Category Archives: 解雇

解雇379 停職6ヵ月の第2次懲戒処分を違法とした原審判断を取消し、懲戒権者の裁量逸脱・濫用が認められなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、停職6ヵ月の第2次懲戒処分を違法とした原審判断を取消し、懲戒権者の裁量逸脱・濫用が認められなかった事案を見ていきましょう。

氷見市事件(最高裁令和4年6月14日・労経速2496号3頁)

【事案の概要】

普通地方公共団体であるY社の消防職員であったXは、任命権者であった氷見市消防長から、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分を受け、さらに、その停職期間中に正当な理由なく上記暴行の被害者である部下に対して面会を求めたこと等を理由とする停職6月の懲戒処分(以下「第2処分」という。)を受けた。

本件は、Xが、Y社を相手に、第1処分及び第2処分の各取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。

原審は、上記事実関係等の下において、第1処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとする一方、要旨次のとおり判断して、第2処分の取消請求を認容し、損害賠償請求の一部を認容した。
第2処分の対象となる非違行為はそれなりに悪質なものであり、被上告人は第1処分を受けても反省していないとみられるが、上記非違行為は、反社会的な違法行為とまで評価することが困難なものである上、第1処分に対する審査請求手続のためのものであって第1処分の対象となる非違行為である暴行等とは異なる面があり、同種の行為が反復される危険性等を過度に重視することは相当ではない。そうすると、第1処分の停職期間を大きく上回り、かつ、最長の期間である6月の停職とした第2処分は、重きに失するものであって社会通念上著しく妥当を欠いており、消防長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものである。

【裁判所の判断】

原判決中上告人敗訴部分を破棄する。

前項の部分につき、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

【判例のポイント】

1 被上告人によるHへの働き掛けは、被上告人がそれまで上司及び部下に対する暴行及び暴言を繰り返していたことを背景として、同僚であるHの弱みを指摘した上で、第1処分に係る調査に当たって同人が被上告人に不利益となる行動をとっていたならば何らかの報復があることを示唆することにより、Hを不安に陥れ、又は困惑させるものと評価することができる。
また、被上告人によるCへの働き掛けは、同人が部下であり暴行の被害者の立場にあったこと等を背景として、同人の弱みを指摘するなどした上で、第1処分に対する審査請求手続を被上告人にとって有利に進めることを目的として面会を求め、これを断ったCに対し、告訴をするなどの報復があることを示唆することにより、同人を威迫するとともに、同人を不安に陥れ、又は困惑させるものと評価することができる

2 そうすると、上記各働き掛けは、いずれも、懲戒の制度の適正な運用を妨げ、審査請求手続の公正を害する行為というほかなく、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に明らかに該当することはもとより、その非難の程度が相当に高いと評価することが不合理であるとはいえない。また、上記各働き掛けは、上司及び部下に対する暴行等を背景としたものとして、第1処分の対象となった非違行為と同質性があるということができる。加えて、上記各働き掛けが第1処分の停職期間中にされたものであり、被上告人が上記非違行為について何ら反省していないことがうかがわれることにも照らせば、被上告人が業務に復帰した後に、上記非違行為と同種の行為が反復される危険性があると評価することも不合理であるとはいえない
以上の事情を総合考慮すると、停職6月という第2処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。
以上によれば、第2処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

ちなみに、第1審(富山地裁令和2年5月27日)は、Xの請求をすべて棄却しました。

控訴審(名古屋高裁金沢支部令和3年2月24日)は、前記のとおり、第2処分を違法として取り消し、22万円の賠償金の支払いを命じました。

このような処分の相当性に関する評価は、ぶっちゃけ、どっちの結論でも判決が書けてしまうのです。

親と裁判官は選べませんので、ぎりぎりの事案における勝敗は、もはや運と言っていいでしょう。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇378 試用期間満了による契約社員の本採用拒否が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、試用期間満了による契約社員の本採用拒否が有効とされた事案を見ていきましょう。

柏書房事件(さいたま地裁令和4年4月19日・労経速2494号24頁)

【事案の概要】

本件は、Xは、Y社が令和2年2月4日をもってした解雇は無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と解雇後の賃金の支払を求めるとともに、在職中に上司らがXを執拗に叱責したことが不法行為(パワーハラスメント)に当たるとして、民法715条1項、709条、会社法350条に基づく損害賠償請求として慰謝料等110万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、経験者として採用されたにもかかわらず、書店担当者の不在を確認せずに訪問したり、電話営業で不在であった担当者に再度電話をかけないまま放置したりし、結果としてY社が営業担当者に期待する売上を達成できない日が多くあるなどしたほか、Y社代表者の指示や営業部会の決定に反し、Pに対して本件書籍の帯の制作を止めるよう連絡せず、あたかも使用する場合に備えて制作は進めておくかのような連絡をし、Pから帯のデザインが送られてきても営業部内で情報を共有せず、また、無断で書店に帯を送った後に営業部会で帯の活用を提案し、却下されてもなお帯を送ったことを報告しないなど、業務命令に違反し、注意や叱責を受けてもこれを不当と捉えて内省しなかったものであり、Xの妻と思しき人物による誹謗中傷や抗議の電話などと同時期に体調不良を理由に出社しなくなり、本件解雇の通知書を受けると、出社無用との指示どおり、欠勤の連絡もしなくなったものである。
かかるXの勤務態度、業務成績、勤怠等を踏まえれば、Xは、小規模出版社であるY社の営業職としての適性を有するとは認め難いところ、かかる事情は、Y社がXについて本採用を拒絶し、試用期間満了をもって契約を終了させることにつき、やむを得ない事由に該当するというべきである。

経験者として中途採用された従業員の場合、当然、新卒の従業員とは求められるレベルが異なります。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇377 営業成績不良を理由とする退職扱いの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、営業成績不良を理由とする退職扱いの有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

日本生命保険事件(東京地裁令和4年3月17日・労判ジャーナル127号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結し、保険営業の業務に従事していたXが、Y社に対し、主位的に、解雇(労働契約の終了)について解雇権濫用により無効であると主張し、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、また、Y社の従業員からパワーハラスメントを受けた旨主張し、不法行為又は債務不履行による損害賠償金1100万円等の支払を求め、予備的に、上記解雇が有効であるとしても、Y社の従業員から違法な勧誘行為を受けて前勤務先を退職してY社に入社させられたことが不法行為に当たる旨主張し、不法行為による損害賠償金530万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件労働契約において、Xの営業成績が職選基準に達しない場合は営業員としての資格を失い、労働契約が終了する旨が記載され、営業職員規程において、職選基準の具体的な内容及び未達成の場合に退職となる旨が記載されていること、Y社は特別教習生に対する研修において職選基準を達成することができなければ契約が終了する旨を説明していること、Xは、Y社から交付されていた端末を通じて自らの職選基準の達成状況を確認することができたこと、営業部長であるCは営業職員との毎月の面談時に職選基準の内容、職選基準が未達成の場合には本件労働契約が終了するとされていたこと、及び、自らの職選基準の達成状況について認識していたものと認められるから、本件退職扱いは、客観的合理的理由及び社会的相当性を欠くものとは認められず、本件退職扱いは有効である。

基準が明確なのはよくわかりますが、このようなケースでは基準に満たない場合は解雇が有効と判断されるようです。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇376 職場における暴言等を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、職場における暴言等を理由とする解雇に関する裁判例を見ていきましょう。

アドバネット事件(東京地裁令和4年2月10日・労判ジャーナル125号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社による解雇は無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の地位確認、未払賃金等の支払、Y社及びY社の従業員からXが受けた言動及び処分等にかかる不法行為及び使用者責任に基づく慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、従業員であるK及び上司であるHにスマートフォンを向け録音撮影する、Hをにらむ、Hに対し紙を丸めて投げつける、K及びHの席周辺を歩き回る、監視カメラが設置されていると訴えて他の従業員に探させるなどしたほか、H及び従業員であるQに対し、殺すぞなどと殺害をほのめかすような発言をし、執務室においてもお前らのやっていることは犯罪だからななどと発言し、同僚に態度が大きいなどと詰問しY社代表者が止めに入ってもすぐに止めないなど、社会通念上、職場において行われる言動を逸脱し、周囲にいる者に恐怖や身の危険を感じさせる言動を行っていたことが認められ、そして、E支社の従業員のほとんどがXに対して恐怖を抱き、Xのいる場所では仕事ができないと訴え、Xとの業務を避ける、執務室外で業務を行うことをやむなくされるなどの状況が生じており、通常どおりの業務遂行に支障が生じていたことが認められ、Xの行為及び挙動は、就業規則所定の諭旨退職・懲戒解雇事由に該当するというべきであるところ、Y社として、できる限りXとの労働契約を続ける努力をしたものの、最終的にXが約束を破ったことで完全に信頼関係が破壊されたとして本件解雇を選択することもやむを得なかったというべきであるから、本件解雇は客観的合理性があり社会通念上相当であって有効である。

上記判例のポイント1の前半部分に記載されている内容をいかに立証するかという観点で証拠を残す必要があります。

どのような方法で証拠を残すかについては、顧問弁護士にご相談ください。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇375 整理解雇が有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、整理解雇が有効と判断された事案を見ていきましょう。

コスモバイタル事件(東京地裁令和4年3月2日・労判ジャーナル126号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない雇用契約を締結して就労していたXが、Y社に対し、Y社による整理解雇は無効であるなどと主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇は、いわゆる整理解雇であるところ、Y社は設立以来一貫して赤字が続いており、Y社の経営状況は極めて厳しいものであったということができ、そして、金融機関及び既存の株主からの新たな融資も見込めない状況であったのであるから、本件研究所の閉鎖及び人員削減について高度の必要性があったと認められ、また、Y社は、本件解雇を行う以前に、東京支社の従業員に退職勧奨を行い人員を削減したほか、役員らの報酬を減額するなど、相応の解雇回避努力を尽くしたということができるし、本件研究所を閉鎖して調理器具の開発・製造を断念する以上、本件研究所で業務に従事していたXらを解雇の対象とすることについても合理性があり、さらに、Y社は、本件解雇の日よりも20日以上前に、Xに対し、経営不振により本件研究所の閉鎖及び解雇になる旨伝えているところ、より丁寧にY社の経営状況を説明する余地はあったものの、Y社が5億円の赤字を計上した旨は説明しており、加えて、Xは、本件研究所において多額の開発費を要していたことを把握できる立場にあったこと、Xらの今後の処遇について一定の配慮を示していることを踏まえると、本件解雇の手続が不当であるとまではいえず、以上の事情を総合考慮すると、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないから、本件解雇は有効である。

一般論としては、整理解雇は労働者に帰責性のない解雇のため、要件はとても厳しいですが、本件のような事情があれば、裁判所も有効と判断してくれます。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇374 職務を特定して採用された広報担当の職員に対する解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、職務を特定して採用された広報担当の職員に対する解雇が有効とされた事案を見ていきましょう。

欧州連合事件(東京地裁令和4年2月2日・労経速2485)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、Y社の駐日欧州連合代表部において広報業務に従事していたXが、平成28年1月27日付けでY社がした解雇について解雇権濫用により無効であると主張し、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②平成28年2月支払分以降の賃金として、同月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、73万7965円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが採用申込時に閲覧した募集要項には、「日本語または英語の優れた文書作成と話す力、他の人との協働能力を持っている必要があります」、「チームで働く能力と厳しい締切に合わせられること」との記載があることからすれば、Xは、これらの能力が求められることを認識した上で本件雇用契約を締結したと認められる。
また、募集要項において、2年以上のウェブサイト管理の経験を含む5年以上の実務経験がある旨の記載がされていたことや、Xの給与額が一般的には高額なものといえること等の事情を考慮すれば、Xは、相当の実務経験を有する中途採用者として、主にウェブサイトに関する高度な専門性に加え、組織内の秩序に従い他の職員と協働して業務を行う高い能力が求められていたというべきである。

2 Xは、本件雇用契約において職種及び業務内容を定めて契約を締結したものであり、同業務の遂行能力に問題がある場合、配置転換を行うことが想定されているものではなく、また、Xに求められる職務能力の程度に鑑みれば、指導等による改善が想定されているということもできない。また、Y社は本件解雇に先立ち繰り返し、注意、指導を行っており、Xの職務遂行への不適格性は重大な程度に達しているといえることからすれば、Xに対して懲戒処分等の措置をとることにより、職務遂行能力の改善が期待されるものとも認められない。
したがって、解雇に先立ち配置転換又は譴責、降格等の懲戒処分がされていないとしても、本件解雇が社会的に不相当ということはできない。

高額な給与を条件とする中途採用従業員に対する解雇事件では、一般的なそれと比べて能力不足による解雇のハードルが低く判断される傾向にあります。

あくまでそれに見合った労働条件で雇用していることが前提となりますのでご注意ください。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇373 能力不足による解雇と能力改善の兆し(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、能力不足による解雇と能力改善の兆しに関する裁判例を見ていきましょう。

デンタルシステムズ事件(大阪地裁令和4年1月28日・労判1272号72頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されて営業担当職員として勤務していたXが、Y社に対し、Y社がした解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに本件解雇後の未払賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 確かに、採用当初におけるXの営業成績は振るわないものであったとはいえるが、本件解雇がされた令和2年7月頃には、Xの勤務成績又は業務能率には改善の兆しが見え始めていたのであって、Xの勤務成績又は業務能率が著しく不良である状況が将来的にも継続する可能性が高かったものと証拠上認めることはできず、上司とのコミュニケーションの取り方から見て取れるXの勤務態度等にも鑑みれば、Xの勤務成績又は業務能率につき、向上の見込みがなかったとはいえず、本件解雇がされた令和2年7月末頃の時点において、Xの勤務態度又は業務能率に向上の見込みがなかったとはいえないから、Xに就業規則所定の解雇事由は認められず、また、仮に解雇事由が認められる余地があったとしても、Xを解雇せざるを得ないほどの事情があるものと証拠上認めることはできないから、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、解雇権を濫用したものとして無効である。

勤務成績不良を理由とする解雇の場合には、本件のように「改善の兆し」についても考慮要素となり得ることを押さえておきましょう。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇372 26日間無断欠勤した従業員に対する解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、26日間無断欠勤した従業員に対する解雇の有効性を見ていきましょう。

春江事件(東京地裁令和3年12月13日・労判ジャーナル124号70頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で廃棄物の収集運搬業務に従事していたXが、多くの従業員が予定を調整して夏季休暇を取得する時季に、突然長期間の組合有給休暇の取得を届け出て、その取得理由について説明を求められたにもかかわらずこれに応じず、不誠実な対応に終始して正当な理由のない欠勤を続けるなどした上、再度必要な説明もなく長期間の組合有給休暇の取得を届け出たことなどを理由として、Y社から解雇されたことについて、Y社に対し、同解雇は無効であるとして、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、解雇後である平成30年10月2日から判決確定の日まで毎月25日限り月額賃金43万7556円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xが約1か月にわたり26日間も無断欠勤したことは、労務提供義務が労働契約の本質的な義務であることやその結果として被告の業務に多大な影響を与えたことを踏まえると悪質かつ重大な非違行為であると評価するのが相当であり、このような労務提供の懈怠は、原告において就労義務を果たす意思がないものといわざるを得ない
この他に、Xによる組合有給休暇の取得に係る期間は、Y社において他の従業員も多く年次有給休暇を取得する時季であったことからすると、長年被告において勤務するXにおいても届出時点で少なからず業務に支障が生じさせることは容易に想定できたものといえること、Y社からの度重なる指示や命令に従わず、これを一方的に拒絶し、頑なに説明や出社に応じない不誠実な態度に終始していたこと、Y社との間で長期かつ連続した組合有給休暇の直前取得の可否が問題となっている中で、1度は適切に年次有給休暇の取得へと変更したものの2度にわたって長期かつ連続した組合有給休暇に係る休暇届を特段の説明もなく直前に提出するなどしていたことなど本件解雇に至る経過を踏まえると、不誠実な態度や就労意思の欠如といった傾向がたやすく改善される見込みがなかったものというべきであり、無断欠勤に対し事前に就業規則上の処分を受けていないこと、考慮すべき同種の処分歴は見当たらないことなど本件解雇による現実的な不利益を含むXに有利な事情を最大限考慮しても、本件解雇は社会通念上相当なものと認められる。
よって、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である。

無断欠勤による懲戒処分の相当性が問題となる事案においては、そもそも「無断」であったか否かが争点となることがあります。

適切に事実認定をしてもらうためには、日頃からエビデンスを残すという発想を持ちながら労務管理を行うことが極めて重要です。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇371 リハビリ出勤を経ることなく、連続欠勤を理由とする解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、リハビリ出勤を経ることなく、連続欠勤を理由とする解雇が有効とされた事案を見ていきましょう。

三菱重工業事件(名古屋高裁令和4年2月18日・労経速2479号13頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、私傷病による連続欠勤日数が就業規則所定の上限日数を超えたことを理由に、使用者であるY社において平成30年5月23日付けで行った解雇が無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認やバックペイ、違法な再出勤の不許可と本件解雇に関する慰謝料等を請求した事案である。

なお、Y社の就業規則では、私傷病の連続欠勤日数が33か月を超えた場合(再出勤開始後6か月未満で再び欠勤した場合は前後の欠勤期間を通算する。)は解雇するとされており、就業規則細部取扱別紙では、所定要件に該当する私傷病欠勤者が再出勤を申し出た場合には、所定期間において短時間勤務等のリハビリ勤務を行った上で当該期間中の勤務状況等踏まえ、再出勤の可否を決定することとされている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成29年3月13日の第3回再出勤審査会の時点で、リハビリ勤務など軽易作業に就かせればほどなく従前の職務である工務主任と同等の職務を通常の程度に行える健康状態になっていたとは認められず、平成30年4月12日の第4回再出勤審査会の時点(又は遅くとも在籍容赦期間満了日である同年5月23日の時点)で、従前の職務である工務主任と同等の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していた、又は、リハビリ勤務など軽易作業に就かせればほどなく従前の職務である工務主任と同等の職務を通常の程度に行える健康状態になっていたとは認められず、同年1月の再出勤の申出の際に、Xが配置される現実的可能性があると認められる他の業務(Y社において統括基幹職又は主任が担当すべき業務)についてXが労務の提供をすることができ、かつ、Xがその提供を申し出たとも認められないから、XとY社との雇用契約は、同年5月23日、本件解雇によって終了したものというべきである。

リハビリ勤務は、復職の可否を判断する上での必須の手続きではありません。

休職期間の経緯、休職期間満了時の症状等を主治医や産業医の意見を踏まえて判断することになります。

休職期間満了時の対応は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

解雇370 退職合意の有効性と就労意思の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、退職合意の有効性と就労意思の有無について見ていきましょう。

グローバルマーケティングほか事件(東京地裁令和3年10月14日・労判1264号42頁)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、Xが、Y1社及びY2社の両者と締結していた労働契約に基づき、被告会社らとの間で令和元年5月30日にされた退職合意は不成立又は無効であるとして、被告会社らに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、平成30年10月に被告会社らによりされた賃金の減額を伴う給与体系の変更は無効であり、在職中の未払賃金が存在するとして、被告会社ら及び同社らの代表社員であるY3に対し、令和元年7月分(同年8月10日支払)までの基本給、歩合給及び残業代の未払賃金合計123万8193円+遅延損害金の連帯支払等、Y3らによる退職強要が違法であるとして、被告らに対し、Y3については民法709条、被告会社らについては会社法600条による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円と弁護士費用10万円の合計110万円+遅延損害金の連帯支払を求め、さらに、被告会社らに対し、労基法114条に基づき、未払割増賃金に対する付加金として67万0290円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 XとY2社との間において、XがY2社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y2社は、Xに対し、86万7869円+遅延損害金を支払え。

 Y2社は、Xに対し、令和元年9月から本判決確定まで毎月10日限り18万円+遅延損害金を支払え。

 Y2社は、Xに対し、21万2315円+遅延損害金を支払え。

 XのY2社に対するその余の請求並びにY1社及びY3に対する請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xの要求は、本件面談当初から持ち出していたものではなく、原告は、本件面談の当初は、在職を希望していたのである。すなわち、Y3は、本件暴行の事実を否定した原告に対し、実際には防犯カメラの映像を確認していないにもかかわらず、「全部録画されているから」、「それも映ってます。」などと述べ、A弁護士も、被告Y3の同発言を前提として、原告に対し、「映像を全部分析して、あなたが言ったことも全部暴いて。」、「応諾しないのであればもう私が出ているから、就業拒否で自宅待機。で、懲戒解雇」、「転職先からですね、過去の経歴調査が入るんですよ。」などと述べたことから、原告は、当初希望していた在職を希望しなくなり、退職を前提とした退職条件の交渉に終始した経緯に照らせば、Xは、上記Y3及びA弁護士の一連の発言により、防犯カメラ映像に本件暴行の様子が記録されており、当該映像の存在及び内容を前提にすると法的に懲戒解雇や損害賠償請求が認められると認識したことにより、在職を諦め、退職の意向を示すに至ったとみるのが相当である。
Xが、本件面談の当初、本件暴行の事実を否定し、在職を希望していたことに加え、当時、美容師の資格は有していたものの、既に再就職先を確保していたことや、再就職先を探していたことはうかがわれないこと、Xは、当時、扶養すべき家族があり、実際にも被告会社らを退職後に美容師とは全く職種の異なる不動産会社の営業職に就職していることからすれば、退職に伴う原告の不利益は大きいものがあったことなどの事情を総合すると、Xにおいて、防犯カメラの映像に本件暴行の場面が記録されているとの認識を持たなければ、退職の意向を示すことはなかったことが認められる
以上に判示したところを総合考慮すれば、Xは、Y3及びA弁護士から、実際には記録されていなかった防犯カメラの映像に本件暴行の場面が記録されており、これを前提として懲戒解雇や損害賠償請求が認められると言われ、在職を希望する言動から退職を前提とした退職条件の交渉に移行して退職合意書等に署名したものであるから、その自由な意思に基づいて退職の意思表示をしたものとは認められず、本件退職合意の成立は認められないというべきである。

2 被告らは、Xが、本件面談の後、X代理人に対し、退職合意書等に署名をして和解した旨報告し、翌日である令和元年5月31日には、同代理人をして、Y3及びA弁護士に対し、和解契約の履行を求める旨の書面を送付していることから、追認により新たに退職合意が成立したものとみなされる旨主張する。
しかしながら、Xは、本件面談当時、被告らが本件暴行の記録されている防犯カメラ映像を有しているとの事実と異なる認識を有し、上記書面送付当時においてそのような認識が払拭されたと認めるに足りる証拠はないから、上記書面送付当時、Xにおいて本件退職合意が無効ないし不成立であると知っていた(民法119条ただし書参照)ものとは認められず、上記書面送付をもって、本件退職合意を追認したということはできず、被告らの上記主張は採用することができない。

3 Xは、美容師の資格を有し、本件店舗において美容師として勤務していたところ、本件退職合意後、その資格を生かすことができず、職種も異なる不動産会社の営業職として再就職していること、再就職後の給与額は月額22万円から35万円程度と変動があり、本件賃金変更前には基本給だけで月額30万円を支給されていたことと比較して不安定であり、平均的にみると給与額も減少していることが認められるから、他に特段の事情が認められない本件においては、再就職によりXの就労意思が失われたと認めることはできない

合意退職の有効性の判断過程について、上記判例のポイント1をしっかり理解しておきましょう。

また、上記判例のポイント3のとおり、再就職したとしても必ずしも復職の意思が喪失したとは認定されないので注意しましょう。

退職合意をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。