本の紹介859 未来の稼ぎ方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038 (幻冬舎新書)

最近よく目にする未来の日本について書かれています。

さまざまなデータに基づいて書かれており、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

機械が多くの仕事を代行するなか、どうやって生き残ればいいのか。抽象的な話になる。・・・それは、鼓舞すること、心をゆさぶること、驚かせること、感動させること、ドキドキさせること・・・だろう。」(282頁)

うーん・・・。

きっと、鼓舞することも心をゆさぶることも驚かせることも、みんな機械がやってくれるような気がしますが。

今後、どこまで機械がやってくれるようになるのかわかりませんが、機械が代わりにやってくれることはすべて機械にお願いしたいです。

それで今の仕事がなくなったら、またそのとき他の仕事をしますので、別にいいですから。

この本の帯には「その仕事が安定しているのは10年!」と書かれていますが、そもそも仕事に安定なんて求めていないので(笑)

賃金161 固定残業制度が無効と判断される理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、給与規定の制定経緯等から定額残業代を無効とした裁判例を見てみましょう。

クルーガーグループ事件(東京地裁平成30年3月16日・労経速2357号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、所定時間外労働等をしていた、有給休暇取得時の住宅手当及び家族手当が支払われていない、福利厚生及び家賃控除として控除されているものがあるとして、未払賃金、遅延損害金及び付加金を請求する事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、7万0908円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、903万5125円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、624万1194円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、みなし残業代は残業代の弁済としての効力を有すると主張する。みなし残業代が弁済としての効力を有するためには、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分とみなし残業代に当たる部分とを判別することができること(明確区分性)が必要であり、かつ、みなし残業代に当たる部分がそれに対応する労働の対価としての実質を有すること(対価性)が必要と解される。

2 Y社の給与規定の変更経過からすると、平成25年4月1日より前に営業手当として4万8000円支給されていたものが同日から廃止となり、みなし残業代として5万円を支給するようになっているから、実質的に同一のものというべきである。
そして、営業手当は東京月間37時間残業したものとみなすとの記載はあるが、その後のみなし残業代よりも金額が2000円低いにもかかわらず、時間は4.2時間増えているなど、月間37時間とする根拠が不明確である上、営業成績や精勤の程度によって支給されないことがあるとされていたものであるから、残業代以外の趣旨も含んでいたと認められ、残業代とそれ以外の部分が明確に区分されていたとはいえない
同月1日よりみなし残業代を支給するようになってからは、5万円が32.8時間分の残業時間に相当することが定められているが、依然として営業成績が規定のポイントを超えない場合にはみなし残業代が減額されるとの定めがあり、実際に営業成績により減額支給されたこともあったと認められる。
したがって、みなし残業代となってからも、残業代以外の趣旨を含んでいたと認められ、残業代とそれ以外の部分が明確に区分されていたとはいえない。
給与規定の表1には、深夜残業として5万円の記載があり、みなし残業代の記載はない。
そうすると、みなし残業代は全てが深夜残業に対する支払なのか、法定時間外労働に対する支払を含むのか、深夜残業に対する支払としても0.25の割増部分のみなのか、その余の時間外労働に対する支払を含むのか、明確ではない
このことは、管理監督者扱いをしているものに対してもみなし残業代を支払っていることにより、さらに不明確となる。

3 みなし残業代においてみなすこととする時間は32.8時間分とされているが、これは首都圏のものであり、仙台36.5時間、北海道38.6時間と、基本給によりみなすこととする時間を異にしている。
したがって、毎月一定の残業が予想されることからみなし残業代を定めたというよりも、5万円という金額からみなすこととする時間を逆算したものと認められる。
これは、営業手当4万8000円を東京月間37時間、仙台月間40時間、北海道月間42時間残業したものとみなしていたときも同様である。
したがって、基本給の一部を名目的に残業代扱いしたにすぎないことを疑わせる。

4 Y社がXを管理監督者と扱っていたことやY社のみなし残業代に残業代の弁済としての効力を認めることはできないこと、証人Eは、Y社は以前支店長より下位の主任、統括マネージャーについても管理監督者扱いしていたところ、労働基準監督署からの指導を受けて支店長以上を管理監督者扱いするように変更したと供述するが、その時期、指導の経緯・内容等は明らかではないこと、付加金は裁判所がその支払を命ずるまで(訴訟手続上は事実審の口頭弁論終結時まで)に使用者が未払割増賃金の支払を完了しその義務違反の状況が消滅したときには、裁判所は付加金の支払を命ずることができなくなると解されることなどからすれば、未払額と同一額の付加金を命じるのが相当である。

固定残業制度に関する要件論が落ち着いてきたにもかかわらず、いまだに多くの会社で要件を満たさない固定残業制度を運用しているのを目にします。

モッタイナイ!

ちゃんと運用しないと、単に残業代計算の際に基礎賃金を上げてしまうだけですから。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介858 「週4時間」だけ働く。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。
「週4時間」だけ働く。

この仕事をしている限り、不可能です(笑)

「1日4時間」もほとんど不可能です。

もっとも、ライフスタイルを変えるための工夫がたくさん書かれています。

できるかどうかはさておき。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ここに、心に刻んでおきたい2つの真理がある。
1 どうでもいいことをうまくやっても、それが重要になるわけではない
2 多くの時間を必要としても、その仕事が重要になるわけではない
今この瞬間から、覚えておいてほしいことがある。何をやるかは、どうやってやるかより、はるかに重要である。効率性は重要だが、それを正しい対象に対して行わない限り役に立たない。
」(111~112頁)

そのとおり。

やる必要のないことをいかに効率よくやったところで、成果にはつながりません。

これは仕事も勉強も同じこと。

その見極めができる人は、どんどん成果を上げますが、これが下手な人は努力をしているわりに成果がなかなか出ません。

努力の方向性が正しいのか常に検証する必要があります。

労働時間53 残業承認制度と使用者の黙示の指揮命令(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、残業承認制度を採用していた会社において承認のない時間の労働時間性が肯定された事案を見てみましょう。

クロスインデックス事件(東京地裁平成30年3月28日・労経速2357号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、通訳・翻訳のコーディネーターとして勤務していたXが、Y社は労働基準法所定の割増賃金を支払っていないなどと主張して、Y社に対し、割増賃金+付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、80万6988円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、付加金40万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 このように、Y社がXに対して所定労働時間内にその業務を終了させることが困難な業務量の業務を行わせ、Xの時間外労働が常態化していたことからすると、本件係争時間のうちXがY社の業務を行っていたと認められる時間については、残業承認制度に従い、Xが事前に残業を申請し、Y社代表者がこれを承認したか否かにかかわらず、少なくともY社の黙示の指示に基づき就業し、その指揮命令下に置かれていたと認めるのが相当であり、割増賃金支払の対象となる労働時間に当たるというべきである。

2 Y社においては、Xを含む従業員がやむを得ずY社承認時刻以降に残業を行うにしても、残業承認制度により割増賃金が支給されないため、可能な限り速やかに終了したいと考えるのが自然である。そして、Xは始業時間から業務メール送信時刻まで継続的に一定量のメールを送信し続けるなどしており、Y社がその可能性を指摘するY社代表者退社後の外出や睡眠といった事実を認めるに足りる証拠もない(なお、Xが本件係争時間中にパソコン画面上の送信メール記録を写真撮影していたことを認めるに足りる証拠はないが、仮に同時間中に写真撮影を行っていたとしても、後記の休憩時間に含まれるといえる。)からすると、本件係争時間については、基本的にその全ての時間においてY社の業務を行っていたものと認めるのが相当である。

特に新しい判断ではありませんが、上記判例のポイント1については使用者は理解をしておかなければなりません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介857 やらないこと戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
やらないこと戦略 最大限にクリエイティビティを上げる時間管理術

サブタイトルは、「最大限にクリエイティビティを上げる時間管理術」です。

やるべきことに時間を割くためには、多くの無駄で本来やる必要のないことをやらないと決めることが大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

クリエイティブな人はアイデアを持っている。だから『クリエイティブ』と呼ばれている。人とは違った視点でこの世界を見ていて、ひっきりなしにアイデアが思いつく。・・・だが、そこが私たちの抱えている問題の核心でもある。アイデアはたくさんあるのに、それを実行する時間が足りないのだ。・・・とにかくアイデアをすべて実行するには時間が足りない。時間はくれぐれも有効に使うことだ。」(11頁)

同じことを思っている人は多いと思います。

いろいろアイデアは浮かんでくるんだけれど、それらを形にする時間がない。

最も必要なのは時間なのです。

アイデアを形にする時間をどう捻出するか。 ただそれだけです。

一番手っ取り早いのは、他の人に依頼をするという方法です。

何から何まで自分ひとりでやるほど人生は長くありません。

常に時間をお金で買うという発想を持って事に臨みましょう。

解雇282 唯一の事業の廃止に伴う整理解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、唯一の事業の廃止に伴う整理解雇が有効とされた事案を見てみましょう。

新井鉄工所事件(東京地裁平成30年3月29日・労経速2357号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXらが、Y社の主要な事業である油井管製造事業の廃止に伴って解雇されたことが解雇権の濫用に当たり労働契約法16条により無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 まず、解雇回避努力義務として、配転の余地があったかについてみるに、Y社は、Y3等の所有不動産の管理について専門の不動産管理会社に委託しており、Y社内部では経理担当の1名がその関連事業に従事しているのみであって、もともとY社において何らの部門もそれに従事する人員も存しなかったものであるから、Y社において、不動産の賃貸をその事業として行っていたといえるにしても、これについて更に人員を配置する余地はなかったというべきであるし、専門の業者に対する不動産管理業務の委託を止め、不動産の管理を行う部門を創設するなどして、Xらを配転する義務を負っていたともいえないというべきである。
また、Y社の関連会社についても、同様に不動産事業部門に配置する余地はない上、油井管製造事業からの撤退により、同事業に従事させる可能性も失われたものであるから、Xらを転籍等させる余地はなかったというべきである。

2 被解雇者の選定については、事業撤退の判断が経営判断として合理的であり、他の事業部門等への配転可能性がない以上、油井管製造事業に従事していた従業員全員のうち希望退職に応じない者全てがその対象となるのは当然であるから、この点は本件解雇の効力を左右しない。

3 Y社は、油井管製造事業から撤退することを決定した後、平成27年12月11日から21回にわたってXらの所属する組合と団体交渉を行い、事業撤退に至る経緯について、組合の求める資料の開示に応じながら説明を重ねてきたものであり、交渉経過をみてもその交渉態度に不誠実な点は見当たらず、Y社が全従業員に対する希望退職募集を開始した時期も含めて、Xらに対する説明等が不相当であったことを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。

4 以上によれば、Y社が油井管製造事業からの撤退を決断したことはやむを得なかったというべきであって、これに伴う人員削減の必要性は高度なものであり、解雇回避努力義務という面でも、Xらについて配転可能性等他業務に従事させる余地はなく、特別退職金の支給や就職支援サービスの利用など、解雇によりXらに与える不利益を緩和する措置も採られており、被解雇者選定の面での問題もない上、Y社が組合に対し資料を開示して上記事業撤退の経緯、必要性を説明するとともに、退職に伴う条件提示を行ってきたものであるから、手続面でも問題は認められない。したがって、本件解雇は、客観的に合理的理由があり、かつ社会通念上も相当と認められるものであって有効であるから、それが無効であることを前提とするXらの請求はいずれも理由がない。

唯一の事業を廃止するときであっても、上記判例のポイントのとおり、手続をしっかり踏むことが求められます。

拙速な対応をしてしまうと、整理解雇が無効と判断されることもありますのでご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介856 世界のなかで自分の役割を見つけること(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
世界のなかで自分の役割を見つけること――最高のアートを描くための仕事の流儀

サブタイトルは、「最高のアートを描くための仕事の流儀」です。

アートの世界で生きる著者の考え方が伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

当然だけれど私は現実の世界を生きていて、肉体はもちろん重要だ。体がなければ絵は描けない。手も、足も、目も使う。呼吸するために肺を使い、心臓だって使っている。この体、この心、この命を使って絵を描いている。しかし、本当の意味で私に絵を描かせてくれるのは、魂なのだ。それなのに私は、いつのまにか魂をないがしろにして作品をつくろうとしていた。いけないと思った。たとえそれで絵がもっと上手になったとしても、それは私の『役割』ではない。・・・魂は、成長する。いや、魂を成長させようー。それから、私の絵は、大きく変わり始めた。」(43頁)

どんな職業でもそうですが、スキルの前にマインドです。

何のために仕事をするのか。

どれだけスキルを磨いても、マインドが伴っていないと長続きしません。

途中で息切れしてしまうのです。

いろんな本に書かれていることですが、「どうやるか」よりも「どうあるか」が大切。

不当労働行為207 代理店主の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社と代理店契約を締結して会社の商品を販売する代理店主は労組法上の労働者といえないから、代理店主の組織する労組は労組法による救済を受ける資格を有しないとされた事案を見てみましょう。

シャルレ事件(東京都労委平成30年4月3日・労判1185号90頁)

【事案の概要】

本件は、会社と代理店契約を締結して会社の商品を販売する代理店主が労組法上の労働者にあたるかが争われた事案である。といえないから、

【労働委員会の判断】

労組法上の労働者とはいえない

【命令のポイント】

1 本件における代理店は、①会社の事業遂行に不可欠な販売組織として組み入れられており、②会社が本件代理店契約の内容を一方的・定型的に決定しているということができるが、③代理店が得る収入に労務対価性は認められず、④会社からの個別の業務の依頼に応じずべき関係にあるということもできず、⑤業務の遂行に当たり会社の指揮監督下に置かれているとも、時間的場所的な拘束を受けているともいえない一方、⑥強い事業者性を認めることができる

2 本件代理店主は、自己の裁量にて、傘下の下位販売者により形成される組織の維持及び拡大を図りつつ、本件代理店契約や会社のビジネスルールに従って商品を販売する、会社の事業取引の相手方とみるほかなく、会社との関係において、労組法上の労働者であると認めることはできない。

ときどき「え!これで労働者性が認められる?」みたいな判断がなされることがあるため、どうしてもチャレンジしたくなってしまうところです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介855 いま君に伝えたいお金の話(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
いま君に伝えたいお金の話

投資家の村上さんの本です。

タイトル通り、お金に関するお話がとてもわかりやすく書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日本を変えていくためには、一人一人の考えが変わらなければいけません。大人になってしまってから、身についたお金の感覚を変えるというのはとても難しい。だから、子どものうちに真剣にお金に向き合い、『稼いで貯めて、回して増やす。増えたらまた回す』というサイクルの大切さを感じてほしいのです。」(188頁)

日本ではこういうことを小学校や中学校で教えられることはありません。

だから自分で勉強をしていくしかありません。

預金をしてお金を寝かしておくのではなく、投資に回すという意識を持てるかどうか。

もっとも、私がよくこのブログで書いているとおり、最も投資効率がいいのは、自分に対して投資することです。

自分の価値を高めて、収入を上げるのが最も効率的だと確信しています。

収入が上がれば、投資に回せる金額も増えることは言うまでもありません。

不当労働行為206 組合員に対する残業禁止と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ケミサプライ・アマックス(残業差別)事件(福岡県労委平成30年7月30日・労判1185号89頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 28年7月頃、Xは業務の状況にかかわらず18時までには退勤するように指示されただけでなく、29年5月頃からは、残業を一切しないように指示されたが、他の従業員はそのような指示を受けておらず、Xが退勤する際にも業務を続けていたことが認められる
したがって、Y社はXに対し、残業指示について非組合員と異なる差別的取扱いを行ったものといえる。

2 そもそも「業務時間外手当」は、賃金規程で定められ、Xの賃金の一部を構成するものであり、その支給を一方的に停止することは、労組法7条1号にいう「不利益な取扱い」であったと認められる。
Y社は、Xに対する29年5月分給与以降の「業務時間外手当」の支給を停止したが、この会社の行為は、団交に出席し、当労働委員会への救済申立てにも関わり、さらに、自身についての時間外手当に係る本件労働審判を申し立てるなどの組合活動を行うXに対して、それまでは行っていた残業指示をしないことで「普通残業手当」の支給を受けられないという経済的不利益を与えることに加え、さらに「業務時間外手当」を支給しないことで困窮させようとする意図で行われたものと解さざるを得ないのであり、Y社は、Xのこのような組合活動を嫌悪した上で「不利益取扱い」を行ったものといえる。

これだけわかりやすいと不当労働行為と判断されても仕方ありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。