解雇233 原審では試用期間中の解雇は無効、控訴審では有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総務関係担当者として資質を欠き、試用期間中の解雇が有効とされた事例を見てみましょう。

X社事件(東京高裁平成28年8月3日・労経速2305号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に対し、①本件解雇の有効性を否定して、労働契約上の地位を有することの確認、同地位を前提とした労働契約に基づく平成27年11月度までの給与及び遅延損害金の支払を求め、併せて、②Y社がXに担当職務を説明しなかったこと、健康保険被保険者証を交付しなかったこと及び本件解雇が不法行為に該当するとして、損害賠償等の支払を求める事案である。

原審は、Xの請求のうち、XがY社に対し労働契約上の地位を有することの確認請求及び未払給与等の支払請求を認容し、損害賠償請求を棄却した。これに対し、Xが控訴するとともに、当審において、上記のとおり追加請求をし、Y社が附帯控訴した。

【裁判所の判断】

Xの本件控訴を棄却する。

Xの当審における追加請求をいずれも棄却する。

Y社の本件附帯控訴に基づき原判決中Y社敗訴部分を取り消す。

同部分のXの請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社がXを雇用したのは、Y社における業況の拡大に対応した社内体制構築の一環としてであり、Xが社会保険労務士としての資格を有し、経歴からも複数の企業で総務(労務を含む。)及び経理の業務をこなした経験を有することを考慮し、労務管理や経理業務を含む総務関係の業務を担当させる目的であり、人事、財務、労務関係の秘密や機微に触れる情報についての管理や配慮ができる人材であることが前提とされていたものと認められる。

2 ところで、企業にとって決算書などの重要な経理処理に誤りがあるという事態はその存立にも影響を及ぼしかねない重大事であり、仮に担当者において経理処理上の誤りを発見した場合においても、まず、自己の認識について誤解がないかどうか、専門家を含む経理関係者に確認して慎重な検証を行い、自らの認識に誤りがないと確信した場合には、経営陣を含む限定されたメンバーで対処方針を検討するという手順を踏むことが期待される。
しかるに、Xは、自らの経験のみに基づき、異なる会計処理の許容性についての検討をすることもなく、Xにおける従来の売掛金等の計上に誤りがあると即断し、上記のような手順を一切踏むことなく、全社員の事務連絡等の情報共有の場に過ぎず、また、Fの来訪日程を告げることの関係においても、必要性がないにもかかわらず、突然、決算書に誤りがあるとの発言を行ったものであり、組織的配慮を欠いた自己アピール以外の何物でもない。さらに、上記発言後のXの行動及び原審本人尋問の結果によれば、Xにおいて自らの上記発言が不相当なものであることについての自覚は乏しいものと認められる。

3 以上によれば、Xのこのような行動は、Y社がXに対して期待していた労務管理や権利業務を含む総務関係の業務を担当する従業員として資質を欠くと判断されてもやむを得ないものであり、かつ、Y社としては、Xを採用するに当たり事前に承知することができない情報であり、仮に事前に承知していたら、採用することはない労働者の資質に関わる情報というべきである。
そうすると、本件解雇には、Y社において解約権を行使する客観的な合理的な理由が存在し、社会的に相当であると認められる。

本件は本人訴訟です。

Xが控訴しなければ地位確認は勝訴で確定していた事案です。

なんか最近、判例読んでいると過度な労働者保護路線を少し変更しています?

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介679 成功する人は偶然を味方にする(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学

帯には「『努力と才能は報われる』という幻想」と書かれています(笑)

これらにプラスして運も大切だよね、という内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

わたしは運・不運が個人の資質の違いにつながると訴えたいわけではない。近年の研究で明らかになった、偶然のできごとや環境的要因が-個人の資質や欠点とはまったく無関係のものが-人生を左右するという事実をみんなにも知ってほしいのだ。」(32頁)

偶然のできごとや環境的要因が人生を左右することは多くの人が認識しています。

どれだけ安全運転をしていても、後ろから追突されるときには追突されるのです。

これを不運と言わずにどう説明すればいいのでしょうか。

私は、「人生で起こることはもともと起こると決まっていた」という考え方をします。

寿命もそうです。

できるだけ現実をありのまま受け入れるようにしています。

今できることを一生懸命やって、あとは運命に任せると。

こんな感じでいいんじゃないかな、と思っています。

賃金132 医療機関において診療情報の改ざんを理由とする退職金不支給の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、改ざん行為を理由とする未払退職金について支払いを求めた事例を見てみましょう。

医療法人貴医会事件(大阪地裁平成28年12月9日・労判ジャーナル61号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が経営する病院で医療事務に従事した元従業員Xが、Y社に対し、自己都合退職したとして退職金を請求したところ、診療情報を改ざんしたことを理由に支給されなかったことから、退職金等の支払を求めるとともに、Y社代表者らから違法な退職勧奨を受けたなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本来の退職金支給額の2分の1の支払を命じた

損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、18個に及ぶ本件改ざん行為を行い、Xの本件改ざん行為は、不正な保険請求の危険を生じさせ、その結果、Y社の医療機関としての信用を失墜させる危険のある悪質な行為であり、少なくとも本件就業規則所定の懲戒事由に該当するといわなければならないが、実際に本件改ざんの不正な診療情報に基づき保険請求がなされたものの、速やかに同請求を取り下げたことにより、Y社の信用失墜に至らずに済んだことが認められるところ、Xの本件改ざん行為は、懲戒解雇事由に該当する悪質な行為であり、Xが19年余にわたり本件病院に勤務して積み上げてきた功労を減殺するものといえるものの、Y社の信用失墜には至らなかったことを考慮すると、Xの功労を全部抹消するほどに重大な事由であるとまではいえず、本件改ざん行為の性質、態様及び結果その他本件に顕れた一切の事情にかんがみると、Y社は、Xに対し、本来の退職金の支給額の2分の1を支給すべきであった。

結果としてたまたま信用失墜に至らなかっただけです。

Y社としては腑に落ちない結果かもしれませんが、裁判所はこのように考えます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介678 すごい「考える力」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
すごい「考える力」! (知的生きかた文庫)

原書のタイトルは「THINKING FOR A CHANGE」です。

今の自分を変えるためには「考えること」が大切であると説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ノーベル賞物理学者のアルバート・アインシュタインは、人類史上に輝く大思想家だが、『考えるということは大変なことだ。だから考える人間はほとんどいない』と断言している。このように、考えるというのは困難を極めることなので、多くの人が”考えたつもり”で終わっているのである。」(32頁)

じっくり考えることの大切がよくわかりますね。

毎日の忙しさに負けて、じっくり何かを考えるということができない人も多いのではないでしょうか。

おすすめなのは、早朝の時間をじっくり考えるために使うことです。

たいして頭を使わないようないわゆる「作業」をこの時間帯にやってはいけません。

完全に時間の使い方を間違っています。

今よりも1時間早起きをして(その分1時間早く寝る)、何かをじっくり考えるということを試してみてください。

人生が変わりますよ。

セクハラ・パワハラ28 自宅待機期間中の給与を平均賃金の6割とすることの是非(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、セクハラ行為に基づく懲戒解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ほけんの窓口グループ事件(大阪地裁平成28年12月15日・労判ジャーナル61号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、女性従業員に対するセクハラ行為を理由として、懲戒解雇処分を受けたため、Xが、かかる行為はしておらず、同処分は無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、平成26年12月以降の賃金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇無効確認請求は棄却

未払賃金等支払請求は一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、女性従業員に対し、平成25年11月、マフラーで首を絞めて駐車場の奥まで引きずり、キスをするというセクハラ行為に及んだもので、その態様は粗暴かつ悪質で、刑事犯にも該当しうる行為である上、Xは平成23年12月及び平成24年7月にも深夜の公園や路上で女性従業員に無理矢理キスをするというセクハラ行為に及び、さらに、平成24年8月にも午後11時頃に女性従業員を公園に連れて行こうとしたのであり、このようなXの一連の行為が、就業規則の懲戒解雇事由に該当することは明らかであるところ、上記態様の悪質性やセクハラ行為の回数のほか、XがY社による調査を受けても、セクハラ行為そのものをすべて否認し、Y社や女性従業員に対する謝罪や反省の態度を一切示していなかったことにも鑑みれば、Y社がXを懲戒解雇処分としたことについては相当性があると認められ、本件懲戒解雇処分は有効であるから、XのY社に対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求及び本件懲戒解雇処分後の賃金請求についてはいずれも理由がない。

2 一般論として、自宅待機命令は、使用者が、労働者に対し、一方的に就業を禁止するものであるから、使用者は、民法536条2項により、その間の賃金支払義務を負う場合が多いものと解されるが、民法536条2項は任意規定であり、就業規則でこれと異なる規定を置くことは排除するものではなく、就業規則49条2項は、従業員の行為が懲戒事由に該当するおそれがある場合に、その調査や懲戒処分の決定に必要な期間に限り自宅待機命令をし、その間の賃金を平均賃金の6割とするものであって、就労を許容しないことに実質的な理由がある場合に限定されており、その期間も限定されていること、その金額も労働基準法26条の休業手当と同額であることに鑑みれば、同規定には合理性があると認められる。

上記判例のポイント2は参考になりますね。

もっとも、現行の制度を変更する場合には、不利益変更となりますので、そう簡単にはできませんが。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介677 営業は絶対、謝るな!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
営業は絶対、謝るな! ―圧倒的に売れる「合理的な覚悟」 (知恵の森文庫 t な)

本当の営業のやり方を教えてくれています。

決して顧客に横柄な態度を取ることを薦めている本ではありません。

営業マンに限らず、参考になる本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

師と弟子の世界は、言葉で伝達して理解できるものは限られている。むしろ言葉にして『教えた』瞬間から、そのノウハウは単なる知識になってしまう。・・・あなたはそれが自分のものになるまで、上司のようにしゃべり、上司のように笑う。上司のようなしゃれを言い、上司のように歩く。」(247頁)

みなさんの周りにも、こういうことがとてもうまい人っていませんか?

そういう人って、上の人からかわいがられていませんか?

尊敬する人、目標とする人、メンターなど、真似をする対象を見つけたら、とことん真似をすべきです。

逆に真似をする対象の人が決して口に出さない言葉も絶対に口にしてはいけません。

「できない」「疲れた」「面倒くさい」・・・

こういう言葉を発した瞬間、負のオーラが出てしまうのです。

同様に、疲れるとため息を吐くのがくせになっている人も注意しましょう。

同じく負のオーラが出まくっていますので。

そんな人と誰が一緒にいたいと思うでしょうか。

解雇232 試用期間中の解雇の有効性はどのように判断される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、問題点の改善の見込みが乏しく、試用期間中の解雇が有効とされた事例を見てみましょう。

まぐまぐ事件(東京地裁平成28年9月21日・労経速2305号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、試用期間中に留保解約権の行使により解雇されたところ、Y社に対し、本件解雇の無効を主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後の未払賃金104万4395円+遅延損害金等を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・このように、Xには上司の指導や指示に従わず、また上司の了解を得ることなく独断で行動に出るなど、協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動により取引先や同僚を困惑させることなどの問題点が認められ、それを改めるべくY社代表者が指導するも、その直後に再度上司の指示に素直に従わないといった行動に出ていることに加え、上記の問題点に対するXの認識が不十分で改善の見込みが乏しいと認められることなどを踏まえると、試用期間中の4月10日の時点において、Y社が「技能、資質、勤務態度(成績)若しくは健康状態等が劣り継続して雇用することが困難である」(就業規則15条3項)と判断して、Xを解雇したことはやむを得ないと認められ、本件解雇には、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当というべきである。

2 これに対し、Xは、Y社がXに対する指導のために特命チームへの配属を予定していたのであれば、平成27年5月1日の配属予定を前倒ししてでも、Y社代表者がXを直接指導すべきであったなどとして、Y社が解雇回避努力義務を怠った旨主張する。
しかしながら、前記で説示したとおり、使用者が雇用契約に試用期間を設け解約権を留保する趣旨は、採用時には認識し得なかった労働者の資質、性格、能力その他の適格性を観察し、最終的な採否(本採用)を見極めるためのものであるから、試用期間中の留保解約権行使による解雇は、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められ、Y社の負う解雇回避努力義務の程度も、通常の解雇の場合ほどには要求されないというべきである。
そして、3月20日の面談でY社代表者から他者との協調性について改めて指導されたにもかかわらず、Xがそのわずか4日後に上司のDからの指示を素直に受け入れず反抗的な態度を取っており、かかるXの非協調的な態度は改善の余地が乏しいと認めざるを得ないことに加え、XがY社入社までに約7年間の社会人経験を経ていることなどを踏まえると、試用期間完了時までXに対する指導を継続しなかったことをもって相当性を欠くとまではいえないから、Xの上記主張は採用できない。

勤務態度が悪いであったり、協調性がないなどという理由で解雇する場合には、裁判所に具体的にわかるように主張立証することがとても大切です。

訴訟の前の準備段階で8割がた勝負が決まっていると言っても過言ではありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介676 お金をふやす8つの習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
9割の日本人が知らない お金をふやす8つの習慣―――外資系金融マンが教える本当のお金の知識

著者はご自身の経験からストック収入の重要性を強く説いています。

お金を増やす王道ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

みんなが同じ方向を向いて、人と違ったことはしないように教育されてきたのが私たち日本人です。だから人と違う行動を取ることは苦手です。しかし投資で人と同じことをやっていては稼ぐことはできません。」(177頁)

貧乏な人や怠け者は、成功する人より『できない』という言葉をよく使う。彼らが『できない』という言葉をよく使うのは、『できる』と言うより簡単だからだ。『それはできない』と言ってしまえば、たとえ本当はできても、やらなくてよくなるんだから」-ロバート・キヨサキ(190頁)

成功したいのであれば、人ができないこと、やらないことをやり続ける。

いろいろな表現はありますが、結局、この一文に尽きます。

たいして考えもせずにすぐに「できない」と言う人は、実際のところ、できるかどうかには関心がなく、単に「やりたくない」だけなのです。

やるのが面倒くさいのです。

でも、そうは言えないからがんばってできない理由を探しているだけなのです。

それがくせになってしまっているので、いざというときにふんばりがきかなくなるのです。

結局、いつもと同じように「できない理由探し」です。

成功したい人は、こういう人と一緒にいてはいけません。 伝染しますので。

不可能を可能にする人の近くでできるだけ時間を共有するようにしましょう。

有期労働契約71 貸与物の私的利用を理由とする雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

来週一週間は出張のため、ブログはお休みいたします。

今日は、契約更新への期待と貸与物の私的利用による雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

大阪ガス・カスタマーリレーションズ事件(大阪地裁平成28年12月22日・労判ジャーナル61号11頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、有期雇用契約を締結し、その後に更新を繰り返していた元従業員Xが、契約の更新がされなかったことについて、本件不更新は期間の定めがない労働契約における解雇と同視しうるものであるうえ、Xは契約の更新がされることに合理的な期待を有していたところ、本件不更新は合理的理由を欠き、社会通念上相当なものとは認められないとして、労働契約法19条に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とそれを前提とした賃金の支払い等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件では、XとY社の間では、契約更新の手続きが形式的なものであるとか、形骸化していたとまで認めることはできないから、有期雇用契約を終了させることが、期間の定めのない雇用契約を締結する労働者に対する解雇と同視できるとまでいうことはできず、労働契約法19条1号に該当するとは認められないが、他方において、雇用契約書に契約更新がありうる旨が記載され、すでに3度の更新がされていること、D事務所においては、過去に更新を希望しながら更新がされなかった者はいないこと等の事情を総合すれば、Xが契約期間の満了時に有期雇用契約が更新されることには、合理的な理由があると認められるから、労働契約法19条2号には該当する。

2 Xは、貸与バイクを私的に利用し、その頻度も少ないとはいえないうえ、その際には私的利用を含めてY社から貸与を受けた給油カードで給油をすることがあったものであり、さらには、私的利用が発覚しないようにするため、ドライブレコーダーからSDカードを抜き、隠蔽を図っていたほか、長期間にわたって走行カードに事実と異なる記載をしていたものであり、加えて、少なくとも1年以上の長期にわたって、勤務時間中にA診療所で業務を行っていたものであり、これらXの行為は、その内容や程度に照らせば軽微なものとはいえず、Y社との信頼関係を著しく損なうものといわざるを得ないこと等から、Y社が掲げる雇止め事由のうち、以上の各点のみをもってしても、Y社が本件雇用契約を締結しないとの判断に至ることは不合理とはいえず、本件雇止めが合理的理由を欠くとか、社会通念上の相当性を欠くと評価することはできない

有期雇用契約における雇止めに関する労働契約法19条については、まず1号・2号該当性が問題となります。

各号の判断のしかたについてはこれまでの裁判例を参考にして、トラブルを未然に回避できるように準備をすべきです。

1号、2号のいずれかに該当する場合には、解雇に関する労働契約法16条と同様に合理的理由と相当性の判断をすることになります。

1号と2号で判断の厳格さが異なるという見解もある(2号のほうが緩やか)ことに留意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介675 危険な二人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
危険な二人 (幻冬舎文庫)

幻冬舎の見城社長とエイベックスの松浦社長の対談をまとめた本です。

このお二人、AbemaTVの「徹の部屋」でもその仲の良さがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

うちは新卒を採用してなくて、それでも毎年、東大とか京大とか早・慶とかの学生から応募があるんだけど、偏差値より大事なのは、人の気持ちをつかめる人間かどうかだと思ってる。編集者に限らず、仕事なんて自分の思ってることを人を動かして、どう実現できるかでしょ。そういう意味で、他者への想像力がある人は何をやっても結果を出せる。あと、自分に何かを課すことができて、バーを高く設定できる、っていうのも大事。」(145頁)

見城社長の言葉です。

全く同感です。

他者への想像力がある人とない人とでは、仕事のあらゆる点においてアプローチのしかたが異なります。

そもそもあらゆる仕事は他者への想像力が源になっているはずです。

こうしたらもっと顧客に喜んでもらえるんじゃないかと想像するところからあらゆるサービスが生まれるんじゃないでしょうか。

そうだとすれば、他者への細やかな配慮ができる人が仕事を結果を残すのは当然ですし、その逆もまたしかり。

一事が万事ですから、日々の小さな仕事で他者への想像力を発揮できない人がどうして大きな結果を出せるのでしょうか。