賃金77(株式会社MID事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、保険代理店の元営業マンによる未払歩合報酬等請求に関する裁判例を見てみましょう。

株式会社MID事件(大阪地裁平成25年10月25日・労判1087号44頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、保険代理業等を営む株式会社であるY社に対し、Y社の間で基本給月額10蔓延および歩合報酬を支払う内容の社員契約を締結していたところ、上記社員契約は労働契約に該当し、Xは、Y社から解雇された旨主張して、①上記社員契約に基づき、未払の基本給合計200万円並びに遅延損害金、②上記社員契約に基づき、未払の歩合報酬合計62万2454円及び遅延損害金、③解雇予告手当10万円及び遅延損害金、④上記解雇予告手当と同額の10万円の付加金及び遅延損害金、⑤上記解雇が違法であることを理由とする不法行為に基づき、慰謝料50万円及び遅延損害金を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社はXに対し、19万0882円+遅延損害金を支払え

2 解雇予告手当10万円+付加金10万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、本件社員契約において、Y社との間で、基本給10万円の支払いについて合意していたと主張する。しかしながら、①本件契約書には、基本給の支払に関する記載は何ら存在せず、むしろ報酬はフルコミッションである旨明記されており、そのことをXも認識していたこと(なお、フルコミッションが、完全歩合制を意味することは公知の事実である。)、②Xは、本件社員契約を締結してから本件解約までの約1年7か月以上の長期間にわたり、Y社から基本給10万円の支払を受けていないにもかかわらず、弁護士や労働基準監督署等を通じてY社に対して基本給の支払いを請求することはしなかったこと、③Xは、行政書士に依頼して、本件解約前の平成23年8月29日に、未払手数料等の支払を求める通知書をY社に送付しているが、同通知書には基本給10万円の支払いを求める旨の記載は一切存在しないこと、④Xは、本件解約後の平成23年9月2日付けで、Y社に対して解雇予告手当請求書を送付しているが、同請求書には基本給10万円の支払いを求める旨の記載は一切存在せず、その後、Xが多数回にわたってY社代表者に送信した電子メールにおいても、未払手数料及ぶ解雇予告手当のみを請求しており、基本給の支払請求は一切されていないことが認められる。
以上の各事実によれば、…XとY社の間に基本給10万円を支払う旨の合意が存在したとは認められない。

2 …そうすると、本件解約以前の3か月間にXに支払われた賃金は上記最低賃金に達しないことになるから、その部分について本件社員契約は無効となり、30日分の平均賃金についても、上記最低賃金に基づき算定すべきことになる。

3 解雇権の濫用に該当する解雇であっても、これが当然に不法行為を構成するとは解されないところ、Xは、本件解約以前から本件社員契約を解除する意思を有していただけでなく、本件解約後も本件解約の有効性について何ら争っていなかったことが認められるから、Y社が本件解約をしたことが違法性を有し、Xに対する不法行為を構成するとまではいえない。

外資系生保会社などに多いフルコミッション制ですが、完全歩合とはいえ、最低賃金を下回ることは許されません。

また、本件では、基本給として10万円を支払う旨の合意があったかが争点となっています。

裁判所がよくやる認定のしかたですので、参考にしてください。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介327 読書は『アウトプット』が99%(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
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←先日、事務所の近くにある「やっぺい」に行ってきました。 安くておいしいお店です。

写真は、「まぐろのすきみ」と「生さくらえび」です。

さくらえびの漁も終わりですね。

また、秋までお待ちしてまーす。

今日は、午前中は、三島の裁判所で債権回収の裁判が1件、浜松の裁判所で債権回収の裁判が1件入っています。

午後は、慰謝料請求の裁判が2件、労働事件の裁判で証人尋問が1件、新規相談が1件入っています。

夜は、社労士の先生方を対象とした勉強会です。

今回のテーマは、「ケーススタディで学ぶ実践的労務トラブル対処法~賃金編~」です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
読書は「アウトプット」が99%: その1冊にもっと「付加価値」をつける読み方 (知的生きかた文庫)

もうタイトルで、この本のいいたいことは99%言ってしまっていますね(笑)

読書自体は、インプットの作業ですが、インプットした内容をアウトプットしなければ意味ないよ、ということです。 99%おっしゃるとおりです。

どれだけ本を読んでも、アウトプットしなければ単なる物知り博士になるだけです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

時間を有効活用するためには、優先順位を付けることが必須なのです。会社帰りの飲み会もたまにはいいと思いますが、頻繁に参加するのは時間のムダではないかと思います。上司の小言を聞いたり、仕事のグチや会社の内輪話をしても得られるものはありません。・・・会社のために時間を費やすのではなく、その時間を読書にあててほしいと思います。その時間が、将来の自分をつくり上げてくれるはずです。」(179頁)

何か非凡な結果を出そうと思えば、日頃の生活のうち、数パーセントをその準備にあてなければなりません。

人と同じ生活をしておきながら、人と違う成果を望むのは、虫がいい話です。

毎日、出社前に、お昼休みに、仕事帰りに、30分ずつ目標に向けて準備をする。

それをただひたすら、もくもくと、誰に何て言われようと、続ける。

自分で決めた約束を守る。

それが自信につながるのだと思います。

同一労働同一賃金1(N社事件)

おはようございます。

さて、今日は、パートタイム労働法8条違反が不法行為を構成するとされた裁判例を見てみましょう。

N社事件(大分地裁平成25年12月10日・労経速2202号3頁)

【事案の概要】

本件は、使用者であるY社との間で期間の定めのある労働契約を反復して更新していた労働者であるXが、Y社が契約期間満了前の更新の申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、Y社は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされたと主張して(労働契約法19条)、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、更新拒絶期間中の月額賃金、更新拒絶期間中の賞与、更新拒絶による慰謝料を請求するとともに、Y社がXに対して短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)8条1項に違反する差別的取扱いをしていると主張して、同項に基づき、正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、Y社の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、同項に違反する差別的取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求している事案である。なお、Xは、正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求の理由として、準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束がY社との間で成立したことも主張しており、また、パートタイム労働法8条1項の要件を充足する場合には、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した労働契約法20条も充足すると主張する。

【裁判所の判断】

1 更新拒絶は無効→賃金支払

2 慰謝料として50万円を支払え

【判例のポイント】

1 ・・・Y社が更新拒絶の理由として挙げる「本件訴訟において様々な点において事実と異なる主張をしていること」、「裁判と無関係の第三者であるY社の従業員を多数裁判に巻き込んでいること」は、いずれも事実として認めることができない。Y社におけるXの職務は、石油製品という危険物の輸送であるが、職務の遂行についてXに過誤があったことは認められず、本件訴訟におけるX及びY社の主張立証の内容、訴訟活動の態様に照らして、X・Y社間で本件訴訟が係属していることにより、Y社におけるXその他の従業員による職務遂行の安全が害されるとは認められない。
また、Xが交通事故のニュースを見て、Y社大分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得ないような発言をしたとの点についても、Xの話は、安全性に対する認識の欠如を示すもの又はY社との信頼関係を破壊するものであったとは認められず、更新拒絶を裏付ける客観的に合理的な理由の存在を裏付けるものであるとは認められない。
したがって、Y社がXによる有期労働契約の更新の申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。

2 ・・・以上によれば、正社員と準社員であるXの間で、賞与額が大幅に異なる点、週休日の日数が異なる点、退職金の支給の有無が異なる点は、通常の労働者と同視すべき短時間労働者について、短時間労働者であることを理由として賃金の決定その他の処遇について差別的取扱いをしたものとして、パートタイム労働法8条1項に違反するものと認められる。

3 Xは、パートタイム労働法8条1項に基づいて、XがY社の正規労働者と同一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を請求する。
しかし、上記の確認の対象である権利義務の内容は明らかではない上、パートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり、同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできないと解されるから、上記の地位確認の請求はいずれも理由がないものと解される。

4 パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成するものと認められ、Xは、Y社に対し、その損害賠償を請求することができる。

本裁判例では、パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは、ただちに不法行為を構成すると判断しているように読めますが、同法は、公法的性格を有するものであり、同法違反がただちに不法行為を構成するかは解釈の余地があります。

フランチャイズ契約について独禁法が適用される場合等でも同じことが言えますね。

また、パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いがあったとしても、それだけで、正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認までは認められないとの判断は参考になります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介326 「ご指名社員」の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
「ご指名社員」の仕事術: 「気がきく」「ギブ型」戦略で”声がかかる人”になる

著者は、東大在学中にサイバーエージェントにてインターネットビジネスの黎明期に携わった後、TBSに入社して、現在、会社員をしながら、執筆・講演活動を行っている方です。

お声がかかる人になるためには、どのようなスキルが必要なのか、どのような差別化をしていけばいいのかが書かれています。

視点がおもしろいですよね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

インターネットの登場によって、パソコンが販売価格順、性能順、評価順などに並べられ、No.1商品だけが指名され、購入されていくことは理解いただけたかと思いますが、私は同じことが『人の世界』にも起きてくると思っています。私たちは『amazonに並べられた商品』のように、オープンな市場で比較検討される。そして、No.1に指名が集中するということです。」(22頁)

もう既にこの現象が起こっていますよね。

競争の中で商売をするのであれば、1位が圧倒的なシェアを獲得することになります。

「2位じゃだめなんですか?」

はい。だめです(笑) 2位以下を選択する理由を探すのはかなり難しいです。

インターネットが普及する前は、比較できない環境にあったため、どれが1位なのかわからなかったわけです。

でも、今は、簡単に比較できますよね。

差別化ができていない商品の場合、結局は、値段の勝負になってくるわけです。

マイケル・ポーターさんは、「最高を目指す競争は、一見正しいように思えるが、実は自己破壊的な競争方法である」と言っています。

競争の中で圧倒的な1位を目指していくのか、それともそもそも競争に巻き込まれない戦略をとるのか。

まずは入口の段階で、どちらのドアを開けるかを考えなければなりません。

有期労働契約46(Y1(機構)ほか事件)

おはようございます。 6月に入りましたね。 今週も一週間がんばっていきましょう!

さて、今日は、元派遣社員であった契約社員の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

Y1(機構)ほか事件(神戸地裁尼崎支部平成25年7月16日・労経速2203号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y1社との間で労働契約書に雇用期間の定めのある労働契約を締結し、契約職員としてY1社のA事務所で勤務していたXが、Y1社から労働契約を1回更新されたものの、2回目の更新がされることなく労働契約に定められた期間が平成23年3月31日に満了したことに関し、XとY1社との間においては、上記労働契約は形式的には期間の定めがあるものの、実質的には期間の定めのないものと認識されていた、あるいは、Xは雇用の継続について合理的な期待を有していたのであるから、本件雇止めの効力を判断するに当たっては解雇権濫用法理が類推適用され、解雇の場合と同様に、本件雇止めを正当化する客観的に合理的な理由が必要であるところ、Y1社にはこのような理由はなかったから本件雇止めは無効であると主張して、Y1社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案である。

また、Xは、上記主張のほかに、A事務所に所長として勤務していたY1社の従業員であるY2から、面談の席でXの性的関係について尋ねられたり、職場にXが不倫をしているとのうわさを流布されるなどのセクハラを受けたり、上記の根も葉もないうわさを信じたY1社及びY2から、不当にもXを職場から排除するために本件雇止めをされたりして精神的苦痛を被ったと主張して、Y1社とY2に対し、連帯して慰謝料50万円等の請求をした事案である。

【裁判所の判断】

いずれも請求棄却

【判例のポイント】

1 Xが担当していた業務は、Y1社にとって臨時的に生じた業務ではなく、恒常的に必要な業務であるといえるが、契約職員は、一般職員と異なり、チーフ業務や教育業務には従事しないこととされており、業務内容が一般職員と同一ではなかったこと、Xは、平成21年7月1日にY1社に雇用された契約職員であり、本件雇止めまでの勤務年数は1年9か月にすぎず契約更新回数も1回にとどまり、しかも、その1度の更新は、平成21年7月からの当初の雇用期間を年度末に終了するよう合わせるためのものであって、契約職員制度導入の当初から予定されていたものであること、Y1社の就業規則には契約更新の有無、更新の判断基準については個別に締結する労働契約において定める旨が記載されているところ、XとY1社との間で取り交わされた労働契約書には、労働契約の更新に関する事項として「労働契約の更新を行う場合あり」、「業務および要員体制の見直し、業務への適格性、勤務成績、事業縮小等による業務量の変化、経営状況の変化等を総合考慮して労働契約の更新を行うかどうかを決定する。」との記載があることが認められ、これらの事情からすれば、XとY1社との間の労働契約が、実質において期間の定めのない契約と異ならない状態にあったとか、労働者が契約の更新、継続を当然のこととして期待、信頼してきたという相互関係のもとに労働契約が存続、維持されてきたとはいえないことが明らかである。

2 司が職場内で部下が不倫をしているとのうさわがある旨を耳にした場合、上司として、業務効率の維持向上・職場環境の改善等の見地から、同僚等に対しそのようなうさわがあるか否かを確認したり、職員管理のために管理職間で情報の共有を図ったり、当該部下に対しそのようなうわさが出ないように留意してもらいたいと注意を喚起したりなどすることは、正当な業務行為であって違法性を帯びるものではない

有期雇用における雇止めの成功事例ですね。

顧問弁護士がいる会社では、最近、特に、本田技研工業事件判決以降、雇止めに関する方法が確立されてきているように思われます。

労働者側とすると、非常に戦いにくくなってきていますね。

本の紹介325 史上最高のセミナー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は本の紹介です。
史上最高のセミナー

一見すると、タイトルが誇大に感じられるかもしれませんが、とってもいい本であることは間違いありません。

9人の自己啓発界(?)の超大物が、自身の考える成功哲学を伝えてくれています。

全員のセミナーを受講したら、何百万円かかるかわかりません。

言葉の力を感じるのとともに、実践することの大切さを強く感じることができます。

何度も読み返す価値のある一冊です。 おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

富への真の鍵は、人生において二つのドアのうち一つを選ばなければならないことに気づくことだ。“自由”と書かれたドアを選ぶか、”安全”と書かれたドアを選ぶかのいずれかなんだ。安全と書かれたドアを選べば、あなたはそのどちらも失うことになる。だが自由と書かれたドアを選んだとしても、負けないわけでも、つまずかないわけでも、お金を失わないわけでも、不安に感じないわけでもない。しかし最後には、自由だけでなく、安全も手に入れることができるんだ。つまり、どちらも手に入れることができるんだよ。」(191頁)

私は、これを読んだとき、「安全」を「安定」と読み替えました。

「安定」を選ぶか、「自由」を選ぶか。

この2つのドアを開く傾向というのは、小さいころからの教育や環境が少なからず影響している気がします。

安定志向の家庭に育った子どもは、大人になってからも、自由より安定を選ぶ傾向にあるのではないでしょうか。

職業であったり、結婚相手であったり。

安定を求め出すと、変化を恐れるようになります。 不安定への変化を。

今の安定した生活が変わってほしくない、そう思うようになりませんか?

でも、そもそも変化しないことなんてあり得ません。 これまでもそうだったように、これからも変化しまくるにきまっているわけです。

安定よりも自由を愛する人間は、変化をそのまま受け入れられます。

少なくとも、私の周りの若手経営者の皆さんは、「安定? は? 寝言言ってるの?」という方が圧倒的多数を占めます。 安定はおじいちゃんになるまでとっておきます。

解雇140(財団法人ソーシャルサービス協会事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業所廃止に伴う解雇に関する裁判例を見てみましょう。

財団法人ソーシャルサービス協会事件(東京地裁平成25年12月18日・労経速2203号20頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社による解雇を無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金及び賞与並びに不法行為(不当解雇)に基づく損害賠償金の支払いを求めている事案である。
Y社は、Xと雇用契約を締結したのはY社ではなく、権利能力なき社団である財団法人ソーシャルサービス協会東京第一事業本部であると主張して、X・Y社間の雇用契約の存在を争うとともに、仮に雇用契約が存在するとしても上記解雇は有効であると主張している。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社において、本件解雇を行った平成23年当時、東京第一事業本部の閉鎖に伴って、東京第一事業本部の事業に従事していた人員が余剰人員となっていたことは認められるものの、Y社は同年3月時点において2億円を超える現預金を保有しており、上記余剰人員を削減しなければ債務超過に陥るような状況になかったことは明らかであり、人員削減の必要性が高かったものと認めることはできない。にもかかわらず、Y社は、期間の定めのない雇用契約を締結しているXに対し、6か月間の有期雇用契約への変更を提案したものの、他の事業所への配置転換や希望退職の募集など、本件解雇を回避するためのみるべき措置を講じておらず、十分な解雇回避努力義務を果たしたものということはできない
上記のとおり、Y社においては、従たる事業所は完全な独立採算で独立した運営を行っており、本部が従たる事業所に人員配置を命じることはしない運用を行っていることが認められるものの、本件雇用契約における使用者がY社である以上、そのような内部的制限を行っていることをもって、東京第一事業本部以外の従たる事業所への配置転換等の解雇回避努力を行わなくてよいことになるものではないというべきである。・・・そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であるものとは認められないから、その権利を濫用したものとして無効である。

2 普通解雇された労働者は、当該解雇が無効である場合には、当該労働者に就労する意思及び能力がある限り、使用者に対する雇用契約上の地位の確認とともに、民法536条2項に基づいて(労務に従事することなく)解雇後の賃金の支払を請求することができるところ、当該解雇により当該労働者が被った精神的苦痛は、雇用契約上の地位が確認され、解雇後の賃金が支払われることによって慰謝されるのが通常であり、使用者に積極的な加害目的があったり、著しく不当な態様の解雇であるなどの事情により、地位確認と解雇後の賃金支払によってもなお慰謝されないような特段の精神的苦痛があったものと認められる場合に初めて慰謝料を請求することができると解するのが相当である。
これを本件についてみると、前記特段の精神的苦痛を認めるに足りる事実はない。

整理解雇については、要件説ではなく要素説を採用していることから、整理解雇の必要性がそれほど高くない場合には、高度の解雇回避努力が求められることになります。

本件では、十分な解雇回避がなされていないという判断です。

また、解雇事案において、賃金のほかに慰謝料を認める場合の規範が示されていますので、参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介324 ど真剣に生きる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

ど真剣に生きる (生活人新書 327)

2、3年前に出版された稲盛さんの本です。

突然、稲盛さんの本が読みたくなったので、アマゾンで数冊、衝動買いしました。

生き方、ビジネスのしかたともに、哲学を見ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・いいかげんな人は嫌いなんですね。いいかげんなことで人生うまくいくはずがないと思うものですから。スポーツであれ、経営であれ、学問であれ、何をするときでも真剣さというのは大事だと思うのです。それも『ど』がつくほど。だから、経営者の方々がよく『経営がうまくいってません』などと相談に見えるんですが、お話を聞いてみると、まったくいいかげんな経営をしていると思うこともしばしばですね。そこで『経営にどこまで真剣に打ち込んでいますか。自分のことをすべて投げうってでも、という気持ちがありますか。そんないいかげんなことではいけませんよ』と言います・・・」(148~149頁)

経営者のみなさんの多くは、自分自身としては「ど真剣」に経営をしていると思っているのではないでしょうか。

私もその一人ですから。

誰もいいかげんに経営などするわけないのです。

でも、それはあくまで主観の問題ですよね。

稲森さんからすれば、まだまだ全然甘いのかもしれません。

何をもって「ど真剣」なのか。

稲盛さん曰く、「自分のことを投げうってでも、という気持ち」があるか否かだと。

自分の人生をかけて、その仕事に没頭している人というのは、本当に強いですね。

また、情熱を持って自分の仕事をやっている人は、傍から見ていて、とても魅力を感じます。

私も弁護士として、そういう経営者がトップにいる会社の顧問弁護士でいることを大変誇りに思います。

これからも多くの若い経営者が情熱を持って会社を経営していく姿を側で支えていきたいと思います。

セクハラ・パワハラ6(M社事件)

おはようございます。

さて、今日は、従業員に対する暴言、暴行、退職強要行為と不法行為に関する裁判例を見てみましょう。

M社事件(名古屋地裁平成26年1月15日・労経速2203号11頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として勤務していたXの相続人らが、Xが自殺したのは、Y社の代表表取締役であるA及びY社の監査役であるBのXに対する暴言、暴行あるいは退職強要といった日常的なパワーハラスメントが原因であるなどとして、主位的には、Aらに対し、不法行為に基づき、Y社に対し、会社法350条及び民法715条に基づき、それぞれ損害賠償金及び遅延損害金の支払を求め、予備的には、Y社に対し、債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

なお、Xの死亡について、名古屋東労働基準監督署長は労災支給決定をしている。

【裁判所の判断】

Y社及びBは、合計約3600万円を支払え

Cに対する請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成21年1月23日に本件退職届を作成しているところ、(1)本件退職届にはY社が被った損害(1000万円から1億円)をXが一族で返済する旨の記載があったものと認められるが、Xにその支払能力があったとは窺えず、また、Xの一族にその返済をすべき責任があったとも窺えないから、Xが本件対処届の作成に任意に応じたものとは考え難いこと、・・・(3)Xは、同月19日にAから本件暴行を受けていたことからすれば、本件退職届を作成した当時において、Xは、Aを畏怖していたと認めるのが相当であることを考慮すると、AがXに対して本件退職届の内容で退職願を書くように強要したと認めるのが相当である。

2 AのXに対する暴言、暴行及び退職強要のパワハラが認められるところ、AのXに対する前記暴言及び暴行は、Xの仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Xを威迫し、激しい不安に陥れるものと認められ、不法行為に当たると評価するのが相当であり、また、本件退職強要も不法行為に当たると評価するのが相当である。

3 ・・・以上によれば、短期間のうちに行われた本件暴行及び本件退職強要がXに与えた心理的負荷の程度は、総合的に見て過重で強いものであったと解されるところ、Xは、警察署に相談に行った際、落ち着きがなく、びくびくした様子であったこと、警察に相談した後は、「仕返しが怖い。」と不安な顔をしていたこと、自殺の約6時間前には、自宅で絨毯に頭を擦り付けながら「あーっ!」と言うなどの行動をとっていたことが認められることに照らすと、Xは、従前から相当程度心理的ストレスが蓄積していたところに、本件暴行及び本件退職強要を連続して受けたことにより、心理的ストレスが増加し、急性ストレス反応を発症したと認めるのが相当である。・・・したがって、Aの不法行為とXの死亡との間には、相当因果関係があるというべきである。

4 AはY社の代表取締役であること、及び、AによるXに対する暴言、暴行及び本件退職強要は、Y社の職務を行うについてなされたものであることが認められるのであるから、会社法350条により、Y社は、AがXに与えた損害を賠償する責任を負う。

5 ・・・以上によれば、Xの逸失利益は、2655万5507円(365万4763円×0.7×10.380=26555507円(小数点以下切り捨て)である。なお、上記金額は、原告ら主張の逸失利益1452万1387円を上回るが、他の費用と合計した金額が、原告らの請求額の範囲内に収まる限り、処分権主義あるいは弁論主義違反の問題は生じないというべきである。

自殺とパワハラとの間の因果関係が肯定されています。

それはさておき、上記判例のポイント5ですが、逸失利益が原告ら主張の金額を上回る判決になっています。

被告からすると、原告の請求した逸失利益が上限だと思って防御しますので、不意打ちになりませんかね・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介323 原田泳幸の仕事の流儀(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←週末は、海までのジョギングから始まります。

ジョギングの後は、これでもかというほど筋トレをします(笑) 常に筋肉痛になっていたいです。

継続は力なり。

今日も、先週に引き続き、裁判員裁判です。今日で6日目です。

夜は、裁判の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
原田泳幸の仕事の流儀 (ノンフィクション単行本)

日本マクドナルドホールディングス会長の原田さんの本です。

先日、ベネッセホールディングスの社外取締役にも就任されましたね。

まだまだ勉強させていただきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・その番組の中で流れていた『人間は、求めるものが少ないほど幸せです』といったナレーションは、とくに強く心に引っかかってきた。そのときあらためて、自分は何のために仕事をしてきたのかと考え、『決してモノに恵まれた生活を送るためではなかったはずだ』と気がついたのである。・・・このように私にしても40歳過ぎまでは物欲にとらわれていた部分があったのだから、『お金を得ることを目的にすべきではない』といったことを偉そうには言えないし、若い人がそうした望みを持つ気持ちはよくわかる。しかし、結果としては人生のどこかで、お金を得て贅沢な暮らしができることだけが幸せではなく、それがゴールなどではないと気がつくことになる人は多いだろう。仕事にしても、出生をしてより多くのお金を得ることを目的とすべきではない。よりやりがいのある仕事をして、自分を成長させていくことには、大きな喜びが見出せるものなのだから。」(210~211頁)

原田さんも40歳過ぎまでは物欲にとらわれていたそうです。

なんかこう書くと、物欲を持ってはダメなように感じてしまいますね。 そんなわけありません。

原田さんも若者が物欲を持つことを否定はしていませんね。

日本では、お金持ちになりたい、いい車に乗りたい、いい家に住みたいという「本音」を言うのは、一般的には良しとされていません。

前にも書きましたが、日本は、本音を言ってはいけない文化がありますので。

原田さんの現在の年齢で、物欲にとらわれるべきではない、と言うのはいいでしょう。

もういろんなことを経験し、物欲も満たされたと思いますので。

少なくとも、私は、「あまり物欲とかないんですよ」と言っている若者に魅力を感じません。

もっとぎらぎらしていて、天下をとることを目標にしているようなバイタリティに満ちあふれている人と一緒に仕事をしたいと思います。