不当労働行為255 請負契約を締結する作業者の労組法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、Y社と請負契約を締結してY社の計器工事に従事する作業者は労組法上の労働者に当たり、同人らの加入する労組の申し入れた団交に応じないY社の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ワットラインサービス事件(東京都労委令和2年2月4日・労判1225号104頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と請負契約を締結してY社の計器工事に従事する作業者は労組法上の労働者に当たり、同人らの加入する労組の申し入れた団交に応じないY社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 計器工事作業者は、ア Y社の計器工事の遂行に不可欠な労働力として、会社組織に組み入れられており、イ Y社が契約内容の主要な部分を一方的・定型的に決定しており、ウ 計器工事作業者に支払われる報酬は、労務提供に対する対価としての性格を有しており、エ 個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあり、オ 広い意味でY社の指揮監督の下に労務の提供を行っていると解することができ、労務の提供に当たり、一定の時間的場所的拘束を受けているということができる一方、カ 事業者性が顕著であるとはいえない。
これらの事情を総合的に勘案すれば、計器工事作業者は労組法上の労働者に当たることは明らかである。

2 Y社は、労組法上の労働者に当たる計器工事差御者を組織する組合の団体交渉申入れに応ずべき立場にあるところ、Y社が団体交渉事項を拒否する正当な理由は認められないのであるから、組合が申し入れた団体交渉にY社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当する。

労組法上の労働者性に関する判断です。

上記命令のポイント1の考慮要素を理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1092 自信の法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

物事をうまく進めるために「自信」の存在は極めて重要です。

自信はいかにして手に入れるのかが書かれています。

自信がある人は、無意識にやっていることですが。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちはよく、大きな障害を乗り越えて勝利をおさめた人の話を耳にする。そういう話を聞くと勇気が出てくるが、それは自分よりはるかにすぐれた能力の持ち主なのだと思ってしまいやすい。だが、彼らに共通しているのは、すぐれた能力ではなく粘り強さなのだ。」(50頁)

すなわち、「継続する力」の有無こそが最も重要な力ということです。

自信をつけるために必要なのは、途中で投げ出さずに続けること。それだけです。

それ以外の方法でどうやって自信を持てばいいのでしょうか。

結果が出るまで続ければ、結果は必ず出ますよ。

結果が出る前にやめちゃうから結果が出ないのです。

不当労働行為254 使用者側代理人の発言と不誠実団交(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、勤務態度および勤務成績不良を理由に組合員1名を解雇したこと及び団交におけるY社の代理人弁護士らによる不適切な発言が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

フォーラム事件(大阪府労委令和2年3月13日・労判1225号103頁)

【事案の概要】

本件は、勤務態度および勤務成績不良を理由に組合員1名を解雇したこと及び団交におけるY社の代理人弁護士らによる不適切な発言が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社が解雇理由証明書で示した5つの解雇理由については、X組合員の勤務態度及び勤務成績が不良であり、かつ、それらが解雇というY社から排斥すべき程度に重大なものであったと認めることができず、したがって、本件解雇には合理的な理由があるとまではいえない。
Y社は、X組合員の勤務成績や勤務態度を組合加入前から問題視し、それを理由に退職を求めていたものの、組合が未払残業代の支払い要求、パワハラへの抗議、他の社員分の残業代請求と、組合活動を活発化させた時期に本件解雇の予告に踏み切ったとみるのが相当である。

2 30.7.6団交におけるY社の代理人弁護士らによる6月12日の段階では団体交渉の申入れが行なわれていない旨の発言及び組合の権限をめぐるやり取りの際の一連の対応は不誠実というほかなく、かかるY社の対応は、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である。

団交に参加した使用者側代理人の発言によっても、不誠実団交と評価されますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1091 将来の夢なんか、いま叶えろ。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

堀江さんの新しい本です。

いつもながら、計画を立てている暇があったら、どんどん行動しようというメッセージが書かれています。

PDCAなどといった眠たいことをやっているほど人生は長くありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

目標とか計画とか、順序立てて踏んでいく必要なんてない。やりたいことにゼロ歩でアクセスできるなら、それがベストのはずだ。僕は、計画なんて立てない。目標も持たない。・・・戦略的に段階を踏んでマーケットを押さえていくような計画性は、実践では役に立たない。どうせスタートしたら、計画どおりになんか進まないのだ。」(58~59頁)

そのとおり。

事業計画なんてくその役にもたちませんから。

銀行からお金借りる時に、しかたなしになんとなくやっつけで作っているだけですから。

1年後、どうなるかなんてやってみないとわからないじゃないですか。

計画とか何年後の目標とか、もうほんとどうでもいいですから。

やりたいことをやりたいときにやりたいようにやればいいのです。

うまくいかないならそのときに修正すればいいだけの話。

解雇332 新規採用をしつつ整理解雇は許されるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、教諭らに対する整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人明浄学院事件(大阪地裁令和2年3月26日・労判ジャーナル101号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y学校の専任教諭であった元教諭X1・2が、Y学校による整理解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成30年4月から令和元年12月まで毎月20日限り、X1については月額約33万円、X2については月額約29万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 平成30年2月頃までには、専任教諭2名が懲戒解雇され、専任教諭8名が希望退職に応じ、また、平成30年3月に定年退職予定者1名がいる状況であり、さらに、Y学校の人員削減方針の対象者には常勤講師も含まれるところ、平成30年3月には常勤講師7名が退職となっており、そのために同月頃、新たに13名を採用していることからすると、本件各解雇の予告を撤回してXらの雇用を継続することができなかった理由も見当たらないから、Xら2名を解雇する人員削減の必要性まであったのか否かについては疑問があり、人件費の削減は、解雇に至らなくても教諭らの給与額を削減することによっても達成することができたのに、Y学校はXらに対し、保健体育教員として在職したまま給与を減額する提案を行っておらず、さらに、Y学校が本件各解雇に先立ち、常勤講師の更新の可否を検討したなどの事情も見当たらないから、人員削減の対象として保健体育教員を選択する人選の合理性が認められず、また、Y学校が十分な解雇回避努力を行ったとも認められないから、本件各解雇は、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。

整理解雇をしつつ、新たに採用をするとなりますと、多くの場合、整理解雇の必要性が否定されてしまいます。

そのようなケースでは、解雇回避努力も不十分なことが多いので、いずれにせよ解雇は無効となります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1090 企業化する士業と、勝者のメンタリティ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

国内最大級の士業グループの経営者について取材した内容が書かれています。

タイトルのとおり、士業の事務所がどんどん企業化し、拡大していく様子がわかります。

私は真逆をすすんでいますけどね(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大事なのは、私どもの仕事の目的は、依頼された業務を完成することではないということです。その仕事を通じて顧客との信頼関係を確立することです。その判断基準が、顧客が新しい顧客を紹介してくれたかどうかです。仕事の完成ではなく、仕事を通じて、信頼関係を確立する事が目的です。仕事は手段にすぎないのです。仕事の成功とは、ひとりの顧客から複数の顧客を紹介していただくことなのです。顧客満足をきちんと勝ち得たかどうか、士業の成功はこれだけだと思います。」(217頁)

特に士業に限った話ではありません。

あらゆる仕事にあてはまります。

仕事を通じてどれだけファンをつくれるか、ということです。

ただ、なんとなく目の前の仕事をこなすだけでは、仕事自体が目的となってしまいます。

仕事はあくまでも手段であるという意識を持つことが大切なのだと思います。

労働時間65 勉強会への参加は労働にあたる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、勉強会の労働基準法上の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

前原鎔断事件(大阪地裁令和2年3月3日・労判ジャーナル101号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していたXが、Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であると主張して、地位確認及び未払賃金等の支払を、Y社の従業員らからパワハラ行為を受けたと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償等の支払を、時間外労働を行ったが、割増賃金が支払われていないと主張して、未払割増賃金等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求棄却

損害賠償請求棄却

割増賃金支払請求一部認容

【判例のポイント】

1 確かに、「勉強会」は、本件組合の提案を受けて開催されるようになったものではあるものの、Xに対する指導内容等を振り返ることを内容とするものであるから、Xが参加せずに開催されることはそもそも予定されておらず、また、Xは、D取締役が入社した平成20年の時点において、既に、Y社の従業員らから、なかなか仕事の技術が身に付かないと認識されていたものであり、Xが「勉強会」に参加せず、その後も技術が身に付かないままであれば、Xの賃金や賞与の査定如何にかかわるのは明らかであり、加えて、Y社の就業規則には、「会社は、従業員に対し、業務上必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う」、「従業員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合は、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受講しなければならない」と規定されていることをも併せ鑑みれば、Xが「勉強会」に参加する時間は、Y社の指揮命令下に置かれている時間、すなわち労働基準法上の労働時間に該当すると解するのが相当である。

勉強会、研修会の労働時間性については昔から争点となってきましたが、いまだに訴訟上問題となります。

参加が任意なのか、(事実上も含め)強制されていたのかが基本的な判断基準となります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1089 英語 最後の学習法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間頑張りましょう。

今日は本の紹介です。

非常にオーソドックスな英語学習法が書かれています。

詰まるところ、奇を衒わない地道な勉強法が一番効果的です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いきなりですが、クイズを出題します。
『ある村に不思議な力を持つ女性が住んでいます。彼女が雨乞いの踊りをすると、必ず雨が降ります。それはなぜでしょうか?』
正解は『雨が降るまで踊りをやめないから』。踊り続けれていれば、いつかは雨が降る。だから、雨乞いが100%成功するというわけです。・・・雨乞いの踊りのように、続けていれば誰でも『成功』することができるものなのです。」(164~165頁)

まあ、そういうことです。

結果が出る前に「結果が出ない」と言って辞めてしまう(笑)

そりゃ、結果が出る前に辞めちゃうんだから、結果なんて出ないですよ。

時間がない、向いていない、疲れた、遊びたい、寝たい、ユーチューブ見たい・・・

そりゃ、結果なんて出るわけないですわ。

賃金199 賞与・定期昇給に関する採用面接時に説明と未払賃金等請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、面接時の説明と未払賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人稲荷学園事件(大阪地裁令和2年3月13日・労判ジャーナル101号32頁)

【事案の概要】

本件は、保育士Xが、かつての勤務先であるY社に対し、雇用契約に基づく、平成29年度冬季賞与の未払部分約37万円、平成29年4月から平成30年までの基本給の未払部分合計約2万円、平成29年度夏期及び冬期賞与の未払部分合計1万円、平成30年1月から同年3月までの未払通勤手当合計約1万円の各支払請求のほか、福利厚生の一環として飲食補助費を支払う旨の合意に基づく、飲食補助費2万円の支払請求、さらには、Y社がXに対してパワハラかつ名誉毀損の不法行為に基づく、損害賠償(慰謝料)約106万円の支払請求とともに、民法723条の名誉回復処分としての「謝罪文」と題する書面に署名押印することを求めた事案である。

【裁判所の判断】

通勤手当に関する未払賃金は一部認容

損害賠償等請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件採用面接の際、現Y社代表者から、賞与に関して、前年度には基本給4.4か月分の金員を支払っており、今後も同等の金額の賞与を支払う予定であるなどと告げられたと主張するが、X主張に係る現Y社代表者がしたという発言は、賞与に関する一般的な説明をしたにすぎず具体的な一定割合の賞与の支払いを確約したものであるとは認め難い。また、就業規則によって労働条件が規律され得ることから、Y社の就業規則の一部を構成する賃金規程上の賞与に関する定めについてみることとしても、「賞与は毎年7月および12月に支給する」とあるものの、具体的な支給額や支給割合を明示するものではないから、本件雇用契約の内容として、Y社はX主張に係る賞与の支払義務を負うものではない

2 Xは、本件採用面接の際、現Y社代表者から、毎年4月、定期昇給として月額6000円ずつ基本給を増額し、実績が良好であればさらに特別昇給を行うなどと告げられたと主張するが、賞与と同様の観点から、Y社の賃金規程上の定期昇給に関する定めをみることとしても、原則的な年1回の定期昇給とともに、社会情勢あるいはその他諸事情によって定期昇給がされないことがある旨定められているなど、定期昇給の実施についてY社の裁量があり得ることが示されているのであって、具体的にX主張に係る月額2000円の定期昇給の実施を定めたものとはいい難く、Xの主張を基礎付けるものにはなり得ず、ほかにX主張事実を認定するに足りる証拠はないから、本件雇用契約の内容として、Y社はX主張に係る定期昇給に伴う金員の支払義務を負うものではない。

いずれの判断も規程を重視したものです。

賞与も定期昇給も確約されるものではないという社会通念にも合致します。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1088 できる40代は、「これ」しかやらない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

基本的に組織で働いている40代サラリーマンを対象とした本です。

共感できる意見と「うーん、そうかなー?」という意見が半々くらいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

40代は人生の折り返し地点であると同時に、ビジネス人生の折り返し地点でもあります。社会に出てから、今日まであっという間ではありませんでしたか。しかし、これからの後半戦は前半戦とは比較にならないくらい驚速で進行していきます。ぼんやりと漂流していると、何もしないまますぐに時が過ぎてしまいます。」(40頁)

毎年、年末が近づくにつれて、「1年、あっという間だね」と嘆いていませんか?

死ぬまでにあと何回「1年、あっという間だね」と言えるのでしょうか。

人生は本当に短いです。

だからこそ、いつもブログで書いているとおり、無駄なことに時間を使いたくないのです。

世間体や他人の評価を気にするあまり、どれほど無駄なことをやり続けていることか。

いろんなことを我慢していると、やりたいこともやれずに人生が終わります。

どうせ人生はすぐ終わるのです。生きたいように生きればいいんですよ。