解雇291 教員の教育的指導という名の体罰は許されるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、教員の体罰等を理由とする懲戒免職処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

宮崎県・宮崎県教育委員会事件(福岡高裁宮崎支部平成30年6月29日・労判ジャーナル81号44頁)

【事案の概要】

本件は、宮崎県教育委員会が、本件高校の元教員Xに対し、Xが顧問を務めていた本件柔道部の生徒に対する体罰等を理由として、地方公務員法29条1項1号、3号により、懲戒処分として免職する旨の本件処分を行ったため、Xが本件処分は裁量権を逸脱、濫用したものであるなどと主張して、県教委に対し、本件処分の取消しを求めたところ、元判決がXの請求を棄却したため、Xが原判決を不服として本件控訴を提起した事案である。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xが行った行為は、本件柔道部の複数の部員に対し、長期間にわたり、その都度、複数回、平手で叩いたり、足で蹴ったりする激しい暴行を加えたというものであり、Xのこれらの行為は、その態様や程度等に鑑みると、指導と呼べるようなものではなく、単に部員に対して恐怖心を植え付けるものであり、これらの行為が15歳から18歳までの女子に対して向けられたものであることをも併せ考えると、Xの上記体罰は、部員に対し、身体的苦痛のみならず、極めて深刻な精神的苦痛を与えるものであったといわざるを得ず、著しく悪質で、重大な結果を招くものであったというべきであり、Xは、教職員として、生徒を指導し教育する立場にありながら、その生徒に対して、長期間にわたり、繰り返し、極めて悪質で、かつ、重大な結果をもたらす行為に及んでいることなどからすると、県教委がXに対して懲戒処分のうち免職を選択して本件処分を行ったことは、社会観念上著しく妥当を欠くとはいえず、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したものということはできない。

昔は公然と行われていたこのような「指導」は、今の時代はもはや指導とは評価されません。

自分が学生時代に受けた指導を、現在、指導者として行うことは許されません。

「自分たちのときはこのくらい当たり前だった」という認識を取り除くことが求められます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介878 メモの魔力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

SHOWROOMの前田社長の本です。

タイトルのとおり、メモをとりまくることを薦めています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生は『時間をどう使ったか』の結果でしかありません。ならば『時間をどう使うのか』というところで、自分の人生の勝算につながる選択をすべきです。すべては、これからのあなたの選択にかかっているし、その選択の前提となる人生の軸を自己分析によって得ていることは、大変な強みになります。」(194~195頁)

人生は、毎日、小さな選択の連続です。

これまでの小さな選択の集積が今の自分を作っています。

日々の選択の基準が、自分の人生の勝算につながっているかどうかがすべてです。

過去へは戻れません。

人生を変えたければ、たった今から日々の選択を変える以外に方法はありません。

セクハラ・パワハラ47 パワハラによる精神疾患発症と解雇制限の適用の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司の暴行等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

共立メンテナンス事件(東京地裁平成30年7月30日・労判ジャーナル81号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していた元従業員Xが、適応障害に罹患し、その後休職となり、休職期間満了により自動退職とされたところ、Xが、同適応障害は、上司等から継続的にパワーハラスメントを受け、かつ、上司からも勤務中に暴行を加えられたことによるものであり、業務上の傷病であるから労基法19条1項により同自動退職は無効であると主張して労働契約上の地位確認を求めるとともに、上司の上記暴行につき、上司、Y社に対して、連帯して200万円の損害賠償等の支払、さらに、前記の上司等による継続的なパワハラに加えて、Y社から一方的に年俸額を減額され、休職後には、Y社がXの標準報酬月額を不当に減額して届け出たことが原因で健康保険組合から受領する傷病手当金を不当に減額されたなどと主張して、Y社に対し、民法709条に基づき562万円の損害賠償等の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

上司の暴行に基づく損害賠償請求は一部認容(20万円)

その余は請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの頭部打撲、頸椎捻挫の程度は、経過観察7日間を要する程度に止まっている上、上司の行為態様としても、その暴行態様が強度なものであったとまでは言い難いことや、上司の暴行行為としては、本件事件時の1日のみに止まっていることからすると、かかる上司の暴行が、客観的にみて、それ単体で精神障害を発病するほどの強度の心理的負荷をもたらす程度のものと認めることには、躊躇を覚えざるを得ず、そして、Xが、東京臨海病院のみならず本件事件当日に受診した木場病院でも、医師に対し錯乱状態や不眠症といった症状を訴えていることからすると、Xに発病した適応障害が業務上の傷病に当たると認めることはできず、本件自動退職が労基法19条1項により効力を生じないとするXの主張は、その前提を欠くものであるから、Xは、休職期間満了によりY社を退職したと認められる。

2 Y社がXについての標準報酬月額の変更要件に関する解釈を誤ってその変更の届出を行った結果、Xの傷病手当金の支給額の減額がされたと認められるが、その後、Xからの健康保険被保険者資格確認請求手続を経て、Xの標準報酬月額は是正され、傷病手当金の追加支給がされて、その経済的損失は回復されているもので、Y社が故意に事実に反する内容の届出をしたものではないことに鑑みると、この点に関して、Xに慰謝料請求を認めるべき精神的損害が発生したと認めることはできないというべきである。

上記判例のポイント1のように、労基法19条1項の適用を巡って、精神疾患とその原因行為との間に相当因果関係が認められるかどうかが争われることがあります。

医療記録等をしっかり確認をしながら判断をする必要があります。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介877 考えたら負け(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
考えたら負け 今すぐ行動できる堀江貴文150の金言 (宝島社新書)

タイトル通り、堀江さんはいつも「行動せよ」と言い続け、自らも動きまくっています。

この本はこれまで本等の総まとめですが、とてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕には所有欲もほとんどない。・・・でも、実に多くの人が所有欲に囚われているように僕には思える。まず、いったん所有欲に縛られると、『あれがほしい』『これを手に入れたい』と所有物のために働くようになり、本当に自分がやりたいことに集中できなくなる。また、所有物が価値を判断する基準となるため、自分が持っていないものを持つ人を妬んだり、持っているものを失うことを恐れたりと、心がまったく休まることがない。それはやがて心を欲望まみれにし、パフォーマンスを確実に下げていくだろう。所有欲ほどムダなものはないのだ。」(123頁)

私も物欲、所有欲がほとんどありません。

何かを買いたいということがお金を稼ぐ動機にならないわけです。

物に対する執着がないので、こだわりというこだわりがありません。

そういうのは面倒くさいし、どうでもいいと思っているのです。

できるだけモノを持たずに身軽なまま生きていきたいです。

解雇290 教諭の未成年者との性交渉を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、元教諭の未成年者との性交渉等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人日本体育大学事件(東京地裁平成30年6月19日・労判ジャーナル81号48頁)

【事案の概要】

本件は、平成25年4月1日、Y社が、期間1年の常勤講師として雇用し、その期間満了後の平成26年4月1日、期間の定めのない専任教諭として雇用した元教諭Xを、未成年者との性交渉をもつ行為等、Y社との間の信頼関係を破壊する事項があったとして平成27年3月31日限り、Xを解雇したため、Xが、Y社に対し、上記解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものであり、権利を濫用したものとして無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記解雇の翌月である平成27年4月から本判決確定の日まで弁済期である毎月20日限り賃金1か月約38万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xには、Y社から雇用されるに先立ち、現職の教員であったのに、街中でたまたま見かけた約20歳年下の未成年の女性に声を掛け、その3日後には同女性と性交渉を持つに至ったという、Y社がその教員としての適性を疑ってしかるべき行為があり、その後、そのような事実がY社の知るところとなり、本事件は、報道機関により広く報道され、インターネット上の掲示板においては、本事件に関してXの実名も掲載されており、Xは、Y社に雇用されるに当たって提出した本件志望書中において、Y社がXの採否を判断するに当たり関心を持ってしかるべきW高校の退職事由につき、解雇されたとの事実を隠したのみならず、自発的な辞職であったと積極的な偽りを故意に記載し、その後の別件訴訟の結果等について、真実に反する自己に有利な内容虚偽の説明をしたものであり、Y社はこれらの事情を踏まえてXを解雇したものであるから、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠くものとはいえず、社会通念上相当であると認められないものともいえないのであって、権利を濫用したものとして無効であると解することはできない。

特に異論のない結果ではないでしょうか。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介876 新世界(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
新世界

キングコング西野さんの本です。

お金と信用についての西野さんの考え方が書かれています。

とても参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

”貯金時代”は、お金を貯めれば安心が得られた。しかし、貯信時代においては、『貯金』は機会損失だ。『お金を銀行に何年も寝かせておくぐらいなら、そのお金を使って一人でも多くの人を笑顔にして、信用を稼いでおいた方がいい』という流れになる。」(108頁)

真実ですが、これを読んで本当にこのとおり実行する人は全体の0.1%もいないでしょう。

どれだけ本を読んでも人生が変わらないのは、行動に移さないからです。

本を読むのは、人生を変える手段であって、単なる仕入れにすぎません。

仕入れは、売れてはじめて、仕入れた意味があるのです。

貯金は機会損失だという意味がわかると、お金の使い方が変わってきます。

セクハラ・パワハラ46 パワハラ発言の客観的証拠がない場合の裁判所の判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、パワハラ及び違法な雇止めに基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

セイハネットワーク事件(大阪地裁平成30年7月6日・労判ジャーナル81号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、上司から叱責等のパワーハラスメントを受け、これによって生じた欠勤を理由にY社から違法な雇止めをされたとして、Y社及び上司に対し、不法行為又は使用者責任に基づく慰謝料500万円の損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、上司が、Xに対し、長年にわたり、「風邪をひいてはいけない」、「欠勤3回目はクビやで」、「仕事があるのはありがたいんやで」などと叱責し続けた旨主張するが、Xの上記供述を裏付けるに足りる的確な証拠はないこと、Xは、上司が、平成25年4月以降、変則的なスケジュールを組んでXに休養を与えなかった旨主張するが、同月以降のXの休日や具体的な勤務日(シフト)の決定に上司が関与したことを認めるに足りる証拠はないこと、上司は、Xに対し、平成25年4月以降の勤務形態について、Xの健康状態に配慮して、日曜日を含む週休2日のフルタイムBを提示しているのであり、あえてXについて変則的なスケジュールを組んだり、組むよう指示したりする理由はないことに鑑みれば、Xの上記主張は理由がないというほかないから、Xに対して、上司によるパワハラがあったとは認められない。

2 Xは、多数回にわたり欠勤しただけでなく、事前に連絡することなく欠勤(無断欠勤)したことが複数回あり、事前に連絡できなかった合理的な理由も明らかではなく、Xが主張するように、何らかのストレスが原因で欠勤する場合であっても、事前に連絡することすらできないという事態は通常想定し難いのであり、無断欠勤に対してY社から繰り返し注意を受けていたにもかかわらず、Xが平成25年10月に無断欠勤を繰り返したことに照らせば、本件雇止めが客観的に合理性を欠くとか、社会的に相当性を欠くと評価することはできず、ましてや本件雇止めに不法行為を校正するほどの違法性があるということはできない。

ハラスメントの客観的裏づけがない場合、上記判例のポイント1のような認定になってしまいます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介875 「誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」

著者はドラマの脚本家の方です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そうやってチャレンジを重ねてきて、わかったことがあります。それは、人の評価と自分の価値はまったく関係がないということ-。”人の評価や思惑”が気になってしまうのは、それが自分の価値を決めると信じているからです。褒められると自分には価値があると思い、けなされると自分はダメだと落ち込む。・・・こんなふうに、他人の評価で自分の価値を測るから、自分がしたいことを自由にできなくなるのです。」(34頁)

落ち込まないためにはこのように考えるのがいいですね。

でも、実際のところは、評価をするのは他人です。

自分が自分の評価をするというのはどうもしっくりきません。

特に仕事においては、自分がいいと思っても他人(顧客)がいいと思わなければ、それはダメということです。

他人に評価される仕事を目指すというのはある意味、当然の前提ではないでしょうか。

管理監督者39 管理監督者性の判断基準(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理監督者の該当性に関する裁判例を見てみましょう。

MUKU事件(大阪地裁平成30年7月20日・労判ジャーナル81号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、労働基準法37条に基づき、平成27年3月から平成29年2月まで毎月20日を支払期日とする割増賃金合計約398万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金として約379万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 アルバイトや正社員の採否や昇給等の最終的な決定は、全てY社代表者が行っていたというのであるから、Xが行った募集媒体の提案等は、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの職務及び権限とは認められず、また、Xは、自らを含む本件店舗の従業員のシフト表を作成し、自らもこのシフト表のとおりに勤務していたことが認められるが、Xによるシフト表の作成方法は、Xが本件店舗の店長に就任した平成28年2月以降も、Xの拘束時間が相当長時間に及んでいることに照らせば、Xが自分の都合に合わせてシフト表を作成することができる状況にあったとは認められないから、Xは、本件店舗の店長に就任後、自己の労働時間についての裁量を有していたとは認められず、そして、店長就任後のXの給与の額が、管理監督者の地位にふさわしいものであると評価することはできないこと等から、本件店舗の店長に就任した後のXが、実質的に経営者と一体的な立場にあるとはいえず、労働基準法41条2号所定の管理監督者に当たるということはできない

今は昔の論点です。

本件でも管理監督者性は否定されています。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介874 逆転の仕事論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
あえて、レールから外れる。逆転の仕事論

さまざまなジャンルの方8名が自身の「仕事論」について語っています。

もはやこれまでの「当たり前」は全く通用しなくなっていることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ある意味彼の生き方は私の生き方にも似ている。何をやっているのか分からない、そしてひとつひとつを積み上げ、ある時期からそれらがシナジーを発揮して成果を出し始める。誰しも成果を出してからしか評価してくれないのがこの世の中。そういう世の中を前提に彼は面白いことに次々と取り組んでいるのが凄いと思っている。」(228頁)

これは、俳優として活躍されていた小橋賢児さんのことを堀江さんが書いている一節です。

堀江さん風にいうと「多動力」ですかね。

興味があることにどんどんチャレンジする。

最初はバラバラだったことがそのうちつながってくるのが面白いですね。