に積み立てた身元保証金188万9433円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 日本橋支店の投資相談部内には30名程度の歩合外務員が所属していたが、これら歩合外務員の間においては職制上の上下関係はなく、他には事務手続を行う一般社員が数名所属していたのみであって、同部内において歩合外務員に対し強い指揮監督を及ぼすべき組織体制は取られていなかった。このような組織体制の下、Xはインターネット上に個人で開設したサイト等を用いて、自身の裁量に基づき大部分の営業活動を展開しており、営業方法についてXがY社から具体的な指示を受ける場合は限定されていた。業務内容の報告についても、毎営業日に外務員業務日誌を提出していたものの、同日誌に記載された報告内容は、顧客から受注した売買取引の内容及び売買成立の結果に止まるものであり、Xが営業内容や交渉状況等について具体的に記載することや、Y社の責任者が具体的な指導事項を記載することはほとんどなかった。
このように、Xが業務遂行上Y社から受ける指揮監督は、極めて弱いものであったということができる。

2 歩合外務員の多くは、毎営業日、Y社に出社しており、Xも、営業日には概ね午前8時に出社していたが、歩合外務員の出社時刻、退社時刻及び休憩時刻について定めはなく、歩合外務員の中には、午前9時頃に出社したり、昼過ぎに退社したりするものもおり、遅刻、早退又は欠勤を理由として、歩合外務員の固定報酬部分から報酬が控除されることはなかった。先物取引の売買執行の際には日本橋支店内での作業が必要となることや、個々の歩合外務員専用フリーダイヤル用の電話機が日本橋支店内に設置されていたこと等を踏まえると、Xを含む多くの歩合外務員が日本橋支店へ出社していたことは業務の性質を理由とする側面が強く、Y社が指揮監督を及ぼすために勤務場所・勤務時間を強く拘束していたと評価することはできない。

労働者性に関する争いは多くの場合、肯定・否定いずれの要素も混在していますが、本件は、かなり労働者性を肯定しやすい事案ではないかと思います。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性31(学校法人信愛学園事件)

おはようございます。

今日は、幼稚園園長の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人信愛学園事件(横浜地裁令和2年2月27日・労判ジャーナル98号12頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営する幼稚園において、1年間の有期契約を複数回更新しつつ勤務してきた元園長Xが、Y社から契約の更新拒絶をされたことについて、Y社に対し、XとY社との契約は労働契約であり、更新拒絶には客観的合理性がなく無効である上、Xは期間の定めのない労働契約への転換の申込みをしたと主張して、労働契約に基づき、期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに本判決確定までの賃金及び賞与等の支払を求め、Y社から違法な更新拒絶をされた上、Xの更新拒絶についての議論が行われた学校法人の理事会において、出席理事からXの人格権を侵害する発言があり、その後の団体交渉が不当に打ち切られたなどと主張して、不法行為に基づき、慰謝料30万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

労働者性肯定

雇止めは無効

損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件幼稚園の予算や職員の人事について、常に理事長又は理事会の承認を得る必要があり、その職務の内容及び遂行方法からすれば、学校法人の指揮監督下において、本件幼稚園の園長として勤務していたものというべきであり、また、Xは、固定残業手当及び賞与名目の金銭の支給を受けており、報酬の支払形態等について他の従業員の賃金と大きく異なるところがあったとも認められないから、Xが支払を受けた報酬は、Y社の指揮監督の下に労務を提供したことの対価であったというべきであり、このことは、Xについても源泉徴収及び社会保険料の控除がされていることによっても裏付けられ、そして、XとY社との間で1年ごとに取り交わされた契約書等の書式には、勤務場所や勤務条件の記載があり、これらが実態と異なっていたことをうかがわせる事実も認められないから、Xの勤務場所は、本件幼稚園と指定されていて場所的な拘束性が認められる上、Xも他の職員と同様の勤務時間の拘束を受けていたことなどが認められることからすれば、XとY社との間の契約の性質は、労働契約であったと認めるのが相当である。

上記判例のポイント記載の契約内容であれば労働者性が肯定されることは容易に想像できますね。

もっとも、一般的に労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性30(思いやり整骨院事件)

おはようございます。

今日は、整骨院院長の雇用契約成立に基づく未払賃金等支払請求に関する事案を見てみましょう。

思いやり整骨院事件(大阪地裁令和2年1月17日・労判ジャーナル97号18頁)

【事案の概要】

本件は、柔道整復師であるY社の元院長Xが、「思いやりグループ」と称する本件整骨院を含む複数の事業所若しくは法人からなる集団の中で「総括」等と呼称される地位にある者に対し、主位的に、Xと総括の間に雇用契約が締結され、Xが総括経営に係る整骨院に勤務して労務を提供した旨主張し、未払賃金・未払時間外割増賃金・付加金等の支払並びに雇用保険資格取得届を怠ったという債務不履行に基づく損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 総括は、Xから、高頻度かつ定期的に、本件整骨院の収支状況に関する詳細な報告書等の提出を受けるのみならず、さらに口頭での報告を受けていたことが認められ、この点は、総括のXに対する本件整骨院の業務に関しての指揮監督の存在を強くうかがわせるものであり、そして、Xが本件整骨院での業務に関与することによって得た収入は、売上高その他業績による変動がみられない「基本給」及び「交通費」名目での固定的な性質のもので、この点は、Xが労務提供の対価としての賃金を得ていたとの評価になじみやすいものといえ、また、Xが本件整骨院での業務に関与する契機となった求人情報は「正社員」若しくは「アルバイト・パート」を募集するもので、X自身「アルバイト勤務希望」と記載するなどした履歴書を作成したことが認められるところ、これはX及び統括がともに雇用契約の締結を念頭に置いていたことを推知させる事情にほかならず、また、Xが本件整骨院の院長を辞するに際しての「退職届」の作成は、他者に雇用されているとの意思を有していたことをうかがわせるものであるから、Xと統括の間には、業務委託契約ではなく、雇用契約が締結されたと認定することができる

2 雇用保険の手続不履行による債務不履行責任の有無等について、Xは、本件整骨院の院長を務めている間、統括に対し、雇用保険資格取得届の手続をするよう求めた形跡は見当たらず、そのような取扱いを受け容れていたとみる余地があることに照らせば、統括に対して慰謝料の支払を命ずるまでの精神的損害が発生したと認めるには足りないから、債務不履行に基づく損害賠償には理由がない。

マッサージ店等は労働者性が争われやすい分野です。

業務委託契約を締結する場合には、その実態が雇用契約に近づかないように細心の注意をしましょう。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性29(エアースタジオ事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、劇団員の裏方業務の遂行について労働基準法上の労働者性が肯定された裁判例を見てみましょう。

エアースタジオ事件(東京地裁令和元年9月4日・労経速2403号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の下で劇団員として活動していたXが法定労働時間に対する最低賃金法による賃金及び時間外労働に対する法定の割増率による割増賃金について未払があるとして、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づき、428万5143円+遅延損害金の支払並びに労働基準法114条に基づく付加金請求として355万6074円+遅延損害金の支払を求めるとともに、Y社がXを、1月に2日程度した休日を取得できず、1日3時間程度しか睡眠時間を取得できない環境で長きにわたり労務提供させた行為及びY社が従業員をして行わせた暴言、脅迫が不法行為に該当するとして、使用者責任に基づく損害賠償請求として、慰謝料300万円+遅延損害金並びに弁護士費用30万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、51万6502円+遅延損害金を支払え

Xのその余の請求をいずれも棄却する

【判例のポイント】

1 本件劇団は、年末には、翌年の公演の年間スケジュールを組み、2つの劇場を利用して年間90本もの公演を行っていたこと、本件入団契約においては、Xは、本件劇団の会場整理、セットの仕込み・バラシ、衣裳、小道具、ケータリング、イベント等の業務に積極的に参加することとされ、実際に、本件劇団の劇団員は、各裏方作業について「課」又は「部」なるものに所属して、多数の公演に滞りが生じないよう各担当「課(部)」の業務を行っていたこと、Xを含む男性劇団員は、公演のセット入替えの際、22時頃から翌日15時頃までの間、可能な限りセットの入替えに参加することとされ、各劇団員が参加可能な時間帯をスマートフォンのアプリケーションを利用して共有し、Xも相当な回数のセットの入替えに参加していたこと、音響照明は、劇団において各劇団員が年間4回程度担当するよう割り振りが決定され、割り当てられた劇団員は、割当日に都合がつかない場合には交代できる者を探し、割り当てられた公演の稽古と本番それぞれに音響照明の担当者として参加していたことが認められ、これらの点を考慮すると、Xが、セットの入替えや音響照明の業務について、担当しないことを選択する諾否の自由はなく、業務を行うに際しては、時間的、場所的な拘束があったものと認められる

2 また、Xは、劇団員のZ3とともに小道具課に所属し、同人との間で、年間を通してほぼ毎週行われる公演のうちどの公演の小道具を担当するか割り振りを決め、別の公演への出演等で差支えのない限り、日々各公演の小道具を担当していた事実が認められるところ、公演本数が年間約90回と多数であって、Xが、年間を通じて小道具を全く担当しないとか、1月に1公演のみ担当するというようなことが許される状況にあったとは認められないことからすると、Xが、本件劇団が行う公演の小道具を担当するか否かについて諾否の自由を有していたとはいえない。また、小道具は、公演の稽古や本番の日程に合わせて準備をし、演出担当者の指示に従って小道具を準備、変更することも求められていたことから、Xは、本件劇団の指揮命令に従って小道具の業務を遂行していたものと認められる

3 他方、公演への出演は任意であり、諾否の自由があったことはXも認めるとおりであるから、Xは、Y社の指揮命令により公演への出演という労務を提供していたとはいえず、チケットバックとして支払われていた金銭は、役者としての集客能力に対する報酬であって、出演という労務の提供に対する対価とはいえない

劇団員の労働者性が争われた事案です。

「修行」みたいな文化がある業界では、法的な要件で考えると労働者なのかもしれませんが、労基法をそのまま適用すると違和感があるようなケースもありますね。

難しいところです。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

 

労働者性28(イヤシス事件)

おはようございます。

今日は、労基法上の労働者性と最低賃金適用の有無に関する裁判例を見てみましょう。

イヤシス事件(大阪地裁令和元年10月24日・労判ジャーナル95号24頁)

【事案の概要】

本件は、リラクゼーションサロンの経営等を目的とするY社の運営する店舗において整体やリフレクソロジー等の施術等の業務を行っていたXらが、XらとY社との間の契約が業務委託契約ではなく労働契約であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、それぞれ未払の時間外割増賃金等の支払、また、労働基準法114条に基づき、上記未払賃金と同額の付加金等の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

労基法上の労働者性肯定

【判例のポイント】

1 Xらの労働基準法上の労働者性について、Xらは、Y社によって業務従事時間の拘束を受けていたといわざるを得ず、また、Xらの報酬は、歩合制であったけれども、1日当たり6000円又は5000円の最低保証額が定められており、しかもXらの業務従事時間が8時間に満たない場合には減額されていたのであるから、Xらの報酬は労働の対価と評価せざるを得ず、そして、Xらが顧客の施術の依頼を自由に断れるわけではないこと、Y社が運営する店舗として他の店舗と同等のサービスを実施してもらう必要があったこと、XらがY社に対し、Y社データや売上兼出勤簿等によって業務報告をしていたこと、Xらの業務従事場所が本件店舗と定められていたこと、本件店舗自体及びその備品をY社が提供していたこと、Xらの報酬がほとんど最低保証額であって最低賃金を下回るものであり、Y社の他の従業員に比して高額なものであったとはいえないこと、本件各契約書には、「遅刻」や「始末書」等労働契約を前提とした文言が記載されていること等から、Xらは、労働基準法上の労働者に当たると認められる。

2 消滅時効について、Xらは、いずれも雇用者として勤務した期間の賃金が支払われていないとして、大阪府の最低賃金とY社の最低保証額の差額、残業代等の支払いを求める書面を送付しており、請求金額が本件請求とは一致しないとしても、同記載から雇用期間の最低賃金額とY社の最低保証額との差額や割増賃金を請求する趣旨であることが読み取れるから、催告として事項の中断効が認められるから、上記各催告から6か月以内に本件訴訟を提起している以上、Xらの本件賃金請求権は時効消滅していない。

リラクゼーションサロンをFCでやっている経営者のみなさん、スタッフと業務委託契約をしている方も多いかと思いますが、契約内容如何によっては、雇用とみなされますので、十分気を付けてください。

是非、事前に顧問弁護士に相談しながら慎重に判断してください。

 

労働者性27(類設計室事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

51日目の栗坊トマト。縦とともに横にも大きくなってきました!

今日は、学習塾講師の労働基準法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

類設計室事件(大阪地裁令和元年5月30日・労判ジャーナル90号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運営する学習塾に務めていた元講師Xが、Y社に対し、労働契約に基づき、未払の時間外、休日及び深夜割増賃金計約487万円等の支払、また、労働基準法114条に基づき、上記未払賃金と同額の付加金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

付加金請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社の講師は、Y社が指定する教室においてY社が指定する教科を担当することが指示され、これを拒否することはできなかったこと、Y社が作成したテキストをY社が作成したマニュアルに従って授業を行わなければならなかったこと、原則として午後2時から午後11時までの間、指定された教室で、各種事務に加えてY社が定めた授業配置表に従って授業を行うとともに、活動記録により毎日の出退社時刻及び活動内容別の活動時間数を本部へ報告することを義務付けられていたこと、Y社の講師は、自己の判断だけで代講者を決めることはできなかったこと、毎月、給与の名目で固定額の基本給及び扶養手当から構成される報酬が支払われていたこと、Y社は、講師の報酬について給与所得として源泉徴収を行っており、かつ講師を労働保険の適用対象としていたことから、Y社の講師は、Y社の具体的な仕事の依頼、業務従事地域の指示等に対して許諾の自由を有しないこと、Y社から業務の内容及び遂行方法について具体的な指揮命令を受けていること、勤務場所・勤務時間に関する拘束性があること、業務の代替性が認められないこと、報酬の労務対償性があること等から、Xは、労働基準法上の労働者である。

まあ、これを雇用ではなく業務委託というのは無理がありますね。

労働法の適用を排除する目的で無理矢理、一人親方とするような例が後を絶ちませんが、大方、雇用ですので、裁判を起こされれば、多くは負けることになります。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性26(ミヤイチ本舗事件)

おはようございます。

20日目の栗坊トマト。 葉っぱの数が増えてきました。

今日は、運転代行従事者の労働者性と未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ミヤイチ本舗事件(東京高裁平成30年10月17日・労判1202号121頁)

【事案の概要】

Y社は、運転代行業などを業とする株式会社である。X1は、平成24年7月頃から平成26年3月15日まで、X2は、平成24年5月22日から平成26年3月15日まで、いずれもY社において運転代行業に従事していた。

本件は、Xらが、Y社との雇用契約を締結していたと主張して、Y社に対し、未払残業代等の請求した事案である。

Y社は、主に、Xらとの契約が雇用契約ではなく業務委託契約であると主張して、Xらの請求を争った。

原審は、Xらが労働者に当たるとはいえないと判断して、Xらの各②③の請求を棄却するとともに、各①の請求について、請求に係る元本額+遅延損害金の限度でこれを認容した。

Xらは、原判決の上記判断を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

労基法上の労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 Xらは、就業規則と題する書面に署名押印させられ、勤務時間を定められ、職務専念義務及びY社の指示に従う義務を課せられた上、就業規則に定めのない事項は労働基準法その他の法令の定めるところによるとされていた。さらに、具体的な仕事の進め方についても、「代行本舗 社内遵守事項」が定められており、Xらは、業務遂行にあたって、仕事開始時間、待機の場所等について具体的に指示され、時間的場所的拘束を受けるだけでなく、Y社の指示に従う義務を課されるなど、Y社の包括的な指揮監督に服していた

2 具体的な業務内容である勤務シフトは、Y社側が一方的にシフト表を作成し(具体的にシフト表作成の事務を行っていたのはXらであるが、シフト表に従った勤務を命じているのはY社である。シフト表に従った勤務をできないときは、Y社の許可が必要であり、許可なしに勤務しなかった場合には、「代行本舗 社内遵守事項」によって、最高で1日2万円の制裁が科される。したがって、各月の運転代行業務について、Xらに諾否の自由があったとは認められない

3 他の代行運転者が業務委託契約書を交わしているのに対し、Xらについては、業務委託契約書が作成されていない上、Xらの業務は、他の代行運転者と異なるものであった。すなわち、Xらは、他の代行運転者よりも早く出社して、自動車を駐車場から事務所に移動させる業務、顧客を紹介する飲食店への手土産の購入などの業務、シフト表の作成業務、X1については電話番と手配業務などをしていたが、これらは代行業務に係る業務委託契約の範囲を超える業務であるというほかない。

4 Xらは、歩合報酬だけでなく、X1が電話番として勤務する以外の場面においても職務手当及び役職手当との名目で支払を受けていたこと、Y社の決算報告書において、Xらに対する支払いを業務委託料ではなく給料手当として計上していることからしても、Y社もXらとの関係を雇用関係であると理解していたとうかがわれる。
これらの諸事情を総合すると、XらとY社との関係は労働契約に基づくものというべきである。

これだけの事情がそろえば、労働者性は肯定されることはそれほど大変ではありません。

もっとも、一般的に労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。