本の紹介896 毎日が小さな修行(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
毎日が小さな修行

帯には「三十代で千三百年に二人目の千日回峰行を満行した大阿闍梨が語る」と紹介されています。

だからこそとても説得力があります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちの修行時代は見て習う、見習いでした。そのときは意味がわからなくても納得できなくても、指摘を受けたら『すいません』と反省して、師匠や先輩のやっている通りに見て、自分でやってみるうちに、だんだんとできるようになりました。これが、見習いの極意です。そのときはわからなくてもいい。手探り状態でもいい。ただ人を恨まず、憎まず、常に素直に自己を省みる反省の心と、どんなささいなことからも学ぼうとする学びの心があれば、いつか必ず真理が掴めます。これがお坊さんになって二十五年経った、今の私の学びです。」(78頁)

手取り足取りが求められる時代になっていますが、修行の基本は「見て習う」です。

仕事でもスポーツでも、うまい人の真似をすることから始めます。

真似をしても出てしまうのが個性です。

個性は結果であって、目的ではありません。

素直さと柔軟さを持って修行をしていけば、いつか必ず結果は出ます。

賃金164 固定残業制度が無効と判断された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、基本給に組み込まれた固定残業代の定めが無効とされた裁判例を見てみましょう。

WIN at QUALITY事件(東京地裁平成30年9月20日・労経速2368号15頁)

【事案の概要】本件は、Y社の従業員であったXらが、Y社に対し、①時間外労働等に係る割増賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労働基準法114条に基づく付加金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はX1に対し、635万2073円+遅延損害金を支払え。

Y社はX1に対し、付加金として、415万円+遅延損害金を支払え。

Y社はX2に対し、283万9656円+遅延損害金を支払え。

Y社はX2に対し、110万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社の主張によれば、Xらに支給した賃金のうち、「時給802円×8時間」に月の勤務日数を乗じて算出される部分以外は、(リクルート手当や扶養手当を除けば)全て時間外労働等に対する対価であるというのであり、かかるY社の主張を前提とした場合、上記「時間外手当」のほかに、雇用契約書上の「無事故手当」として基本給に含まれるとされる部分も、時間外労働等に対する割増賃金として支払われたものということになる。しかし、本件規定及びこれに整合する「時間外手当」の定めがありながら、これとは別個の手当として定められた「無事故手当」が、その名称にかかわらず、やはり時間外割増賃金等の趣旨で合意されたものとはにわかに解し難く、雇用契約書、就業規則及び賃金規程の記載によっても、これが時間外割増賃金等の実質を有するものであったとは認め難い

2 なお、前記のような雇用契約書の記載に沿わない賃金支払の実態があったことに照らすと、そもそも、雇用契約書の記載自体が、XらとY社との間の労働契約の内容を正しく反映したものであるかについて疑問があり、前記のようなY社の主張も、雇用契約書の内容と整合するものとはいい難いことも踏まえると、雇用契約書上に「時間外手当」とある部分に限って、なお時間外労働等に対する対価として支払うとの合意が労使間に有効に存在し、これに沿った現実の取扱いがなされていたとも認め難く、この部分に限り固定残業代として有効なものと認めることも困難である(もとより、Y社もそのような主張をしない。)。
そうすると、Y社が時間外割増賃金等として支払ったと主張する部分が、通常の労働時間の賃金に当たる部分と明確に区分された上で、時間外労働等に対する対価として支払われたとは認められず、労働者において、労働基準法37条等に定められた方法により算定される割増賃金が正しく支払われているのかを検証することは困難であったといわざるを得ない。

3 そうすると、結局、本件において、Y社が時間外労働等に対する対価として支払ったと主張する部分は、①法定時間内の通常の労働の対価となる賃金部分と明確に区分されていないため、労働者において、労働基準法37条等所定の方法により算定される時間外労働等に対する割増賃金が正しく支払われているのかを検証することも困難である上、②予定される時間外労働等が極めて長時間に及び、Xらの実際の時間外労働等の状況とも大きくかい離するものであることなどからすると、XらとY社との間の雇用契約において、真に時間外労働等に対する対価として支払われるものとして合意されていたものとは認められない。
したがって、この部分を時間外労働等に対する割増賃金の支払として有効なものと認めることはできず、当該部分も、通常の法定時間内の労働に対する賃金(時間外割増賃金等算定の基礎となる賃金)に含まれるものと認められる

典型的な固定残業制度の失敗例です。

中途半端な知識でやる固定残業制度は百害あって一利なしです。

普通に残業代を支払うのが最もリスクが少ない王道のやり方です。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介895 まわりにいい影響をあたえる人がうまくいく(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
ポジティブ・インパクト まわりにいい影響をあたえる人がうまくいく

もうタイトルそのまんまです。

率先垂範こそがコーチングのあるべき姿だと確信しています。

まあ、反面教師もコーチングでしょうかね(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生を変えるようなものでなくてもかまいません。人との日常的なやりとりがポジティブな影響を与えることもあります。それは職場だけに限りません。どこでも起こり得ます。あなたの存在自体がポジティブな影響をもたらすこともあります。あなたの働き方や生き方が、誰かの手本やヒントになるような場合です。あなたの仕事ぶりや生き方に魅力を感じたとき、人はあなたのような働き方や生き方をしたいという気持ちになるかもしれません。」(29頁)

メンターの発想です。

もっとも、メンターの影響を受けるも受けないも、受け手(メンティー)側の問題です。

レセプターがなければどれだけいい影響を受けても、何も感じとることはできません。

やる気がない人に何を言っても始まりません。

本もセミナーもそうです。

どれだけ良い本を読んで、セミナーを受けても、何かを感じ取る力が読み手、聴き手になければ何も始まりません。

つまりは、メンターの言うこと、やることをそのまま受け入れる素直さと柔軟さがあるかどうか、ただそれだけです。

とてもシンプルですが、できる人はできるし、できない人は永遠にできません。

セクハラ・パワハラ50 暴行・人格権侵害を理由とする損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、暴行及び人格権侵害等を理由とする損害賠償責任が認められた裁判例を見てみましょう。

大島産業事件(福岡地裁平成30年9月14日・労経速2367号10頁)

【事案の概要】

甲乙事件は、Y社に雇用されて長距離トラック運転手として稼働していたXが、①Y社に対し、未払賃金929万7149円+遅延損害金を支払うよう求め、②B及びCに対し、Y社が前記①の未払賃金を支払わないことについて、Bが同社の代表取締役として、Cが同社の事実上の取締役として、それぞれ会社法429条1項又は民法709条に基づく損害賠償責任を負うと主張して、前記①の未払賃金+遅延損害金をY社と連帯して支払うよう求め、③Y社に対し、労働基準法114条に基づく付加金541万2912円+遅延損害金の支払を求め、④C及びY社に対し、CはXに対しパワーハラスメントと評価されるべき不法行為を行っていたところ、Cは民法709条に基づき損害賠償責任を負い、Y社は会社法350条の類推適用により事実上の取締役であるCがその職務を行うについてしたパワハラについて損害賠償責任を言うと主張して、165万円+遅延損害金を連帯して支払うよう求めるほか、Cに対しては前記165万円に対する不法行為の後である平成26年3月6日から平成27年8月31日まで同割合の遅延損害金の支払を求めた事案である。

丙事件は、Y社が、Xに対し、Xが平成25年9月28日及び平成26年3月7日に業務指示を受けていた運送業務を無断で放棄したため、Y社は受注していた運送業務を履行できず損害を被ったと主張して、不法行為又は債務不履行に基づき、229万7635円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社はXに対し、937万0829円(未払賃金)+遅延損害金を支払え

2 Y社はXに対し、494万8855円(付加金)+遅延損害金を支払え

3 C及びY社はXに対し、連帯して110万円(パワハラの慰謝料等)+遅延損害金を支払え

4 CはXに対し、110万円に対する平成26年3月6日から平成27年8月31日までの遅延損害金を支払え

5 XはY社に対し、12万2609円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、本件失踪1の後に復職を認めてもらおうとしてY社に戻った際、E常務に指示されて、社屋入口前で、Cが出社して来るまで土下座をし続け、出社して来たCはこれを一瞥したが土下座を止めさせることはなく、Xはその後も数時間にわたり土下座を続けたことが認められる。
従業員が数時間にわたり社屋入口で土下座し続けるという行為は、およそ当人の自発的な意思によってされることは考えにくい行為であり、Cとしても、Xが強制されて土下座をしていることは当然認識し得たものとみられる。にもかかわらず、前記認定のとおり、Cは制止することなくXに土下座を続けさせたのであるから、XはCの指示で土下座させられたのと同視できるというべきである。したがって、Cは、民法709条に基づき、土下座を続けさせられたことによりXが受けた身体的、精神的苦痛について不法行為責任を負う。
また、上記Cの行為は、XのY社での就労再開に関して行われたもの、すなわち事実上の代表取締役としての職務を行うについてされたものであるから、Y社は、会社法350条の類推適用により前記のXが受けた身体的、精神的苦痛について賠償責任を負う。

2 C名義のブログ記事は、これが他人から閲覧されればXの名誉を棄損する内容であり、前記のXに関する記事が掲載されることによって、Xの名誉を棄損するものであると認められる。そして、Cは従業員に対する名誉毀損行為を防止すべき義務を負っていたといえるから、ブログ記事の掲載を放置したことについて、民法709条に基づき不法行為責任を負う。
また、Cは事実上の代表取締役であると認められるから、Y社は、会社法350条に基づき、Cが職務を行うについてXに与えた精神的苦痛を賠償すべき責任を負う。

認容された未払賃金額もさることながら、事案の性質から来るレピュテーションダメージの方がよほど影響が大きいと思われます。

どこかの段階で口外禁止条項を付した和解ができなかったのでしょうか・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介894 ピコ太郎のつくりかた(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ピコ太郎のつくりかた (NewsPicks Book)

古坂大魔王さんの本です。

プロデューサーとしてどのようなことを考えているのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何やってもいいから、1番になれと。でも1番になったら2番目を引っ張れと言われた。『まずは1番を倒せ。ただ、倒した後はちゃんと手を差し伸べろ。そうでないと、あんたの意見は通んねえよ。下から上にしゃべっても誰も聞いてくんないよ。上から手を差し伸べていたら、いざというときにいろいろ聞いてくれるから。まず自分が勉強して、強くなって、上に上がる。そしてそこからやればいいから』こういう母の教えが僕の中にはある。」(160頁)

私が考える順番とは異なりますが、言わんとしていることは理解できます。

自分の力をつけるために日々努力をすることは言うまでもないことです。

しかし、それとともに、力のある先輩に引き上げてもらえる「かわいげ」が必要です。

力のないうちは、力のある人にかわいがってもらえることがとても重要です。

そう、「かわいげ力」。

かわいげがない人は、たとえ力があっても、力を発揮する機会に恵まれません。

だからなかなか上に行くことができません。

解雇293 積極性の欠如を理由とする普通解雇が有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、積極性の欠如等を理由とする普通解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

アクセンチュア事件(東京地裁平成30年9月27日・労経速2367号30頁)

【事案の概要】

本件は、コンピュータ・ソフトウェアの設計、開発、制作、販売、リース、賃貸及び輸出入等を目的とする株式会社であるY社に雇用されたXが、Y社によって行われた解雇が無効かつ違法であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とともに、同契約に基づく上記解雇後の賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・そのように業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題をXは入社当初からY社によって繰り返し指摘されていたにもかかわらず、結局のところXは、自身の問題点を、そもそも自身が得意とする仕事を割り当てない会社側の問題点であるとすり替えて、自らの意識や仕事ぶりを全く顧省みることなく、これによって他のメンバーとの協働に支障を来していることにも思慮が至らないのであるから、Xについては、少なくとも就業規則54条2号に定める解雇事由があり、本件解雇には客観的に合理的な理由があるといえる。

2 そして、Xの解雇事由がそのような業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題であり、これを長年にわたって繰り返されたフィードバック等による私的によって容易に認識し得たにもかかわらずPIPで改善すべき点を示されるまで全く明らかにされてこなかったなどとしてそもそもの認識すら欠如していたこと、仕事の姿勢に対する基本的かつ根本的なY社の考えを明らかにされてもなお「積極性」の意味を手前勝手に解釈してこれに反する考えを一切受け容れないこと、そのようなXに対してY社において普通解雇の可能性を示唆しつつPIPを実施したことや退職勧奨を試みたこと等を併せて鑑みれば、本件解雇は社会通念上相当なものであるといえる。

3 これに対し、Xは、Y社のアサイン制度が解雇権濫用法理との関係ではらむ問題点等を主張するが、それは単に一般的抽象的な懸念にすぎず、Xの主張を採用することはできないし、Xの技術力が一定程度評価されていたことや職位を落とすことによってアサイン継続の可能性が検討された事実があったことといったXに有利な事情を全て踏まえても、前記認定・説示に係る具体的なXの勤務態様及び業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題に照らして、解雇の有効性に係る上記判断が覆るものではない。
したがって、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であって、有効である。

一般には、積極性の欠如等を理由に解雇することはとてもハードルが高いです。

本件でも、会社はいきなり解雇したわけではなく、根気強く指導・教育をしています。

多くの場合、会社がそこまで忍耐強く指導できないために、相当額の解決金を支払って和解しているわけです。

また、今回は結果として解雇が有効になっていますが、仮に相当性の要件で解雇が無効となれば、バックペイの金額がかなり高額になるというリスクを会社側は負うことになります。

リスクヘッジの意味でも、ある程度の解決金を支払うという判断がなされることは十分にあり得ることです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介893 ざんねんな努力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
ざんねんな努力

帯にはこう書かれています。

頭は悪くない、努力もしている・・・でも・・・なぜかうまくいかない

『頑張り方』を間違えているあなたへ

筆者はこれを「ざんねんな努力」と言っています。

全体を通して習慣の大切さと習慣化の方法について説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・努力をすればいつかきっと報われると思っていたのが、そうではないんだ、とね。ただがむしゃらにガンバるんじゃなくて、努力の仕方によってはガンバらなくても結果を出せるということを学んでいたよ。それで、次々に目標を達成することができるようになっていったんだ。プライベートでも仕事でも。」(17頁)

確かに努力の仕方、つまり、方法論も大切です。

でも、実際は、方法論を知ったとしても、多くの人は、やらない。

いや、正確にはやり続けられないのです。

だから、成功する方法を教えてもらっても、多くの人は成功しない。

なぜか?

成功する前に止めちゃうからです。

ジムも英会話も仕事もすべて途中でやめちゃうから結果が出ないのです。

不当労働行為212 併存組合が存在する場合の使用者の対応と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社内に併存する2労組に掲示板を貸与しながら、新たに結成された労組の下部組織に掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

山陽タクシー事件(兵庫県労委平成30年10月25日・労判1189号183頁)

【事案の概要】

本件は、会社内に併存する2労組に掲示板を貸与しながら、新たに結成された労組の下部組織に掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は併存組合に対しては、具体的条件を付さずに掲示板を貸与しながら、A1分会に対しては、これを貸与せず、その異なる取扱いについて合理的な理由は認められないので、Y社がA1分会に対して掲示板を貸与しないことは、A1分会を不当に差別して取り扱い、組合の弱体化を図ったものと認められ、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。

団体交渉でもよく掲示板の貸与の話が出されますが、併存組合が存在する場合には、その対応に注意しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介892 働き方1.9(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける

イサムです。

サブタイトルは「君も好きなことだけして生きていける」です。

無理だと思う人もいれば、すでにそうしている人もいます。

ユーチューバ―で生計を立てるかどうかはさておき、考え方は学ぶところがあります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

たくさんのタネを蒔くという簡単な行動は、今すぐにでもできる。年齢のことに触れたのでついでにいうが、簡単だからこそ先送りしないで今すぐに始めよう。『定年退職してから始める』とか『子どもが独立して家を出てから始める』とかいう人は、たいてい定年退職しても、子どもが独立しても始めない。」(119頁)

まあ、そうですね。

もう少し時間ができたらやってみようかな、と思っている大半のことは、時間ができてもやりません。

本当にやりたいこと、やるべきことは、時間を作ってでもやるからです。

先送りしているということは、それほどやりたいと思っていない証拠ですから。

そう考えると、忙しい毎日の中で、いかにして時間を作るかが極めて重要になってくるわけです。

だからこそ、1分でも無駄な時間をなくしたいわけです。

自分の時間を大切する。

必要以上に他人に時間を奪われない。

このような意識からしか時間を作ることはできません。

配転・出向・転籍37 転居命令が無効と判断された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、転居命令が業務上の必要性を欠くとして無効とされた裁判例を見てみましょう。

ハンターダグラスジャパン事件(東京地裁平成30年6月8日・労経速2365号18頁)

【事案の概要】

本件は、建材及びインテリア・ブラインド等の製造販売を主たる業務とするY社の従業員であるXが、Y社が平成28年11月4日にした転居命令に従わなかったことを解雇事由として平成29年3月31日付けで解雇されたことから、Y社に対し、本件解雇は客観的合理的理由及び社会通念上の相当性を欠き、労働契約法上無効であるなどと主張して、労働契約上の地位の確認、本件転居命令に従う義務のないことの確認、平成29年4月及び5月の賃金合計125万1000円+遅延損害金等の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

転居命令も無効

Y社はXに対し、125万1000円+遅延損害金を支払え 等

【判例のポイント】

1 本件について業務上の必要性をみるに、Y社は、往復6時間の長時間通勤は、Xの健康不安、疲労や睡眠不足による工場内事故の危険、通勤途中の事故や交通遅延の可能性の増大、残業を頼みにくい不都合等から、Y社はXの長時間通勤を長期間放置することはできず、本件転居命令には業務上の必要性がある旨主張する。
しかし、本件転居命令は、本件配置転換の約1年後に出されたもので、Xは、その期間、転居せず自宅から茨城工場に通勤していたこと、Xの茨城工場での業務内容は梱包作業であり、早朝・夜間の勤務は必要なく緊急時の対応も考え難いこと、X不在時には他の従業員がXの業務に対応することができたこと、Xに残業が命じられることはなかったこと、Xは、片道3時間かけて通勤しているが、交通事故のために休職した期間と一度の電車遅延による遅刻の他は遅刻や欠勤はなく、長距離通勤や身体的な疲労を理由に仕事の軽減や業務の交替を申し出たこともほとんどなかったことが認められる。
そうすると、Xが転居しなければ労働契約上の労務の提供ができなかった、あるいは提供した労務が不十分であったとはいえず、業務遂行の観点からみても、本件転居命令に企業の合理的運営に寄与する点があるとはいえず、業務の必要性があるとは認められない

2 本件転居命令を巡る交渉において、Xが不満とした家賃の負担や別居手当の不支給は、Y社の旅費規程で定められたものであるから、Y社がXの不満に対応することが出来なかったことはやむを得ない。また、本件転居命令を出したことにつきY社に不当な動機・目的の存在は認められないし、Y社がXに対して転居することを強く求めたのも安全配慮義務の履行のためであったことは否定できない。そうすると、本件転居命令が無効であり、それに従わないことを理由にした本件解雇が無効であるからといって、Y社がXに対して、本件転居命令に従うよう求めたことが直ちに不法行為に当たるとは認められない。
したがって、Xの不法行為に基づく慰謝料請求は理由がない。

会社の考えもわからないではありませんが、判決となるとこういう結果になりますね。

それにしても、毎日片道3時間の通勤ですか・・・。考えただけでしんどいです。

片道3分のところに住んでしまうと、もう長時間勤務ができない体になってしまいます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。