解雇326 試用期間満了前での本採用拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、試用期間満了時まで指導を継続せず決定した本採用拒否が有効と判断された事案を見てみましょう。

ヤマダコーポレーション事件(東京地裁令和元年9月18日・労経速2405号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に正社員として採用されたXが、Y社から試用期間満了により解雇されたが、Y社による解雇は無効であるとして、Y社に対する雇用契約上の地位確認及び解雇時からの未払賃金の支払とともに、不当解雇等による不法行為ないし債務不履行に基づく損害の賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xには協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動等により、Y社の車内関係者及び取引先等を困惑させ、軋轢を生じさせたことなどの問題点があり、Y社の指導を要する状態であったと認められる。
そして、試用期間中の解雇は、本採用後の解雇より広汎に許容されることに加え、試用期間が3か月間と設定され、時間的制約があることにも鑑みれば、比較的短期間に複数回の指導を繰り返すことを求めるのは、使用者にとって必ずしも現実的とは言い難いところ、現に、Xの上司であるZ12室長やZ5課長が、入社から2か月目面談の実施まで、Xの上記問題点を改めるべく、機会を捉えてXに対する相応の指導をするも、それに対するXの反応や態度等を踏まえると、上記問題点に対するXの認識が不十分であるか、Xが指導に従う姿勢に欠ける等の理由で、改善の見込みが乏しい状況であったことが認められる。
さらに、XのITの専門家としての経歴及びY社における採用条件や職務内容、Xと他部署との関係等を考慮すると、Y社において、Xについて配置転換等の措置をとるのは困難であり、かつ、前述したXの問題点は、配置転換をすることにより改善が見込まれる性質のものでもないこと、Y社が主張する解雇事由は、結局のところ、Xの勤務に臨む姿勢や態度といった根本的で重大な問題を含むものであって、係長としての管理職の資質に関するものであると解されること、Xは当時試用期間中であり、Y社への入社までにすでに3年に勤務しており、システムエンジニアとして約27年間の社会人経験を経ているのであって、上司からの指導を受けるなど、改善の必要性について十分認識し得たのであるから、改めて解雇の可能性を告げて警告することが必要であったともいえないことなどの事情に加え、Y社の取引先との関係悪化等の上記事実関係からすると、深刻又は重大な結果が生じなかったとしても、Xの雇用を継続することにより、今後、Y社側の経営に与える影響等も懸念せざるを得ないことなどを総合的に考慮すると、Y社が、試用期間中である同年11月30日の時点において、試用期間の満了までの残り2週間の指導によっても、Xの勤務態度等について容易に改善が見込めないものであると判断し、試用期間満了時までXに対する指導を継続せず、Xには管理職としての資質がなく、従業員として不適当である(就業規則39条1項)として、Xの本採用拒否を決定したことをもって、相当性を欠くとまではいえない

裁判所がいかなる要素を重視して判断するか参考になりますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1042 お金の真理(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今年の5月7日に発行された本ですが、昨今のコロナショックについての記載が多く出てきます。

この大きな転換期をいかに生きていくかについて著者の見解が書かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金持ちというのは、こうして直接的にはお金にならない行動、種をまく行動を日夜、一生懸命やっています。しかし、この部分は世間一般には可視化されていません。だから、『なぜあの人はあんなことができたのだろうか』と不思議がられるのですが、成功者は裏で絶えず探求を続けているものなのです。これを簡単に言うと準備です。日頃の準備が、お金持ちとそれ以外の人との差をつくっていることは間違いないといえます。」(286頁)

まあそういうことです。

人は自分で見える部分だけで評価・判断してしまうため、なぜこの人がこんなにうまくいっているのかわからないことが大半です。

毎日、こんなに自由に生活していて何の苦労もないように見えるのに・・・と。

表面だけを見ればそのように見えるのですが、実際には、見えないところで、いろんな準備をしているのです。

また、普通の人よりも多くのリスクを負っていることもまた事実です。

人と同じことを考えて、人と同じリズムで生活をしている限り、一生何も変わりません。

解雇325 金員の不正受給を理由とする懲戒解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、金員の不正授受を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便事件(令和2年1月31日・労判ジャーナル97号10頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に郵便局長として勤務していたXが、定年退職間際にY社から懲戒解雇されたことについて、本件懲戒解雇は客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当とはいえないから、権利濫用として無効となるなどと主張して、Y社に対し、定年退職したことを前提とする退職手当約635万円等の支払を求めるとともに、定年退職後も同年4月から平成28年3月まで再雇用されていたことを前提とする賃金合計約568万円及び賞与合計約189万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→懲戒解雇有効

【判例のポイント】

1 Xは、平成22年1月頃から平成27年1月頃までの間、郵便局長採用試験を経て大阪市南部地区の郵便局長に採用された者合計9名に対し、同試験の受験時又は採用通知後に、紹介料と称して金員の支払等を要求し、商品券合計210万円分を受け取ったほか、ある団体の会費として現金をX指定口座に振り込ませるなどしたことが認められるところ、本件行為は、Y社の郵便局長に採用されるためには、金品の授受が必要であるとの誤解を生じさせ、ひいては郵便局長の採用選考の公正性に強い疑問を生じさせ、その結果、郵便局という公共性の高い機関の長として、高い清廉性が求められる郵便局長の職務ないし職務上の地位に対する信用を著しく毀損するものであるといえるから、本件就業規則所定の懲戒事由に当たり、以上のような本件行為の性質及び態様その他の事情に照らせば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠くとはいえず、また、社会通念上も相当であると認められるから、これが権利を濫用したものとして無効になるとはいえない

2 本件行為の性質及び態様その他の事情、とりわけ、本件行為がXのY社における勤続期間11年の約半分に当たる5年間にわたり反復して継続的に行われてきたこと、これによってXが得た利益は400万円近くという多額に上ること、本件行為が発覚しなければ、郵便局長らによる指定口座への振込送金は引き続き行われていた可能性が高いといえることに照らせば、Xの本件行為は、XのY社における約11年にわたる勤続の功を抹消するほどの重大な不信行為であるといえるから、Y社が本件懲戒解雇を受けたXに対して退職手当規程に従い退職手当を支給しなかったことが不相当とはいえない。

上記判例のポイント1からすれば、退職金不支給は相当であると思いますが、ときどき、「え!こんなことしていても退職金出るの?」という事案があるので、労働者側としてはチャレンジしてみたくなってしまうのです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1041 メンタルの強化書(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

佐藤優さんの本です。

本の内容は、決してタイトル通りではなく、幅広くいろいろと書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・フリーランスも二極化が進むでしょう。その人自身のスキルと才能を生かし、他者との差別化ができている人は収入がどんどん高くなると思います。いっぽうでそこまで差別化できないフリーランスの場合は、むしろ企業や組織の下請け的な仕事が中心になり、どんどん単価を下げられてしまう。生活するためには膨大な量の仕事をこなさなければならなくなります。」(129頁)

これはフリーランスに限った話ではありません。

働き方改革に関連する法律の施行に伴い、雇用契約はこれまで以上にルールが厳しくなり、使用者としては雇用契約を選択することを敬遠するようになると考えられます。

つまり、できるだけ雇用はせず、可能な限り、AIや業務委託(アウトソーシング)による代替手段を選択することになります。

加えて、今回のコロナの影響により、オンラインミーティングが常識化したことにより、地理的問題はこれまで以上に重要度が低くなりました。

こうなると、どこに住んでいても、優秀であれば全国、全世界からオファーが来ることになりますので、自分を安売りする必要がありません。

つまるところ、他との差別化がわかりやすくできている人のみが生き残り、それ以外の大多数はその下請けにまわるということになります。

いかに自分の価値を高めて、いかにそれをわかりやすく示すか。

これがニューワールドでのサバイバルルールです。

セクハラ・パワハラ60 退職してから2年以上経過後のパワハラに関する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司のパワハラに基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

西京信用金庫事件(令和元年10月29日・労判ジャーナル97号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社への在籍当時、上司からいわゆるパワーハラスメントを継続して受けたことにより精神疾患を発症し、Y社には使用者としての職場環境配慮義務の違反があったと主張して、Y社に対し、慰謝料及び逸失利益等の損害賠償金約1654万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 X主張のA支店長による本件パワハラ行為に関して客観的な証拠等は見当たらず、また、医師作成に係る診断書には、適応障害の発病の状況について、Xの主張に沿う記載があるが、医師のXに係る初診の時期は、XがY社を退職した1年8か月余りを経過しているものであるから、この診断内容をもって直ちに本件パワハラ行為の存在を肯定することはできず、さらに、証人Bは、Xと交際がある友人であり、本件証拠上うかがわれる関係性に照らし、Xの供述を支えるに足りる客観的な証拠力があるとまではいえず、そして、Xは、A支店長から遂行が明らかに不可能な量の業務を割り当てられた旨主張するが、Xが毎日30件の顧客を訪問するよう指示されていたとしても、それが信用金庫の営業業務として達成が困難な程度のノルマないし業務量を課したものであると認めるに足りるものではなく、A支店長のXに対する業務の割当てに関して違法であると評すべき行為は認められず、以上の検討のほか、XがY社に対して初めて損害賠償を求めたのは、Y社を退職してから2年以上も経過した時期のことであること等から、本件パワハラ行為についてのXの供述は、にわかに採用することができず、Xの請求は理由がない。

消滅時効の点は措くとしても、退職してから2年以上経過してパワハラについて損害賠償請求するというのはうまくありません。

また、診断書の作成時期についても、退職後相当期間経過後ですので、証拠価値は低いです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介1040 理不尽に逆らえ。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

世の中、理不尽や不合理が溢れかえっており、それに耐えることこそが美徳のような教育がなされています。

それゆえに、理不尽や不合理に逆らうことはルール違反かのように非難される始末です。

この本のサブタイトルにもある「真の自由を手に入れる生き方」を実践するためには、おかしいものをおかしいと感じることがとても大切だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

嫉妬なんかする暇があったら、自分のことに集中すればいいのではないだろうか。他人のことは自分でどうすることもできないが、自分は1秒で変えることができるし前に進むことができる。『嫉妬』とは距離を置くべきだ。嫉妬される側になったときも、いちいち構っていてもしょうがいない。・・・嫉妬心だらけの世の中で、この無意味な感情に近づかないだけでも生きるのがラクになるはずだ。」(202~203頁)

他人を羨んだところで、自分の人生は1ミリも好転しません。

そんな暇があったら、今よりも1時間早く起きて、自分の価値を高める努力をするべきです。

僕たち凡人は、人が休んでいるときに努力を重ねる以外に人生を変える方法はありません。

うまくいかないこともたくさんあるでしょうが、愚直に努力を続ける。

これしかないと肝に銘じるのです。

解雇324 解雇が不法行為に該当する場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、解雇の意思表示と解雇予告手当等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

中村工業事件(大阪地裁令和2年1月16日・労判ジャーナル97号20頁)

【事案の概要】

本件は、土木工事業等を目的とするY社の元従業員Xが、Y社に対し、労働基準法20条1項に基づき、解雇予告手当約41万円等の支払、Y社による解雇がXの権利又は法律上保護に値する利益を侵害したとして、不法行為に基づき、慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇予告手当等支払請求は一部認容

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 解雇の意思表示の有無について、Xの賃金が毎月末日締め翌月6日払いであったことに加え、Xが平成29年4月以降平成31年3月まで毎月20日前後勤務していたこと、Y社がその間のXの労働時間・出勤状況等をタイムカードや出勤簿兼賃金計算簿によって管理していたことが認められ、これらの事実からすれば、XとY社との間の労働契約は、日雇ではなく、継続的なものであったものと認められ、そして、Y社代表者がXに対し、平成31年3月30日、「もう来てもらなくてよい」旨伝えたことによれば、Y社は、Xに対し、同日、解雇の意思表示をしたものと認めるのが相当である。

2 XがY社に対し、解雇から間もない令和元年5月29日に解雇を理由とする損害賠償請求を求める労働審判手続申立てを行っている(労働契約上の権利を有する地位の確認は認めていない)ところ、XとY社との間の労働契約が継続したのが締結から約2年間にとどまること、Xが解雇直後の平成31年4月以降、Y社以外の設備会社や友人のところで働いている旨認めていることも考慮すると、Y社による解雇により、損害賠償請求を認めるほどのXの何らかの権利又は法律上保護に値する利益侵害があったとまでは認められず、また、Y社に故意又は過失があったとも認められない

解雇の効力を争う場合に、地位確認ではなくあえて不法行為に基づく損害賠償請求を選択する理由はありません。

仮に心底復職する意思がない場合でも、要件、効果のいずれの点でも前者を選択するのが得策です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1039 世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

億万長者になれば、人生の悩みはすべて消えるでしょうか。

消えるわけがありません。

また別の悩みが新たに出てくるのです。

お金持ちになれば幸せになれるというのは幻想です。

お金は「ないよりあったほうがいいよね」という程度のものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・最終的に『自分の人生とは何だったのか?』とぬぐいきれない孤独感やむなしさに襲われている人は少なくありません。成功を追い求め、達成したらさらなる成功を追い求め・・・というサイクルにはまっているときは、幸福を後回しにして生きている状態です。では、なぜ幸福感や満足感が得られないかというと、『今を生きていないから』です。生きている時間のほとんどを未来に費やしているので、今を生きている時間が少ないのです。」(125頁)

何に幸せを感じるかは人それぞれですから、唯一絶対の生き方などありません。

自らの選択により人生が形成されていくわけですから、死ぬ直前になって「自分の人生とは何だったのか?」と後悔しても、すべては自らの選択の結果ですから、しかたありません。

いろんなことを我慢して生きるくせがついてしまうと、我慢するのが当たり前になってしまい、もはや「自由に生きる」の意味すらわからなくなってしまうのです。

人生なんていずれにしてもあっという間に終わってしまいます。

どうでもいい些細なことばかりに気を取られていないで、自分が生きたいように生きればいいのです。

労働時間61 週6日、週所定労働時間48時間の労働契約はアリ?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、週6日・計48時間の労働契約の適法性と割増賃金の算定方法等に関する裁判例を見てみましょう。

しんわコンビ事件(横浜地裁令和元年6月27日・労判1216号38頁)

【事案の概要】

本件は、建築工事業等を業とする特例有限会社であるY社において就労していたXら5名が、Y社に対し、①未払の時間外割増賃金等+遅延損害金、②付加金+遅延損害金の各支払を求め、また、X1が、Y社に対し、③Y社がX1の健康保険料等を賃金から過剰に控除していたと主張して、主位的に未払賃金請求として、予備的に不法行為に基づく損害賠償請求として、過剰控除した金員の合計2万9378円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xらに対し、以下のとおりの金員を支払え。
1 X1:①460万8024円+遅延損害金、②付加金368万6154円+遅延損害金
2 X2:①106万6691円+遅延損害金、②付加金86万6538円+遅延損害金
3 X3:①208万4018円及び+遅延損害金、②付加金178万5775円+遅延損害金
4 X4:①212万8304円+遅延損害金、②付加金182万7817円+遅延損害金
5 X5:①138万1207円+遅延損害金、②付加金118万6189円+遅延損害金

【判例のポイント】

1 Y社における従業員の出退勤管理は、出勤簿に基づいてなされており、Xらは、原則として毎日これに出退勤時刻を記載し、毎月1回、X1を通じてY社に提出していたこと、Xらは日々の業務内容を、当該業務に従事した時間とともに、原則として毎日、日報に記載していたこと、この日報についても、X1を通じてY社に提出し、総務担当者やC、Bの決裁を得ていたことからすれば、出勤簿及び日報には、Xらの出退勤時刻が概ね正確に記載されているものと推認するのが相当である。
・・・Xらは、出勤簿について30分単位で出退勤時刻を記載していたのであるから、同じ時刻の記載が多く並んでいるからといって、何ら不自然ではなく,出勤簿等の記載内容の信用性を減殺するとはいえない。・・・Xら労働者の労働時間を管理する義務を負っているのは、使用者であるY社自身であることからすれば、およそ失当といわざるを得ない。その点は措くとしても、これらの出勤簿及び日報は、いずれもY社に提出され、毎日ではないにせよ、Y社側が決裁をした上で管理していたものであるところ、Y社からXらに対し、その記載内容に疑義があるなどの指摘をした等の事実も認められないことからすれば、これら出勤簿等の信用性がないとは到底いえない

2 XらとY社との間で締結された本件労働契約は、いずれも1日8時間、週6日勤務に対してその給与を月給制で支払うことを内容とするものであるところ、これは週48時間の勤務を所定労働時間とする点で、労基法32条1項に違反することが明らかである。そのため、本件労働契約の内容は、労基法13条、32条1項により、一週間当たりの所定労働時間を48時間と定める部分が無効となり、これが40時間(1日8時間、週5日勤務)へと修正されるものと解されるところ、月給制は原則として、月当たりの通常所定労働時間の労働への対価として当該金額が支払われる旨の合意であるから、Y社がXらに支払った月給は、上記のとおり労基法に従って修正された所定労働時間に対する対価として支払われたものと解するのが相当である。

3 Y社のXらに対する未払の割増賃金額は、最も少額であるX2についても確定遅延損害金を加えて100万円を超えており、最も高額であるX1については400万円にも上ること、Y社はXらとの間で、1日8時間,週6日勤務という明らかに労基法に違反した契約を締結させていることに加え、Y社においては就業規則や賃金規程が存在せず、Xらとの間でも労働契約書を作成していないこと、X1に対して健康保険料等を過剰に控除し、賃金の一部を支払っていなかったことからすれば、Y社は全体として労基法軽視の態度が著しく、賃金未払は悪質であるといわざるを得ない。したがって、Y社に対しては、各未払賃金計算書記載のとおりの付加金の支払を命じるのが相当である。

もはやどこから手をつけていいのかわからない状態です。

治外法権かのような状態ですので、いざ訴訟になるとこのような結果となってしまいます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1038 強者の流儀(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

朝倉未来選手の本です。

いつも冷静でクレバーな印象を持っていましたが、未来選手が日頃、どのようなことを考えているのかがよくわかる本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

慢心と自信は紙一重なので難しいですが、この心理のせいで練習がおろそかになったことがありました。その状態で試合に出たら、負けることはなかったけれど、負けそうになったりしたんです。・・・こうしてみると、本当の敵は対戦相手ではなく、慢心や油断を誘ってくる自分自身の弱さだということになりますね。」(102~103頁)

まさに慢心と自信は紙一重です。

自信があると準備を怠りがちになるところですが、そういうときにこそ落とし穴があります。

まさに「高名の木登り」のあれです。

日頃から万が一に備えて準備を怠らないことが肝心です。