本の紹介891 勝間式超コントロール思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
勝間式超コントロール思考

勝間さんらしい本です。

こういうことは、楽しんで取り組める人が勝ちです。

少しでも効率的にならないかを考えるトレーニングになります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

移動時間を無駄遣いしないという感覚の鈍化についてもっと言えば、通勤時間についてもなるべく短い方が当然ながら理想です。・・・もし引っ越せるならば通勤時間が短くなることを最優先に選ぶ、そして諸事情で引っ越せないならば5分でも短くできる方法を考えることをお勧めします。」(101頁)

全く同感です。

通勤時間3分のところに住んでしまうと、もう職場から遠くに住むことができなくなります。

車の運転もできるだけしたくありません。

寝れないし、資料も読めないし・・・。

とにかく極力無駄な時間をなくしたい。

ちりつもで考えると小さな無駄の積み重ねで膨大な時間を無駄に消費していることになります。

継続雇用制度26 定年後再雇用者の労働条件と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後再雇用者につき、定年前後の基本給等の差異は不合理でないとされた裁判例を見てみましょう。

日本ビューホテル事件(東京地裁平成30年11月21日・労経速2365号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を定年退職後にY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、当該有期労働契約と定年退職前の期間の定めのない労働契約における賃金額の相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であり労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額688万0344円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの定年退職時と嘱託社員及び臨時社員時の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)は大きく異なる上、職務の内容及び配置の変更の範囲にも差異があるから、嘱託社員及び臨時社員の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし、Xの嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできない
そして、その他の事情についてみるに、定年退職時の年俸額はその職務内容に照らすと激変緩和措置として高額に設定されている上、正社員の賃金制度は長期雇用を前提として年功的性格を含みながら様々な役職に就くことに対応するように設計されたものである一方で、嘱託社員及び臨時社員のそれは長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず、原則として役職に就くことも予定されておらず、その賃金制度の前提が全く異なるのであり、このような観点からみても、正社員時の賃金額と嘱託社員及び臨時社員時の賃金額に差異があること自体をもって不合理といえないことは明らかである。
加えて、Xの定年退職時の年俸の月額とこれに対応する嘱託社員及び臨時社員時の賃金とを比較するとその違いは小さいものとはいえないが、それらの賃金額は職務内容が近似する一般職の正社員のそれとは比較においては不合理に低いとまではいえないことも併せ考慮すれば、Y社における嘱託社員及び臨時社員の賃金額の決定過程に労使協議が行われていないとのXの指摘を踏まえてもなお、Xの定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできず、これをもって労働契約法20条に違反するということはできない。

まだ当分の間、労働契約法20条に関する裁判が続くと思われます。

最高裁判決が出てもなお、個別の事情を踏まえての判断になるため、紛争自体はなくなりません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介890 インパクトカンパニー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
インパクトカンパニー 成熟企業を再成長させる、シンプルな処方箋

久しぶりの神田さんの本です。

サブタイトルは、「成熟企業を再成長させる、シンプルな処方箋」です。

これからの時代のマーケティング手法について非常に参考になります。

また、文章の構成自体が勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

はじめに言葉ありきー答えは、『言葉』に他ならない。ページデザインや写真の美しさも当然、重要だが、そうしたクリエイティブな要素は、コピーが表現するメッセージを、より伝達しやすくする補完的な役割を果たす。やはり主役は、読み手が商品価値を直感的に理解できる言葉や、その商品を使っている姿を明確にイメージできる言葉なのである。」(220頁)

どのような言葉を選択するかは、まさにその人がこれまでどのような人生を送ってきたかを如実に表します。

言葉には、単語のほかに文章も含まれていると思います。

相手に対して、いかに自分の意見を伝えるか。

聞き手、読み手の立場を想像し、どのように伝えるのが一番伝わりやすいかを考える。

一朝一夕にできることではありませんが、反面、年齢を重ねてもできない人は永遠にできません。

だからこそ、どのような人生を送ってきたかが出てしまうのです。

事実なので受け入れるしかありません。

でも、人生は変えられます。 簡単ではありませんが変えられます。

想像力を鍛え、使う言葉を変えると人生が変わり始めます。

信じるか信じないかは、あなた次第。

不当労働行為211 セクハラ発言を理由とする解雇と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、葬儀場のマイクロバス運転手である組合員を、セクハラの言動を理由に解雇したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

日本セレモニー事件(福岡県労委平成30年9月21日・労判1190号92頁)

【事案の概要】

本件は、葬儀場のマイクロバス運転手である組合員を、セクハラの言動を理由に解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xに対する解雇は、相当性に欠けるものであり、他の懲戒処分を選択することも十分考えられたにもかかわらず、Y社は、Xへの直接の事情聴取も行わず、また、他の懲戒処分を検討することもないまま短期間に重い処分である解雇を選択して本件解雇を行ったものであり、このようなY社の態度は、当初からXについては解雇しか検討していなかったのではないかと考えざるを得ない

2 ・・・さらに、Xが各団交において積極的に発言していることが認められるとともに、Y社は、XがY社のパート従業員らに対して、何か困ったことがあったら自分が強い人を紹介する、などと話していることを認識していた。

3 このような本件解雇に至る経緯、これまでの労使関係及び前記のとおり本件解雇が相当性に欠けることを併せ考慮すると、本件解雇は、Y社が、労働条件の交渉において容易に譲歩しようとしない組合を嫌悪して行ったものといえる

4 以上のように、本件解雇は、労組法7条1号に該当する。また、本件解雇によって、Y社は唯一の組合員を排除したのであるから併せて労組法7条3号にも該当する。

会社が、実際には本件解雇について不当労働行為意思がなかったとしても、上記命令のポイント記載の事情があると不当労働行為意思を認定されてしまいます。

いずれにしても解雇は慎重に行う必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介889 僕たちはもう働かなくていい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
僕たちはもう働かなくていい (小学館新書)

堀江さんらしいタイトルです。

この本のタイトルだけを見て鵜呑みにしないようにしましょう(笑)

特に働くのが嫌い方は、しっかり本の中身を読まないと誤解します。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あのとき、ああしておけばよかったなどと、1秒たりとも後悔はしたくない。ありもしない未来に振り回されるのもイヤだ。私は毎日、楽しい。楽しくて楽しくて楽しくて、やりたいことが尽きない。インターネットなど、テクノロジーの多大なる恩恵があるからこそ、成立しているとも言える。機械やら人の手に、私のできないことや面倒くさいことを受け渡すのに、何ひとつ抵抗がない。だからいくらでも、好きなこと、やりたいことに全力を傾けられる。」(196頁)

この本のタイトルとは裏腹に、堀江さん、めちゃくちゃ働いていますよね(笑)

違うのは、「働く」という行為の捉え方です。

すぐにすぐ堀江さんのような働き方ができるようになるわけではありませんが、日頃の生活を変える参考にはなります。

私も職業柄、比較的自由な生活をしていますが、もっと好き勝手生活したいという願望がまだあります。

そのためには、いろんな工夫をしなければなりませんが、着々とその準備が進んでいることもまた事実です。

労働災害96 上司勧誘のマラソン大会における死亡と労災該当性(業務起因性)(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司勧誘のマラソン大会における心停止と死亡の業務災害該当性に関する裁判例を見てみましょう。

国・菊池労基署長事件(熊本地裁平成30年8月29日・労判ジャーナル82号48頁)

【事案の概要】

本件は、銀行員であった亡労働者Xの父が、Xが上司から誘われて参加したマラソン大会において心停止となって死亡したとして、老舎災害補償保険法に基づく遺族補償年金及び葬祭料の各支給を請求したが、菊池労働基準監督署長がいずれも支給しない旨の各処分をしたことから、本件各処分は違法であるとして、国に対し、本件各処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件大会への参加は、支店の支店長が支店内で行員らを勧誘したことを契機とするものではあるが、その声かけの態様は、Xら特定の行員に対し、業務の一環として本件大会への参加を求めるものではなく、支店の行員以外の行員らも含めて広く声かけをしたにすぎない私的なものであって、これに対する行員らの対応をみても、参加しない意思を表明した者や申込書を受け取らない者もいるなど、本件大会に参加するか否かは行員らの各自の判断に委ねられていたということができ、さらに、本件大会とその1か月余り後に開催された第2回熊本リレーマラソン自体、熊本銀行が特別協賛したにとどまり、行員らが参加した場合の参加費が免除されるなど、行員らにとって一定の利益を受ける面はあったものの、行員の参加が熊本銀行において要請されていたものではない上、そもそも本件大会とは主催者も異なる無関係の大会であるといわざるを得ないから、熊本銀行の行員にとって、第2回熊本リレーマラソンへの参加が業務に当たるとはいえず、本件大会への参加がその準備行為として業務に当たるということもできず、本件大会の参加がXの業務行為又はそれに伴う行為として行われたということができないから、本件災害が業務災害に当たると認めることはできない。

事実上強制されていたと認定されるかどうかがポイントになりますが、裁判所はこの点について否定しました。

他の行員の対応から判断するとこのような結論になるのもしかたがないように思います。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。

本の紹介888 集中力はいらない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
集中力はいらない (SB新書)

だそうです。

非常にキャッチーなタイトルでつかみはOKですね。

集中せずに今の仕事を遂行する自信はありませんが、この本で著者が言いたいことは理解できます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

そもそも、何故成功したのかといえば、それはその時代にあって、誰よりも早く新しいものを生み出したからだ。誰も思いもしなかった発想があって、誰も見向きもしなかったものを実行したからです。まるで一つのことに集中して、一心不乱にやり遂げたように語られることが多いが、実はそうではない。あらゆるものを検討し、既存のものに集中せず、柔軟に対処した結果である。そこにあるのは、集中ではなく、分散だったはずだ。」(140頁)

生活や仕事の緩急の問題です。

集中すべきときは集中する。リラックスするときはリラックスする。

そのメリハリが大切だということにすぎません。

机の前で集中してやるべきことと、お風呂に入りながら、新しいアイデアについて考えること。

この両方がうまくできると物事がうまく進むような気がします。

賃金163 休職からの復職後の賃金減額提示は許されるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、休職から復職する際に使用者が賃金減額を提示し、労働者が納得せず復職に至らなかった事例において、以降の不就労期間中の賃金の請求が一部認められた裁判例を見てみましょう。

一心屋事件(東京地裁平成30年7月27日・労経速2364号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、①時間外労働に従事したと主張して、本件契約に基づく賃金支払請求として992万0807円+遅延損害金、及び労働基準法114条に基づく付加金請求として742万8009円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労災による休職後、復職するに当たり、Y社が勤務先の変更と賃金の減額を打診したことは、Y社の責めに帰すべき事由による労務遂行の不能(民法536条2項)に該当すると主張して、主位的に雇用契約に基づく損害賠償請求として、上記打診後の賃金ないし賃金相当額+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、762万3442円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、121万7367円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xが就労中の事故により本件怪我を負い、休職するに至っていること、Xの実労働時間は相当長期間にわたっていたことからすれば、Xが復職するにあたり、Y社が人事権の行使として、同様の事故が起こらないように配慮する目的でその勤務内容を決定すること自体は不自然なことではなく、また、人事権行使の裁量の範囲内であれば、勤務内容の変更に伴い、職務に対応する手当等の支給が廃止されることも許容される場合があり得る
しかしながら、Y社は、Xとの交渉において、時間外手当の定額支給を残業時間について割合賃金を支払う方法に変更すること及び通勤手当の2万円減額を提案している。時間外手当については、そもそもY社の賃金規程上何らの記載もされておらず、XとY社との間で定額残業代として支払う旨の合意がされた事実を認めるに足りる適切な証拠はなく、また、Xの勤務内容を調理部(洗浄室)に限定することから当然に時間外手当の支給要件の欠如が導かれるものでもない
また、Xに対する通勤手当は、賃金規程上の規定内容とは異なる形で支払われていたものであって、Xの勤務内容を調理部(洗浄室)に限定することから当然に通勤手当の減額が導かれるものではない。そうすると、Y社の提案は、人事権行使の裁量の範囲に留まらない賃金減額を含むものと言わざるを得ず、Xの同意なく一方的に決定できるものではないが、Y社がXに交付した書面にはその旨の記載はなく、また、同意の有無が復職とは無関係である旨の記載もない。そして、Xが平成28年10月11日にY社に赴いた際には、Xのタイムカードは準備されておらず、MがXに対して同意書に署名して提出をしてもらいたいとの意向をY社が有している旨を伝えているのみであり、その当時Y社においてXの就労を受け入れる体制にあたことを認めるに足りる適切な証拠はなく、また、Y社がXに対して、同意書の提出がなくともXの就労を認める等の説明を行った等の事実を認めるに足りる適切な証拠もないことからすると、客観的に見れば、少なくとも平成28年10月11日時点では、Y社には責めに帰すべき事由があるといえ、この間、休職前の賃金である月額35万1600円の割合による賃金の支払を請求することができる

2 Y社は、Xの復職に関する交渉中から、N弁護士を通じて本件訴訟における判断に従って未払賃金等を支払う旨を示している上、本件訴訟手続中も、Y社の主張を前提とするものではあるものの未払割増賃金について弁済の提供を行っている。このことに、本件訴訟手続中の和解交渉の経過を併せ考慮すると、Xが指摘するY社における労働時間管理の問題等があるとしても、本件において付加金の支払を命じる必要性があるものとは認められないというべきである。

結果としては、かなり大きな金額が認められています。

人事権行使の程度、すなわち、どこまでやってしまうと法的にやりすぎになってしまうのかは難しい判断が求められます。

顧問弁護士と相談しながら進めていくのが無難でしょう。

本の紹介887 読書する人だけがたどり着ける場所(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
読書する人だけがたどり着ける場所 (SB新書)

齋藤先生が読書の効用について書かれています。

結局、この本を読むのは、既に読書の習慣がある人です・・・。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

驚くべきことに驚けるのは、実は教養があるからです。知識豊富で教養豊かな人は、もうあまり驚くことがないのではないかと思うかもしれませんが、逆なのですね。知れば知るほど、心の底から驚くことができるのです。知識がないと、何がすごいのかわからない。ぴんとこない、ということになります。」(99~100頁)

まさにそのとおりだと思います。

教養とは、驚くべきことに驚ける素養なのです。

骨董品やワインなど、知識がないと何がどうすごいのかあまりよくわかりませんよね。

根底にあるのは、好奇心や探究心です。

教養がある人は総じて、好奇心や探究心の塊なのはそのためです。

セクハラ・パワハラ49 労災認定されている事案で裁判所が業務起因性を否定?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司による暴行が違法なパワーハラスメントと評価されたが、暴行を受けた労働者が発症した適応障害の業務起因性が否定された裁判例を見てみましょう。

共立メンテナンス事件(東京地裁平成30年7月30日・労経速2364号6頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していたXが、適応障害に罹患し、その後休職となり、休職期間満了により自動退職とされたところ、Xは、同適応障害は、上司等から継続的にパワーハラスメントを受け、かつ、上司であったCからも勤務中に暴行を加えられたことによるものであると主張して労働契約上の地位確認を求めるとともに、Cの上記暴行につき、Cに対しては民法709条に基づき、Y社に対しては民法715条に基づいて、連帯して200万円の損害賠償(慰謝料)+遅延損害金の支払を請求し、さらに、前記の上司等による継続的なパワーハラスメントに加えて、Y社から一方的に年俸額を減額され、休職後には、Y社がXの標準報酬月額を不当に減額して届け出たことが原因で健康保険組合から受領する傷病手当金を不当に減額されたなどと主張して、Y社に対し、民法709条に基づき562万円の損害賠償+遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社らは、連帯して、Xに対し、20万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Cは、平成27年7月11日午前、Xに対し、Xの仕事ぶりを非難して、Xの腕を掴んで前後に揺さぶる暴行を加えた上、別の客室で、再度、恫喝口調でXを詰問し、「やれよ。」「分かったか。」などと繰り返し述べて迫り、壁にXの身体を押し付け、身体を前後に揺さぶる暴行を加え、逃れようとしたXが壁に頭部をぶつけるなどし、Xに頭部打撲、頸椎捻挫の傷害を負わせたものであって、このようなCの行為が、Xに対する不法行為を構成することは明らかである。

2 上記Xの頭部打撲、頸椎捻挫の程度は、経過観察7日間を要する程度に止まっている上(Xは、本件事件から約2か月後の同年9月16日にもY1病院を受診しているが、医師の診察所見として意識清明で神経学的にも異常はなく、頭部CTの結果でも異常はないとされている。)、Cの行為態様としても、Xが主張するような頭部を壁に打ち付けるようなものではなかったことは前記で認定したとおりであり、その行為態様が強度なものであったとまではいい難いことや、Cの暴力行為としては、本件事件時の1日のみに止まっていることからすると、かかるCの暴行が、客観的にみて、それ単体で精神障害を発症するほどの強度の心理的負荷をもたらす程度のものと認めることには、躊躇を覚えざるを得ない。
そして、Xが、Y1病院のみならず本件事件当日に受診したY4病院でも、医師に対し錯乱状態や不眠症といった症状を訴えていることからすると、Xの適応障害の原因が本件事件以外の業務外の要因にもあるとの合理的な疑いを容れる余地がある

3 行政庁の上記判断が裁判所の判断を拘束する性質のものでないことはいうまでもないところであるし、前記のとおり、Cの暴力行為は本件事件当日のみのことであることや、Xの受けた傷害の程度が外傷を伴わないものでさほど重いものとはいえないことなどを考慮すると、上記労災医員の意見を過度に重視することは相当でないというべきである。

4 以上のとおり、Xに発病した適応障害が業務上の傷病に当たると認めることはできないから、本件自動退職が労基法19条1項により効力を生じないとするXの主張は、その前提を欠くものである。したがって、Xについては、平成28年1月12日の休職期間満了によりY社を退職したと認められ、これによりXとY社との間の本件雇用契約関係は終了したものであるから、Xの労働契約上の地位確認請求は理由がない。

非常に重要な裁判例です。

労災認定がされているにもかかわらず、裁判所は業務起因性を否定し、労基法19条1項の適用は認めませんでした。

裁判所がいかなる要素からこのような結論を導いたのかをしっかり理解することが大切です。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。