本の紹介921 小さな会社が大きく伸びる55の最強ビジネスモデル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
小さな会社が大きく伸びる 55の最強ビジネスモデル

著者が、うまく行っている会社のビジネスモデルを55の要素に分解して解説をしてくれている本です。

異業種の成功パターンを多くの具体例を通して勉強するには非常に良い本です。

あとはどう自分の業界に応用するかが腕の見せ所です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今は良い商品・サービスが溢れかえる時代です。しかし、そうした時代であっても、実はビジネスモデルを上手に組み合わせることで、ライバル会社との差別化・新しい市場の開拓・高収益企業を作ることが可能です。逆に、ビジネスモデルを組み合わせないと、お客様側からライバル会社と同じような会社に見られるため、ライバルにお客様を奪われたり、値引き合戦に巻き込まれたり、ひいては・・・企業経営の持続が難しくなったりしていくことでしょう。」(8~9頁)

もはやこのレベルの一般論は多くの人がわかっていることです。

方法論を知っていることにはもはやほとんど価値はありません。

それを具体化してはじめて知っていることの意味が出るのです。

うまくいかないことを過度に恐れることなく、取れるリスクを取りながら、トライし続けることが成功へのカギだと信じています。

知っているか知らないかではなく、やるかやらないか。 ただそれだけです。

解雇298 業務削減を理由とする出向帰任者の整理解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務削減を理由とする出向帰任者の整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

マイラン製薬事件(東京地裁平成30年10月31日・労経速2373号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、医療情報担当者(MR)として勤務していたXが、平成28年5月31日付けでされた解雇が無効であるとして、Y社に対し、①ⅰ)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、ⅱ)平成28年6月分から平成29年3月分までの賃金合計506万2910円並びに同年4月分以降の賃金として毎月25日限り50万6291円+遅延損害金の支払を求め、これに対し、Y社が、主位的には本件解雇により、予備的には期間満了によりXとの間の社宅使用契約が終了したとして、②ⅰ)建物の明渡し及びⅱ)賃料相当損害金ないし未払社宅使用料の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 解雇は有効(Xの請求はいずれも棄却)

2 Xは、Y社に対し、建物を明け渡せ。

3 Xは、Y社に対し、平成28年8月1日から明渡済みまで1か月6万7000円の割合による金員を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、全従業員数の4割を超える大規模な余剰人員が生じたという非常事態下において、その人事制度の仕組みや配転が困難であるという制約の枠内で、なし得る限りの有意な解雇回避措置を複数採っているということができる。それにもかかわらず、Xは、解雇回避措置を真摯に検討しなかったばかりか、Y社からの協議の申入れについて取り合わなかったのであって、Xの協力が得られない以上、Y社が上記各措置以上の解雇回避措置を採ることも困難であるから、人員削減の必要性が経営政策上の必要性にとどまることを踏まえても、Y社は、相応の解雇回避措置を講じ、解雇回避努力を尽くしたとみることができる。

2 Xは、その直近3年間の成績評価が本件選定基準に達しなかったため、Aへの出向者の選定から除外されているが、Aへの出向を実現し、一人でも多く解雇を回避するためには、同社が求める優秀な人材を選抜することが必要であったのであるから、その直近3年間の成績を基礎とした本件選定基準を設定することもまたその合理性を肯認することができる。
また、本件選定基準の対象となる成績評価は、毎年1回定期的に実施されているものであり、少なくとも、平成25年度分及び平成26年度分の成績結果は本人に対してフィードバックされていることからすれば、指標としての客観性は担保されているといえ、Y社の恣意的な操作が介在するおそれは少ない。
以上からすれば、Xが本件選定基準によってAへの出向対象者から除外されて、雇用契約解消の対象となることもやむを得ないといわざるを得ない。

3 Y社は、本件解雇に先立って、全体ミーティング、電子メール、書面による連絡を通じて、本件業務提携契約の内容、本件解除合意に至った経緯、判断過程の要旨、MR業務の消滅、本件解除合意の内容、Aへの出向に関する本件選定基準や選定の判断過程、退職パッケージの内容、社内公募の案内等について、自らの了知し得る情報について可能な範囲で繰り返し説明した上で、今後のXの処遇について相談にも乗っており、更なる協議も試みているのであって、十分な説明や協議を尽くしているとみることができる
Xは、Y社から、退職勧奨時には退職パッケージを提示されたが、本件解雇時には何らの不利益緩和措置を受けていない旨主張する。
しかしながら、Y社は、Xに対し、本件解雇直前まで継続的に、特別退職金等約867万円(月額賃金の約17か月分相当額)及び他社の再就職支援サービスからなる退職パッケージを繰り返し提示していたのであって、かかる不利益緩和措置を拒絶したのは他ならぬXである
以上によれば、本件解雇に先立って履践された手続きは不相当であるとはいえず、むしろ、具体的な事実経過に照らして十分な手続や協議がされたとみることができるのであって、手続の相当性を肯認することができる。

リストラ時にここまでの準備ができるといいのですが、多くの場合、このような余裕がないので、拙速なのはわかりつつ、手続きを進めざるを得ないことがあります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介920 運のいい人、悪い人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は本の紹介です。
運のいい人、悪い人 ―人生の幸福度を上げる方法

実際、運がいい人、悪い人がいるのは疑う余地がありません。

運命として受け入れるしかないことです。

だからこそ、運の良し悪しを嘆いても仕方ありません。

日々の努力によって変えられることにフォーカスすべきです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

運というものは、自分の人生を振り返ってみても、また本田さんのお話を聞いてもそうだなと思うのですが、人からもらって開けていくものだと思うのです。そうだとすれば、自分が出会う人の数に比例して、運に恵まれる機会は多くなるでしょう。」(58頁)

出会う人によって人生が大きく変わることは間違いありません。

もっとも、誰といつ出会うかというのも、運命論的には、すでに運命によって決められているとも考えられます。

また、単に出会うだけでなく、その後、どのような付き合いをするのかが大切であり、単にその人の名刺を持っていることに特段の意味はないということも事実です。

いずれにしても、フットワークが重く、ノリが悪い人は、チャンスを逃しがちです。

空振りしても、バッターボックスに立ち続けることが、チャンスをものにする最もシンプルな方法です。

不当労働行為220 団交における抽象的な説明と誠実交渉義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、非常勤講師の契約更新を議題とする3回の団交における大学の対応及びその後の団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

学校法人明治大学(非常勤講師・更新拒絶)事件(東京都労委平成30年12月18日・労判1196号92頁)

【事案の概要】

本件は、非常勤講師の契約更新を議題とする3回の団交における大学の対応及びその後の団交申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 大学は、第1回及び第2回の団体交渉では、Bの雇止め理由について、A学部の判断を支持するという結論を述べるだけで、教育機関として妥当と判断した、一連の総合的な判断を支持した等の抽象的な説明を繰り返し、A学部が、本件事務折衝の経過を踏まえた上で、Bとの信頼関係を回復できず、同人を雇止めにすると判断するに至った具体的な根拠等について、何ら回答していない。また、大学は、第3回の団体交渉において、Bの雇止めの理由と謝罪文の評価について回答したものの、雇止め決定プロセスや29年度のBの雇用に係る組合の質問には明確な回答をしておらず、信頼関係の回復についての議論になることもなかった。
本件事務折衝において、大学が、今後信頼関係の措置が執られるのであれば、29年度の雇用を検討する余地がある旨説明していたことからすれば、Bの29年度の雇用に向けた適時の交渉が必要であったにもかかわらず、本件代替交渉における大学の上記対応は、組合とA学部が事務折衝を重ねて詰めてきた議論を後戻りさせるものといえ、事務折衝の経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。
大学は、A学部の教授を出席させるか、又は、A学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる
したがって、本件団体交渉における大学の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない。

2 ・・・これは、要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっていることを理由に、組合が従前の要求事項を繰り返す限り、団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したものと解釈するほかなく、団体交渉を拒否したものといえる
そして、前記で判断したとおり、本件団体交渉において、大学は誠実交渉義務を尽くしておらず、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとは認められないから、大学が組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

上記命令のポイント1のようなケースはよく目にします。

一応説明はしているけれど、抽象的な説明にとどまっており、具体的な根拠資料等を提示しない場合には、不誠実団交と判断される可能性がありますので注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介919 35歳からの「愚直論」。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
35歳からの「愚直論」。 (Nanaブックス)

成果を上げるのに年齢は関係ありません。

ただひたすら結果が出るまで愚直に努力を続けることです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『もっていないよりもっていた方がいい』ものは、なにも金ばかりではありません。こういった趣味や特技だって実際そうなのです。生き方が定まらない間に、自分の特技を一つあぶり出し、これからはそれを愚直に究めてみませんか。」(91頁)

僕たち凡人は、ビジネスにおいて、いきなりあらゆる分野に手を広げるのはやめておいたほうが身のためです。

結局、何1つ成果が出ないのがおちです。

まずは一芸に秀でることを目指したほうが効率がいいです。

そのためにはまずは力を注ぐ分野を狭めて、そこに最大限力を注ぐ。

その分野で目立つ存在になったほうが、その後のビジネスがやりやすいのです。

不当労働行為219 労組委員長の雇止めと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、交通事故等を理由に労組委員長の再雇用契約を更新せず、雇止めにしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

太宰府タクシー事件(福岡県労委平成30年11月2日・労判1196号93頁)

【事案の概要】

本件は、交通事故等を理由に労組委員長の再雇用契約を更新せず、雇止めにしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 A1は、約9年間組合の執行委員長を務め、組合活動の中心的な人物であった。

2 会社は、5月3日の苦情の前には、A1の雇止め及び解雇について、社内で検討したことがなかったにもかかわらず、5月3日の苦情の件については、その2週間後の同月17日に懲戒処分通知を発し、同時に本件雇止め通知を発するなど、本件雇止めを性急に決定した

3 会社では、料金メーターを不正操作するなど懲戒解雇事由に該当する行為を行った従業員に対しても雇止めは行われておらず、A1に対する本件雇止め以外に雇止めの事例はない

4 上記の各事実から、会社による本件雇止めは、会社が組合の執行委員長であるA1を嫌悪し、同人を会社外に放逐することにより、組合活動を困難にさせることを企図して行われたものと十分推認できる。

5 以上のとおり、本件雇止めは、組合活動の中心的な存在であるA1を嫌悪してなされた不利益取扱いと認められ、同時に、組合活動を委縮させるものであるから、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。

上記命令のポイント1~3のような事情があると雇止めの合理性を肯定するのは難しいでしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介918 資本家マインドセット(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
資本家マインドセット (NewsPicks Book)

サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」と著者の本です。

著者は本の中で「サラリーマンはもはや『幕末の武士』」「サラリーマンというビジネスモデルはやがて破綻していく」と言っています。

これから社会がどのように変わっていくのか不安な人もいれば、楽しみな人もいます。

みなさんはどちらですか?

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ウーバーやエアbnbのようなビジネスを思いつく人間も大勢いた。・・・しかし、アイデアを実行して、成功するまで諦めない者は少ない。おそらく、思いついてもやらない人が99%。『やってみないとわからない』と行動を起こすのは1%・その1%のほとんども、ちょっとやってうまくいかなければすぐに撤退する。試行錯誤をしながらそれをやり続けるのは、さらにその1%。そして、最後に勝つのは、やり続けた0.1%なのだ。」(95~96頁)

このようなことはずっとずっと前から言われていることで、多くの人がわかっていることです。

だから、成功する方法はもうずっと前からわかっているのです。

みんな成功したいと思っていながら、やらない。というよりできない。

行動に移す、途中で投げ出さない、コツコツやるべきことをやり続ける。

これができれば、たいていうまくいきます。

不当労働行為218 書面による回答と団交応諾義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組の団交申入れに対して、一部の事項について書面による回答だけを行ったこと、および開催条件に固執して団交を拒否したことなどの会社の対応を不当労働行為とした初審命令が維持された事案を見てみましょう。

アート警備事件(中労委平成31年1月31日・労判1196号90頁)

【事案の概要】

本件は、労組の団交申入れに対して、一部の事項について書面による回答だけを行ったこと、および開催条件に固執して団交を拒否したことなどの会社の対応の不当労働行為該当性が争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 団体交渉は、労使双方が同席、相対峙して自己の意思を円滑かつ迅速に相手に直接伝達することによって、協議、交渉を行うことが原則であり、労使双方の合意がある場合又は直接話し合う方式を採ることが困難であるなど特段の事情がある場合を除いては、書面の回答により団交が実施されたことにはならないというべきである。

2 会社が組合に対して送付した書面による回答等は、その内容からして、形式的にも実質的にも団交の体をなしておらず、「対面による団交」の代替となりうるようなものであったとは到底いえないことが明らかであるし、そもそも書面により団交が実施されたといえる場合についての上記の要件を満たしていないことも明らかである。そして、これらの会社の対応は、組合からの申入れによる団交が実施されていないことだけにとどまらず、会社が団交申入れを拒絶したものと十分に評価できることも明らかである。

3 団交実施に当たって、一方当事者が団交の場所や時間、議事の進行その他について実施のための条件を付すことは、相手方に異存がない場合のほか、団交を円滑に実施するための有効、適切かつ合理的な必要性と相当性が認められ、かつ相手方の利益等を不当に害するものでないときには、許されないわけではない。しかし、・・・一方当事者が設定した条件に応じない限り団交を実施しないことに正当な理由があると認められるのは、その条件について上記の必要性や相当性が明らかに認められ、相手方がこれを拒絶することが不当と評価できる場合に限られると解される。

4 会社は、義務的団交事項に係る27年各団交申入れにつき、それ以前の対応も含め、組合に団交3条件の受入れを求め、これを不当とする組合からの協議の申入れ等を拒絶し、上記の前提を明らかに欠く団交3条件に固執して、上記の事実経過のとおり長期間にわたって現在まで団交を開催していないのであるから、正当な理由がない団交拒否であることは明らかである。

団体交渉に関する基本的ルールが書かれています。

特に目新しい内容ではありませんが、大切な点なのでよく理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介917 一日一生(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
一日一生 (朝日新書)

比叡山飯室谷不動堂長寿院のご住職の本です。

生き方の勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今の若い人は、よく勉強するからとても頭はいいんだけど、実践する力が弱いのかな。勉強して知識を広げ、物事をわきまえるっていうことも、もちろん大切だけれど、それをそのままにしておかないで、自分のできることを実践していくということなんだな。知っていることを生かすことができないってことは、結局、生かすところまで学んでなかったってことになるんだよな。」(97頁)

アウトプットが命だということです。

仕入れをして売上げを上げる。

仕入れは手段であって、目的にはなりません。

インプットはアウトプットをしてはじめて意味があることを常に頭に入れておくことが大切です。

解雇297 復職の可否の判断における主治医の診断書の信用性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、パワハラの存否と休職期間満了自然退職扱いの有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

コンチネンタル・オートモーティブ事件(東京高裁平成29年11月15日・労判1196号63頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、①XがY社から長時間残業による過重労働を強いられたこと、上司から名誉毀損又は侮辱を受けたり、恫喝して責められたりするなどのパワーハラスメントを受けたことなどによって適応障害を発症した旨を主張して、民法709条又は同法715条1項に基づき、121万円(慰謝料110万円と弁護士費用11万円の合計額)+遅延損害金の支払を求め、また、②平成24年4月分から同年7月分までの未払残業代として70万8643円+遅延損害金の支払を求め、さらに、③Y社が休職期間満了によりXを自然退職としたのは無効である旨を主張して、Y社に対する労働契約上の地位の確認並びに平成26年11月から本判決確定に至るまで、賃金として毎月25日限り月額36万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Xの上記①及び同③に係る各請求をいずれも棄却し、上記②に係る請求のうち、Y社に対して、4万0184円+遅延損害金の限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とするXが本件控訴を提起し、Y社が本件附帯控訴を提起した。

【裁判所の判断】

本件控訴を棄却する。
本件附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
Y社は、Xに対し、2万6160円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、休職期間満了による自然退職が、労働者の地位を脅かすものであり、Xが復職可能な寛解状態にある旨の診断書が存在する以上、Y社は、それを否定する積極的で客観的な立証をすべきであるにもかかわらず、それがないのであるから、Xの復職は認められるべきである旨を主張する。
しかしながら、復職の要件である「休職事由が消滅したこと」、すなわち、Xの負傷疾病が寛解し、XがY社において従前どおりの業務遂行をすることができる身体状態に復したこと(就業規則49条1項、47条1項1号)については、Xが主張立証しなければならない事項であるところ、前記のとおり、平成26年10月29日の時点において、XがY社における就労が可能な身体状態を回復したと認めるに足りる証拠はないのであるから、Y社が、Xの休職事由が消滅しておらず、Xの復職は困難であると判断したことは、やむを得ないものといわざるを得ない。
そうすると、Xの上記主張は理由がなく、その余の主張するところも理由がなく、いずれも採用することができない。

2(一審判断)産業医であるI医師も、患者の強い意向により復職可能とする診断書を書く場合がある旨述べており、主治医であるJも、本件診断1から本件診断2への診断の転換について、Xが解雇を通告されて復職の希望を示したことを理由に挙げていることからすれば、本件診断1から本件診断2への転換は、Y社を退職となることを避けたいというXの意向が強く影響しているといえる
また、Jは、本件診断2の当時、医師としては通常勤務ではなく制限勤務とすべきと考えていた旨述べること、Xが抗うつ剤や比較的強い睡眠導入剤の処方を受けていたこと、Xの通院の頻度も通常の患者よりも高いものであったことなどに照らせば、Xの病状が、同月31日まで自宅療養を要するとされた本件診断1の状態から軽快しておらず、本件診断2において通常勤務可能とされた理由は、もっぱらY社を退職となることを避けたいというXの希望にあったというべきである。
以上によれば、休職開始から1年の期間が満了する平成26年10月29日の時点において、Xの体調は、上記就労不可とする本件診断1のとおり就労に耐え得るものではなく、上記時点において復職を不可としたY社の判断は正当というべきであるから、休職期間の満了により、Xを退職扱いにしたことは有効であり、Xの主張は採用できない。

上記判例のポイント2は非常に重要な視点です。

休職期間満了時に起こりうる典型的な問題ですので、どのように対応すべきかを予め知っておきましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。