有期労働契約94 有期雇用契約の更新回数の上限設定が有効とされる場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、特任教員の雇止めについて更新期待の合理的理由が否定された裁判例を見てみましょう。

学校法人Y大学事件(札幌高裁令和元年9月24日・労経速2401号3頁)

【事案の概要】

Y社は、Y大学を設置、運営している。Xは、Y社と、Y社がXをY大学の特別任用教員として雇用する旨の有期労働契約を締結した。本件労働契約はその後6回にわたって更新されたが、Xは、平成29年3月31日をもってその更新を拒絶された。本件は、Xが、同拒絶は労働契約法19条2号に違反すると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同年4月1日から本判決の確定に至るまで、毎月21日限り、賃金月額38万1000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、Xの請求をいずれも棄却した。これに対して、Xは控訴するとともに、当審において、非常勤講師としての賃金月額21万0560円+遅延損害金の支払請求を予備的に追加した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、ロシア語の教職課程では、有期労働契約の教員が専任教員として教職課程の担当になったことは過去になかったことから、教職課程の担当となることを依頼されたXは、平成29年度以降も雇用継続への期待を持つことになった旨主張する。
しかし、Xが主張するような過去の事例と有期労働契約を締結しているXの労働契約の更新の問題とは客観的にみて関連性を欠くといわざるを得ない。加えて、本件教職課程の完成年度は平成28年度までであるから、Xが本件教職課程の専任教員となったことが平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待することの合理的理由となるものではない。

2 Xは、平成26年3月19日の本件説明会におけるA3理事の説明は、雇用継続への期待を抱かせるものであった旨主張する。
しかし、A3理事は、本件説明会において、平成29年度以降の雇用の可能性に対する質問に対して、Xを含む特任教員の雇用継続は平成28年度末、すなわち平成29年3月31日までを念頭に置いており、同日までは雇用の継続が確実であるが、労働契約が1年ごとに更新される以上、2年後、3年後の雇用の継続を約束することはできない旨回答しているこのようなやり取りの経緯からすれば、A3理事が平成29年3月末で契約を打ち切ると断言しなかったからといって本件労働契約の更新を期待させることの合理的な理由となると評価することはできない

本件は、5年の雇用上限設定がされている事例です。

当初より雇用期間の上限を設定し、かつ、恣意的な運用をしていない場合には、雇止めは有効と判断されることが多いです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。