労働時間62 管理職の管理監督者該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、管理監督者該当性と変形労働時間制の適用に関する裁判例を見てみましょう。

白井グループ事件(東京地裁令和元年12月4日・労判ジャーナル99号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の亡Xの相続人らが、亡XがY社において時間外労働に従事し死亡したため、亡Xの相続人らが亡Xの雇用契約に基づき賃金支払請求権及び労働基準法114条に基づく付加金請求権を相続したとして、法定相続分に応じて、未払割増賃金元金約1700万円等並びに付加金約1171万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社は、亡Xの管理監督者性が否定される場合には、一年単位の変形労働時間制の適用があると主張するが、Y社が労働者代表との協定により定めた適用対象者は、管理職を除く一般職であって、亡Xが含まれていたとはいえないことに加え、労基法上の管理監督者と会社の職制上の管理職は別であるから、労使協定において、労基法上の管理監督者性を否定されたY社の管理職を、変形労働時間制の適用対象者に含む合意をしたものとは認められず、また、明確な合意が認められないにもかかわらず、変形労働時間制の適用対象者に管理監督者性を否定された管理職を含むものと解することは、労働者に不利益な解釈を後付けで行うこととなって、変形労働時間制の適用に当たり労使協定等の締結を要件とした労基法の趣旨を没却するものであり、不相当であるから、亡Xには1年単位の変形労働時間制は適用されない。

2 亡Xは、管理監督者に当たらないため、時間外割増賃金が発生しているが、Y社は、法人格は異なるものの、亡従業員にA運輸の運転手の労務管理等の重要な職務を行わせていたこと、Y社を含むY系列各社全体において、167名中5番目の年収で処遇していたことなどを考慮すると、Y社が亡Xを管理監督者と扱っていたことに理由がないわけではなく、割増賃金の不払が悪質とはいえないから、Y社に付加金の支払を命ずることが相当とはいえない

上記判例のポイント1は興味深い内容です。

言うまでもなく、昨今、管理職の管理監督者性が肯定される例はほとんどありません。

そのような状況においても、多くの会社で従前通り、これを肯定した運用がなされています。

賃金の消滅時効が延長されたことのほかに今回の裁判例をような不利益についても十分考慮しなければなりません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1067 儲かる10億円ヒット商品をつくる!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

マーケティングとブランディングに関する本です。

さまざまな例を挙げて、やるべきこと、やってはいけないことが説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大切なことは『何をもって記憶されたいか』です。この問いかけこそが、業界やカテゴリーにおいて記憶される企業となり、繁栄していくのです。つまり、何屋かわからない『よろず屋』がいくら商品やサービスを提供しても、誰の記憶にも残りません。」(128頁)

前回の本の紹介で書いた内容と完全に重なりますね。

「よろず屋」ではそのお店を選ぶ「何か」がないのです。

顧客に「何をもって記憶されたいか」を突き詰め、それを「わかりやすく示す」ことが大切です。

あれもこれもと要素を増やせば増やすほど「よろず屋」に近づいていき、何が売りなのかわからなくなるのです。

なんでもできるからといって、「なんでもできます」とアピールする必要はありません。

配転・出向・転籍42 退職勧奨と配転命令の関連性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職勧奨との関連性を否定され、配転命令が有効とされた裁判例を見てみましょう。

学校法人日本学園事件(東京地裁令和2年2月26日・労判1222号28頁)

【事案の概要】

本件は、学校法人であるY社との間で労働契約を締結したXが、Y社に対し、Y社がXに対してした、Y社の営繕部で勤務するよう命ずる配転命令は権利の濫用に当たり無効であるとして、Y社の営繕部で勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の支出を伴う行為の決裁権限が事務長にあること、消耗品等の発注について事務室で一元管理していること等を指摘し、営繕室での事務職員としての業務がない、事務室において対応が可能であるなどと主張する。しかし、本件学校に約600名の生徒がおり、日々本件学校の敷地内で学生生活を過ごしていること、本件学校の敷地内で学生生活を過ごしていること、本件学校の敷地が広いことなどからすれば、年間を通じて本件学校の設備等の改修、整備作業等が想定されるところ、作業自体の決裁権がないとしても、作業計画の立案、関係部署との調整を含む作業の進行管理等の業務は容易に想定されるところであるし、これを決裁権者自らが執り行うことは現実的ではない。また、支出の最終的な決裁権限が事務室に勤務する職員にあったとしても、現場における問題点や要望を把握するために、当該現場に責任ある職員を配置し、当該職員に現場の事務の改善を提案させたり、支出を申請させたりすることには十分合理性が認められるところである。そうすると、その他原告が指摘する諸点を考慮しても、Xに事務職員として営繕業務を担当させ、その勤務場所を営繕室とすることについて、なお業務上の必要性は否定し難く、Xの主張を採用することはできない。

2 E事務長は平成30年9月11日、Xに退職を勧めているが、これはXが教務室において本件学校に対する不満を口にしていたことが、他の職員の間で問題となっていたことをきっかけとするものであり、B前校長との関係を前提とした退職勧奨とはいえない。そして、同日において、Xが当該言動を否定し、退職する意思がないことを明らかにした後には、Y社からXに対し、退職を勧めた事実も認められないから、Xがその他主張するE事務長の言動を考慮しても、当該退職勧奨と本件配転命令との間に何らかの関係を認めることもできない。

配転命令については、不当な動機目的の不存在が配転の業務上の必要性の要件と表裏の関係にあります。

解雇等と比べて、会社側の裁量は広く認められますが、有効要件を意識して適切に行うことが肝心です。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介1066 「なぜか売れる」の公式(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

まさにタイトルのとおりの内容です。

なぜ『あれ』は売れるのに、『これ』は売れないのだろう。どうすれば、売れる商品、売れる店を生み出せるのだろう」(6頁)

この問いに対するヒントが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

顧客は、商品を選ぶとき、ロジカルに考えてはいません。『みんなが行っているからスタバにしよう』『CMでやっていたからコンビニにしてみよう』・・・。わかりやすいほうを選んでしまうものです。・・・自分の強み、自分の信条から外れたことはしないことです。自分がブレてしまうと、それまで贔屓にしてくれていた大事な顧客も、混乱してしまうからです。」(66頁)

そう。みんな「なんとなく」選んでいるにすぎません。

多くの人は論理ではなく感情で判断しますので、「なんか好き」というファジーな感情を否定してはいけません。

サービスの特徴を他の類似サービスと比較して、できるだけわかりやすく示すことが大切です。

あれもこれもとサービスの特徴を並べれば並べるほど、どんどんわかりにくくなり、選ばれにくくなります。

解雇329 適格性欠如を理由とする解雇が有効と判断されるためには?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、適格性欠如等を理由とする分限免職処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

大阪府事件(大阪地裁令和2年2月26日・労判ジャーナル99号28頁)

【事案の概要】

本件は、大阪府知事が、大阪府知事の職員であったXに対し、平成26年3月19日付けで分限免職処分を行ったため、Xが、大阪府に対し、本件免職処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成18年4月17日から平成24年3月31日までの間及び同年4月1日から同年9月30日までの間の勤務実績は、いずれも不良というほかなく、適格性の欠如もうかがわれる状況にあったといえる。
そして、Xが、上記期間に6か所の職場で業務を担当しており、その都度、上司らから指導や注意を繰り返し受けていたが状況はさほど改善したとは評価できないこと、Xに対して個別能力向上研修や個別指導研修が実施されたものの、Xはこれらの研修に真摯に取り組むことがなく、改善が見られなかったこと、Xは、平成25年12月9日以降、適正な手続によらずに欠勤し、また、産業医との面談に応じるよう命じる職務命令に違反している状態を解消する旨を求められ、更には本件条例6条4項に基づき、分限免職処分が行われる可能性があることの警告を二度受けておきながら、かかる状態を解消する対応をしていない
以上のXの勤務状況ないし働きかけに対する対応状況等を踏まえると、Xには、簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる蓋然性が高いと認められ、職員として必要な適格性を欠くと認められるから、本件では、地方公務員法28条1項1号及び同3号に該当する事由があるといえる。

2 Xは、長期間にわたって勤務実績がよくない状態が継続しており、研修の機会を通じて業務遂行能力の向上を図る意欲を示すこともなく、平成25年12月9日以降、適正な手続によらずに欠勤し、また、産業医との面談に応じるよう命じる職務命令に違反している状態を解消する姿勢もみせていない
本件免職処分について、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいてされた事情は本件記録上窺われない。また、本件免職処分は、上述したXの勤務実績や勤務態度を理由としてなされたものであると認められること及び複数の職場での勤務実績や研修の結果を踏まえて判断されていることを踏まえると、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されたとも解されない。
その他、本件免職処分が、二度にわたる警告を経た上で行われたものであることを併せ考慮すると、免職処分を選択する判断が、合理性をもつものとして許容される限度を超えたものということはできないから、分限処分における裁量権行使の逸脱又は濫用は認められず、本件免職処分は違法であるとはいえない。

上記判例のポイント1のようなプロセスを経ることが大切です。

根気強さが求められますが、これができるかどうかが勝敗を決します。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1065 「無理」の構造(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「この世の理不尽さを可視化する」です。

帯には「理不尽なのは『世の中』ではなく『私たちの頭の中』である。」とも書かれています。

世の中に理不尽を感じる人は、きっとこの本を読んでもその感情は消えません(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間社会の日常に関わる事象については、いつまでたっても同じ過ちが繰り返され、『無駄な努力と抵抗』が永遠に続いているようにも見えます。『歴史から学べ』とはよく言われることですが、私たちが歴史から学べることが一つあるとすれば、それは『歴史からは何も学べない』ということかも知れません。逆に言えば人間は自らの一生の中で数々の失敗と『無駄な努力と抵抗』を直接的に重ねることでのみ賢くなっていけるのかもしれません。」(147~148頁)

労務管理の世界でも同じことがいえます。

典型例は、管理監督者性と固定残業制度です。

判例により要件が明確にされて以降も、多くの会社がいまだに同じ過ちを繰り返し続けております。

歴史から学べるかどうかは、すなわち、モノを知る環境に身を置いているか否かの違いにつきます。

すべての分野を自ら勉強することはほぼ不可能です。

だからこそその道の専門家をブレーンに置き、レクチャーを受けられる環境に身を置くのです。

これができれば、少なくとも「不必要な失敗」の多くは避けることができます。

賃金194 賃金減額の合意が有効と判断されるためには?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、賃金減額の合意と辞職の意思の有無に関する裁判例を見てみましょう。

岡部保全事件(東京地裁令和2年1月29日・労判ジャーナル99号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社代表者の娘婿であり、Y社で働いていたXが、平成29年10月支払分からXの同意なく賃金を減額され、平成29年12月22日をもって辞職した扱いとされ、平成30年1月以降、賃金を支払われなくなったとして、雇用契約に基づき、地位確認及び平成29年10月分から同年12月分までは減額された月額201万5566円の賃金及び平成30年1月以降月額309万円の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

辞職無効
→地位確認請求認容

【判例のポイント】

1 賃金の減額に対する労働者の同意は、形式的に存在するのみでは足りず、自由な意思に基づいてされたものであることを要するというべきである。本件は、Y社代表者とXとの間に親族関係がある点で、通常の労働者、使用者との関係と全く同様とはいえないが、賃金の減額に対する同意の有無を慎重に判断する必要がある点は異ならないと解すべきである。
Xは、本件減額の告知を受けた翌日の平成29年10月13日、賃金額を説明するCのメールに対し、「了解です」との返信をしたものの、その後、同月25日及び26日には、本件減額を認めていない旨のメールをC宛に送信し、同月30日には、Y社代表者の執務室へ赴いて本件減額について考え直してほしい旨を直接告げ、同年12月には、X代理人に依頼して、賃金の差額を請求する旨を通知した。「了解です」との言葉の意味は、内容を承諾した旨とも内容を理解した旨とも解釈可能であり、Xが、「了解です」とのメールを送信したのは、Y社代表者に話をするには時間を置いた方がよいと考えたためであると説明していることに加え、同メール送信後ほどなく、減額告知後の最初の給与支給日までには、Y社による本件減額に対して明示的な拒否の意思を伝えていることからすると、Xが、Y社に対して、本件減額に同意する意思を表明したということはできない

2 Y社は、Xが、Y社代表者の知らない弁護士に委任して、弁護士からの電話一本もなく、賃金請求の内容証明郵便を送付したことは、義理の親子間にあっては他人行儀を超えて冷酷非礼なひどい行為であり、退職するとの不動の覚悟と断固たる決意がなければできないことであるから、内容証明郵便の送付が辞職の黙示の意思表示である旨を主張するけれども、そもそも、退職する覚悟でなければ使用者に対して内容証明郵便を送付しないものではない上、在職を続けることを前提に、会社に対して賃金等の請求を行うことは、権利の行使として当然に許されるから、採用できない
また、Xが発出したY社とa社との業務委託契約の解約の有効性を争う旨の通知についても、XのY社に対する辞職の意思表示とは認められない。
したがって、Xは、Y社に対し、明示にも黙示にも辞職の意思表示をしていない

上記判例のポイント2の考え方は、労働事件で頻繁に出てきますので、是非、押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1064 ゼロからつくるビジネスモデル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

500頁を超える大作ですが、非常に読みやすいです。

ビジネスモデルを考える上での基本的姿勢がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間が口にする言葉の中に盗作でないことが存在するとでもいうのか!(小説家マーク・トウェイン」(120頁)

いずれも、その業界を代表し、イノベーションの象徴とされる企業ですが、異国、異業種、過去のものを上手に模倣しています。独創的ともいえるこれらのビジネスモデルは、必ずしもゼロから生み出されたものではないのです。思いもよらない『お手本』を見つけ出し、創造的に模倣することで生まれたのです。」(121~122頁)

ここに書かれていることこそまさにずっと前から言われ続けていることで、いわば「模倣」なのです。

1から10まで前代未聞で完全にオリジナルなものなんて存在しませんし、そんなものを発明しなくてもビジネスはできます。

いかにうまく模倣し、形を変え、見せ方(魅せ方)を工夫できるかこそがキモです。

業種を問わず、うまくいっていることには必ず理由があります。

ものまね芸人の方が本人のエッセンスを上手に抜き取り、特徴を誇張して再現するというあの過程はまさにビジネスモデルを生み出す過程と同じことです。

セクハラ・パワハラ61 顧問弁護士によるハラスメント調査と利益相反問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワーハラスメントを理由とする懲戒処分(訓戒)が有効とされた事案を見てみましょう。

辻・本郷税理士法人事件(東京地裁令和元年11月7日・労経速2412号3頁)

【事案の概要】

【裁判所の判断】

Y社がXに対し行った訓戒の懲戒処分の無効確認請求は却下

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 B弁護士は、Y社の顧問弁護士であり、Y社から依頼を受けて本件調査を行った者であるが、同弁護士は、Y社から本件調査についての意見を聞くことなく本件調査を開始し、X及びEからそれぞれの言い分等を記載した書面の提出を受け、X及びA部長が所属する人事部の従業員のみならず、他の部署の従業員からも事情聴取を行った上で本件報告書を作成していることが認められる。
そして、B弁護士による調査が中立性、公平性を欠くというべき具体的な事情は事情は窺われず、また、上記のとおり本件調査は、複数の部署にわたるY社の従業員から事情を聴取して行われており、人事部における人間関係にとらわれない調査方法が用いられているということができる。さらに、本件報告書に至る過程に特段不自然・不合理な点は認められない。
以上によれば、本件報告書には信用性が認められ、同報告書に記載された事実を認めることが相当である。

2 Xは、本件懲戒処分を受けるに当たり、B弁護士から事実関係のヒアリングを受けたにすぎず、懲戒権者であるY社に対する釈明又は弁明の機会が与えられていないことから、Y社の就業規則において必要とされる手続が履践されていない旨主張する。
しかしながら、Y社の就業規則においては、「懲戒を行う場合は、事前に本人の釈明、又は弁明の機会を与えるものとする」との規定があるのみであり、釈明の機会を付与する方法については何ら定められていない。そして、本件懲戒処分に先立ち行われた本件調査は、法的判断に関する専門的知見を有し、中立的な立場にあるB弁護士が、Y社から依頼を受けて行ったものであるから、釈明の機会の付与の方法として適切な方法がとられたということができ、Y社の就業規則において必要とされる手続が履践されたというべきである。したがって、Xの主張は採用することができない。

本件では、Y社の顧問弁護士が調査をしており、「中立的な立場」といえるかが問題となりましたが、調査過程等に鑑み、肯定されています。

この類の紛争では、調査を担当した弁護士が、訴訟になった際にそのまま会社側の代理人となる場合があり、それが利益相反とあたらないか疑義が生じますので注意が必要です。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介1063 働き方5.0(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。

表紙には「『社会の前提』は覆された。新たな世界の景色と展望を共有したい」と書かれています。

著者がこれからの時代をどう見ているのかがとてもよくわかります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

他人にはコピーできない暗黙知を自分の中に貯めていくことが大事。いまはインターネットで一瞬にして情報がシェアされ、世界中に拡散していく時代ですが、そういう誰でも知っている情報をたくさん持っていることには何の価値もありません。」(94頁)

クイズ王のように大量の知識を暗記していても、「ネット調べれば載ってるじゃん」という話です。

いかにネットで調べても載っていない「暗黙知」を蓄積していくかがとても重要なのです。

場数を踏まないとわからないことやモノの見方・考え方といった切り口こそが他との違いになります。

変化の激しい時代だからこそ、ますますこのような力が重宝されるようになるのです。