同一労働同一賃金16 嘱託職員の基本給・賞与と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、嘱託職員と正社員との基本給・賞与の相違と労契法20条に関する裁判例を見てみましょう。

トーカロ事件(東京地裁令和2年5月20日・労判ジャーナル102号2頁)

【事案の概要】

本件は、金属等の表面処理加工等を業とするY社(従業員560名)に1年の期間の定めのある労働契約により雇用され、21回の更新を経ている女性従業員Xが、期間の定めのない労働契約を締結した正社員と業務の内容等が同一であったにもかかわらず、基本給及び賞与が正社員よりも低額であり、地域手当を支給されなかったことが労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、主位的には労働契約による賃金請求権、予備的には不法行為による損害賠償請求権に基づき、金員の支払いなどを請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Aコース正社員と嘱託社員との間には、担当業務の範囲が限定され、役職への就任及び管理職への昇任が予定されていないなどの共通点がある。しかし、嘱託社員の担当業務はその一部に限られ、担当業務の範囲に相違がある上、Aコース正社員には職能資格制度が採用され、同制度を通じた職務遂行能力の向上、教育、評価等が予定されているのに対し、嘱託社員には同制度が採用されていないという点でも相違があり、人事評価の対象、項目及び評価方法並びに採用手続も異なっている。このように、Aコース正社員と嘱託社員とは、担当業務の範囲、期待される能力や役割に一定の相違がある

2 地域手当は、初任給の額が全国一律であるという正社員固有の賃金制度に由来する問題を解消するための手当ということができる。これに対し、嘱託社員の賃金は、採用の目的等を勘案して個別決定され、家賃の高さその他の各嘱託社員の居住地域固有の事情も考慮して、採用した地区ごとに賃金額を決定することも可能である上、転勤も予定されていないことに照らせば、嘱託社員には、初任給額が全国一律であることから生じた関東地区における正社員の安定的確保という地域手当の支給に係る事情は妥当しない
以上に判示した地域手当導入の趣旨や労使交渉を経て同手当が廃止された経緯を総合すると、Aコース正社員と嘱託社員との間における地域手当の相違は、不合理であると評価することはできない。

各種手当については、当該手当の趣旨から合理的な説明ができるかがポイントです。

趣旨がよくわからない手当は合理性の説明が難しいので注意が必要です。

合理的説明のしかたについては顧問弁護士に相談をしてください。