本の紹介54 ハーバードからの贈り物(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
ハーバードからの贈り物 (Harvard business school press)
ハーバードからの贈り物 (Harvard business school press)

バーバード・ビジネススクールの教授の最終講義をまとめた本です。

10年以上前の本ですが、もう一度読んでみました。

複数の教授たちが、学生に伝えたいことを語っています。

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

今一度、成功という言葉の意味を考え直してほしい。高い山の上に巨大な顔が刻まれなくても、リーダーになることはできる。成功したかどうかの尺度を、いかに履歴書を磨き上げるかではなく、あなたが周囲の人びとにどんな影響を与え、その人の生活にどんな変化をもたらしたかに置くことだ。成功という名の勲章に振り回れるのをやめ、あくまでも謙虚なリーダーでありつづけてほしい。」(43頁)

最近、私と同い年の社長に出会いました。 

表現方法は違えど、思っていることは驚くほど同じです。

同世代で、志の高い方に出会うと、嬉しくなります。

成功したかどうかの尺度は、「周囲の人びとにどんな影響を与え、その人の生活にどんな変化をもたらしたかに置く」。

周りの人たちに影響を与えるためには、「人間力」をつけなければいけません。

本の紹介53 カテゴリー・イノベーション(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
カテゴリー・イノベーション―ブランド・レレバンスで戦わずして勝つ
カテゴリー・イノベーション―ブランド・レレバンスで戦わずして勝つ

コトラーさんの言うところの「ラテラル・マーケティング」に近い発想です。

本の帯にはこう書いてあります。

イノベーションで、既存カテゴリーの魅力をなくす新カテゴリーを創出し、それを代表するブランドになる。競争の激しい市場で、競争をせずに事業を成長させる唯一無二の新戦略論。

読んでみての感想ですが、「唯一無二の新戦略論」という程のことではありません。

要するに、題名にもなっているとおり、カテゴリーを再定義し、その上で、競合他社に対する参入障壁をつくるという戦略です。

問題は、いかにして、競合他社に対する参入障壁を構築するか、です。

答えは、この本に書いてあります。

いつも書いていますが、知識を持っていても、それを具体化する応用力と実行力がないと、結局、何も変わりません。

単なる物知りおじさんです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ブランドが将来的にもレレバンスを維持するためには、新しいカテゴリーあるいはサブカテゴリーと結び付く必要がある。そのカテゴリーの名前が出たときに、そのブランドが思い浮かぶようにするのだ。そのようなつながりやレレバンスが確立できていないと、ブランドはその新しいカテゴリーあるいはサブカテゴリーの定義に影響を与え、管理することはできない。顧客が購入を検討するときに、そのブランドが考慮される選択肢のなかで圧倒的に強い立場になるような強い結び付きは、競合企業にとって手ごわい障壁となる。」(292頁)

「そのカテゴリーの名前が出たときに、そのブランドが思い浮かぶようにする」というところがミソですね。

弁護士業界で考えてみましょう。

取扱分野でカテゴリーを捉えると、「交通事故といえば」「離婚といえば」「相続といえば」というカテゴリーで、一番初めに思い浮かぶ事務所をつくるということです。

これはとてもわかりやすいです。

取扱分野以外にもカテゴリーを捉えることができます。

例えば、「無料法律相談をやっている法律事務所といえば」「ワンストップで解決してくれる法律事務所とは」「価格が他とは比較にならない程安い法律事務所とは」などが考えられます。

このようなカテゴリーの中で、ご相談者が真っ先に思い浮かぶようにならなければいけません。

問題はここからです。

どのようにして、ブランドをつくり、継続的に維持していくか、です。

ここが大きなポイントであり、アイデアの出しどころですね。

ここでは、私の考えは書きません。

うちの事務所で実際にやっていきますので、それをご覧ください。

毎日、アイデアがあふれてきます。

事務所スタッフのみなさん、僕の思いつきに付き合ってくれて、本当にありがとう。

賃金42(あけぼのタクシー事件)

おはようございます。

さて、今日は、解雇期間中の賃金の中間収入に関する最高裁判決を見てみましょう。

あけぼのタクシー事件(最高裁昭和62年4月2日・労判506号20頁)

【事案の概要】

Y社は、旅客運送事業を営む会社である。

Xらは、いずれもY社にタクシー乗務員として雇用された従業員である。

Xらは、タクシー従業員で構成する労働組合の執行委員長や書記長であった。

Y社は、中傷ビラの配布等を理由として、昭和51年8月、Xらを懲戒解雇した。

Xらは、本件解雇の無効と解雇期間中の賃金等の支払を求めた。

第1審は、本件解雇は、不当労働行為で無効と判断し、解雇期間中の賃金については、平均賃金の6割分を確保してそれ以外の賃金分(平均賃金の4割分および一時金)からの中間収入控除を認めた。

これに対し、控訴審は、懲戒解雇の無効は維持しつつ、平均賃金の4割分からの控除のみを認めて一時金からの控除を否定した。

Y社は、上告し、一時金について、使用者は労働基準法26条による支払義務もないので中間収入控除につき限度額の適用は受けず、全額が損益相殺の対象となるべきであると主張し争った。

【裁判所の判断】

破棄差戻し

【判例のポイント】

1 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが、賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である

2 したがって、使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、中間利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法12条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる

3 そして、賃金から控除し得る中間利益は、その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し、ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないものと解すべきである。

4 中間利益の控除が許されるのは平均賃金所定の基礎になる賃金のみであり平均賃金算定の基礎に算入されない本件一時金は利益控除の対象にならないものとした原判決には、法律の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。

まあ、そういうことです。

和解で終わる場合は、ここまでの話は出ないですが、判決まで行くと、中間利益の控除の問題が出てきます。

労働事件では基本中の基本ですのでしっかり押さえておきましょう。

詳しくは顧問弁護士からレクチャーを受けましょう。

本の紹介52 マーケティング10の大罪(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
マーケティング10の大罪
マーケティング10の大罪

コトラーさんの本です。

10年程前の本ですが、今読み返しても、全く古さを感じさせません。

題名からもわかるとおり、この本では、「マーケティングでは、こういうことをやっちゃだめよ」ということを掲載し、その対処法が解説されています。

コトラーさんの本は、これまでも何冊か読んできましたが、私のような素人が読んでも、とてもわかりやすいです。

事務所の経営をしている上で、非常に参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

これまでは『ニーズを見出し、ニーズを満たす』ことがマーケティングだとされてきた。このような企業は市場主導型企業(market-driven firm)ということができる。だが、無数の製品があふれ、ほとんどのニーズが満たされた現在、マーケティングの直面する課題は、いかにして新たなニーズをつくり出すかということである。この難問に挑む企業は市場先導型企業(market-driving firm)と呼ぶことができよう。・・・市場先導型企業は新たな価値提案と新たなビジネス・システムを創出することで、業界に革命をもたらす。 ・・・競合他社の多くが、新たに登場した価値提案を模倣するだろう。だが、ビジネス・システムを模倣しようとしても、たいていは失敗してしまうものだ。」(160~161頁)

私の当面の目標は、静岡県において、栗田勇法律事務所を「市場先導型事務所」にすることです。

法律事務所として、これまでになかった新たな価値提案と新たなビジネス・システムを創出していきたいです。

話がでかくなりすぎているように思いますが、目標なんて、こんな感じでいいと思っています(笑)

うちのスタッフとなら、できる気がします。

よくブログに書いているのですが、若手弁護士全員が、「業界に革命をもたらす」くらいの勢いで仕事をしなければいけないと思っています。

年齢や経験の壁を軽く越えるくらいの情熱を持って、仕事をしていきたいと思います。

本の紹介51 巨大企業に勝つ5つの法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
巨大企業に勝つ5つの法則 (日経プレミアシリーズ)
巨大企業に勝つ5つの法則 (日経プレミアシリーズ)

なんだかそそられる題名です。

巨大企業に勝つ5つの法則が本の表紙にいきなり書かれています(笑)

一、 誰もが「無理だ」と主張することを実行する

二、 身の丈を超える目標を掲げる

三、 劣勢であることを強みにする

四、 「変人」を重視する

五、 サムライをリーダーにする

5つ目の法則は、中身を読まないとなんのことかわかりませんが。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

結局のところ、意思決定の迅速化を実現するうえでの要は、最終意思決定権者の意思決定のあり方にかかっている。つまり、いかにしてこの最終意思決定権者が腹をくくれるかにある。」(180頁)

リーダーが腹をくくれるかどうかは、責任を取る、腹を切る覚悟があるかどうかである。つまり、その人が武士であること、サムライであることに帰結する。決断はリーダーの仕事である。」(181頁)

自分がトップになって仕事をしていると、「決断」することがいかに重要であるかがよくわかります。

決断力がある人と仕事をしていると気持ちがいいです。

優柔不断な人と仕事をしていると、じれったくなってきます。

こういう人とはあまり一緒に仕事をしたくありません。

決断力があるかどうかは、決定する権限を与えれば、すぐにわかります。

その決断が正しいかどうかは問題ではありません。

後から、あのときの決断が正しかったかどうかがわかるだけです。

この本でも書かれていましたが、決断力と経営の迅速化は密接に関連しています。

手前味噌ですが、現在の私の事務所では、何か新しいことを始める際、決断から実行までがめちゃくちゃ早いです。

これ以上、早くすることは不可能ではないかと思うくらい早いです。

また、スタッフがとても優秀なので、私が「これ、やりたい!!」と言うと、たいてい実現してくれます。

今のスタッフとなら、できないことなど存在しないのではないかと思っています。

私自身の能力はたかが知れていますが、事務所全体の力は、相当なものだと自負しています。

みなさんを幸せにできるように、今日も、仕事、がんばります。 

本の紹介50 ホワイトスペース戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ
ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ

帯に「ハーバード・ビジネス・レビュー誌マッキンゼー賞を受賞」と書いてあります。

なんだかよくわからないですが、すごそうだったので買ってみました。

タイトルからすると、「ブルーオーシャン戦略」的な話なのかな、と思っていましたが、言わんとしているのは、サブタイトルにもあるように、ビジネスモデルの『空白』=ホワイトスペースをねらえ、ということです。

この本を読んだからといって、いいアイデアが浮かぶわけではありません

この本で「いいね!」と思ったのは、こちら。

進歩が起きるときは、いつも同じパターンが繰り返される。最初は、無視される。その後は、頭がおかしいと言われる。次は、危険だと言われる。やがて、沈黙が生まれる。そして気がつくと、誰も反対を唱えなくなっている。」(229頁)

いい言葉ですね。

三木谷社長が、楽天市場をはじめたときも、こんな感じだったようですね。

「インターネットで買い物なんて流行るわけがない。やめとけ。」と。

今では、ネットショッピングに誰も異論を唱えません。

僕も早く頭がおかしいとか危険だと言われたいです。

まだまだですね。

いきなり大きなことはできませんので、小さなイノベーションを繰り返すしかありません。

がんばります。

本の紹介49 天才!成功する人々の法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
天才! 成功する人々の法則
天才! 成功する人々の法則

この本のもともとの題名は、「OUTLIERS」です。

「OUTLIER」とは、外れ値のことで、「中心やその近くの集団から、著しくかけ離れた地点や、まったく異なる分類に属する存在」を指します。

少し前の本ですが、本棚に並んでいるのが目に留まり、もう一度読んでみました。

この本で「いいね!」と思ったのは、こちら。

成功とはまた、人間が自分のために行う決断や努力の単純な総和でもない。それはむしろ贈物(ギフト)である。アウトライアーは好機を与えられた者、そしてそれをつかむ強さと平常心とを兼ね備えた者だ。」(303頁)

著者は、さまざまな成功者を例に挙げて、このような結論を導いています。

そして、「よりよい世界を築くためにわれわれに求められることは、・・・すべての人間に好機を与える社会を築くことだ」(304頁)と訴えます。

話が大きくなりすぎますので、自分の身近な問題として捉えることにします。

著者の考えでは、成功する(何を成功と考えるかは置いておく。)ために必要なものは、

(1)決断や努力

(2)チャンス

(3)チャンスをつかむ強さと平常心

ということのようです。

チャンスさえ与えられると、ぐんぐん伸びる方っていますよね。

チャンスが回ってきたときに、力を発揮できる方と一緒に仕事をしたいです。

チャンスが回ってくるのを待ちつつ、そのときに備えて、日々準備をする。

「俺には全然チャンスが回ってこない」と嘆く前に、たくさんやるべきこと、できることがあると思います。

むしろ、周りの方からチャンスをいただけるように日々、精進をするという感じでしょうか。

僕も「こいつに任せてみよう」と思われるように、毎日、フルスロットルで仕事をしています。

賃金41(医療法人共生会事件)

おはようございます。

さて、今日は、賃金減額の合意に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人共生会事件(東京地裁平成23年4月28日・労判1037号86頁)

【事案の概要】

Y社は、医療法人であり、北海道にG病院を開設している。

Xは、医師である。 Xは、平成21年8月、Y社を退職した。

Y社は、Xに対し、平成19年9月分から平成20年5月分の賃金として、各月120万円を支払った。

Y社は、Xに対し、平成20年6月分から平成21年8月分の賃金として、各月75万円を支払った。

Xは、Y社に対し、平成20年6月分から平成21年8月分までの各月120万円の賃金と支払い済み額75万円との差額を請求した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、平成20年6月、E及びDをして、Xの賃金を120万円から75万円に減額することの申入れを行い、Xは、その後、Y社から、同月分の賃金からXが退職する平成21年8月分の賃金まで一貫して月額75万円の支払を受け、その間、これらの賃金の支払額について、Y社に何ら異議を述べていないことが認められる。このことからすると、Xは、同日ないしその後同日に近い日に、上記申入れを受け容れたものと推認することができる。

2 この点について、Xの妻の陳述書等には、Xらは、賃金減額を承諾したことはなく、賃金減額に合意しないと
解雇される不安があり、退職後に請求をしようと考え、我慢することにした旨の陳述等がある。
しかし、この陳述等は、上記事実経過に照らして不自然であり、また、Xの雑記帳をみても、上記陳述等を裏付けるような記載はなく、かえって、同雑記帳の記載内容は、賃金減額を受け入れた後のXの気持ち等が書かれたものと解されることからすると、にわかに信用することができない

以上により本件賃金減額合意の成立を認めることができる。

本件では、賃金減額の合意の有無が問題となっています。

Xは、Y社に対し、賃金減額について「何ら異議を述べていない」ことから賃金減額の申入れを受け入れたと判断されています。

実際には、いろいろな事情があったのだと思います。

ただ、それが証拠として残っていないというだけのことです。

X側が、錯誤無効や詐欺取消しなどの主張をしていることからもわかります。

会話が録音されていれば、状況は変わったでしょうか・・・?

兎にも角にも、賃金減額事案は、事前の対応を誤るとたいてい無効となります。必ず事前に顧問弁護士に相談をしましょう。

本の紹介48 差別化するストーリーの描き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
「差別化するストーリー」の描き方
「差別化するストーリー」の描き方

元博報堂制作部長の方の本です。

コンセプトメイキングのやり方やアイデアの発想法等が実際の例とともに説明されています。

この著者の他の本をもう少し読んでみたくなりました。

早速、アマゾンで数冊注文しました。

この本で「いいね!」と思ったのは、著者のマーケティングプランニングのスタイルです。

著者は、以下の順番でものごとを考えるそうです。

1 「集める」→情報収集する テーマ関連・他領域の事実のストック

2 「書く」→大きな白い紙に書く 群れをつくりながら絵を描く気分

3 「眺める」→遠くから眺める 関係性を探る・可能性を楽しむ

4 「組み合わせる」→新しい関係性を発見 仮説を何案か立てる・言葉化する

5 「発酵させる」→A41枚、1案、キーワード 数枚、候補を壁に貼って寝かせる

6 「閃く」→来た!いけそう! 閃きがくる

7 「まとめる」→戦略化 具体的に仕組みをつくる。計画案に。 (99頁)

私は、日々、思いついたアイデアや本を読んでいてひらめいたことを手帳の余白部分にどんどん書き込んでいます。

「手帳」というのがポイントなのです。

なぜ手帳か、というと、つまらない会議等に参加している際、手帳を眺めていたり、メモをとっていてもあまり違和感がないからです。

「早くこの会議終わらないかな・・・」とただ会議が終わるのを待っているくらいなら、日頃ためこんだアイデアを眺めて、結びつけて、新しい切り口を考えているほうがよほど生産的です。

読書するわけにもいかない、ただぼーっとしているだけなのはもったいない、という時に、おすすめです。

日々の繰り返しが、大きな成果を生むのだと信じています。

解雇63(河野臨床医学研究所事件)

おはようございます。

さて、今日は、職員の非違行為等に対する懲戒解雇と割増賃金に関する裁判例を見てみましょう。

河野臨床医学研究所事件(東京地裁平成23年7月26日・労判1037号59頁)

【事案の概要】

Y社は、クリニックや研究所を有する文部科学省・厚生労働省認可の財団法人である。

Xは、平成2年、Y社と雇用契約を締結し、13年から電算課における課長心得という地位にあった。

Y社は、平成20年12月、Xの行為につき、(1)無断欠勤、緊急の欠勤に当たり速やかな連絡がないこと、(2)私物パソコンを大量に持ち込み私的行為を行ったこと、(3)病院事務部のAに対するパワハラ、(4)職制の指示命令に従わないこと、(5)以上の行為について反省がないこと、再三の繰り返しがあり悪質であることにより懲戒事由に該当するとして、懲戒委員会を開催し、弁明の機会を設けた上で、Xを懲戒解雇した。

Xは、本件懲戒解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

時間外・休日・深夜手当333万余円の支払いを命じたが、付加金の支払いは命じなかった。

【判例のポイント】

1 使用者による懲戒権の行使は、企業秩序維持の観点から労働契約関係に基づく使用者の権能として行われるものであるが、就業規則所定の懲戒事由該当事由が存する場合であっても、具体的状況に照らし、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性を欠くと認められる場合には権利の濫用に当たるものとして無効になる(労働契約法15条)。

2 Xについては、(1)本件穿孔行為、(2)上司の承諾を得ない欠勤、(3)新医療システム導入委員会における議場からの不退出、(4)Aに対するパワーハラスメントというべき言動という懲戒事由が認められるところ、既にみたように、(1)は、Y社所有建物の躯体部分に損傷を加えるものでそれ自体重大な非違行為というべきであるし、(4)についても、後輩職員に対し心ない攻撃を加え、精神的に多大なダメージを与え長期間の欠勤に追い込んだものであって、重大な非違行為といえる。また、(2)及び(3)についても、それら自体で直ちに懲戒解雇に該当するとまではいえないにしても、Xが事務長から繰り返し注意を受けていたにもかかわらず、これらの行為に及んだことからすれば、これらの行為も軽視することはできない規律違反行為であるといえる
以上を総合すると、上記各事実を懲戒事由とする本件懲戒解雇には合理的な理由があるというべきであるし、それが社会通念上相当性を書くということもできない。

3 Y社は、Xに時間外労働手当を支払ってこなかったが、他方で、Xが管理監督者とはいえないものの、Y社がXに職務手当として月額5万円を支給していたほか、休日ないし深夜労働についてXから求めがあれば承認し、これに対する手当を支払っており、その額は、期間累計で約260万円、月平均でみれば約10万円に上るという事情がある。
また、本件請求期間にかかるXの時間外労働が相当長期間に及んでいることは事実であるが、Xが、少なくともY社から積極的に残業を強いられた形跡はない(X自身もそのような供述はしていない。)。Xは、特に上司である事務長との確執があって意思の疎通を欠いていたところ、Xが必要のない残業を行っていたとは言わないまでも、両者間で業務に関する十分な打ち合わせがなされていれば、そこまで長期間の残業を行う必要性はなかった可能性も高い。
さらに、Y社は、品川労働基準監督署監督官の調査を受けた際にも、Xが管理監督者であるとの認識を示し、
同監督署監督官も一応の理解を示していた

このような事情を総合的にみると、Y社の時間外・深夜・休日手当の不払が付加金の支払を命ずる必要があるといえる程度に悪質であるとはいえない。したがって、本件においては、Y社に対し付加金の支払いを命じないこととする。

本件では、懲戒解雇が有効であると判断されました。

Y社側が提示したXの懲戒事由は多岐にわたりますが、数が多いから懲戒解雇が有効になるというわけではありません。

軽微な懲戒事由をたくさんかき集めても、解雇は有効にはなりません。

また、本件では、300万円以上の未払残業代の支払を命じました。

Y社は明確に残業をするように命じていませんが、黙示の業務命令に基づくものであると認定されています。

会社が、従業員の残業を認識していながら禁止していないと、黙示の業務命令と判断される可能性があります。

付加金については、諸事情を考慮して、今回はなしとなりました。

ラッキーでしたね。

仮に付加金の支払いを命じられても、Y社とすれば、控訴して、その間に、未払残業代を全額支払えば、付加金の支払は免れられます。

付加金の支払いを命じられたら、とりあえず控訴することをおすすめします。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。