不当労働行為243 団交の開催場所を理由とする団交拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社が平成29年1月以降、大阪での団交開催に応じないことが不当労働行為とされた事案について見ていきましょう。

食品新聞社事件(大阪府労委令和元年6月4日・労判1216号86頁)

【事案の概要】

本件は、会社が平成29年1月以降、大阪での団交開催に応じないことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社は、大阪での団交開催に応じていない理由として、①40年以上の間、東京で団交に出席する大阪勤務の組合員はG組合員だけである旨、③組合は、大阪の制作部に係る議題でも、大阪での団交開催を要求してこなかった旨主張する。

会社主張①から③はいずれも認められず、組合による平成29年1月以降の大阪での団交開催要求に対して、会社が大阪での団交開催に応じないことは、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である

団交の開催場所や出席人数等に固執して団交に応じない場合、不当労働行為と評価される場合がありますので気を付けましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1037 最高の結果を出す目標達成の全技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者の経歴から察するに、結果の出し方を熟知していることがわかります。

帯には「『当たり前』のことをやり抜く力を身につける」と書かれています。

まさにこの力があれば、たいてい結果は出ます。

わかっちゃいるけど、多くの人はできないのですよ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

目標を設定する段階でネガティブな意見や慎重になるべき要素など、できない理由ばかりを並べ立てられて、話の腰を折られてしまう危険があります。・・・ですから、目標設定の相談相手は、『次々と高い目標を達成している人』『自分と同じような目標を楽々と達成している人』にするべきです。」(69頁)

目標設定くらい自分でしろよという話ですが(笑)

勉強でも運動でも、やるべきこと、やる方法、やる順番などの「情報」は検索すればすべて知ることができます。

本当にいい時代です。

検索しさえすれば知ることができるレベルの情報について教えを乞う人がいますが、このような人が何を達成できるというのでしょう。

検索すら面倒くさいということでしょうか。

どこまでいっても、「やるか、やらないか」ただそれだけの問題です。

不当労働行為242 団交拒否と救済の必要性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員の定年後の再雇用条件に関する3回の団交後、労組の申し入れた団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ事件(東京都労委平成31年4月23日・労判1216号87頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の定年後の再雇用条件に関する3回の団交後、労組の申し入れた団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合は、表題こそ通知申入書としたものの、会社が団体交渉に応じたそれまでの要求書と全く同じ書式で、団体交渉の候補日を記載して応諾について回答を求めているのであるから、組合は会社に対して明確に団体交渉を申し入れているというべきである。ましてや、30年2月16日付通知申入書に回答や交渉を拒否した場合は直ちに争議行為を開始するなどとの記載があることからも、意向を尋ねたにすぎないという会社の主張は採用できない。
そして、組合が候補日を示して3回にわたり団体交渉を申し入れたことに対し、会社は、書面で団体交渉を行う必要がない旨を述べて、開催日については回答せず、団体交渉は開催されていないのであるから、会社は、団体交渉を拒否したものといわざるを得ない

2 会社は、本件申立て後の団体交渉の要求に誠実に応じたことなどから、救済の必要性等はないと主張する
確かに、会社は、本件申立て後、団体交渉に応じ、A2の月例給与を含む労働条件について協議し、業務用モニターの貸与及び資料提出を指導するようにとの組合の要求に対応していることが認められる。
しかし、団体交渉の開催が、A2の再雇用開始から4か月後である30年6月まで遅れたこと及び会社が団体交渉を拒否したとは本件結審日現在に至るまで一切認めていないことから、将来に向けて円滑な労使関係を築くための救済の必要性等が全く失われたものとはいえない

上記命令のポイント2は救済の必要性との関係で参考になりますので、理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1036 人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

もうタイトル通りのメッセージが本いっぱいに込められています。

めちゃくちゃパワフルです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分は精一杯他人から許されてきたクセに、イザとなったら許せない、という人間。許せない、などと言う資格のある人間なんぞ、ついぞお見受けしたことがない。手前どもは愚か者ゆえに『許せない』などと多分一生言う機会がない幸運。許せない、などと言ったらきっとヤキが回った証拠。許さないでください。」(182頁)

と、みんなが思ったら、しょうもないクレームはなくなるでしょうね。

顧客という立場を神様だと勘違いし、お金を支払っていることをいいことに、店員をあたかも自分の奴隷のように扱うなどの傍若無人な振舞いはなくなるでしょう。

いつまでも根に持ち続ける粘着質なクレーマーもその1つです。

「自分は精一杯他人から許されてきたクセにイザとなったら許せない」

そんな資格は誰にもないのですよ。

根に持たない。

些細なことを気にしない。

自分を完璧だと勘違いしない。

まあ、そういうことです。

不当労働行為241 団交途中での会社側出席者の退席と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団交の途中で会社側出席者が退席したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

トライメディカルサービス事件(大阪府労委令和元年7月5日・労判1216号85頁)

【事案の概要】

本件は、団交の途中で会社側出席者が退席したことが不当労働行為にあたるか、及び、保管ボックスの設置要求、組合員2名の勤務シフト変更要求、施設の改善要求、賃金改定要求を議題とする団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社が交渉開始後わずか10分で途中退席したことは、不誠実であったと言わざるを得ず、労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である。

2 会社は、自ら提案し、検討することを約束した保管ボックスの設置を拒否するに当たって、具体的な検討内容ではなく、便宜供与の法的義務は無いといった抽象的な説明をするのみで、組合の理解を得られるような具体的な理由や検討した内容を一切示すことなく、これまでの交渉を唐突に反故にした、と言わざるを得ない。

3 会社は、組合のシフト変更要求に応じない理由として、能力給やマスク着用に係る事項を挙げるが、それはこの話には関係ないと繰り返し述べる組合に対し、なぜ変更に応じられない理由になるのかについて、具体的な根拠を示して説明したとはいえない

特に上記命令のポイント2は注意してください。

「法的義務がない」という主張に終始しているだけでは、誠実交渉義務を尽くしたとはいえないという判断です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1035 お金の話(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

ひろゆきさんのお金に対する考え方がよくわかります。

できるだけ無駄なお金を使わずに生きることを説いています。

収入を上げるより支出を抑えることの重要性が書かれていますね。

コロナを経験した世代は、これまで以上にこのような発想になるのでしょうね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分が幸せに感じるためには何が必要か?それに対するコストっていくらなの?ってところで逆算して考えると、実は『もうそんなに働かなくてもいいよね、おれ』って人は結構いると思います。・・・ただ自分の好きなことに超絶お金がかかる-『車の改造が好きです』みたいな人だと、どうしてもお金が必要になるので、一生懸命お金を稼ぎ続けないといけない。」(140頁)

改めて説明するまでもないシンプルな事実です。

このブログでもよく出てくるテーマですが、物を所有することが自分の幸福度とつながっている人は、通常、たくさんのお金が必要になります。

だから、こういう人は、がんばってお金を稼ぐ必要があります。

他方で、物を所有することに関心がない人は、日常生活に必要なお金だけを稼げば足りるので、それほどたくさんのお金は必要ありません。

どちらが正しいという問題ではありませんが、変化の激しい今のような時代においては、多額の支出を強いられる生活は極力避けたほうが生きやすいでしょう。

高額な家賃や住宅・車のローン、多数の従業員の給与など、収入の変動にかかわらず発生する固定費をできるだけ抑えておくのが今の時代にはフィットしているのではないでしょうか。

管理監督者44 退職届に清算条項が入っていた場合、残業代請求はできない?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、割増賃金請求と管理監督者該当性に関する裁判例を見てみましょう。

はなまる事件(大阪地裁令和元年12月20日・労判ジャーナル96号64頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員XがY社に対し、雇用契約に基づき、未払時間外割増賃金等の元本約1099万円等の支払とともに、労働基準法114条所定の付加金903万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払時間外割増賃金等請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件退職届に記載されたいわゆる清算条項は、実質的に本訴請求に係る時間外割増賃金等を放棄する趣旨を含むものであり、このような賃金債権の放棄については、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときに有効となるところ、医師作成の診断書に記載された診断内容及び無断欠勤を継続していたXの行動状況等に照らせば、Y社が指摘するごとく、Y社から書面の送付を受けた後に数日程度の時間経過があったとしても、十分な判断能力を備えた状態において検討がされたものではない可能性があり、さらには、このような賃金債権を放棄することによってXが得られるそれに見合った利益の存在等を認めることはできないのであって、上記にいう合理的な理由が客観的に存在しているとは評価し得ないから、本件退職届の記載によってXが本訴請求に係る賃金債権を放棄したとは認定できない。

2 Xが管理監督者に該当するか否かについて、Xが担当していた主な業務内容は、コンピュータシステムに関しての問合せへの対応業務、コンピュータの基幹システムの保守管理等といったもので、これらについてY社における経営上の決定に参画するような性質があるとは認められず、部下職員の候補者の採用面接に立ち会うなどしていたことはうかがわれるものの、上位者であるD部長の存在、その他課長という役職から想定される地位等に照らせば、Xは現場担当者として意見を述べる立場にはあったものの、人事上の採用権限を有していたとは認め難く、また、Y社が、Xに係る勤怠管理資料を証拠提出していることなどからすれば、Xが労働時間の拘束を受けない立場にあったとは認められず、たとえXにおいて遅刻や早退に関する所定の手続を怠ったことがあったとしても、それは、Y社が厳密に制度運用していなかったにすぎないとみる余地があるから、Xに支給された賃金額等の待遇面をはじめ、本件に現れたその他一切の事情を考慮しても、Xが管理監督者に該当するとは認められない

本件に限らず、上記判例のポイント1のような認定は十分ありえますので、退職合意書に清算条項が入っていたとしても、それだけで本件同様の紛争を回避できるとは思わないほうがいいです。

管理監督者該当性については、言うまでもなくこのレベルでは絶対に認められません。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介1034 ブレイン・プログラミング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

自動的に夢がかなっていくとか言われると、途端に胡散臭くなりますね(笑)

それはさておき、内容はとてもいい本です。

ザ・自己啓発本という感じです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いつものやり方を続けていれば、これまでと同じものしか手に入らない。
あなたがこれまでの人生で手にした結果は、あなた自身が選び、考え、行動したことの結果である。そして、結果は嘘をつかない。太っているか、やせているか、平均体重か、そうでないか。お金持ちか、そうでないか。家族の尊敬を受けているか、受けていないか。望むものを人生で手に入れたか、入れていないか。結果は嘘をつかない。」(149頁)

もはやぐうの音も出ないくらい真実です。

環境や時代のせいにして、自分の不甲斐なさを正当化せず、現在の自分の状態はすべてこれまでの自分の選択の総体だと考えるしかありません。

結果は嘘をつかない。

これまでの選択の総体が今、「結果」として出ているだけです。

日々の小さな選択の積み重ねを続けられるかどうか。

ただそれだけのことです。

賃金188 完全歩合制でも最賃法は適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、最低賃金法に基づく未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

税経コンサルティング事件(大阪地裁令和元年12月27日・労判ジャーナル96号56頁)

【事案の概要】

本件は、保険代理店を営むY社において保険の営業業務等に従事していたXが、Y社に対し、主位的に(第一次的請求として)、Y社から最低賃金を下回る金額の賃金しか支払われていないとして、雇用契約に基づき、最低賃金に基づいて算出した賃金額との差額に係る未払賃金120万円等の支払を求め、仮にこれが認められない場合に予備的に(第二次的請求として)、Y社がXの賃金から根拠のない控除を行い、また、保険解約に伴い手数料としてXに義務なく金員を支払わせたとして、不当利得に基づき、上記控除に係る利得金約60万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 X及びY社は、平成27年4月1日頃、それぞれ自己の意思に基づき、本件雇用契約書にXが署名押印し、BがY社代表者として押印してこれを作成した事実が認められ、これによれば、X及びY社の間では、同日、本件雇用契約書に記載の契約が成立したものと認められ、これを覆すに足りる証拠はないから、XとY社との間では、平成27年4月1日に雇用契約が成立し、同雇用契約が継続した後、Xは平成29年5月31日にY社を退職したものと認められ、そして、雇用契約の内容(雇用条件)は、概ね本件雇用契約書に沿うものであるところ、Xの賃金に関しては、フルコミッション制(完全歩合制)であることに加え、労働時間に応じた一定額の賃金が保障されることなどが定められているにとどまり、最低賃金を下回らないことは明確にされていないものの、最低賃金に達しない賃金を定める合意部分は無効となり、同部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなす(最低賃金法4条2項)こととなるから、結局、Y社は、Xとの間の雇用契約に基づき、最低賃金と同様の賃金の支払義務を負う

2 Xの従事していた業務は、主に外回りによる保険契約の募集・勧誘であるところ、営業日報に記載された時間、訪問先・折衝先・面談所等及び業務内容の記載には、些か抽象的なものも見られるものの、多くは記載自体から営業活動の一環であることが相当程度理解できるものであること等から、Xの作成した営業日報は基本的に信用性が肯定できるものといえ、また、Xの作成した勤務表は、営業日報が提出されていない期間においても概ね正確に記載されたものと推認することができ、基本的にその信用性を認めることができるというべきであることからすれば、Xの労働時間数については、営業日報及び勤務表を基に算定するのが相当である。

フルコミッションで合意している場合であっても、雇用契約である以上、最賃法は強行法規なので、これに反することはできません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1033 儲かる会社は人が1割、仕組みが9割(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タイトル通りの内容です。

ビジネスにおいては、いかに「儲かる仕組み」をつくるかが鍵となります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

社長は、会社の規模の大小にかかわらず、その存在は絶対であり、社長の持つ知力、体力、気力、決断力、感性、闘争心ーすべてが、全社員に影響を与え、その結果が会社の全体像として浮かび上がってきます。『羊が率いるライオンの群れよりも、ライオンが率いる羊の群れのほうが怖い』ーこれはナポレオン・ボナパルトの言葉といわれていますが、これと同じです。」(34~35頁)

ナポレオンの例えはわかりやすいですね。

一見すると「ほんとかなー」と思うかもしれませんが、私は真実だと思います。

群れのリーダーがグダグダだと、どれだけ優秀なメンバーがいても、チームとして機能しません。

監督が変わるだけでビリだったチームが生まれ変わって優勝してしまうという、まさにあれです。

会社もまたしかりなのです。