労災48(富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ事件)

おはようございます 

昨夜は、原発問題についての勉強会の後、フェイスブックでいつもお世話になっている先輩弁護士のI先生と偶然お会いし、一緒にお食事をしました I先生、ご馳走様でした。 今後ともよろしくお願いいたします。

料理の写真、撮るの忘れた・・・

今日は、午前中、遺産分割調停が入っています。

午後は、建物明渡しに関する民事調停、労働事件に関する裁判が入っています。

夜は、事務所スタッフの誕生日会です 

さて、今日は、プログラマーの労災に関する裁判例を見てみましょう。

富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ事件(東京地裁平成23年3月25日・労判1032号65頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピューターソフトウェアの研究・開発、システムインテグレーション・サービスの提供等を目的とする会社である。

Xは、専門学校を卒業後、平成14年4月にY社に雇用され、さまざまなプログラムの作業チームに配属され、プログラム作成、修正、機能確認テスト、画面プログラム作成等の業務に従事していた。

Xは、規模の大きなプロジェクトに配属される前から、継続的に、相当程度長時間に及ぶ時間外労働に従事することを余儀なくされ、上記プロジェクトに配属された平成15年4月には、時間外労働時間が大幅に増加して月100時間以上に達し、同年9月に至るまで、継続的に、相当程度長時間に及ぶ時間外労働に従事せざるを得ず、その間、徹夜の作業や休日出勤もあった。しかしながら、Xの在任中、上記プログラムには全く増員がなかった。

Xは、その後、2度、休業を余儀なくされ、精神疾患の薬物の過量服用を原因とする急性薬物中毒によって死亡した。

【裁判所の判断】

川崎北労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労災保険の危険責任の法理及び「ストレス-脆弱性」理論の趣旨に照らせば、業務の危険性の判断は、当該労働者と同種の平均的な労働者、すなわち、何らかの個体側の脆弱性を有しながらも、当該労働者と職種、職場における立場、経験等の点で同種の者であって、特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準とすべきである。このような意味での平均的労働者にとって、当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷が一般に精神障害を発病させ死亡に至らせる危険性を有しているといえ、特段の業務以外の心理的負荷及び個体側の要因のない場合には、業務と精神障害発病及び死亡との間に相当因果関係が認められると解するのが相当である。
そして、判断指針・改正判断指針は、いずれも精神医学的・心理学的知見を踏まえて作成されており、かつ、労災保険制度の危険責任の法理にもかなうものであり、その作成経緯や内容に照らして不合理なものであるとはいえない。
したがって、基本的には判断指針・改正判断指針を踏まえつつ、当該労働者に関する精神障害発病に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌して、業務と精神障害発病との間の相当因果関係を判断するのが相当である
なお、改正判断指針は、処分行政庁による本件処分時には存在しなかったものであるが、判断指針・改正判断指針は、いずれも裁判所による行政処分の違法性に関する判断を直接拘束する性質のものではないから、当裁判所は、判断指針のみならず、改正判断指針に示された事項をも考慮しつつ、総合的に本件処分の違法性を検討するものとする

2 被告は、Xの発病した精神障害を原因として必ず過量服薬の傾向が生じるわけではないし、Xが、処方されていない薬物を自ら入手してまで服用したり、処方された薬物を過剰に所持したりしていた上、産業医のほか、主治医の指導にもかかわらず、過量服薬を継続して、時には入院治療を勧められながらもこれを拒否して自ら適切な治療の機会を逸したことなどの諸事情によれば、Xの過量服薬は、X個人のパーソナリティを原因とするものであると解すべきであり、Xの発病した精神障害と過量服薬による死亡との間には、相当因果関係が認められないと主張する。
しかし、本件全証拠をもってしても、Xに発病した精神障害以外に過量服薬の原因となるような疾病の存在はうかがわれないし、被告主張に係るXのパーソナリティがその過量服薬の傾向に如何なる機序で影響を及ぼしているかについての医学的知見は存在せず、必ずしも明らかになっているとはいえないといわなければならない。そして、これまで判示してきたところによれば、Xが、自らに発病した精神障害の症状としての睡眠障害や希死念慮等に苦しみながら、その影響かにおいて薬物依存傾向を示すようになり、過量服薬の結果、死亡するに至った経緯が認められるのであるから、精神障害の発病と過量服薬の結果としての死亡との間に、法的にみて労災補償を認めるのを相当とする関係(相当因果関係)を肯定することができるというべきである

事案が少し特殊ですが、裁判所の判断方法としては、オーソドックスなものだと思います。

解雇59(萬世閣(顧問契約解除)事件

おはようございます。

さて、今日は、調理部長に対する執行役員からの解任、顧問契約解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

萬世閣(顧問契約解除)事件(札幌地裁平成23年4月25日・労判1032号52頁)

【事案の概要】

Y社は、温泉旅館業を営む会社である。

Xは、昭和45年、Y社に調理職として採用され、調理長等を経て、平成8年2月頃、Y社の取締役に就任するともに、Y社における総調理部長に任命された。

Xは、平成14年12月頃、取締役を解任され、常務執行役員となり、さらに、平成18年9月、執行役員を解任され、調理部顧問に配属された。

Xは、職務として調理人の手伝いや自動車の移動、テラスの鉢植えの花の手入れなども行うようになった。その後、Xは、Y社就業規則に定める定年年齢(60歳)となった。

Xは、平成20年10月、他の顧問とともに、Y社における長時間労働や時間外手当の不支給等を労基署に申告し、これを受けて、労基署がY社に立入検査を行った。

Y社は、Xに対し、退職についての話をし、その後、顧問契約を解除する旨記載された書面を送達し、以後Xの就労を拒んだ。

Xは、顧問契約の解除は、解雇権の濫用であり無効である等と主張し、争った。

【裁判所の判断】

解雇は無効

解雇は不法行為にあたるとして、慰謝料40万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 (1)Xは、昭和46年から、洞爺湖萬世閣調理部長として、洞爺湖萬世閣のみならず、登別萬世閣の各調理部門の調理全般及び原価計算、メイド管理等の統括業務に当たっていたこと、(2)Xは、平成8年2月、Y社の取締役に任じられると同時に、総調理部長となり、従前担当してきた洞爺湖萬世閣及び登別萬世閣に加え、定山渓ミリオーネの各調理部門の総括に当たるようになったこと、(3)Xは、取締役に就任後も、Y社取締役会には1回しか出席したことがなく、その職務内容は、その担当に定山渓ミリオーネや企画商品の打合せ等が加わったほかは、基本的に従前と変わりがなかったこと、(4)取締役在任中、Xは、Y社から給与を支給され、雇用保険に加入しているものとして、その保険料を控除されていたことが認められる。そして、Xが取締役に就任すると同時に従業員としての退職の意思表示をしたか、Y社と退職の合意をしたという事情もうかがわれないのであるあから、Xは、平成8年2月にY社の常務取締役に就任後も、従前の労働契約を維持したままであり、取締役であるとともに使用人たる地位も兼任していたものと認められる

2 これまでY社の常務執行役員として名目だけにせよその経営陣に名を連ね、洞爺湖萬世閣、登別萬世閣及び定山渓ミリオーネの各調理部門の調理部長や調理長に指示を下すべき立場にあったのに、あからさまではないにせよ、今度は一介の調理人同然に補助業務をすることとなり、その他雑務も指示されたというのであって、これは左遷ないし降格と受け取られる人事異動といい得ること等に照らすと、これが不利益処分という性質を有することは否定できないのであって、前記のようにA執行役員をY社代表取締役の後継者とするためにXを執行役員から解任するという動機は正当な理由とはいえないから、かかる人事上の不利益処分は、故意にXの名誉ないし社会的評価を傷付けた違法なものとして不法行為を構成するというべきである

3 Xは、Y社との労働契約に基づき、その常務執行役員に就任したものであるところ、Xが、洞爺湖萬世閣調理部顧問に配属されるに当たって、退職の意向を示したとか、退職の合意をしたなどとうかがわせる事情は何もなく、退職金が支払われたなどといった事情もないのであるから、Xを洞爺湖萬世閣調理部門に配属させたのも従前の労働契約に基づくものというべきである
そして、Xの職務の性質に加え、平成20年3月31日当時、洞爺湖萬世閣には定年である60歳を超えて雇用される者が多数いたこと、Xの給与が42万円から30万円に引き下げられたのは、Xが定年に達した平成20年2月ではなく、同年4月分の給与からであること等に加え、Y社代表取締役がXを65歳になるまで使用することを考慮している旨伝えたこと等に照らすと、上記労働契約については少なくとも60歳の定年後もXの雇用を継続する旨の合意がされていたというべきである

この事件、原告側にいっぱい弁護士がついています。合計27人。

実働は何人なんでしょうか?

判決を読み込んで、両当事者がどのような主張、反論を繰り広げているかを見ていくと、勉強になります。

被告側の主張を見てみると、実際のところ、原告に不利な事情もいくつか散見されますが、そこは、総合判断ですので、多少、不利な事情があっても、トータルでは原告の主張が認められるのだと思います。

被告側は、控訴していますが、どうなったのでしょうか。 和解で終わったのかしら。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介17 マーケターの知らない「95%」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日も、本の紹介です。
マーケターの知らない「95%」  消費者の「買いたい!」を作り出す実践脳科学
マーケターの知らない「95%」  消費者の「買いたい!」を作り出す実践脳科学

なんだかよくわからない題名です。

移動時間の暇つぶしのつもりで買いました。 下田の裁判所への行き帰りで読みました。

なんやかんや脳科学から分析しています。 とても真似できません。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

感情は、脳が大量の情報を思い出すための手段である。つまり、自動車やパソコンのように多くの情報を処理する必要のある複雑な買い物でも、最終的な判断は感情に負うところが大きいということだ。」(226頁)

顧客の感情を理解し、購入する際のさまざまな不安を1つ1つ取り除く。

単なる合理主義では、「人間がわかっていないね。」ということで終わってしまいます。

自分で「絶対に売れる!!」と思っていても、実際に売れないことはよくあります。

そんなとき、「この商品(サービス)のよさがわからないのか!」と嘆いても何の解決にもなりません。

これは、「不景気だから客が減った。」「弁護士の人数が増えたから依頼者が減った。」と嘆いている居酒屋の店長や弁護士と同じです。

そんなことが本質的な問題ではないのに・・・。

不景気、不景気と言いながら、いつも満席で予約しないと入れないお店は、なんで繁盛しているのでしょうか。

すべてのサービス業で共通しているのは、お客様が望んでいることを理解することから始まるのだと信じています。

本の紹介16 あなたの会社の評判を守る法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。

あなたの会社の評判を守る法 (講談社現代新書)
あなたの会社の評判を守る法 (講談社現代新書)

ちょっと前の本です。

これまで起こった会社の不祥事を例に挙げて、「この対応がまずかった」「こうすべきだった」と解説しています。

セミナーのネタ探しで読み返してみました。

この本で「いいね!」と思ったのは、こちら。

法律による規制や罰則、消費者団体からの指摘行動は、牽制・抑止力として機能しています。しかしいちばん大切なことは、企業(人)がみずから納得して意識改革することです。」(239頁)

当然といえば当然のことです。

会社のトップ、従業員全員が納得して体質改善に着手しない限り、「やらされている感」が出てしまいます。

「形だけやっていればいいんでしょ」という感じがにじみ出てしまうわけです。

結局は、経営者次第なんですけどね。

言うのは簡単ですが、これまでの体質を改善するというのは、非常に大変です。

必ず反対する者も出てきます。

こういう場合、反対する者は、もっともらしい理由を主張しますが、本心は、「面倒くさい」と思っているだけです。

非常時には、民主主義的な発想は捨てましょう。

経営者が独断で迅速な判断をし、実行に移しましょう。

決断、実行の遅さは、経営者として致命的だと、僕は思います。

派遣労働6(パナソニックエコシステムズ(派遣労働)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否、更新拒絶に関する裁判例を見てみましょう。

パナソニックエコシステムズ(派遣労働)事件(名古屋地裁平成23年4月28日・労判1032号19頁)

【事案の概要】

Y社は、空調機器、環境機器等の開発・製造・販売などを目的とする会社である。

Xは、派遣会社B社からY社に派遣労働者として派遣される形式で就労していたが、Xは、平成21年3月末をもって、雇止めされた。

Xは、Xの雇用主は実質的にはY社であり、Y社との間で黙示の労働契約が期間の定めのないものとして成立していたものであり、雇止めの実質的主体もY社であるところ、Y社によるXの雇止めは解雇権の濫用であって解雇権の濫用であって解雇は無効であるとして、Y社に対して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた。

【裁判所の判断】

Y社との黙示の雇用契約の成立は否定

Y社に対して信義則違反の不法行為に対する慰謝料として100万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 XのY社における就労は、A社を雇用主としていた当初は、偽装請負にあったが実態は労働者派遣であったものであり、仮に、Xの従事する業務が専門26業務にあたらないとした場合には、労働者派遣法上の派遣受入可能期間の制限に違反するという違法なものとなるけれども、本件全証拠を総合しても、XとY社との間に黙示の雇用契約が成立するといえる事情は、いまだ認めるに足りないというべきである

2 XとY社との間に黙示の雇用契約の成立が認められないのは、前記のとおりであり、Xが、B社から雇止めにされたことについて、Y社に対し、雇用主であることを前提として解雇権の濫用であるとして法的責任を問うことは認められないというべきである。

3 Xは、平成16年8月に就業を開始して以降、複雑で高度に専門的な業務に習熟を重ね、作業標準書を作成し、それがマニュアルとして用いられるまでになり、当該業務の担当者としては、Y社の正社員を含め、自己に代わる人材が他にいないほどの重要な人材になり、Y社における上司からも厚い信頼を得て、頼りにされていたことや、・・・雇用の継続に配慮してくれており、自己に関して、これまで一度としてY社が近い将来におけて派遣を終了させる意向を有しているといったことを示唆されるようなことがなかったことなどから、Y社への派遣が近い将来打切りになるとは予想もしておらず、B社との間で平成20年11月に雇用期間を平成21年3月末までとする雇用契約を締結した際においてもまさか同日をもってY社への派遣が終了し、雇止めになることがあるということは思いもよらず、Xは、同年4月以降も当然派遣が継続すると考え、勤務に励んでいた。
それにもかかわらず、Xは、平成20年12月、上司から、他の部署から移籍してきた正社員に対し、Xが休んだときに困るのでXが行っている業務内容のすべてを教えるように指示され、Xがその指示に従って、自己がそれまでの勤務で培った知識、経験、ノウハウのすべてをその正社員に伝授し、自己の代わりが務まる人材として育成したところ、更新期間のわずか1か月前になって、突然あたかも騙し討ちのようにXを狙い撃ちにして派遣打切りを通告され、派遣元から解雇されるに至ったものであること、・・・が認められるのであり、かかるY社のXに対する仕打ちは、いかにY社が法的に雇用主の立場にないとはいえ、著しく信義にもとるものであり、ただでさえ不安定な地位にある派遣労働者としての勤労生活を著しく脅かすものであって、派遣先として信義則違反の不法行為が成立というべきである

4 なるほど、労働者派遣においては、派遣元が雇用主として派遣労働者に対して雇用契約上の契約責任を負うものであり、派遣先においては派遣労働者に対して契約上の責任を負うものではないけれども、派遣労働者を受け入れ、就労させるにおいては、労働者派遣法上の規制を遵守するとともに、その指揮命令の下に労働させることにより形成される社会的接触関係に基づいて派遣労働者に対し信義誠実の原則に則って対応すべき条理上の義務があるというべきであり、ただでさえ雇用の継続性において不安定な地位に置かれている派遣労働者に対し、その勤労生活を著しく脅かすような著しく信義にもとる行為が認められるときには、不法行為責任を負うと解するのが相当である

5 しかして、Xは、Y社の派遣先としての上記信義則違反の不法行為により、派遣労働者としての勤労生活を著しく脅かされ、多大な精神的苦痛を被ったことが認められるところ、かかる精神的苦痛を慰藉するには、100万円が相当である。

派遣先会社との黙示の雇用契約の成否に関しては、従前通り、否定されてました。

これに対して、派遣先会社の派遣労働者に対する不法行為責任は肯定されました。

派遣先会社の不法行為責任は、黙示の雇用契約の成否に比べて、認められやすい傾向にあります。

派遣労働者側とすれば、派遣先会社の不法行為責任追及の際に、大変参考になる裁判例です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介15 「正しいこと」をする技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する
超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する

「超一流」の弁護士が書いた本です。

単なるマニュアル本ではありません。 

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

良質なサービスの提供をないがしろにしていると、最終的には必ずといってよいほど法令違反が起きます。サービスとコンプライアンス、この2つはものすごく密接な関係があることに気づきましょう。」(52頁)

一見、サービスとコンプライアンスは関連性があまりないように思えるのですが、そうではないのですよ、ということです。

また、「法律に違反してるかしてないかという話ではなく、消費者との信頼関係を破ったか破ってないかが重要」(49頁)とも言います。 これもサービスの話ですね。

「顧客の信頼を裏切らない」というのは、どの仕事にもあてはまります。

自分の利益の追求だけでは、いい仕事はできません。

私の目標は、他の弁護士の追随を許さない程の圧倒的なサービスを提供していくことです。

まだまだ目標達成には程遠いですが、5年以内に達成することを目標とします。

解雇58(NTT東日本(出張旅費不正請求)事件

おはようございます。

さて、今日は、出張旅費不正請求と懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

NTT東日本(出張旅費不正請求事件)(東京地裁平成23年3月25日・労判1032号91頁)

【事案の概要】

Y社は、電話等の事業会社である。

Xは、昭和57年4月、Y社に入社し、その後関連会社に出向して、営業担当の課長代理を務めていた。

Y社は、平成20年5月、Xに対し、Xが日帰出張旅費を不正に請求して私的流用をしたという理由で懲戒解雇処分をした。

なお、Xは、Y社に対し、旅費を申請して受給しており、平成16年4月から平成19年9月までの42か月間に、171万2560円の旅費を申請し受給した。

Xは、本件懲戒解雇について、旅費を不正に請求して私的流用をしたことはなく懲戒事由が存在しないこと、弁明の機会を一切与えられずに私的流用の事実の自白を強要されたことなどから無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、トップクラスの営業成績を上げて、Y社の利益によく貢献しており、そのために相当の努力を重ねていたものと考えられる。その努力のひとつとして、Xは、顧客を訪問する際、いつも当該顧客に関する資料が整理されたキングファイルを携行していたが、これは非常に分厚く重いものであったから、1日に複数の顧客を訪問する場合、オフィスと各顧客との間をそれぞれ往復する必要があったと主張する
しかし、通信機器販売の営業活動にはさまざまな段階や場面があるはずであり、いつも分厚く重いキングファイルを携行して各顧客との間を往復する必要があったなどというのは、それ自体説得力に乏しいものといわざるを得ない。G証人の陳述書の記述や法廷での証言には、Xが顧客との間を頻繁に往復していたという部分があるが、この証言等に裏付けはないし、そもそも、Xの主張は、単に携行したことを強調するだけで、ファイルを顧客先でどのように活用したかなど、携行の目的や効果について説明をしておらず、合理的なものとはいえない

2 Xは、70万円を上回る額の旅費の過大請求をして、その私的流用をしたものと認めることができる。この行為は、就業規則76条1号、7号、11号に該当するものというべきである。したがって、本件懲戒解雇は、懲戒事由の存在が認められる

3 認定事実によれば、Xは、始末書や旅費請求の内訳の作成過程を通じて、私的流用をしたか否か、営業上の費用の額はいくらか、その内訳はどのようなものかなどについて、弁明の機会を付与されていたことが明らかである。
Xは、J課長がXに対し、事実を認めて謝罪しなければ懲戒解雇になると脅したり、始末書を提出すれば処分が軽くなるなどという利益誘導をしたりして、旅費の私的流用の自白を強要し、その旨の始末書を提出させたなどと主張するが、このような事実を認めるべき証拠はない

上記判例のポイント1の事実認定は、原告側にとっては納得のいかないものでしょう。

原告は控訴しています。

一般的に、経費の私的流用に対する処分は重くなります。 犯罪なので。

会社とすれば、しっかりとした調査と適正な手続をとることに留意する必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介14 こうして会社を強くする(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
こうして会社を強くする (PHPビジネス新書)
こうして会社を強くする (PHPビジネス新書)

稲盛さんの本です。 盛和塾事務局が編集したもののようです。

塾の参加されているみなさんと稲盛さんとの経営問答がまとめられています。

この本の中で「いいね!」と思ったのはこちら。

経営12ヵ条

第1条 事業の目的、意義を明確にする

公明正大で大義名分のある高い目的を立てる

第2条 具体的な目標を立てる

立てた目標は常に社員と共有する

第3条 強烈な願望を心に抱く

潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと

第4条 誰にも負けない努力をする

地味な仕事を一歩一歩堅実に、弛まぬ努力を続ける

第5条 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える

入るを量って、出ずるを制する。利益を追うのではない。利益は後からついてくる

第6条 値決めは経営

値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である

第7条 経営は強い意志で決まる

経営には岩をもうがつ強い意志が必要

第8条 燃える闘魂

経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要

第9条 勇気をもって事に当たる

卑怯な振る舞いがあってはならない

第10条 常に創造的な仕事をする

今日よりは明日、明日よりは明後日と、常に改良改善を絶え間なく続ける。創意工夫を重ねる

第11条 思いやりの心で誠実に

商いには相手がある。相手を含めて、ハッピーであること。皆が喜ぶこと

第12条 常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で」(215頁)

こういう直球勝負、大好きです。

法律事務所を経営する上でも、本当に参考になります。

壁に貼っておきます。

賃金38(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件)

おはようございます。

さて、今日は、料理人の賃金減額と割増賃金に関する裁判例を見てみましょう。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌地裁平成23年5月20日・労判1031号81頁)

【事案の概要】

Y社は、北海道の洞爺湖近くで「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」を経営する会社である。

Xは、平成19年2月、Y社との間で労働契約を締結し、平成21年4月までの間、本件ホテルで料理人又はパティシエとして就労していた。

Y社は、Xの賃金を減額した。

Xは、賃金減額が不当である旨の抗議などはせず、文句を言わないで支払わせる賃金を受領していたところ、平成20年4月になって、Y社から、労働条件確認書に署名押印するよう求められた。

Xは、この書面に署名押印し、会社に提出した。

Y社は、その後、さらに賃金減額の提示をした。

Xは、長時間残業をさせているのに残業代も支払わず、一方的に賃金を切り下げようとするY社の労務管理のあり方に強い反発を覚え、平成21年4月をもってY社を退職した。

【裁判所の判断】

賃金減額は無効

【判例のポイント】

1 賃金減額の説明を受けた労働者が、無下に賃金減額を拒否して経営側に楯突く人物として不評を買ったりしないよう、その場では当たり障りのない返事をしておくことは往々にしてあり得ることである。しかし、実際には、賃金は、労働条件の中でも最重要事項であり、賃金減額は労働者の生活を直撃する重大事であるから、二つ返事で軽々に承諾できることではないのである。そのようなことは、多くの事業経営者がよく知るところであり、したがって、通常は(労務管理に腐心している企業では必ずと言って良いくらい)、賃金減額の合意は書面を取り交わして行われるのである。逆に言えば、口頭での遣り取りから、賃金減額に対する労働者の確定的な同意を認定することについては慎重でなければならないということである。
Xが供述する程度の返事は「会社の説明は良く分かった」という程度の重みのものと考えるべきであり、この程度の返事がされたからといって、年額にして120万円もの賃金減額にXが同意した事実を認定すべきではないと思料する。

2 なお、Y社が、平成19年6月支払分から平成20年4月支払分までの11か月間、甲第11号証に記載の賃金しか支払っておらず、Xがこれに対し明示的な抗議をしていないことも事実であるが、そういう事実があるということから、Xが平成19年4月時点で賃金減額に同意していた事実を推認することもできない。
なぜなら、まず、平成年4月支払分の賃金額をみる限り、Y社には、労働者が同意しようがしまいが、賃金減額を提案した以上、以後、自ら提案した減額後の賃金しか支払わないとの方針で労務管理を行なっている事実がうかがわれる。そうすると、賃金減額に対するXの同意があったからこそ平成19年6月支払分から減額後の賃金が支払われていたのだろうとの推認を働かせることは困難である

3 また、賃金減額に不服がある労働者が減額前の賃金を獲得するためには、職場での軋轢も覚悟の上で、労働組合があれば労働組合に相談し、最終的には裁判手続に訴える必要があるが、そんなことをするくらいなら賃金減額に文句を言わないで済ませるということも往々にしてあることであり、そうだとすれば、文句を言わずに減額後の賃金を11か月間受け取っていたという事実から、経験則により、Xが賃金減額に同意していたのであろうとすることも困難である。

非常に参考になる裁判例ですね。

労働条件と不利益変更の論点における労働者の同意については、裁判所は慎重に判断しますので注意が必要です。

不利益変更事案は、合理性の判断がいつも悩ましいですね。顧問弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。

本の紹介13 プロの論理力!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
プロの論理力! トップ弁護士に学ぶ、相手を納得させる技術 (祥伝社黄金文庫)
プロの論理力! トップ弁護士に学ぶ、相手を納得させる技術 (祥伝社黄金文庫)

懐かしい本ですが、文庫本になり、内容も若干追加されました。

沖縄に行く飛行機の中で読みました。

好き嫌いは分かれると思いますが、僕はこの本、好きです。

この本の中で「いいね!」と思ったのは、こちら。

どんなに論理力を鍛えても、野心のない弁護士には、前例を打ち破るような仕事はできない。そもそも、野心に欠ける人間には、自分であえて高いハードルを設定することができないだろう。平均点の仕事で満足できる人間は、いつまでたっても平均点を取りつづける。そういうものだと思う。」(48頁)

ここで書かれていることは、弁護士に限ったことではないと思います。

すべての仕事とは言いませんが、職務上、裁量が与えられており、自分の気持ち(「野心」)次第で仕事のやり方を自由に変えられる場合にはあてはまると思います。

私も、仕事をしていて、単なる論理力では乗り越えられない壁が存在することは感じます。

もっと上に行きたい、もっといい仕事をしたいといった「野心」がないと、仕事への情熱が持続しないのではないかな、と思っています。

まだ、私は、弁護士になって3年です。 

「野心」を持って仕事をしていることは自分でよくわかります。

これが、年齢が上がっていき、経験も豊富になってきたときに、今と同じような「野心」を持ち続けられているか。

10年後、20年後、今と同じように「野心」を持って、ばりばり仕事をしているか。

「野心」をなくしたら、引退しようと思います。