解雇322 中途採用従業員の本採用拒否の適法性判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、中途採用のアナリストに対する本採用拒否の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス事件(東京地裁平成31年2月25日・労判1212号69頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない労働契約を締結してその労働に従事していた労働者であるXが、使用者であるY社がXを解雇したこと(主位的には試用期間の満了に伴う普通解雇であり、予備的には事業の縮小等に伴う普通解雇である。)について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たり、無効である旨を主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位に在ることの確認並びに当該解雇の後に生ずるバックペイとしての未払賃金+遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、いわゆる大学新卒者の新規採用等とは異なり、その職務経験歴等を生かした業務の遂行が期待され、Y社の求める人材の要件を満たす経験者として、いわば即戦力として採用されたものと認めるのが相当であり、かつ、Xもその採用の趣旨を理解していたものというべきである。

2 解約権の行使の効力を考えるに当たっては、上記のようなXに係る採用の趣旨を前提とした上で、当該観察等によってY社が知悉した事実に照らしてXを引き続き雇用しておくことが適当でないと判断することがこの最終決定権の留保の趣旨に徴して客観的に合理的理由を欠くものかどうか、社会通念上相当であると認められないものかどうかを検討すべきである。

3 BVPがCリーダーやD代理に対して平成27年8月19日からXの業務遂行の状況やミスの発生の状況等を記録して組織的に共有するように指示をしているところ、毎営業日についてその記録が取られており、少なくとも同日以後は、毎営業日についてXが少なくない数の業務遂行上のミスをしているものである。また、同日より前の時期についても、詳細かつ具体的な記録が取られていたわけではないものの、BVPは、その陳述書及び証人尋問において、Xの業務遂行の状況等の記録を取り始めるように指示をした契機について、Xの仕事上のミスが多く、このままでは業務に支障が生ずる旨の報告をA氏から受けたことにある旨を陳述しているところ、この陳述の内容は、客観的な経緯に整合するものとして採用することができるから、同日より前の時期についても、上記に認定した同日以降の状況と同様に、Xが業務遂行上のミスを少なからずしていたものと推認するのが相当である。

上記判例のポイント3の流れは、労務管理上、大変参考になります。

訴訟に発展することを想定して準備をすることが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1012 いつも忙しい人、なぜか余裕のある人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タイムマネジメントに関する本です。

Time is money.とよく言いますが、時間は命そのものです。

Time is life.

だからこそ無駄なことに時間を使うことは、人生を無駄にしていることと同義です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

やはり、全て自分でやろうとするのは労力と時間がかかりすぎてしまうのである。四十一歳で独立した頃の私は、全て自分でやろうとしていた。あの時に、『人に任せる』とか『協力者』ということを意識できていたなら、さらにずっと早い成功を手にできていたかもしれない。」(166頁)

特に今の時代は、このような発想を持ったほうが生きやすいですね。

とにかく時間をお金で買うという発想が持てるかどうか。

自分でやろうと思えばできるけど、時間がかかるものを得意な人にやってもらうのです。

空いた時間に自分の得意分野で自分の価値を高める努力をするのです。

不当労働行為234 組合員に対する不利益取扱いと合理的理由の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、平成27年および28年の賞与に関し、営業職の組合員3名に対する考課点を低くして低額支給したことは不当労働行為であるが、工場勤務職の組合員1名の考課点が低くされたとは認められないとされた事案を見て行きましょう。

田中酸素(賞与・昇格)事件(山口県労委平成31年3月28日・労判1211号178頁)

【事案の概要】

本件は、平成27年および28年の賞与に関し、営業職の組合員3名に対する考課点を低くして低額支給したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 少なくとも平成27年及び平成28年において、A2ら3人の組合員に対しては、非組合員である従業員と異なり、実質的な査定がなされなかったことが推認される。
Y社が主張するとおり、A2ら3人の査定の考課点(加算も含む。)は、その時期や個人ごとに微妙に異なる点はあるが、概ねY社の査定制度上の平均値である27年前後となっており、これに関連して、Y社は、平成21年夏季から平成25年冬季までの賞与の査定を捉えて、人事考課の平均点から大きく逸脱した査定はしておらず、社会通念上相当なもので裁量権の逸脱はない。

2 「リーダーシップの欠如」や「報告、連絡、相談の不備」との指摘については、本件審問におけるB3の証人尋問における証言によっても、それらがY社による査定項目のどれに組み入れられて評価されたのかが明らかにされておらず、むしろ、B3は査定には関与せず、その実態も知り得ていないことが明らかになったのみであり、当委員会としても、その実態を解明するには至らなかった。
以上からすると、このようなY社の対応に合理的な事情は窺えず、当事者間には過去から不当労働行為救済申立てを含めて多様な係争が繰り返されている点に鑑みれば、Y社に組合嫌悪の念が存在することを否定し得ず、A2ら3人の平成27年及び平成28年賞与に関する査定において不利益取扱いが行われたものとみなさざるを得ない

会社と組合との間で係争が繰り返されている場合、上記命令のポイント2のように、会社側が組合員への不利益取扱いについて合理的説明ができないと、総合考慮により不当労働行為と評価されることがあるので、注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1011 迷路の外には何がある?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

「チーズはどこへ消えた?」その後の物語です。

30分もあれば読めてしまう物語です。

とりあえず読んでおくにこしたことはありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

彼がホーと一緒にチーズを探しに出かけなかったのはなぜか?・・・そのまま動かないでいつづければ、事態は好転すると信じていた。ホーはばかげた理由で立ち去り、自分はもっと分別があると信じていた。そんな信念のせいで自分の物の見方から抜け出せなくなってしまったのだ。それがホーと一緒に出かけなかった理由だ。」(47頁)

昭和、平成、令和と時代が変わり、今の時代ほど変化が激しい時代がこれまでにあったでしょうか。

10年後どころか3年後だって、この世の中がどうなっているかなんてわかりません。

にもかかわらず、高度経済成長期を生きてきた親世代の教育を鵜呑みにした「安定生活」という幻想を抱いている方が山ほどいます。

35年間、年功序列、終身雇用の社会が続き、定年まで解雇されず、かつ、年齢とともに給料が上がっていき、自分の町が限界集落にならないという前提にいるということでしょうか。

変化が激しいときには、できるだけ柔軟に対応できる準備をしておくことです。

あまり重たい荷物を持たないことこそが身軽に対応するコツです。

仕事上も私生活上も。

解雇321 商品持ち帰り行為を理由とする懲戒解雇が無効とされた事例(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、商品持ち帰りを理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ロピア事件(横浜地裁令和元年10月10日・労判ジャーナル94号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営するスーパーマーケットで勤務していたXが、商品を会計せずに持ち帰ったことを理由になされた懲戒解雇について、これが無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、懲戒解雇後の平成30年8月分の未払賃金として約31万円、同年9月以降の未払賃金として月額約36万円、未払賞与として約40万円の支払を求めるとともに、Y社が経営する店舗において、Xの氏名を明記して上記懲戒解雇の事実を公表したことが名誉毀損の不法行為に該当すると主張し、慰謝料等330万円の支払いを求め、さらに就労期間中の未払残業代合計約186万円等、付加金約96万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇無効

損害賠償請求一部認容

未払賃金等支払請求一部認容

付加金等支払請求認容

【判例のポイント】

1 本件で懲戒事由の対象となった客観的行為は、Xが精肉商品を精算しないまま持ち帰ったことであり、Xが本件持ち帰り行為を行ったこと自体について、当事者間に争いはないが、Y社は本件持ち帰り行為が故意の窃盗行為であることを前提に、就業規則67条1項12号又は13号の懲戒事由に該当すると主張するが、本件持ち帰り行為は、Xが、精肉商品を精算未了のまま店外へ持ち出した一回の行為であり、その外形自体、精算を失念して商品を持ち出してしまったとのXの説明と矛盾するものではなく、本件持ち帰り行為そのものが、Xに窃盗の故意があったことを積極的に裏付けるとはいえず、また、Y社は本件持ち帰り行為が買い物ルールに違反するとして、予備的に就業規則67条1項5号、6号又は18号に該当すると主張するが、対象行為が上記各号に該当するかは疑問があり、少なくとも、故意による窃盗行為よりも比較的軽微な違反行為に対し、不相当に重い処分がなされたものといえるから、本件懲戒解雇及び本件予備的解雇意思表示は、いずれも、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、無効である。

2 Xは、本件掲示がXの社会的評価を低下させる名誉毀損に当たり、不法行為が成立すると主張するが、本件掲示は、本件持ち帰り行為についてXの実名を挙げて「窃盗事案が起きました」「計画性が高く、情状酌量の余地も認められない」「本事案は刑事事件になります」などと記載し、全体として見ると、Xが故意に商品を精算せず持ち帰り、窃盗行為をしたとの事実を摘示するものであること等から、本件掲示は、Xの社会的評価を低下させる事実を摘示するものであり、不法行為に該当する。

客観的に見ると、窃盗という犯罪行為のため、懲戒解雇をしたくなる気持ちは理解できます。

しかし、本件のような判断があり得ることを十分理解しなければなりません。

また、上記判例のポイント2のような掲示行為については名誉毀損と判断され、損害賠償請求をされますので注意が必要です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1010 DEEP WORK(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「大事なことに集中する」「気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」です。

メール、ライン、SNS、ネット・・・気が散るものを挙げたらきりがありません。

そんな時代だからこそ、1つのことに集中するための工夫が必要になってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『私は常にインターネットに接続し、メールをチェックしていた。抑えられない衝動だった。』ベンは金融機関を辞めるまでそうだったと言った。彼は与えられたプロジェクトのことを明かす。『事業プランをつくるよう求められた』がつくり方を知らなかったので、これまでの五つのプランに目を通した。だが、問題があった。『集中できなかった』。ほぼ一分ごとにネットをチェックしていた。プロジェクトは新人として彼が頭角を現すチャンスだったのに、失敗した。」(12頁)

こういう人、いますよね(笑)

1日に何百回、ラインをチェックしているのかと(笑)

3分おきに携帯をチェックしていたら、集中なんてできるわけがありません。

とはいえ、もはや携帯をチェックするという「くせ」が完全に身体に染みついてしまっているので、強制的に携帯をいじれないようにする以外に改善することはほとんど不可能ではないでしょうか。

習慣というのは良くも悪くも強力なものです。

わかっちゃいるけどやめられない。これこそが習慣です。

集中力の差がそのまま成果に表れているような気がします。

同一労働同一賃金14 大学非常勤講師と専任教員との間の同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、大学非常勤講師への賞与、家族手当、住宅手当等の不支給が労働契約法20条に違反しないとされた裁判例を見てみましょう。

学校法人C事件(東京地裁令和元年5月30日・労経速2398号3頁)

【事案の概要】

本件は、C大学等を設置し、運営する学校法人であるY社との間で期間の定めのある労働契約を締結し、当該労働契約に基づいて本件大学の非常勤講師として現に就労しているXが、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結している本件大学の専任教員との間に、本俸の額、賞与、年度末手当、家族手当及び住宅手当の支給に関して、労働契約法第20条の規定に違反する労働条件の相違がある旨を主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、本件大学の専任教員に適用される就業規則等により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額の合計2308万8614円+遅延損害金並びに弁護士費用相当額230万8861円+遅延損害金の支払を求めるとともに、本件大学の法学部長であったY社補助参加人らがXを本件大学の専任教員として採用することを約束したことにより、XとY社がXを本件大学の専任教員として雇用することについての契約締結段階に入ったにもかかわらず、Y社が上記の約束を破棄した等と主張して、Y社に対し、主位的には債務不履行に基づく損害賠償請求として、予備的には不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料500万円及び弁護士費用相当額50万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xと専任教員との間には、本俸額について約3倍の差があったものと解される。しかしながら、そもそも、非常勤講師であるXと専任教員との間には、その職務の内容に数々の大きな違いがあるものである。このことに加え、一般的に経営状態が好調であるとはいえない多くの私立大学において教員の待遇を検討するに際しては、国からの補助金額も大きな考慮要素となると考えられるところ、専任教員と非常勤教員とでは補助金の基準額の算定方法が異なり、その額に相当大きな開きがあることや、Xを含む本件大学の非常勤講師の賃金水準が他の大学と比較しても特に低いものであるということができないところ、本件大学においては、団体交渉における労働組合との間の合意により、非常勤講師の年俸額を随時増額するのみならず、廃止されたコマについても給与額の8割の支給を補償する内容の本件非常勤講師給与規則第3条5項を新設したり、Xのように週5コマ以上の授業を担当する非常勤講師について私学共済への加入手続を行ったりするなど、非常勤講師の待遇についてより高水準となる方向で見直しを続けており、Xの待遇はこれらの見直しの積み重ねの結果であることからすると、Xが本件大学においてこれまで長年にわたり専任教員とほぼ遜色ないコマ数の授業を担当し、その中にXの専門外である科目も複数含まれていたことなどといったXが指摘する諸事情を考慮しても、Xと本件大学の専任教員との本俸額の相違が不合理であると評価することはできないというべきである。

2 Y社は、本件大学の専任教員のみに対して賞与及び年度末手当を支給していたものである。しかしながら、これらは、Y社の財政状態及び教職員の勤務成績に応じて支給されるものであるところ、上記において指摘した各事情に加え、本件大学の専任教員が、授業を担当するのみならず、Y社の財政状況に直結する学生募集や入学試験に関する業務を含む大学運営に関する幅広い業務を行い、これらの業務に伴う責任を負う立場にあること(それ故に、本件大学の専任教員は、Y社との間の労働契約上、職務専念義務を負い、原則として兼職が禁止されている。また、大学において一定数以上の専任教員を確保しなければならないとされていることも、専任教員がその他の教員と異なる重要な職責を負うことの現れであるということができる。)からすると、Y社において、本件大学の専任教員のみに対して賞与及び年度末手当を支給することが不合理であると評価することはできないというべきである。

私立学校という特殊性が考慮されているので、この判断をそのまま民間企業にあてはめることは難しいですが、この分野の考え方の参考にはなります。

この分野は判断が難しいので顧問弁護士に相談しながら対応しましょう。

本の紹介1009 GIG WORK(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

タイトルからすると、「働き方」に関する本のように思えますが、実際には、それを超えた「生き方」に関する本です。

今の時代をどう見るべきか、どう生きるべきかという著者の考えが詰まっています。

とても参考になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結局は『何を言うかより、誰が言うか』だ。今の時代は簡単にコピーが可能だ。コピー&ペーストが簡単だからこそ『何を言うか』というのは重要でなくなってきてしまっている。『誰が言うか』というのは、すなわちコンテクストをつくる重要な構成要素なわけだ。コンテンツの価値を決めるのはコンテクストで、その中の重要な構成要素の一つが『誰』だということ。」(138頁)

まさにそのとおり。

もはや情報、知識は溢れかえっているわけです。

溢れかえっているからこそ、どの情報を選択したらいいのかがわからなくなっているのです。

だからこそ、道しるべになる人が何を言うかこそが価値を持つのです。

セカンドオピニオンを聞かれているようでは話にならないのですよ(笑)

解雇320 能力不足を理由とする解雇と訴訟における立証方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、能力を著しく欠くことを理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

豊田中央研究所事件(名古屋地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル94号64頁)

【事案の概要】

本件は、元研究員Xが、Y社に対し、普通解雇が無効であるとして、地位確認を求め、本件解雇後の賃金及び慰謝料等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社より、本件出勤停止処分を重く受け止め、反省し、今後は職務に専念することを求める旨、Y社が指示している業務は「中研におけるCAE・シミュレーション研究の業務報告書調査」であるから指示された業務への従事を求める旨の指導を受け、その後も、複数回、同様の指導を受け、執務室で業務を実施するよう指示を受けたが、本件解雇に至るまで、指示された業務を実施する職場環境にない、職場環境を改善する必要があるので指示された業務を実施する時間はない等との独自の見解により、指示された業務を全く行わなかったものであり、かかるXの態度は、自らの独自の見解に固執し、Y社の指示、指導を受け入れないもので、将来の改善も見込めない状態であったといえ、他の部署に異動した場合に改善が見込まれるとも考えにくく、また、他の部署に異動した場合の改善の余地もないというべきであるから、Y社が、就業規則41条1号(研究所員としての能力を著しく欠くとき)に該当するとして行った本件解雇は、客観的に合理的な理由が認められ、社会通念上相当であり、解雇権濫用には当たらないから、有効である。

このような一連の流れについて、訴訟になった際に、立証できるように準備しておくことが極めて重要です。

口頭だけでの注意・指導では、いざというときに立証ができません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1008 ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

少し前の本ですが、今読んでもとても参考になります。

タイトル通り、いかにして競争優位のポジションを確立すればよいかが書かれています。

すべての項目でトップを目指す必要はないという発想は非常に参考になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今の時代、ほとんどの車はちゃんと走る。それも、安定した走りっぷりだ。冷蔵庫は食品をきちんと冷やすし、ステレオの音だって良好だ。洗剤は服の汚れを落としてくれるし、ホテルの部屋は清潔で静かである。成熟した経済の消費者は、商品の品質は当然、一定レベルをクリアしているものだと信じている。今日、究極の差別化とブランド構築、ブランドロイヤルティ確立のチャンスを生み出すのは、商品やサービスの提供を通して示される、人としての価値観なのだ。」(38頁)

私たちの仕事も例外ではないと感じています。

法律的な知識を知ること自体は、もはや弁護士がわざわざ回答するまでもなくインターネットで得ることができます。

結局、私たちが提供しているのは、いくつかの選択肢をあるなかで、当該弁護士の価値観・人生観に基づき選択すべき道を助言するというサービスです。

だからこそ、弁護士によって助言内容が異なるのです。

お金が最も大切であるという人もいれば、時間が最も大切であるという人もいます。

相手を赦せる人もいれば、憎み続ける人もいます。

他人に迎合するのではなく、自分が大切だと思っている価値観を商品やサービスを通じて表現すればいいのだと思います。