Category Archives: 労働者性

労働者性52 労災保険法上の労働者該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労災保険法上の労働者該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

国・横浜西労基署長事件(大阪地裁令和4年12月21日・労判ジャーナル133号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が請け負った太陽光発電パネル設置工事作業等に従事していたXが、Y社の労働者として上記作業等に従事したことによりうつ病を発病したと主張して、横浜西労基署長に対し、労災保険法に基づく療養補償給付の請求をしたところ、同署長が、XがY社の労働者には当たらず、かつ、上記精神障害の発病はY社の業務上の事由によるものにも当たらないとして、これを不支給とする旨の処分をしたため、Xが、国を相手として、本件処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社からの仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由を有しており、本件工事での作業等の方法について一定の裁量が認められ、Y社から業務遂行上の具体的な指揮監督を受けてもいなかったものであり、勤務場所及び勤務時間については指定されていたものの、これらの事情が使用従属性を強く裏付けるものとは評価できず、労務提供の代替性もあったものであって、これらを総合すれば、労務提供の形態の面で、XがY社の指揮監督下に置かれていたものとは評価し難く、また、報酬についても、基本部分や「早出」及び「残業」名目での支払は、労務対償性があることを示すものといえる一方で、管理費名目で利益分配も受けており、必ずしも使用従属性を強く補強する程度に労務対償性があるとまではいえず、さらに、その他の事情についてみても、Xは、本件工事での作業に使用する道具を一部自ら調達し、作業検収書の作成及び提出やY社への請求書の送信に際して自らが設立したA興業の名義を使用し、請求に当たって消費税を加算し、その支払いを受けるなど、本件工事の作業等を受注したのが、自らが設立したA興業であってその契約関係は雇用ではなく請負であるとの認識を有しているものと推認されることなどから、XがY社の指揮監督の下でY社に使用されてY社に対して従属的に労務を提供し、その対価としてY社から賃金を支払われていたと評価することは困難というべきであって、Xが労災保険法上の「労働者」には当たるということはできない。

労働者性が争点となる事案では、100:0のようなわかりやすいケースはほとんどありません。

総合考慮によるため、雇用と請負のどちらの色が濃いかを見ていくことになります。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性51 業務委託契約と題して署名押印なく締結された契約が労働契約にあたるため、その解消が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、業務委託契約と題して署名押印なく締結された契約が労働契約にあたるため、その解消が無効とされた事案を見ていきましょう。

TWS Advisors事件(東京地裁令和4年3月23日・労経速2507号28頁)

【事案の概要】

甲事件は、原告Aが、被告a社に対し、被告a社との間で締結した契約は業務委託契約ではなく労働契約である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成30年1月から同年4月分まで及び平成31年1月分以降の未払賃金の支払を求めるとともに、原告Aが被告a社で就労していたにもかかわらず、被告a社が原告Aに対し失業等給付を受給するよう指示したことにより、失業等給付にかかる返還債務268万7448円の損害が発生した旨主張して、不法行為に基づき損害賠償の支払を求める事案である。

乙事件は、原告Aとの間で別紙1物件目録記載の建物につき使用貸借契約を締結していた原告b社が、原告Aに対し、原告Aと被告a社との間の業務委託契約が解消されたことにより、原告Aと原告b社との間の使用貸借契約も終了したにもかかわらず、原告Aが違法に居住を継続した旨主張し、債務不履行、不法行為又は不当利得に基づき、賃料相当損害金86万7225円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 原告Aが、被告a社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
 被告a社は、原告Aに対し、102万6316円+遅延損害金を支払え。
 被告a社は、原告Aに対し、平成31年1月から本判決確定の日まで、毎月末日限り、50万円+遅延損害金を支払え。
 原告Aの被告a社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
5 原告b社の原告Aに対する請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 原告Aの業務内容は、不動産取引に関連する種々の業務のほか、被告a社の従業員の管理及び採用面接、会議の議事録の作成及び訴訟対応など、被告a社が原告Aの委託業務として主張する土地の仕入れにとどまらず、多岐にわたっており、被告a社の組織体制上、原告Aが執行役員あるいは部長という肩書でE及びBと各従業員との間の指揮命令系統に組み込まれていたことを踏まえると、原告Aは、契約時にあらかじめ具体的に特定された業務だけではなく、E又はBからの指示を受けながら、多様な業務を遂行していたと認められる
また、原告Aに対するEからの業務指示は、特定の案件における細かい業務分担や部下従業員への指導方法に及んでいることからすると、原告Aが受ける業務指示の内容は、個別具体的であったと評価できるし、業務の指示に対する諾否の自由や労務提供の代替性を有していたことをうかがわせる事情もない
さらに、原告Aの勤務時間については、タイムカード等により厳格に管理されておらず、始業終業時刻について明確な定めがあったとは認められないものの、スケジュールを常時共有することを求められていたことに加え、原告Aは、休日以外はほぼ毎日、概ね9時頃から被告a社の事務所又は取引先において業務を行っており、加えて休日も業務を行うことがあったのであるから、実体として勤務時間や勤務場所についての裁量が大きいとはいい難い
以上によれば、原告Aは、被告a社の指揮命令に従って労務を提供していたというべきである。

2 また、原告Aの報酬は、売上に応じたインセンティブとして支払われているものがあるものの、平成30年1月ないし4月までは休日出勤の日数に応じた報酬が支払われ、同年5月から12月までは基本となる報酬が月額30万ないし50万円であることを前提に失業等給付との差額が支払われており、前記アのとおり、原告Aの業務が多岐にわたっていたことも踏まえると、原告の報酬は、特定の業務の結果に対してではなく、労務の提供全体に対して支払われていると評価すべきである
以上の検討結果に加え、原告Aには、経費の負担はなく、被告a社から従業員証明書、机、パソコン及びメールアドレスのほか、無償で社宅が用意されており、個人事業者としての性格が強いとはいえないことも考慮すると、原告Aの被告a社との間の契約は、労働者が使用者の指揮命令に従って労務を提供し、使用者がその対価として賃金を支払う契約である評価できるから、労働契約であるというべきである。

実体は雇用にもかかわらず、業務委託契約を締結している多くの会社のみなさん、こういう契約、よく見かけますので、ご注意ください。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性50 コンビニ加盟者らの労働組合法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、コンビニ加盟者らの労働組合法上の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

国・中労委(セブン‐イレブン・ジャパン)事件(東京地裁令和4年6月6日・労判ジャーナル131号48頁)

【事案の概要】

本件は、全国においてコンビニエンスストアであるセブン・イレブンのフランチャイズ・チェーンを運営しているY社との間で、加盟店基本契約を締結して店舗を経営する加盟者らが加入するコンビニ加盟店ユニオンが、Y社が組合による団体交渉の申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てたところ、岡山県労委は、救済命令を発したため、Y社がこれを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を取り消し、救済申立てを棄却する命令を発したことから、組合が本件命令の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 加盟者は、Y社から個別具体的な労務の提供を依頼され、事実上これに応じなければならないという関係に立つものでもなく、Y社の事業の遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられていると認めることもできず、また、報酬の労務対価性を認めることはできず、さらに、加盟者が、加盟店の経営を、自己の労働力と他人の労働力のそれぞれを、どのような割合で、どのような態様で供給することによって行うかや、加盟者自身の具体的な労務提供の内容については、加盟者の判断に委ねられているから、本件フランチャイズ契約において、加盟者の労務提供の在り方が一方的・定型的に定められているものと評価することはできず、そして、加盟者が、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度について、自身の判断により決定している以上、加盟店の営業日・営業時間に制約があるからといって、加盟者の労務提供が時間的に拘束されているとはいえず、また、加盟者は、加盟店の立地を自ら選択しているから、加盟者が何らかの場所的拘束を受けていると評価することはできず、さらに、加盟者は、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度について、加盟者自身の判断により決定しているのであって、Y社の指揮命令を受けて労務提供をしているものではないから、加盟者は、Y社との交渉上の対等性を確保するために労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認めるられるかという観点からみて、同法上の労働者に該当しない

FC加盟者が労働組合法上の労働者に該当するかが争われた事案です。

非常にチャレンジングな訴訟ですが、裁判所は上記のとおり、否定しました。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性49 大学非常勤講師の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、大学非常勤講師の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

国立大学法人東京芸術大学事件(東京地裁令和4年3月26日・労判ジャーナル128号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するa大学において非常勤講師を務めていたXが、Y社との間で締結していた期間を1年間とする有期の労働契約を被告が令和2年4月1日以降更新しなかったことにつき、労契法19条により従前と同一の労働条件で労働契約が更新されたとみなされる旨を主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記の更新拒否後の令和2年4月から約定の支払日である毎月20日限り月額4万7600円の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに対し、Y大学における講義の実施という業務の性質上当然に確定されることになる授業日程及び場所、講義内容の大綱を指示する以外に本件契約に係る委嘱業務の遂行に関し特段の指揮命令を行っていたとはいい難く、むしろ、本件各講義(Xが担当する授業)の具体的な授業内容等の策定はXの合理的な裁量に委ねられており、Xに対する時間的・場所的な拘束の程度もY大学の他の専任講師等に比べ相当に緩やかなものであったといえる。
また、Xは、本件各講義の担当教官の一人ではあったものの、主たる業務は自身が担当する本件各講義の授業の実施にあり、業務時間も週4時間に限定され、委嘱料も時間給として設定されていたことに鑑みれば、本件各講義において予定されていた授業への出席以外の業務をY社がXに指示することはもとより予定されていなかったものと解されるから、Xが、芸術の知識及び技能の教育研究というY大学の本来的な業務ないし事業の遂行に不可欠な労働力として組織上組み込まれていたとは解し難く、Xが本件契約を根拠として上記の業務以外の業務の遂行を被告から強制されることも想定されていなかったといえる。
加えて、Xに対する委嘱料の支払とXの実際の労務提供の時間や態様等との間には特段の牽連性は見出し難く、そうすると、Xに対して支給された委嘱料も、Xが提供した労務一般に対する償金というよりも、本件各講義に係る授業等の実施という個別・特定の事務の遂行に対する対価としての性質を帯びるものと解するのが相当である。
以上によれば、Xが本件契約に基づきY社の指揮監督の下で労務を提供していたとまでは認め難いといわざるを得ないから、本件契約に関し、Xが労契法2条1項所定の「労働者」に該当するとは認められず、本件契約は労契法19条が適用される労働契約には該当しないものというべきである。

指揮命令下に置かれていたとは評価できないとの理由から労働者性が否定されています。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性48 美容室勤務の美容師の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、美容室勤務の美容師の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

TRYNNO事件(名古屋地裁岡崎支部令和3年9月1日・労経速2481号39頁)

【事案の概要】

本件は、美容室勤務の美容師の労働者性が争われた事案である。

【裁判所の判断】

労働者性否定
→請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件美容室での業務については、その遂行過程においてY社から指示を受けることなく、そもそも顧客からの予約を受けるか否かという点も含めて自らの判断で行っていたことが認められる。
その勤務状況を見ても、特段Y社に指示を仰ぐことなくカット等の業務をこなしており、また、勤務時間については、予約が入っていない際に本件美容室から外出することもあるなど、かなり自由に行動していたことがうかがわれ、時間的にも場所的にもY社によって拘束されていたとはおよそ認めがたい
これらの事情だけをもっても、XとY社との間に、本件美容室の業務に関する指揮命令関係を見出すことは困難である。

2 Xは、XがY社からタイムツリーというアプリを用いて指揮命令を受けていたと主張するが、単に予約状況を共有していたというものにすぎず、それ以上に指揮命令を基礎づける事情とは言えない。
さらに、Xの給与は、毎月一定額を支給されるというもので、残業や欠勤の際に報酬が増減したといった事実は認められないのであり、労働の結果によって報酬が左右される性質を有していない。
他方で、Y社は、Xが受け取っていた給与については、給与所得として源泉徴収及び雇用保険料を徴収していたことが認められるが、報酬が固定であったことも併せ考えれば、Y社においてXに安定した収入を得させる目的で便宜的にそのような扱いをしたものと見ることができるのであり、労働者性の認定にあたって上記の推認を覆すほどの強い事情とまでいうことはできない。
また、XとY社は、もともと交際関係にあったものであり、いわゆる面接、採用という通常の雇用契約に想定される手続を経ているものではないし、就業規則や服務規律、退職金制度、福利厚生の有無についての定めも一切ない
しかも、これらについてXがY社に不満を訴えたりした事情は認められない。これらの事情は、X及びY社が、Xの本件美容室での業務において労働基準法等の規律に服することを想定していなかったことの証左である。

3 以上に加え、Xが、本件美容室の開業について、一定の物品の負担をしたこと、Y社から店舗からの退去を求められる前後を通じて、独自の商号を用いて営業を行っていたことなどを踏まえると、Xは、Y社に対して使用従属関係にあったということができず、Xの労働者性を肯定することはできない。

労働者性の判断は非常に際どいので、業務委託とする場合には、細心の注意をする必要があります。

今回の事案では労働者性が否定されていますが、多くの事案で労働者性が肯定されていますので、安易に物まねをすると火傷をしますのでご注意を。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性47 プログラマーの労働者性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、プログラマーの労働者性が否定された事案を見ていきましょう。

東京FD事件(東京地裁令和3年11月11日・労判ジャーナル122号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約に基づく未払賃金等の支払等を求めた事案である。

原判決は、Xの請求をいずれも認容したため、Y社がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

原判決取消(請求棄却)

【判例のポイント】

1 Xは、本件契約に基づく業務を行うに当たっては、一人で現場に赴き、専門的知識を有するプログラマーとして、顧客の担当者と協議をしながら、自身の責任において、作業内容やスケジュールを決め、期限までにシステム開発を完成させることが求められていたこと、②現場において、Xに対し勤怠時間の管理や業務上の指揮命令を行う者は存在しなかったこと、③XがY社に対し毎日の作業時間を記載した勤務報告書を提出していたのは、報酬額が作業時間に連動していたためであること、④本件契約期間中、Y社を事業主とする社会保険に加入していなかったこと、⑤Y社は、従前、Xと雇用契約を締結していたが、Xが従事していたシステム開発支援業務の過程で知った顧客のソースコードやシステム構成情報の一部などを公開WEB領域にアップロードするという漏えい行為に及んだことから、当該雇用契約を解除し、その後、別の顧客との個別案件に限り業務を委託する趣旨で本件契約を締結したことが認められるから、Xは、Y社の指揮監督下において労務の提供をする者とはいえず、本件契約が雇用契約であるとは認められないから、本件賃金請求は理由がない。

珍しく労働者性が否定された事案です。

ここまで自由に、自らの裁量で仕事ができているのであれば、労働者性が否定されるのでしょうね。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性46 客室乗務員らの訓練契約の労働契約該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、客室乗務員らの訓練契約の労働契約該当性に関する裁判例を見てみましょう。

ケイ・エル・エム・ローヤルダツチエアーラインズ事件(東京地裁令和4年1月17日・労判1261号19頁)

【事案の概要】

本件は、オランダの航空会社であるY社との間で、契約期間を平成26年5月27日から平成29年5月26日までの3年間とする有期労働契約(以下「本件労働契約①」という。)及び契約期間を同年5月27日から令和元年5月26日までの2年間とする有期労働契約(以下「本件労働契約②」といい、本件労働契約①と併せて「本件各労働契約」という。)を締結し、客室乗務員として勤務していた各原告が、本件労働契約①の前にY社との間で締結した訓練契約が労働契約に該当し、Y社との間で締結した有期労働契約の通算契約期間が5年を超えるから、本件労働契約②の契約期間満了日までに被告に対して期間の定めのない労働契約の締結の申込みを行ったことにより、労働契約法18条1項に基づき、Y社との間で期間の定めのない労働契約が成立したものとみなされると主張して、Y社に対し、①期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②本件労働契約②の期間満了日の翌日である令和元年5月27日から本判決確定の日まで毎月末日限り36万9611円の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認認容

【判例のポイント】

1 本件訓練の内容は、EU委員会規則の要求する基準に準拠しつつも、Y社が作成した教材や被告独自のマニュアルに従い、Y社の航空機や設備等の仕様及びこれを踏まえて策定された保安業務や、就航する路線や客層に合わせたサービス業務等の内容に則ったものであり、他の航空会社と異なるY社に特有の内容を多分に含んだものである。
本件訓練は、訓練生が本件訓練に引き続いてY社において客室乗務員として就労することを前提として、そのために必要な知識や能力を習得するために実施されたものであって、Y社の運航する航空機に乗務する客室乗務員を養成するための研修であったと認められる。
また、Y社が各原告に対して本件訓練の訓練手当を支払うに当たって所得税の源泉徴収を行っていること、Y社が原告らに対して交付した推薦状や証明書において、原告らが客室乗務員としての稼働を開始した時期を本件訓練契約の始期と記載していること、⑧Y社が現在、日本人客室乗務員との間で、労働契約とは別個の訓練契約を締結することはせず、労働契約の締結後に本件訓練と同様の訓練を実施していること、いずれも、Y社において本件訓練を受講中の訓練生を労働者であると認識していたことを推認させるものである。
そうすると、本件訓練期間中、訓練生が正規の客室乗務員として乗務することがなかったとしても、本件訓練に従事すること自体が、Y社の運航する航空機に客室乗務員として乗務するに当たって必要不可欠な行為であって、客室乗務員としての業務の一環であると評価すべきであり、原告らは、Y社に対し、労務を提供していたと認めるのが相当である。

2 Y社の客室乗務員として乗務するためには本件スケジュールに従って本件訓練を受講し、これを修了するほかないのであるから、本件訓練期間中、原告らには訓練内容について諾否の自由はなく、原告らは、時間的場所的に拘束され、Y社の指揮監督下において本件訓練に従事していたこと、原告らに代わって他の者が本件訓練に従事することは想定されておらず、代替性もなかったことが認められる
したがって、本件訓練期間中の原告らは、使用者であるY社の指揮監督下において労務の提供をする者であったと認められる。

3 他方、Y社が、各原告に対し、本件訓練期間中、2週間ごとに1055ユーロもの日当を支払い、本件訓練終了後に訓練手当として18万8002円を支払い、これを所得税の源泉徴収の対象としていたこと、これらの合計には全ての法定の手当が含まれるとされていること、本件訓練が途中で終了した場合には、訓練生に支払われる訓練手当は、実際の訓練契約の長さに従って計算されるとされていることからすれば、上記の訓練手当及び日当の支払は、本件訓練に従事するという労務の提供に対する対償としてされたものであり、原告らは、労務に対する対償を支払われる者であったことが認められる。
以上によれば、本件訓練期間中の原告らは、労働契約法及び労働基準法上の労働者であることが認められるから、本件訓練契約は労働契約に該当するというべきである。

上記判例のポイント1、2の事情からすれば、労働者性、労働契約該当性が肯定されることは理解ができます。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性45 元代表取締役が労災保険法上の労働者にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元代表取締役が労災保険法上の労働者にあたるとされた事案を見ていきましょう。

国・八代労働基準監督署長事件(熊本地裁令和3年11月17日・労経速2473号29頁)

【事案の概要】

Xは、平成31年1月28日、a社が運営する本件工場において、廃タイヤ・廃プラスチック破砕機のメンテナンス業務に従事中の事故により、左肘関節開放性脱臼骨折等の傷害を負った。

本件は、Xが、上記傷害は労働者の負傷に該当するとして、八代労働基準監督署長に対し労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付の申請をしたところ、八代労働基準監督署長が令和元年6月12日付け及び同月17日付けでこれらを不支給とする決定をしたことが違法であると主張して、本件各処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

労災不支給決定を取り消す。

【判例のポイント】

1 Xがa社の代表取締役を退任した後(本件事故当時)、本件工場に所属する従業員はXを含めて7名であり、工場長(リサイクル部の責任者)はFが務め、副責任者3名とともに本件工場の管理を行っており、Xは本件工場に所属する平社員3名のうちの1人として、Fから毎日朝礼時にその日の作業内容について指示を受け、本件工場内で重機を使用した廃タイヤの片付け作業を行い、Fから個別の指示を受けることもあった一方、Xが他の従業員に指示を出すことはなくなっていたものであり、a社の代表取締役を退任したXが以前の地位を理由にFや本件工場の副責任者から受けた業務上の指示を無視したり拒否したりした事実の存在は窺われない
また、本件工場の業務は顧客等から回収した廃タイヤを処理して製紙工場等への販売用チップに再資源化する業務であり、そのために毎月約150トンもの多量の廃タイヤが本件工場に搬入されていたこと、本件工場の業務量は年間を通じて落ち着いており、基本的にXを含む平社員の従業員の残業はなかったことからすれば、Xは本件工場の平社員として毎日継続的に発生する廃タイヤの処理業務を現場の責任者であるFの指示の下に淡々と行っていたにすぎず、X自身による業務量の調整はされていなかったことが推認されることに加え、Xが代表取締役退任後にその旨をa社の取引先等に通知した上で、専ら本件工場内で就労するようになり、外出をするときには工場長のFに報告し許可を得ていたことを併せ考慮すると、a社とXとの間で労働条件通知書や労働者名簿等が作成されていなかったことや本件事故後にXが雇用保険の被保険者であるとの確認を得られなかったことを踏まえても、Xは、使用者であるa社(直接的には本件工場の責任者であるF)から具体的な業務遂行についての指揮監督を受け、それに従って指示された業務を行っていたというべきであり、Xがその業務に対し諾否の自由を有していたものとは認められない

2 Xは、a社の代表取締役を退任した後、毎日、自宅から約6km離れた場所に所在する本件工場に通勤し、同工場の責任者であるFの指揮監督下に就業規則で定められた稼働時間(午前8時から午後5時までの時間帯)の間、本件工場内で廃タイヤの片付け作業を行っており、本件工場での業務を中断して外出することはほとんどなく、仮に外出する場合には責任者であるFにあらかじめ報告を行う必要があったことに照らすと、a社によりXの業務時間及び業務場所は管理されており、Xはa社における就労のために時間的場所的拘束を受けていたものと認められる。

3 Xが、a社の代表取締役退任の前後を通じて(本件事故発生時まで)本件工場内で重機を使用した廃タイヤの処理作業を行っていたことからすれば、Xのa社における業務(労務)の円滑な遂行がXよりも経験年数の少ない従業員により行うことが可能であったとは考え難いし、少なくともXの従事していた作業を他の者に代わって行わせることが容易であったことを窺わせる事情は認められない。

4 Xは、本件事故当時、a社から本件工場に所属する従業員として毎月基本給20万円の支給を受け、当該基本給から社会保険料の控除及び源泉徴収をされた後の金銭を受領していたことに照らすと、当時Xがa社から支給を受けていた基本給は、Xの本件工場における一定時間の労務の提供への対価たる賃金として支払われていたものと認められる。

5 本件事故の発生当時、Xがa社以外の会社で勤務して報酬を得ていたことはなく、個人的な事業(副業)も行っていなかったこと、Xが本件工場で廃タイヤの処理作業に使用していた重機や工具は、a社の所有物であり、X個人が所有するものはなかったことに加え、Xがa社の代表取締役退任後(本件事故発生の1年以上前)に約14年間加入していた労働者災害補償保険の特別加入者から脱退したことを照らすと、Xのa社における勤務には専従性が認められる一方、Xに事業者性は認められないというべきである。

肩書や役職等の形式面に囚われずに、働き方の実質を具体的に主張することが求められます。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性44 ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

キサラギコーポレーション事件(大阪地裁令和3年8月23日)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、賃金が未払であるとして、雇用契約に基づき未払賃金等の支払を求めるとともに、Y社代表者からセクハラ、誹謗中傷等を受けたとして、会社法350条に基づき損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Xが従事していた業務は、本件ホテルのフロント業務等であったところ、その業務内容に照らしても、XがY社から指示された仕事を受諾するか否かを自由に決定することができていたということはできず、Xが、Y社から打診された業務を拒絶したというというような事情もうかがわれず、また、Y社代表者が、Xに対し、部屋の稼働状況を問い合わせたのに対し、Y社代表者の問合せがあるたびにXが稼働状況を報告していることからすれば、Xは、Y社の指揮命令下にあったということができ、さらに、Xの勤務場所は、本件ホテル内に固定されており、業務に従事する時間もシフトによって定まっていたほか、Xはタイムカードを打刻することが義務付けられていたといえるから、Xの勤務場所・勤務時間には拘束性があったということができ、そして、Xの報酬は、時給制とされており、労務提供の時間によってその額が定めることとされていたものであること、100時間の見習い(研修)期間が設けられていたことなどからに照らせば、Xの報酬は労務対償性を有していたということができるから、Xは、Y社の指揮監督下において労務を提供し、労務提供の対価として報酬を得ていたものであり、本件契約は雇用契約であったと認めるのが相当である。

これを業務委託(請負)とするのは完全に無理があります。

強引に業務委託契約の形をとるとあとで大変なことになりますので気を付けましょう。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

労働者性43 アイドルの労働基準法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、アイドルの労働基準法上の労働者性について見ていきましょう。

Hプロジェクト事件(東京地裁令和3年9月7日・労判ジャーナル119号58頁)

【事案の概要】

本件は、亡Bの相続人である原告らが、Bとアイドル活動等に関する専属マネジメント契約等を締結していたY社に対し、Bは労基法上の労働者であると主張し、Bが上記契約等に基づいて従事した販売応援業務に対する対価として支払われた報酬額は、最低賃金法所定の最低賃金額を下回るとして、労働契約に基づく賃金請求権として、上記報酬額と最低賃金法所定の最低賃金額との差額+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Bは、本件賃金請求期間中、平成28年契約又は本件契約に基づき、Y社が提供するタレント活動のためのトレーニングを受けながら、Y社が企画したり、取引先等から出演依頼を受けたイベント等に参加してライブ等を行ったり、イベント会場に出店した小売店等の販売応援を行うなどのタレント活動を行っていたことが認められる。
Bは、本件グループのイベントの9割程度に参加していたが、イベントへの参加は、本件システムに予定として入力されたイベントについてBが「参加」を選択して初めて義務付けられるものであり、「不参加」を選択したイベントへの参加を強制されることはなかった。また、平成28年契約にも本件契約にも就業時間に関する定めはなかった。
以上によれば、Bは、本件グループのメンバーとしてイベント等に参加するなどのタレント活動を行うか否かについて諾否の自由を有していたというべきであり、Y社に従属して労務を提供していたとはいえず、労基法上の労働者であったと認めることはできないというべきである。

2 本件グループのメンバーに報酬が支払われるようになった経緯に照らすと、本件グループのメンバーに支払われていた報酬は、本件グループのメンバーの励みとなるように、その活動によって上がった収益の一部を分配するものとしての性質が強く、メンバーの労務に対する対償としての性質は弱いというべきである。
また、販売応援に対する報酬は、1回当たり2000円又は3000円を支払うというものであり、Xが指摘するとおり、日当のような外形を有しているものの、これは平日の販売応援に対してのみ支払われるものであり、ライブが行われる土日祝日に販売応援を行ったとしても支払われることはなかった。
本件グループのメンバーは、アイドル活動をすることを目的に本件グループに所属していたものであり、その本来の目的であるライブができたときには販売応援をしても上記のような報酬が支払われることはなかったことに照らすと、上記報酬は、メンバーの多くが参加したがるライブに出演できなかったにもかかわらず、アイドル活動としての性格が相対的に弱い販売応援にのみ従事したメンバーに対し、公平の見地から支払われていたものと見るのが相当であり、このような上記報酬の性質に鑑みると、販売応援という労務に対する対価としての性質は小さかったというべきである。

かなり際どい事実認定だと感じます。

労働者性が争点となる場合には、「どう考えても労働者でしょ」という事案から「微妙だなー」という事案まで幅広くありますが、本件は後者だと思います。

書こうと思えば、逆の結論の判決も普通に書けるのではないかと思います。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。