解雇298 業務削減を理由とする出向帰任者の整理解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務削減を理由とする出向帰任者の整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

マイラン製薬事件(東京地裁平成30年10月31日・労経速2373号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、医療情報担当者(MR)として勤務していたXが、平成28年5月31日付けでされた解雇が無効であるとして、Y社に対し、①ⅰ)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、ⅱ)平成28年6月分から平成29年3月分までの賃金合計506万2910円並びに同年4月分以降の賃金として毎月25日限り50万6291円+遅延損害金の支払を求め、これに対し、Y社が、主位的には本件解雇により、予備的には期間満了によりXとの間の社宅使用契約が終了したとして、②ⅰ)建物の明渡し及びⅱ)賃料相当損害金ないし未払社宅使用料の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 解雇は有効(Xの請求はいずれも棄却)

2 Xは、Y社に対し、建物を明け渡せ。

3 Xは、Y社に対し、平成28年8月1日から明渡済みまで1か月6万7000円の割合による金員を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、全従業員数の4割を超える大規模な余剰人員が生じたという非常事態下において、その人事制度の仕組みや配転が困難であるという制約の枠内で、なし得る限りの有意な解雇回避措置を複数採っているということができる。それにもかかわらず、Xは、解雇回避措置を真摯に検討しなかったばかりか、Y社からの協議の申入れについて取り合わなかったのであって、Xの協力が得られない以上、Y社が上記各措置以上の解雇回避措置を採ることも困難であるから、人員削減の必要性が経営政策上の必要性にとどまることを踏まえても、Y社は、相応の解雇回避措置を講じ、解雇回避努力を尽くしたとみることができる。

2 Xは、その直近3年間の成績評価が本件選定基準に達しなかったため、Aへの出向者の選定から除外されているが、Aへの出向を実現し、一人でも多く解雇を回避するためには、同社が求める優秀な人材を選抜することが必要であったのであるから、その直近3年間の成績を基礎とした本件選定基準を設定することもまたその合理性を肯認することができる。
また、本件選定基準の対象となる成績評価は、毎年1回定期的に実施されているものであり、少なくとも、平成25年度分及び平成26年度分の成績結果は本人に対してフィードバックされていることからすれば、指標としての客観性は担保されているといえ、Y社の恣意的な操作が介在するおそれは少ない。
以上からすれば、Xが本件選定基準によってAへの出向対象者から除外されて、雇用契約解消の対象となることもやむを得ないといわざるを得ない。

3 Y社は、本件解雇に先立って、全体ミーティング、電子メール、書面による連絡を通じて、本件業務提携契約の内容、本件解除合意に至った経緯、判断過程の要旨、MR業務の消滅、本件解除合意の内容、Aへの出向に関する本件選定基準や選定の判断過程、退職パッケージの内容、社内公募の案内等について、自らの了知し得る情報について可能な範囲で繰り返し説明した上で、今後のXの処遇について相談にも乗っており、更なる協議も試みているのであって、十分な説明や協議を尽くしているとみることができる
Xは、Y社から、退職勧奨時には退職パッケージを提示されたが、本件解雇時には何らの不利益緩和措置を受けていない旨主張する。
しかしながら、Y社は、Xに対し、本件解雇直前まで継続的に、特別退職金等約867万円(月額賃金の約17か月分相当額)及び他社の再就職支援サービスからなる退職パッケージを繰り返し提示していたのであって、かかる不利益緩和措置を拒絶したのは他ならぬXである
以上によれば、本件解雇に先立って履践された手続きは不相当であるとはいえず、むしろ、具体的な事実経過に照らして十分な手続や協議がされたとみることができるのであって、手続の相当性を肯認することができる。

リストラ時にここまでの準備ができるといいのですが、多くの場合、このような余裕がないので、拙速なのはわかりつつ、手続きを進めざるを得ないことがあります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。