本の紹介1104 会社を離れても仕事が途切れない7つのツボ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

スタディサプリの社会科の先生の本です。

フリーランスの働き方のツボを伝授してくれています。

むしろ組織に属している人こそ変な癖がつく前に読むべき本かもしれません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕は、負け犬の集まりに顔を出さないようにしています。戦闘力の低い同業者や関係者が集まっても、そこは地獄の1丁目。嫉妬が渦巻く欠席裁判の連続で、人生の無駄遣いにしかならないからです。フリーランスは、『周囲にどういう人を置いてスタートするか』が本当に大事です。」(103~104頁)

まあ、負け犬の集まりかどうかはさておき、誰と時間を共有するかによって、その人の人生は大きく左右されることは間違いありません。

類は友を呼んでいる場合ではないのです。

自分が刺激を受ける人、こういう人になりたいと思う人とどれだけ同じ時間を共にするかが人生のターニングポイントになります。

ただ待っていても環境は変わりません。

自分から積極的に動かない限り、人生は1ミリも変わりません。

同一労働同一賃金16 嘱託職員の基本給・賞与と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、嘱託職員と正社員との基本給・賞与の相違と労契法20条に関する裁判例を見てみましょう。

トーカロ事件(東京地裁令和2年5月20日・労判ジャーナル102号2頁)

【事案の概要】

本件は、金属等の表面処理加工等を業とするY社(従業員560名)に1年の期間の定めのある労働契約により雇用され、21回の更新を経ている女性従業員Xが、期間の定めのない労働契約を締結した正社員と業務の内容等が同一であったにもかかわらず、基本給及び賞与が正社員よりも低額であり、地域手当を支給されなかったことが労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、主位的には労働契約による賃金請求権、予備的には不法行為による損害賠償請求権に基づき、金員の支払いなどを請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Aコース正社員と嘱託社員との間には、担当業務の範囲が限定され、役職への就任及び管理職への昇任が予定されていないなどの共通点がある。しかし、嘱託社員の担当業務はその一部に限られ、担当業務の範囲に相違がある上、Aコース正社員には職能資格制度が採用され、同制度を通じた職務遂行能力の向上、教育、評価等が予定されているのに対し、嘱託社員には同制度が採用されていないという点でも相違があり、人事評価の対象、項目及び評価方法並びに採用手続も異なっている。このように、Aコース正社員と嘱託社員とは、担当業務の範囲、期待される能力や役割に一定の相違がある

2 地域手当は、初任給の額が全国一律であるという正社員固有の賃金制度に由来する問題を解消するための手当ということができる。これに対し、嘱託社員の賃金は、採用の目的等を勘案して個別決定され、家賃の高さその他の各嘱託社員の居住地域固有の事情も考慮して、採用した地区ごとに賃金額を決定することも可能である上、転勤も予定されていないことに照らせば、嘱託社員には、初任給額が全国一律であることから生じた関東地区における正社員の安定的確保という地域手当の支給に係る事情は妥当しない
以上に判示した地域手当導入の趣旨や労使交渉を経て同手当が廃止された経緯を総合すると、Aコース正社員と嘱託社員との間における地域手当の相違は、不合理であると評価することはできない。

各種手当については、当該手当の趣旨から合理的な説明ができるかがポイントです。

趣旨がよくわからない手当は合理性の説明が難しいので注意が必要です。

合理的説明のしかたについては顧問弁護士に相談をしてください。

本の紹介1103 不思議とお金に困らない人の生き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

帯には「なぜあの人は、いつもお金に恵まれるんだろう?」と書かれています。

豊かさをいかにして手に入れるか、その思考方法が説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お前さんたち人間は、いろんなことが『普通』『当たり前』になってしまっておる。しかも普通のこと、当たり前のことには、喜びや感謝を感じにくい。これは、言い換えれば幸せのハードルが上がっているということじゃ。その結果として、カネを使う喜びや感謝を噛みしめる機会が減ってしまうんじゃよ。だから、幸せのハードルを下げて、今までは普通だったこと、当たり前だったことにも幸せを見出せるようになったほうがいいんじゃ。」(75~76頁)

幸せを感じるかどうかは、主観的なものなので、同じ環境にいても幸せを感じる人とそうでない人がいます。

また、幸せは、相対的なものではなく、絶対的なものですので、他の人と比べる必要はありません。

他人を妬んで幸せになることはありません。

見栄を張らず、世間体を気にせず、自分らしく自然体で生きているのが幸せです。

解雇335 諭旨解雇は無効で普通解雇は有効?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、カッター振り回し行為を理由とする懲戒解雇等の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

日本電産トーソク事件(東京地裁令和2年2月19日・労判ジャーナル102号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結した労働者であるXが、Y社から懲戒解雇され、その後予備的に普通解雇されたところ、上記各解雇が懲戒権の濫用あるいは解雇権の濫用に当たり、労働契約法15条、16条により無効であるなどと主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同懲戒解雇後の賃金として、平成29年5月11日から本判決確定の日まで毎月10日限り23万3200円+遅延損害金の支払を求め、さらに、同懲戒解雇及び同普通解雇がXに対する不法行為に当たるとして、同不法行為により被った精神的苦痛に対する慰謝料として、1000万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、46万6400円+遅延損害金を支払え。
Xのその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、平成29年4月のf部室内のレイアウト変更において、自席がFグループリーダーの横に配置されることに強く反発してこれを拒絶したにとどまらず、同月24日、前日の自己の退社後に席が移動されたことを知るや、G部長に対し、座席配置の変更について配慮のない行為をされ精神疾患を誘発した責任を同部長にとってもらうなどといったメールを送信し、翌25日もG部長に対し同旨の言動をして精神疾患に対する治療費を支払うよう求め、その住所を聞き出そうとしたり、同部長の前に立ちはだかったり、行く手を遮ろうとしたもので、被害妄想的な受け止め方に基づき、身勝手かつ常軌を逸した言動を執拗に繰り返したものといわざるを得ないし、その動機においても酌量すべき点はない。そして、Xは、翌26日も、病院への通院や弁護士の相談に行くための職場離脱を業務扱いにするよう求め、G部長にこれを断られるや、カッターの刃を持ち出してG部長の面前で自らの手首を切る動作をしたものであって、その動機は身勝手かつ短絡的である上、G部長や周囲の職員の対応いかんによっては自傷他害の結果も生じかねない危険な行為であったといえる。また、かかるXの行為によって、周囲の職員に与えた衝撃と恐怖感は大きかったものと推察されるし、2度も警察官が臨場する騒ぎとなったことも軽くみることのできない事情である。
このように、かかるXの一連の行為については、少なくとも、就業規則所定の懲戒事由としての「職務上の指示命令に従わず,職場の秩序を乱すとき」(80条3号)に該当することは明らかであるから、懲戒事由該当性が認められる。そして、前判示のとおりその態様も危険で悪質といえることや、この平成29年4月の部屋のレイアウト変更をめぐる一件以前にも、Xが種々の問題行動を繰り返していたことは前記認定事実のとおりであることからすれば、Xに対しては、相当に重い処分が妥当するといえないではない
しかしながら、他方で、G部長の適切な対応によるものとはいえ、この件によって傷害の結果は発生しなかったものであることや、前記認定事実のとおり、カッターの刃を持ち出したXの行為が自傷行為の目的に出たものであって、G部長や他の職員に向けられたものでなく、そのことはG部長も認識し得る状況にあったこと、前記のとおり、かかる行為が自己の要求を通すための自演であると認めるに足りる証拠はないこと、前記認定事実のとおり、Xが、gグループにおいて当初は種々雑多な業務に問題なく従事し、このうち、蛍光灯の掃除については約2000本にわたる蛍光灯をもう1名の社員と分担して行うなど、真摯な姿勢で業務に従事していた時期もあること、このレイアウト変更をめぐる件以前にも、Xに種々の問題行動があったことは前記認定事実のとおりであるものの、Xには懲戒処分歴はなかったことなど、Xにとって有利に斟酌すべき事情も認められる。このような事情をも勘案すると、1度目の懲戒処分でXを直ちに諭旨解雇とすることは、やや重きに失するというべきである。
以上のとおり、本件諭旨解雇及びそれに伴う本件懲戒解雇については、懲戒処分としての相当性を欠き、懲戒権の濫用に当たるものであって、労働契約法15条により無効であると認められる。

2 Y社は、平成29年7月11日付けで予備的に本件普通解雇の意思表示をしていることから、同解雇の効力について検討する。
前記認定事実のとおり、Xは、Y社入社直後に配属されたaグループ在籍時において、顧客との対応がうまく行かなかった時などに顧客に対し声を荒げるなどのトラブルを起こし、上司や先輩社員からの注意に対しても感情を高ぶらせるなどして、顧客との接点の少ないあるいは接点のない部署に異動を命じられたものの、そのような部署であるc事業管理部やe部においても同僚職員や上司との間でもトラブルが絶えなかった。Xは、その後、f部に異動となり、約2年以上に及ぶ出向先開拓の期間を経て、f部・gグループに配属されたが、ここでも、配属後しばらく経った後から、気に入らない業務については断ったり、他の従業員とのトラブルを起こすようになり、遂に前記で判示したとおりの平成29年4月のレイアウト変更に端を発する事件を引き起こしたものである。
このように、Xが、入社後配属された複数の部署においてトラブルを起こし、最終的に職場でカッターの刃を持ち出すなどの事件を起こしたことからすれば、Y社としては、このように職場秩序を著しく乱した原告をもはや職場に配置しておくことはできないと考えるのはむしろ当然であるといえ、かつ、それまでにも、Y社が、トラブルを起こすXに対し、その都度注意・指導を繰り返し、いくつかの部署に配転して幾度も再起を期させてきたことは、前記認定事実に照らし明らかであって、もはや改善の余地がないと考えるのも無理からぬものということができるから、本件普通解雇は、客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上も相当であると認められる。

諭旨解雇は相当性の要件を欠き無効と判断されている一方で普通解雇は有効とされた事案です。

同じ解雇でもこのように結論が分かれることがわかる非常に勉強になる裁判例ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1102 ラーメンを気持ちよく食べていたらトップセールスになれた(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、元プルデンシャル生命の本部長の方です。

プルデンシャル生命のトップセールスマンの方々の本はたくさん出版されていますが、業界を問わず、とても参考になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私はそれまでメンバーにたくさんのことを伝えてきましたが、その中で最も大切にしている言葉が『平生』(へいぜい)です。これは『普段の何気ない生活の中にあなたの実力がでる』ということです。・・・普段、会社や家族・友人・地域コミュニティなどの中できちんとできていることしか、お客さまの前ではできないということです。だからこそ、『普段の生活の中で実力を磨いていこう。平生を磨こう』をメンバーの合言葉にしていました。」(39~40頁)

「平生を磨く」

いい言葉ですね。

顧客の前だけいい恰好をしようとしても無理なのです。

何気ないしぐさや言動、表情から素の自分が透けて見えてしまうのです。

結局、説得力の差はこういうところから生まれます。

まあそういうことです。

セクハラ・パワハラ62 ハラスメント発生後に会社が行うべき適切な対応とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、身体的接触及びくじ引き行為に基づく慰謝料請求に関する裁判例を見てみましょう。

海外需要開拓支援機構ほか1社事件(東京地裁令和2年3月3日・労判ジャーナル102号44頁)

【事案の概要】

本件は、F社との間で労働契約を締結し、F社とB社との間の労働者派遣契約に基づいてB社に派遣されて就労していたXが、①B社の執行役員であったD及び取締役であったCの言動により人格権が侵害されたと主張して、C及びDに対し、不法行為に基づき、それぞれ慰謝料400万円+遅延損害金の支払を求め、②B社及びF社は上記人格権侵害に係る対応においてそれぞれ就業環境配慮・整備義務を怠ったと主張して、不法行為に基づき、B社に対し慰謝料200万円、F社に対し慰謝料400万円+遅延損害金の支払を求め、③B社がF社との間の原告に係る労働者派遣契約を更新しなかったことなどが労働組合法7条の不当労働行為に該当し、これにより原告の団結権等が侵害されたと主張して、B社に対し、不法行為に基づき、慰謝料200万円+遅延損害金の支払を求め、④B社の執行役員であるEは、B社の人事部長に対して不当な目的で上記労働者派遣契約の更新拒否等をするよう指示したと主張して、Eに対し、不法行為に基づき、慰謝料400万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Dは、Xに対し、5万円+遅延損害金を支払え。
Cは、Xに対し、5万円+遅延損害金を支払え。
Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Dは、XがDの手を払って拒否していることが明らかであるにもかかわらず、故意に複数回Xの肩に手を回そうとして、現にXの肩に触れたものであるところ、男性であるDが女性であるXの意思に反して複数回その身体に接触した上記行為は、Xの人格権を侵害する違法行為というべきであって,不法行為に当たる。
次に、Dは、派遣労働者であるXが執行役員であるDに対して拒否の意思を示すことは容易ではないことは明らかであるのに、XがDに対して拒否する意思を明確にしていることを意に介することなく複数回Xの肩に手を回そうとしたものであって、Xは、相応の羞恥心、強度の嫌悪感を抱いたものと推認される。他方、Dが接触した部位は肩というにとどまり、また、上記行為が10分間などの長時間に及んだとまでは認められない。なお、この点、Xは、Kに対し、LINEを用いて「私は大丈夫です」とのメッセージを送信しているが、その前後のやり取りからすれば、Kが太ももなどを触られたというのと比較して述べたのにすぎないことが明らかである。
以上の事情を考慮すれば、Xが被った精神的苦痛に対する慰謝料の額としては、5万円が相当である。

2 本件懇親会において実施された本件くじ引きは、参加した女性従業員らがG又はCと共にくじに記載された映画等の行事に参加することやGに手作りの贈り物をすることなどを内容とするものであって、これらがB社における業務でないことは明らかである。そして、本件くじ引きをさせた行為を客観的にみれば、くじ引きという形式をとることにより、単に映画等に誘うなどするのとは異なり、女性従業員らにおいて、その諾否について意思を示す機会がないままに本件くじに記載された内容の実現を強いられると感じてしかるべきものである。
しかも、本件くじ引きを企画したCは、B社の専務取締役であるから、派遣労働者であるXが本件くじ引き自体を拒否することは困難と感じたことは容易に推認される。
・・・以上によれば、Cが本件くじ引きをさせた行為は、Gの接待等を主たる目的として、Xの意思にかかわらず業務と無関係の行事にGやCと同行することなどを実質的に強制しようとするものであり、Xの人格権を侵害する違法行為というべきである。

3 Cによる本件懇親会及び本件くじ引きについて、B社がXの意向のままにハラスメントと認定し、Xの望むままの処分をしなければならない法律上の義務はない。また、B社は、Cによる本件懇親会及び本件くじ引きについて、Xが社外ホットラインに通報した後、速やかに関係者に対する事実関係の調査を実施し、弁護士の助言に基づいてCの行為を不適切と判断して厳重注意をしたのであって、その調査や判断の過程に不適切な点があったとの事実を認めるに足りる証拠はなく、B社が適切な調査等をしなかったと評価するべき理由はない。

4 Dの本件セクハラ行為についても、B社がXの主張するままにこれをセクシュアルハラスメントであると認定しなければならない法律上の義務はない。また、Xが社外ホットラインに通報した当時には既にDは退職しており、B社にDに対する処分をする前提がそもそもなかったのであるから、B社にDに対する調査や処分をするべき義務があったと解する根拠もない
さらに、仮にB社が実施した平成29年5月12日の研修においてXが主張するような説明(一般人の感じ方を基準として専門家や弁護士が検討して会社が決定する旨の説明)があったとしても、その内容が客観的に見て不適切であるというべき理由はない。

ハラスメント事案における慰謝料の金額は、本件のようにかなり低いです。

また、会社の責任については、事後の対応を適切に行うことにより回避することができます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介1101 7つの習慣 自分を変えるレッスン(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

本家「7つの習慣」の超入門編という位置付けです。

「13歳から分かる!」と書かれているとおり、エッセンスを分かりやすく説明してくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分を道具だと考えてみてください。道具は、手入れをしなければ、すぐにさびて、切れ味が悪くなってしまいます。でも、手入れをしながら使い続けると、よい仕事を効率よく進めるための、強い味方になってくれます。人間も同じです。できるだけ効率よく、大きな成果を上げたいのなら、日々、自分と言う道具を研いで、切れ味をよくしておくことが大切なのです。」(118頁)

「日々、自分と言う道具」を研いでおく。

表現は違えど、言わんとしていることは、いつもブログに書いていることと同じことです。

ほんの少し怠けると、元に戻すのは大変です。

運動も勉強も仕事も継続すること。途中でやめないこと。

大切なことは共通しています。

配転・出向・転籍44 職種変更を伴う出向元への復職命令は有効か?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、長年従事してきた業務からの変更を伴う出向元への復職命令について権利濫用が否定された事案を見てみましょう。

相鉄ホールディングス事件(東京高裁令和2年2月20日・労経速2420号3頁)

【事案の概要】

本件、①Y社の従業員であるX1ないし58が、Y社のバス事業がその子会社であるS1社に譲渡されるのに伴い、S1社に在籍出向し、バス運転業務(X19につき車両整備業務)に従事していたところ、Y社から、順次、出向の解除を命じられ(以下「本件復職命令」という。)、バス運転業務(X19につき車両整備業務)に従事することができなくなったが、本件復職命令は、労働協約、個別労働契約に違反し、権利濫用であって、不当労働行為に当たるから、無効であるなどと主張し、Y社に対し、〈ア〉X2及び5を除く個人控訴人らが、バス運転士(X19につき車両整備士)以外の業務に勤務する義務がない労働契約上の地位にあることの確認を求め、〈イ〉個人控訴人らが、不法行為に基づく損害賠償として、それぞれ110万円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②A組合が、Y社らに対し、上記①の違法行為により組合員の信頼を喪失したなどと主張し、Y社につき労働協約違反の債務不履行又は不法行為及びY社の代表取締役であるY2につき会社法429条1項又は不法行為に基づく損害賠償として、330万円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

原審はXらの請求をいずれも棄却し、Xらが本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件労働協約にXらの主張するような不確定期限ないし解除条件が付されていたことを示す文言はないし、定年退職までとか将来にわたってという文言を協約に入れてほしいという要望について、Y社は応じなかったというのであり、本件労働協約の締結に至る労使の協議においても、そのような不確定期限ないし解除条件について合意がされたことをうかがわせる事情はない。本件労働協約が、本件バス事業分社の際のY社の従業員について、S1社への在籍出向とし、労働条件差異について補填を実施することを約すことにより、バス事業に従事するY社所属組合員らの処遇を将来に向けて定めたものであるとしても、そのことをもって、Y社が一定の期間の経過又は一定の解除条件の成就までは出向元への復職を命じないとの合意があったということはできない。さらに、本件労働協約の締結を経て本件バス事業分社がされてから本件提案がされるまで3年半しか経過していないこと、この間、Y社におけるバス事業に係る経営上の見通しについて、本件労働協約が締結された時点と比較して特段の大きな変化があったという事情はうかがわれないことを考慮しても、Y社が、個人控訴人らの出向元として、個人控訴人らに対して復職を命じることができないと解すべき特段の事由があるものとはいえない

2 X19を除く個人控訴人らの職務をバス運転士に限定する職種限定合意があったと認められないことは、前記のとおりである。そして、バス運転士の職種転換の実績において、同意なく職種転換がされた事例が見当たらないとしても、人事異動を円滑に行うためであったとみることができるのであって、これが直ちに本件職種転換合意の成立を裏付けるものとはいい難い。また、本件調整確認書には、職種変更により本給を調整する必要が生じる場合として、自動車運転士から他の職種への変更について自己都合によるものしか記載されていないとしても、これをもって、会社の配転命令により自動車運転士から他の職種に転換することはないとの合意があるとまでは認められない。さらに、出向社員取扱規則において、バス運転士が復職意思の確認手続から除外されたこと、平成18年説明会におけるY社の説明中に、組合員からの「出向協定は3年だが、3年後はどうなるのか。」との質問に対し、「出向の3年は今回も生きている。何らかの理由で復職を望む人がいれば個別に相談に応じる。例えば視力の問題でMが無理ということになれば職変を条件に相談する、といったケースなどだ。」との記載があることについても、本件職種転換合意がなければ、このような規則改正ないし説明はされないものとまではいえず、直ちに当該合意の存在を裏付けるものとはいえない。

3 本件提案当時には、一方でS1社の路線エリアの将来人口は減少することが予想されており、他方でS1社の営業利益をY社の出向補填費が上回っているといったその当時のバス事業を取り巻く状況から、バス事業の収支を改善する必要があったこと自体は否定できず、これらの事情の下で、利用者減が予測され、将来的にも収益増が期待し難い状況であることから、バス事業の収支改善の方策として、出向補填費の削減を図ろうとすることに合理性はあるといえること、本件提案時において、S1社の従業員の約40%がY社からの在籍出向者であり、S1社籍のプロパー社員の平均給与(正社員バス運転士の平成27年の給与の平均値)は約480万円であるのに対し、同じ業務に就いている被控訴人会社からの出向者の平均給与(同上)は約840万円であって、プロパー社員の給与よりも高額であることから、プロパー社員の不満が募っている可能性があり、その他両者の間には、手当の支給条件・方法の違いや、休暇の有無・取得日数・有給無給の違い等にも差異があり、これらを解消し労務管理を効率化するために、Y社からの在籍出向を解消する必要性があること、復職者の再出向についても、相鉄グループ内で再出向の必要性がある会社に再出向させられており、本件復職命令の合理性を基礎付けるものといえること、これらの事情によれば、本件復職命令について、業務上の必要性・合理性があったと認められることは、前記説示のとおりである。

裁判所の事実認定のしかた、反対事実に対する捉え方が非常に参考になります。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介1100 シン・ニホン(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「AI×データ時代における日本の再生と人材育成」です。

これからの日本で必要とされる資質、能力、発想がめいっぱい書かれています。

一読して損はありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『狭き門より、入れ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこから入っていくものが多い。命にたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見出すものは少ない』(マタイによる福音書第7章)
・・・異人化の教えは実は2000年前から存在していたのだ。これは実に真実を突いている。人生設計、就職、仕事探しにおいて、とりわけ正しい。人が群がるところに行くということは、コモディティへの道、部品課への道を歩むということだ。人がすでに歩いた道を行くのだから、当然、先行者利益などない。その人の価値は『何者であるか』ではなく、『どの組織に属しているか』でほとんど判断されることになる。」(154~155頁)

「いつまでもあると思うな、親と会社」です。

どの組織に属しているかではなく、あなた自身が何者なのか、ということを意識しないと、「歯車」であることに慣れてしまいます。

常に自分が商品であるということを強く意識して、商品価値を高める努力を続ける。

入社してから定年まで、絶対に昇給が続き、年2回賞与が出て、退職金が出るなんて考えている人は、このご時世、もはやいないと思いますが、仮にそのような人がいるとすれば、それは「そうあってほしい」という願望であって、単なるファンタジーです。

これまでどれだけの準備をしてきたか、努力を続けてきたかが近い将来試されるときがくるでしょう。

解雇334 会社が暴行の被害者に先行支払をした後の求償問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、暴行を理由とする諭旨解雇無効に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

N社事件(東京地裁令和2年2月27日・労判ジャーナル102号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結してマンションの管理人として就労していたXが、勤務中に第三者に暴行を加えて傷害を負わせたことを理由としてY社から諭旨解雇処分を受け、また、Y社及びXと上記暴行の被害者との間でY社及びXが同被害者に対して連帯して解決金60万円を支払う旨の訴訟上の和解が成立し、Y社が同解決金を支払ったところ、Xが、Y社に対し、上記諭旨解雇は無効であり、Y社がXを解雇したことが不法行為を構成する旨主張して、不法行為による損害賠償として、解雇日から定年までの賃金相当額458万円と慰謝料300万円等の支払を求め(本訴請求)、Y社が、Xに対し、連帯債務者間の求償として、Y社が支払った解決金相当額である60万円等の支払を求めた(反訴請求)事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求は棄却

反訴請求は認容

【判例のポイント】

1 XがGに対して暴行して傷害を負わせているから、準社員就業規則所定の「刑法犯に該当する行為を行った」に該当し、そして、本件傷害事件に至る経緯及びその態様についてみると、XがGから危害を加えられる危険性が高かったともいえないにもかかわらず、Xは、一方的にGに対して手拳で十数回殴打する暴行を加えたのであり、本件傷害事件におけるXの行為は悪質であるといわざるを得ず、しかも、Xは、本件傷害事件の当時、Y社の会社名及びロゴマークが入った制服を着用して本件マンションの管理人として勤務中であり、Y社の信用が毀損されるおそれの高い行為であるというべきであるから、本件諭旨解雇が社会通念上相当であると認められないということはできず、本件諭旨解雇が権利を濫用するものとして無効であるということはできない。

2 本件和解は本件傷害事件に係るXの不法行為による損害賠償債務及びY社の使用者責任による損害賠償債務についてされたものであるところ、本件傷害事件は、Xの故意による不法行為であり、XにおいてGに対する暴行をすることがやむを得ないという状況にあったとはいえず、しかも本件マンションの管理人としての業務内容を大きく逸脱するものであってY社において予見し得る行為であったといい難いことに照らせば、Y社がGに対して使用者責任による損害賠償債務を弁済した場合のXに対する弁済金相当額の求償については信義則上の制限を受けないというべきである。

妥当な結論です。

会社が使用者責任により被害者に支払をした場合には、上記判例のポイント2のような求償の問題が出てきます。その際、割合が争点となりますので注意してください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。