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解雇2(勤務成績不良による解雇その1)

おはようございます。

勤務成績不良を理由に解雇する場合、そう簡単には解雇は認められません。

以下の2つの参考判例で確認しましょう。

1 エース損害保険事件(東京地裁平成13年8月10日決定・労判829号5頁)

(1) 長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は、それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなけれはならない程度に至っていることを要する

(2) (1)に加え、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである

2 セガ・センタープライゼズ事件(東京地裁平成11年10月15日決定・労判770号34頁)

(1)平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである

(2)解雇された従業員は、確かに従業員の中で下位10%未満の考課順位ではある。しかし、この人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに労働能力が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない。
 相対的に10%未満の下位の考課順位に属する者がいなくなることはありえない。

(3)他の解雇事由との比較においても、「労働能率が劣り、向上の見込みがない」という解雇事由は、極めて限定的に解さなければならないのであって、常に相対的に考課順位の低い者の解雇を許容するものと解することはできない。

もちろん、勤務成績や勤務態度の不良を理由とする解雇が有効と認められるケースもあります。
しかし、それらは、やはり、重大な程度に達している場合です。

では、どの程度の勤務成績不良であれば、解雇が有効とされているのでしょうか。

次回、解雇を有効とした判例を検討してみたいと思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇1(T運送事件)

おはようございます。

今日は、解雇に関する裁判例を見てみましょう。

T運送事件(大阪地裁平成22年1月29日判決・労判1003号92頁)

【事案の概要】

会社は、女性事務社員2名をいじめ等の陰湿な行動によって退職に追い込んだこと、事務スキル向上の望みがないことを理由として、従業員Xを解雇した。

従業員Xは、いじめ等の事実について否定している。

会社は、事実関係の確認をしておらず、Xの直属上司がXに対して注意指導を行ったとは認められない。

Xは、解雇は無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、賃金の支払いを請求した。

【裁判所の判断】

解雇は無効(会社側控訴)。

【判例のポイント】

1 Xの女性事務社員に対する言動に多少配慮の欠ける点があったことは否定できないが、いじめ等の行為を行っていたとまでは認められない。

2 仮に、Xのいじめ等があったとしても、会社が当該事実について、両者の言い分を十分に聴取した上で、Xに対し、明確な注意指導あるいは懲戒を行うなどして、Xの態度及び職場環境の改善等を図るべきであるが、これらの措置をとったとは認められない。

3 Xの事務スキル不足の事実は認められない。

会社としては、きっちりと事実確認をしなくてはいけません。

また、解雇する前にやるべきことがたくさんあります。

社長、いきなり解雇するのはやめましょう。

裁判になったらたいてい負けます(くらいに思っておいて下さい)。

あと、「能力が低い」という会社側の主張はほとんどの場合、通りません。

小さなミスを必死になってかき集めてきて、能力が低いと主張してくることがよくあります。

これまで、全くミスについて指導したり、処分しないで、「能力が低いから解雇」と言ってみたところで、ダメです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。