本の紹介75 人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない
人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない

幻冬舎社長の見城さんとサイバーエージェント社長の藤田さんの2冊目の本です。

1冊目の「憂鬱でなければ、仕事じゃない」は、以前、ブログで紹介しました。

今回も、題名だけでつかみはOKです(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

エイベックスの松浦勝人、GMOインターネットの熊谷正寿、グリーの田中良和、ネクシィーズの近藤太香巳、そしてもちろん藤田晋も、学生時代や起業する前は何者でもなかったはずだ。彼らはおのおの音楽、インターネット、ゲーム、飛び込み営業に、たった一人で熱中していただけだ。彼らの並はずれた熱狂が、やがて人の心を打ち、他人を巻き込み、自分の立ち上げた会社をそれぞれの分野のトップに押し上げたのだ。
・・・熱狂できることを仕事に選ぶべきだ。・・・大企業だからとか、安定しているからという理由で勤め先を決めるなど、馬鹿げている。見栄や安定で、熱狂できない仕事を選ぶことは、ひどく退屈で辛いことだ。熱狂は退屈も苦痛も、はねのけてくれる。そして、必ず、他の追随を許さない大きな実りをもたらしてくれる。
」(185頁)

これは、見城さんの言葉です。

最初は、みんな1人だけで走ってきたわけです。

1歩目、2歩目は、自分の足で歩く。

5歩目まで来れば、周りが助けてくれるようになるのです。

愚直さは人を動かす、ということがよくわかります。

仕事に熱狂できるということは、とても幸せなことです。

仕事に熱狂している人の周りには、仕事に熱狂している人たちが自然と集まってきます。

類は友を呼ぶわけです。

こういう人たちは、「この人と付き合うと、おもしろそうだな。」と肌で感じます。

会話をする際の口調、雰囲気、内容等で、無意識に見分けているように思います。

このような人たちの大きな特徴として、人の悪口を言わない、後ろ向きな発言をしないという点があります。

「そんなこと、どうでもいいよ」と心の中で思っているのです。

自分がやろうとすることに対して、反対意見や批判的な意見が出ることもあると思います。

それらは、「なるほど。参考になります。」とひとまず受けとめますが、基本的にはスルーします。

自分の人生ですから、自分がやろうと決めたことをどんどんやればいいんじゃないでしょうか。

少しくらい反対意見が出るくらいがちょうどいいのです。

これからも仕事に熱狂していきたいと思います。

労働災害51(A市役所職員・うつ病自殺)事件

おはようございます。 また一週間が始まりましたね。今週もがんばっていきましょう!
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←土、日に、気仙沼に行ってきました

被災者の方を対象とした法律相談と相続のセミナーをやりました。

今後も定期的に行きたいと思います。

今日は、午前中、裁判が2件入っています。

うち1件は、労働事件です。

お昼は、スタッフ全員で食事をします。

午後は、静岡で裁判が1件、その後、富士の裁判所へ行き、労働事件の裁判です

その後、すぐに静岡に戻り、月一恒例のラジオ出演です。

夜は、税理士K山先生、先輩弁護士の事務所、うちの事務所でお食事会です

今日は4件裁判が入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、うつ病自殺と労災に関する最高裁判例を見てみましょう。

A市役所職員・うつ病事件(最高裁平成24年2月22日・労判1041号97頁)

【事案の概要】

Xは、A市役所の職員であった。

Xの遺族は、Xのうつ病発症およびこれに続く自殺が公務に起因するものであると主張し、公務外認定処分の取消しを求めた。

【裁判所の判断】

第1審(名古屋地裁平成20年11月27日・労判1013号116頁)・・・うつ病自殺の公務起因性を否定
第2審(名古屋高裁平成22年5月21日・労判1013号102頁)・・・うつ病自殺の公務起因性を肯定
最高裁・・・うつ病自殺の公務起因性を肯定(上告棄却、上告受理申立て不受理)

【判例のポイント】

1 (第1審)・・・その判断は、平均的労働者ないしは当該職員と同種の公務に従事し遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する職員を基準として、勤務時間、職務の内容・質及び責任の程度等が過重であるために当該精神障害を発症させられる程度に強度の心理的負荷を受けたと認められるかを判断し、これが認められる場合に、次に、公務外の心理的負荷や個体側の要因を判断し、これらが存在し、公務よりもこれらが発症の原因であると認められる場合でない限りは相当因果関係の存在を肯定するという方法によるのが相当である。
Xは、量的にはもちろん、質的にも過重な事務を行ったとは認めがたいこと、B部長の指導は、直ちに不当なものとはいえないこと等からすると、Xのうつ病は、Xのメランコリー親和型性格、執着性格といった個体側の要因により大きな発症の原因があることが窺えるから、Xの公務とうつ病発症等との間に相当因果関係が存在するとは認められない

2 (第2審)・・・基本的には同種の平均的職員、すなわち、職場、職種、年齢及び経験等が類似する者で、通常その公務を遂行できる者を一応観念して、これを基準とするのが相当であると考えられるが、そのような平均的職員は、経歴、職歴、職場における立場、性格等において多様であり、心理的負荷となり得る出来事等の受け止め方には幅があるところであるから、通常想定される多様な職員の範囲内において、その性格傾向に脆弱性が認められたとしても、通常その公務を支障なく遂行できる者は平均的職員の範囲に含まれると解すべきである。
Xは、これまで経験したことのない福祉部門の部署であり、重要課題も多く抱えた児童課に異動となったのみではなく、当時の児童課には本件保育システムの完成遅れ、ファミリーサポートセンター計画の遅れなどの重要問題を抱えており、しかも、それは事前に知らされていたわけではなく、異動の後に事情を知らされ、課長としては早急に対応を迫られる問題であったこと、しかも、当時のXの上司は、パワハラで知られていたB部長であり、現実に、Xが児童課に異動後すぐに課別の検討課題についての報告書の提出やヒアリングを求められたり、ファミリーサポートセンター計画に関する文案についてB部長の決裁がなかなか得られず、Xの部下であり担当者であるD補佐に対して大きな声で厳しく非難するような事態が生じたことなどによる心理的負荷が重なり、そのために、Xは、平成14年4月下旬ころから同年5月6日の連休明けころまでの間にうつ病を発症したものであることが認められ、発症後も、管理職研修での事前準備が間に合わなかった不全感、本件ヒアリングにおけるB部長からの厳しい指導や指示などにより、さらに病状を増悪させるに至り、それにより、Xは、自殺するに至ったものと認められる。そして、上記心理的負荷は、平均的職員を基準としても、うつ病を発症させ、あるいは、それを増悪させるに足りる心理的負荷であったと認めるのが相当である

地裁と高裁で、事実認定が異なったために結論がひっくり返りました。

最高裁は、高裁の判断の維持したので、公務災害が認定されました。

労災や公務災害の裁判(に限りませんが)では、事実を丁寧に主張することが求められます。

結果、必然的に、記録の量が膨大になります。

裁判官に判決を書きやすいようにいろいろと工夫をしなければいけません。

本の紹介74 最強の「ビジネス理論」集中講義(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日も昨日に引き続き本の紹介です。
最強の「ビジネス理論」集中講義 ドラッカー、ポーター、コトラーから、「ブルー・オーシャン」「イノベーション」まで
最強の「ビジネス理論」集中講義 ドラッカー、ポーター、コトラーから、「ブルー・オーシャン」「イノベーション」まで

題名のとおり、有名どころのビジネス理論をコンパクトにまとめて説明している本です。

日本の例が多く取り上げられている点がいいです。

最初の1冊としても、いいと思います。

これまでにドラッカーさんやポーターさんの本を読んだことがある人でも、新しい発見はありませんが、参考になる点はあります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの企業は、いったん顧客とはこういうものだと決めつけてしまうと、なかなかその価値観を変更することがむずかしくなります。このような場合、イノベーションの芽を摘みかねないので注意が必要です。
たとえば、調味料というのはおかずの味を引き立てるものという価値観を企業側がもっているかもしれません。このような価値観に捉われていては、いつまでも調味料はそのカテゴリーから飛び出してイノベーションを起こすことはできないでしょう。
」(171頁)

「食べるラー油」ですね。

そうきたか!と感心したのを覚えています。

なかなか固定観念のスイッチをオフにするのは難しいですよね。

この商品・サービスは、当然、こうあるべきだ、という「常識」を無視しなければいけません。

ラー油は、ぎょうざをタレに少しだけ入れるものだ、という「常識」(?)を無視することがスタートです。

弁護士業界でいうとどういうことになるでしょうかね・・・。

たとえば、「顧問契約では、相談事があろうとなかろうと、毎月、一定の顧問料が発生する」ということ。

たぶん、これって業界の「常識」ですよね。

これをいったん無視します(無視すると多くの法律事務所は相当困りますが(笑))。

そして、ひとひねりしてみます。

たとえば、自動車保険と同じように、相談事があまりない会社の場合、徐々に顧問料が減っていく、とか、

自動車保険の弁護士特約のように、ある保険に顧問弁護士特約をつけてみる、とか、

社長の誕生日の月だけ、顧問料を無料になる、とか、

顧問契約の内容を、法律相談だけでなく、考えられるあらゆる相談(税務、保険、医療等)にも応じられるようにする、とか、

顧問料を、訴訟費用に充当できるようにする、とか・・・

なんだかんだ出てきます。

これからの時代、ますますサービス内容は進化し、多様化していくのは間違いありません。

世の中にあるすべての仕事はサービス業ですよね。

サービス業に携わる人(=働いているすべての人)は、日頃から、「今のサービスをどのようにしたら、もっといいサービスになるのかな」と考えるくせをつけるべきだと思います。

ただ単にやるべきことをやることだけが仕事ではないと思います。

「もっといいサービスってないかな」と考えることこそが、仕事の楽しみにつな

本の紹介73 Business Model Generation(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

横に細長い本です。 本棚から飛び出してしまいます(笑)

45カ国の470人の実践者の発想、考え方が紹介されています。

内容、てんこもりです。 この内容で2500円は、すばらしいです。

じっくり読む本ですね。 速読をするような本ではありません。

この本では、ビジネスモデルを「どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したもの」と定義しています。

そして、ビジネスモデルを検討する際に、9つの構築ブロックを見ていきます。

9つの構築ブロックを「ビジネスモデルキャンバス」という1枚の表の中に落とし込んでいくわけです。

なかなか使いこなすには、時間がかかると思いますが、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

新しいアイデアを作り出す作業は、クリエイティブ系の人だけのものだと思われがちです。しかし実際には、組織全体から集められた多様な参加者が必要です。・・・多様性があれば、新しいアイデアを生み出し、議論し、選ぶことが容易になります。外部の人、ときには子どもでさえも、チームに加わることを考えてもいいくらいです。」(143頁)

今日、さまざまな異業種交流会が存在していますね。

1つくらい、みんなで頭をつかって、新しいビジネスモデルを考える会があっても、おもしろいのではないかと思います。

過去の武勇伝を聞くよりも、未来を語るほうが、僕は好きです。

せっかくさまざまな業界の方が集まるのであれば、いろいろな視点、思考方法を結集させて、1つの全く新しいアイデアを形にする会って、刺激的ではないですか?

そんな会があったら、参加してみたいですね。

賃金45(アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー事件)

おはようございます。

さて、今日は、競業避止条項による退職金不払いに関する裁判例を見てみましょう。

アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー事件(東京地裁平成24年1月13日・労判1041号82頁)

【事案の概要】

Y社は、外資系生命保険会社である。

Xは、Y社の日本支店において元執行役員として勤務していた。

Xは、Y社を退社後、競合他社へ転職したところ、本件競業避止条項により退職金を支給されなかった。

そこで、XはY社に対し、退職金の支払いを請求した。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、3037万余円を支払え

【判例のポイント】

1 一般に、労働者には職業選択の自由が保障され(憲法22条1項)ことから、使用者と労働者の間に、労働者の退職後の競業についてこれを避止すべき義務を定める合意があったとしても、使用者の正当な利益の保護を目的とすること、労働者の退職前の地位、競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、使用者による代替措置の有無等の諸事情を考慮し、その合意が合理性を欠き、労働者の職業選択の自由を不当に害するものであると判断される場合には、公序良俗に反するものとして無効となると解される。
そして、上記競業避止義務を定める合意が無効であれば、同義務を前提とする本件不支給条項も無効となる。

2 Y社は、優秀な人材が競合他社へ流出することを防ぐため、本件競業避止条項を置いたものであり、その背景には、Y社のノウハウや顧客情報等の流出を避ける意図があるものと認められる。
ところで、Y社の主張によれば、ここでいうノウハウとは、不正競争防止法上の営業秘密に限らず、XがY社業務を遂行する過程において得た人脈、交渉術、業務上の視点、手続等であるとされているところ、これらは、Xがその能力と努力によって獲得したものであり、一般的に、労働者が転職する場合には、多かれ少なかれ転職先でも使用されるノウハウであって、かかる程度のノウハウの流出を禁止しようとすることは、正当な目的であるとはいえない。また、不正競争防止法上の営業秘密の存在については、Y社は特に具体的な主張をせず、これを認めるに足りる証拠もない
また、顧客情報の流出防止を、競合他社への転職自体を禁止することで達成しようとすることは、目的に対して、手段が過大であるというべきである
証人Bの証言によると、むしろ本件においては、競合他社への人材流出自体を防ぐことを目的とする趣旨も窺われるところではあるが、かかる目的であるとすれば単に労働者の転職制限を目的とするものであるから、当然正当ではない
結局、本件競業避止条項を定めた使用者の目的は、正当な利益の保護を図るものとはいえない。

3 ・・・以上から、Xの退職前の地位は相当高度ではあったが、Xの長期にわたる機密性を要するほどの情報に触れる立場であるとはいえず、また、本件競業避止条項を定めたY社の目的はそもそも正当な利益を保護するものとはいえず、競業が禁止される業務の範囲、期間、地域は広きに失するし、代償措置も十分ではないのであり、その他の事情を考慮しても、本件における競業避止義務を定める合意は合理性を欠き、労働者の職業選択の自由を不当に害するものであると判断されるから、公序良俗に反するものとして無効であるというべきである
そして、上記競業避止義務を定める合意が無効である以上、同義務を前提とする本件不支給条項も無効であるというべきである。

Y社は、控訴していますが、おそらく控訴審でも結論は変わらないと思います。

顧客情報の流出防止を、競合他社への転職自体を禁止することで達成しようとすることは、目的に対して、手段が過大であるというべきである」という点は、会社側としては参考にすべきです。

職業選択の自由という憲法上の権利を制限することから、あまり過度な制限は、無効になってしまいます。

兎にも角にも事前に顧問弁護士に相談する仕組みを作っておくことがリスクヘッジにつながります。

本の紹介72 日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉
日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉

日本マクドナルドホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長兼CEOの原田さんの本です。

・・・長いです。 

原田さんは、現職の前は、アップルの日本法人社長と米本社副社長をされていた方です。

2つのマックを救った経営者だそうです。 うまいこと言いますね。

「原田さん、仕事が大好きなんだろうな」と、読んでいて思いました。 

仕事の好きさでは、僕も負けていませんが(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『お客様に新商品の開発のヒント(ニーズ)を聞いた時点で、すでに経営の姿勢とビジネスマンとしてのあり方を誤っている』と私は思っています。
ビジネスでは市場調査は大切です。しかし、調査(リサーチ)の結果を分析して、それを中心に戦略を決めるのが、果たしてビジネスの基本でしょうか。もちろん違います。ビジネスも『ひらめき』が大切です。市場調査や分析は、ひらめいた発想の『検証』にすぎません。
」(106頁)

『自ら市場のトレンドをつくり、社会に変革をもたらす』 これがビジネスの基本であり、醍醐味でもあります。ビジネスでの発想の原点は、『世の中のトレンドがこうなるからついていくぞ』というものではありません。・・・ビジネスの本質は、お客様の期待を超える商品を開発し、提供し続けることです。」(107頁)

同意見です。

原田さんにこのように言われるとすっきりします。

ゲーム理論でビジネスがうまくいくとはとても思えません。

まずは、これまでの経験に基づく「勘」や「直感」を信じるところからはじまるのだと信じています。

頭のいい人たちは、あれやこれや調査して検証してからでないと出発できないでしょうか。

僕のような凡人は、どんどん行動に移して、不都合が出てきたら、そこで修正する方が性に合っています。

正直なところ、実際にやってみないとわからないことだらけです。 

やる前に調査して検証しても、結局、想定外の問題が出てくるわけですから、だったら、どんどんやったら方がいい、という考え方です。

原田さんは、こうも言っています。

決定したらすぐ実行しろではなく、決定しなくてもいいからすぐ実行だ!」(175頁)

いい言葉ですね。

実行力こそ、命です。

賃金44(スタジオツインク事件)

おはようございます。

さて、今日は、退職した従業員による時間外割増賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

スタジオツインク事件(東京地裁平成23年10月25日・労判1041号62頁)

【事案の概要】

Y社は、記録映画・テレビコマーシャル等の企画・制作等を業務とする会社である。

Xらは、Y社と雇用契約を締結して勤務し、インフォマーシャル制作業務に従事していた。

その後、Xらは、Y社を退職し、Y社に対し、在職中である平成18年10月から19年6月までの間に行った時間外・深夜・休日勤務に対する時間外・深夜・休日出勤手当および付加金などの支払いを求めた。

【裁判所の判断】

Y社は、X1に対し約110万円、X2に対し約98万円を支払うように命じた。

【判例のポイント】

1 時間外手当等請求訴訟において、時間外労働等を行ったことについては、同手当の支払を求める労働者側が主張・立証責任を負うものであるが、他方で、労基法が時間外・深夜・休日労働について厳格な規制を行い、使用者に労働時間を管理する義務を負わせているものと解されることからすれば、このような時間外手当等請求訴訟においては、本来、労働時間を管理すべき使用者側が適切に積極否認ないし間接反証を行うことが期待されているという側面もあるのであって、合理的な理由がないにもかかわらず、使用者が、本来、容易に提出できるはずの労働時間管理に関する資料を提出しない場合には、公平の観点に照らし、合理的な計算方法により労働時間を算定することが許される場合もあると解される。もちろん、前記のとおり、時間外労働等を行った事実についての主張・立証責任が労働者側にあることにかんがみれば、その推計方法は、当該労働の実態に即した適切かつ根拠のあるものである必要があり、推計方法が不適切であるが故に、時間外労働等の算定ができないというケースもありえようし、逆にいえば、労働実態からして控え目な推計計算の方法であれば、合理性があると判断されることも相対的に多くなると思われる

2 Y社においては、従業員の労働時間を把握する資料として従業員にタイムカードを打刻させるほかに、月毎に月間作業報告書を作成させていたところ、少なくとも、本件訴訟係属前の平成21年1月ころまでは、本件請求期間中に係るXらの月間作業報告書は存在していたにもかかわらず、Y社がそれを破棄したなどとして提出しないことが推認されるのは、既に指摘したとおりである。月間作業報告書は労働時間管理に関する書類であって、Y社が主張するように会計処理が終わり次第、随時廃棄するという性質の書類ではない上、Y社は平成20年に別件訴訟を提起し、両者間に紛争が生じていたことからすれば、仮に他の従業員の月間作業報告書を廃棄する必要があったとしても、Xらの同報告書については証拠を保全するために残しておくのが通常であって、そのような状況下で廃棄したというのは著しく不自然である。このように、Y社において、労働時間管理のための資料を合理的な理由もなく廃棄したなどとして提出しないという状況が認められる以上、公平の観点から、本件においては、推計計算の方法により労働時間を算定する余地を認めるのが相当であると解される

3 Xらが従事していた業務は、インフォマーシャル制作業務という性質からしても、プロデューサー、ディレクターというその役割に照らしても、それ自体、相当な時間と作業量を要する業務であったと推認される。また、Xらは、同時並行の形で、複数のインフォマーシャル制作業務を担当することも多い上、仮編集や本編集といった過程で徹夜作業を行うことも頻繁にあるなど、そのスケジュールに照らし相当に多忙であったと認められる。さらに、当時、Xらは、自らが時間外手当の支給を受けうる立場にないと認識しており、始業時刻が早いときあるいは終業時刻が遅いときだけ、意図的にタイムカードの打刻をしたとは考えにくい上、Xらが、Y社側から出勤時刻が遅いことを注意されていた状況もなかったことからすれば、出勤時刻が遅い日にタイムカードの打刻を怠っていたとも推認できないのであって、Xらのタイムカードに打刻のある日時が、全体の平均値から逸脱しているということもできない。したがって、Xらの主張にかかる上記推認方法は、基本的に合理的な方法であると認めるのが相当である。
結果的にも、X1については、時間外労働が月30時間台から60時間台、深夜労働が10時間以内に収まり、X2についても、時間外労働が月30時間台から60時間台、深夜労働が多いときでも月10時間台に収まっているものであるから、Xらの業務実態に照らすと、むしろ控え目な推計であるというべきである(Xらが徹夜作業を行っていることを考慮に入れれば、実際の労働時間、とりわけ深夜労働はもっと多い可能性が高い。)。

上記判例のポイント1は非常に重要です。是非、しっかり理解しておいて下さい。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介71 模倣の経営学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる―
模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる―

「偉大なる会社はマネから生まれる」そうです。

いいところはどんどん見習うという総論は、いたるところで言われていることですね。

また、結局は、「実行力」、「修正力」で差がつくということも、その通りです。

どんだけ「マネはいいことだ!」と思っていても、それをうまく実行しなければ単なる二番煎じで終わるわけです。

この本は、これまで言われてきたことをもう一度まとめてみました、というような内容です。

目新しさというのは特に感じませんでしたが、再確認にはいい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

模倣というのは、忠実に再現しようとすると、実は、とても大変なことなのかもしれない。きわめて高い能力が必要とされるからだ。たとえば、製品にしても仕組みにしても、外から解析するといっても試行錯誤が必要とされる。100のノウハウを模倣しようと試行錯誤を重ねていくうちに、200ぐらいの能力が蓄積されるようになることもあるだろう。こうして能力を高めることができれば、次のステップでオリジナリティを発揮することができる。」(112頁)

この感覚、マネが得意な方は、共感できるのではないでしょうか。

人のマネをする場合、それをそのままやってもほとんどの場合、うまくいきません。

必ず微調整、カスタマイズが必要になるのです。

そこをすっ飛ばして、そのままマネを繰り返すと、最終的に、ちぐはぐな「オリジナリティ」が誕生します(笑)

それはそれで立派なオリジナルなんですけどね。

ポイントは、微調整、カスタマイズです。

ここは、残念ながら、どれだけビジネス本、自己啓発本を読んでも、答えは書いてありません。

本に書いてあるのは、総論部分と他の成功事例における各論部分だけです。

「じゃあ、あなたの場合はどうしたらよいか?」という各論部分は、自分で考えるしかないのです。

微調整、カスタマイズの方法も、試行錯誤の中で、徐々に身についてくるのだと思います。

ヒントとなるのは、「自分の長所、強みがわかっているか?」という点です。

ここがそれぞれ違うから、そのまま人のマネをしてもうまくいかないのです。

相手のことはよくわかっても、自分のことはよくわからない。

だからこそ、人のマネをオリジナリティまで持って行くことはとても難しいのです。

人のマネをする前に、自分の長所や強み、他の人に負けないところを明確にすることが大切なのではないでしょうか。

有期労働契約27(E-グラフィックスコミュニケーションズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、クリエイティブディレクターに対する雇止めの効力に関する裁判例を見てみましょう。

E-グラフィックスコミュニケーションズ事件(東京地裁平成23年4月28日・労判1040号58頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車のカタログやパンフレット等の企画制作や印刷等を目的とする会社である。

Xは、美術大学を卒業後、数社での就労経験をした後、Y社に、平成18年4月から嘱託契約社員として、契約期間を9か月とする有期雇用契約を締結した。

Xは、当初はコピーライターとして入社応募したが、採用過程では、それまでの就労経験を考慮して、より統括的で重要な職種であり、当時欠員が生じていたクリエイティブディレクター(CD)での採用を打診され、業務内容をCDとすることで契約を締結するに至っている。

XとY社との間では、契約期間を1年とする有期契約が合計3回更新されてきたところ、Y社は4度目の契約期間満了の際、Xに対し、本件有期雇用契約は更新しない旨を通告した。

なお、Y社は、これに先立って、本件雇止めの理由を詳細に記載した書面をXに交付して納得を得ようとしたが、Xはその受領を拒否していた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件各更新手続の回数は3回に過ぎず、本件有期雇用契約が期間の定めのない契約と実質的に同視することができる状態にないことは明らかであるから、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるためには、本件有期雇用契約による雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性があることが必要であると解されるところ、この合理性の有無は、(1)当該雇用の臨時性・常用性、(2)更新の回数、(3)雇用の通算期間、(4)契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合考慮し、これを決するのが相当である。

2 確かにXは、コピーライターとして入社応募したところ、その経験や意欲等が買われ、CDというワンランク上のポジションで採用されたものであって、その年齢等を併せ考慮すると、Y社との雇用契約が長期かつ安定的に継続されることに対して、それなりの期待を抱いていたということはできる。
しかし、(1)CDは資質として自由な発想等に基づく創造性、専門性を持った人材が求められることから、その職務は、本来常用というよりも、むしろ臨時的な性格を有しているものと認められること、(2)現にY社は、CD業務につき1年ごとの嘱託契約社員向きの業務であると位置付け、Xに対しても、その採用面接時はもとより入社直後のオリエンテーション等においても、その旨を明確に説明し、雇用継続に対する期待利益を抱かせるような言動をした形跡はうかがわれないこと、(3)本件各更新手続の回数は僅か3回にとどまっており、その通算期間も4年に満たないこと、(4)Y社は、本件各更新手続に先立って、各契約期間の成果等に関する評価資料に基づき、Xとその上長との間において面談を実施した上、これを踏まえ年俸の額等を決定し、Xとの間において有期雇用契約書等を取り交わしており、本件各更新手続の管理は厳格に行われていたものといい得ることなどの事情を指摘することができる
これらの事情を総合すると本件有期雇用契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性があるとはいい難く、本件雇止めに解雇権濫用の法理を類推適用する余地はないものというべきである。

非常に参考になる判例です。

会社側とすれば、有期雇用契約を締結する場合には、更新手続きをしっかりやること、雇用継続の期待を持たせる言動は慎むことなどの対策をとることになります。

ただ、これまでの多くの裁判例を見ればわかるとおり、解雇しやすくするために、あえて有期雇用にし、更新を続けてきたというような場合には、たいてい解雇権濫用法理を類推適用されます。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介70 コンセプトメイキング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
コンセプトメイキング 変化の時代の発想法
コンセプトメイキング 変化の時代の発想法

元博報堂制作部長の方の本です。

以前、同じ著者の「『差別化するストーリー』の描き方」という本を紹介しました。

だいたい内容は同じです。

とにかくいっぱい例が載っています。

他の業界の例から何かを感じ取れる力が身についている人には参考になる本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いま、生活者は新しい価値を提供してくれる新商品の登場を待っています。その件、顕在ニーズの対応でなく、『新しい文化や生活を提案するような潜在ニーズの発掘』・・・という視点を持たないと概念は変わりません。もうひとつ先を考えるのです。・・・時代を読み、生活者が求めているものの洞察を行い、見えなかったもの、気づかなかったものを提案することをゴールと考えて下さい。」(30頁)

私自身、少し前まで、「顧客のニーズは顧客に聞くのが一番」と思っていました。

これ自体が悪いことだとは思いません。

日々の業務について、改善を繰り返すために、顧客からの声を参考にすることは非常にいいことだと思います。

この本でいっているのは、「それだけではダメよ」ということです。

新商品が発売されたとき、消費者が「そうそう、こういうのを求めたのよ」と明らかに感じるものもあれば、「へ~、うまいこと考えたな~」とか「まじで!こりゃすごいな~」という感想を持つこともあると思います。

当然、後者のほうが難しいですよね。 失敗するリスクも高い。

だからこそ、やるんですけどね(笑)

もう難しいとか失敗するリスクが高いというのは、やらない理由にはならないのです。

むしろ、やる理由になるわけです。

・・・と、いつものように、本に書いてあるのは、総論部分のみ。

各論に落とし込むのは、読んでいる読者次第というわけです。

今、うちの事務所で新しいサービスを準備していますが、顧客の想像を超えるところまではいっていないんだろうな~と思います。

まだまだ修行が足りません。