退職勧奨18 上司の退職強要・人格否定と損害賠償責任(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、上司らの退職強要発言等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

東武バス日光事件(宇都宮地裁令和2年10月21日・労判ジャーナル107号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y1社の正社員であるXが、その余のY2らから退職強要や人格否定、過少な要求というパワーハラスメントを受けたとして、Y2らに対して共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、Y社に対して使用者責任による損害賠償請求権に基づき、慰謝料200万円、弁護士費用20万円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社らは、Xに対し、連帯して66万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件侮蔑的表現が、職責、上司と労働者との関係、指導の必要性、指導の行われた際の具体的状況、当該指導における言辞の内容・態様、頻度等に照らして、社会通念上許容される業務上の指導を超えて、過重な心理的負担を与えたといえる場合には、違法なものとして不法行為に当たるというべきである。

2 上司であるY2がX自身を「チンピラ」「雑魚」と呼称した部分については、行動に対する指導との関連性が希薄で、発言内容そのものがXを侮蔑するものであり、発言の態様や、その後Xが傷病休暇を取得してうつ状態と診断されたこと等も併せて考慮すれば、社会通念上許容される業務上の指導を越えて、過重な心理的負担を与えたといえるから、違法なものとして不法行為に当たる。

3 Y2らの一連の発言や指示は、Xの問題行動にも一因があるといえるものの、他方、特に本件退職強要発言は悪質性が強いといえることや、それにもかかわらずY社らが違法との評価を否定していること、Xが、Y2らの共同不法行為の後、うつ状態になったと診断されていること等に鑑みると、慰謝料の額として60万円が相当である。

慰謝料の金額よりもレピュテーションダメージを考えなければなりません。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1161 投資の大原則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

タイトルのとおり、テクニカルな話は一切なく、まさに投資の「大原則」が書かれています。

極めてシンプルな原則であるため、誰でも行うことができます。

基本や原理原則が大事だということがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事でもスポーツでも人間が何かを成し遂げようとするときに成功の鍵となるのは、忍耐力、努力の継続、そしてミスを最小限にとどめること。」(111頁)

記載のとおり、忍耐力、努力の継続、ミスの最小化は投資にとどまらずあらゆることの成功の鍵です。

途中で投げ出さず、やり続けることさえできれば、たいていのことは成功します。

と、頭でわかっていても体が言うことを聞かないのです。

そのくらい続けることは難しいのです。

逆に言えば、だからこそ続けることさえできれば、たいていのことはうまくいくのです。

労働者性35 運転代行ドライバーの労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、運転代行業に従事するドライバーの労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

日本代行事件(大阪地裁令和2年12月11日・労判ジャーナル109号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運営する運転代行業務に従事していたXらが、XらとY社との契約が雇用契約であるとの前提に立った上で、Xらが時間外労働を行ったとして、雇用契約に基づく割増賃金+遅延損害金、付加金の支払を求めるとともに、Y社が支払の際に、「共済会領収書」、「値引平日」、「クリーニング代」、「事故修理代等」の名目で控除したことが賠償予定の禁止に抵触する、賃金の全額払いの原則に反するとして、雇用契約に基づきその支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社においては、Xらを含むドライバーは、毎週木曜日までに翌週の出社予定について、定型の書式を用いて、各日ごとに「出社」、「連絡」、「休み」の三種類から選択して記入するという方法で連絡することになっていたところ、かかる体制から明らかなとおり、ドライバーは、出社する日を自由な意思で決定することができるとされていたものであり、Xらが出社を希望したにもかかわらず、被告から出社を拒否されたあるいはXらの意思に反して出社を命じられたというような事情はうかがわれない(このことは、Xらが「連絡」として届け出た日について、Y社から出社の打診があった場合についても同様であるといえる。)。
また、Y社においては、ドライバーのほかにオペレーター部、ビル管理部、経理部及びインターネット事業部所属の従業員がいるところ、同従業員はタイムカードを打刻することとされているのに対し、Xらを含むドライバーはタイムカードを打刻することとされていない
そうすると、Xらを含むドライバーは出社するか否かを自らの意思で自由に決定することができていたものであり、また、労働時間も把握されていなかったものであるから、勤務日・勤務時間について拘束されていなかったということができる。
また、Xらを含むドライバーは、番号札を取ったり、運転代行業務に使用する車両を手に入れるため最初に被告事務所に赴く必要があるが、その後は、Y社の事務所で待機して打診を待つことも、歓楽街等で打診を待つことも自由であったのだから(歓楽街で待機していれば、周囲の飲食店で飲酒して出てきた酔客から、直接代行業務の申込みを受けることが可能となり、番号札の順番に従って打診を受けるより早く代行業務に従事することもあり得るから、歓楽街で待機するということもあり得るといえる。)、勤務場所についても拘束されていなかったということができる。
Xらを含む各ドライバーはY社からの打診を受けて運転代行業務に従事するところ、どのような経路で顧客の指定する場所まで赴くか、運転代行業務終了後、どこで待機するか、待機場所まで戻る際に高速道路を使用するか否かなどは各ドライバーが自由に決めていたものである。
そうすると、運転代行という業務の遂行方法について、Y社から各ドライバーに対する個別具体的な指示はなされていなかったということができる。
Xらを含むドライバーが出社日を自由に決定することができていたことからすれば、Xらを含むドライバーはある日について業務を受けるか否かの諾否の自由を有していたといえる。
また、一般のドライバーではなく、Y社の本部長であるBがドライバーとして運転業務に従事したことがあるところ、Y社が、個々のドライバーに対して、具体的な個別の運転代行業務に従事することを命じることができるのであれば、「本部長」という高位の役職にあることがうかがわれるBを運転代行業務に従事させる必要はなく、ドライバーに命じて従事させれば足りるといえる。
それにもかかわらず、Bが運転代行業務に従事しているのは、Y社においては、Xらを含むドライバーが、Y社の営業時間内であっても、各ドライバーの事情(例えば、Y社での業務が副業であった場合、本業の出勤時間との兼ね合いなどが想定される。)から、一定の時間になれば自らの意思で以降の運転代行業務に従事しないこととするなどという諾否の自由を有していたからであることがうかがわれる。

2 Y社が、Xらを含むドライバーに対して支払う報酬は、運転代行業務の売上額に応じてその金額が決まる完全歩合制となっていたものであるから、労務提供時間の長さとは無関係なものであったといえる。そうすると、Xらが支払を受ける報酬は、労務対償性が弱かったことになる。
また、Y社は、各ドライバーに報酬を支払うにあたって、社会保険料及び公租公課の控除を行っておらず、事務室の談話室のトイレ横に紙を貼って、運送業一人親方特別加入を案内したり、確定申告の相談窓口として、税理士事務所を紹介するなどしているところ、これらの事情も報酬の労務対償性がなかったことをうかがわせる事情であるといえる。
Y社の営業時間が午後8時から午前4時という夜間であったこと、Y社が求人情報サイトに掲載していた情報においても「Wワークの方も歓迎」とされていたことからすれば、Y社で運転代行業務に従事するドライバーは、副業として従事している者が多かったことがうかがわれ、そうであれば、Y社で運転代行業務に従事していたドライバーには専属性がなかったことになる。

3 以上を総合考慮すれば、本件において、Xらが、Y社の指揮命令に従って労務を提供していたと評価することはできないから、XらとY社との契約が雇用契約であったということはできない。

非常に参考になる裁判例です。

裁判所がどのような要素を考慮して労働者性を判断しているのか理解しておきましょう。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1160 妄想する頭 思考する手(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、東京大学大学院教授・ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長の方で、これまでに世の中に存在しなかった新しい技術を生み出すことが仕事だそうです。

新しいモノを生み出す方法が書かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

本当にイノベーションを起こしたいなら、『こうあらねばならない』的な真面目路線のほかに、『非真面目』な路線を確保することが必要だと私は思う。・・・役に立つかどうかよくわからないアイデアでも、とりあえずやってみる。それが、妄想に寛容な社会だ。・・・与えられた問題の正解を模索するだけでは、真面目一辺倒の社会になってしまう。それによって社会全体に悲壮感のようなものが漂っているのが、今の日本ではないだろうか。」(229頁)

日本は寛容でない国であるため、真面目であること、失敗しないことが過度に重視されています。

芸能人や政治家のスキャンダルがその典型ではないでしょうか。

テレビ番組がどんどんつまらなくなるのは当然の流れです。

テレビを見なくなる理由がよくわかります。

そりゃ多くの芸能人がユーチューバーに転身するわけですよ。

賃金209 警備員の待機時間は労働時間?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、警備員の待機時間の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

東雲事件(大阪地裁令和2年12月22日・労判ジャーナル109号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として警備業務に従事していたXが、Y社に対し、①未払の割増賃金として、別紙原告金額シートの「割増賃金未払額」欄記載の額の合計697万3488円+遅延損害金の支払、②労働基準法114条に基づく付加金として697万3488円+遅延損害金の支払、③Y社がXから修繕費名目で差し引いたことが無効であるとして、未払賃金請求、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として60万3186円+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、289万1450円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、付加金289万1450円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、60万3186円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 原告を含む各警備員は,報告書の作成のほかは,被告から待機時間中に行うべき特段の業務を指示されておらず,交通事故,倒木等が発生するなどの連絡を受けた場合には現場に向かうこととなっていたものの,午後11時30分から午前5時までの5時間30分の仮眠時間において実際に業務に従事することはほとんどなく,私服に着替えて仮眠を取っており,午後零時30分から午後4時まで及び午後6時30分から午後8時までの合計5時間の待機時間中についても,連絡を受けることは月1回程度しかなく,各警備員は,食事を取ったり,新聞を読んだりするなどして過ごしていたものであって,これらの事情によれば,午後11時30分から午前5時までの仮眠時間帯だけでなく,午後零時30分から午後4時まで及び午後6時30分から午後8時までの合計5時間の待機時間帯についても,労働から解放されており,基本的に休憩時間とみるのが相当である。

2 本件全証拠によっても,平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間において,原告が午後11時30分から午前5時までの仮眠時間帯に作業に従事したことを認めるに足りる証拠はない。一方で,原告は,午後零時30分から午後4時まで及び午後6時30分から午後8時までの合計5時間の待機時間帯において,報告書の作成に加え,他の警備員作成のものを含めて報告書の整理を行っていたほか,月1回程度は連絡を受けて対応に当たっていたものであり,これらの事情によれば,原告は,平均して1日1時間の限度で,労務に従事していたものと推認するのが相当であって,この認定を左右するに足りる他の証拠はない。なお,始業時刻である午前8時30分から午前9時までは制服への着替え等の準備作業を,終業時刻が午後5時30分である場合の午後4時から午後5時30分までの間は巡回作業の一部や片づけ等の作業を,終業時刻が午前8時30分である場合の午前8時から午前8時30分までの間は片づけ等の作業を,それぞれ行っていたものと推認されるから,これらの時間帯は労働時間に当たるというべきである。

警備員の仮眠時間の労働時間性についてはよく裁判で争点となるところです。

労働からの解放を判断する上で、当該時間中の呼び出し頻度が重要な考慮要素となります。

拘束時間の長い職種のため、事前に適切に労務管理をしていないと支払金額が高額になるのが特徴です。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが最も重要です。   

本の紹介1159 なぜ、倒産寸前の水道やがタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

著者が、ビジネスを展開する上で大切だと考えていることが書かれています。

業種を問わず、経営者を目指す人は読んでみるといいと思います。

著者自身もいろいろな人の本を読んで自分のものにしてきたのだろうなと容易に想像できます。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕は自由でいたいと思っている。一度の人生楽しく自由でいたい。他人にとやかく言われたくないし、時間やお金に振り回されたくない。だからこそ、結果にとことんこだわり、社会人として、経営者としての責任を果たすことにこだわっている。口だけ偉そうに言ってても、どれだけ人を羨んだり、時に足を引っ張り、蔑んでも、やるべきことができてなければ、誰も何も与えてはくれない。」(125~126頁)

全く同感。

私を含め、自営業者はたいていこの発想で仕事をしているのではないでしょうか。

安定よりも自由を求める生き方です。

自分のやりたいようにやる。生きたいように生きる。

何かを我慢したり制限されたりすることが窮屈でならないのです。

解雇347 ストーカー行為を理由とする諭旨免職処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、スト―カー行為等を理由とする諭旨免職処分等の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

PwCあらた有限責任監査法人事件(東京地裁令和2年7月2日・労判ジャーナル106号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した労働者であるXが、使用者であるY社に対し、
(1)Y社がXに対してした懲戒処分としての諭旨免職処分、人事権の行使としての降格決定及び普通解雇がいずれも無効であると主張して、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認(請求1項)、②諭旨免職処分が無効であることの確認(請求2項)、③降格決定が無効であることの確認(請求3項)、④降格決定から平成31年2月末をもって普通解雇されるまでの未払賃金(降格決定による減額分)及びこれらに対する遅延損害金の支払(請求4項)、⑤普通解雇の翌月である同年3月から本判決確定の日までの賃金及びこれらに対する遅延損害金の支払(請求5項)、⑥平成30年7月から本判決確定の日までの毎年7月の賞与及びこれらに対する遅延損害金の支払(請求6項)、⑦平成30年12月の未払賞与(降格決定による減額分)及びこれに対する遅延損害金の支払(請求7項)を求めるとともに、
(2)上司らによるパワーハラスメント、降格決定、諭旨免職処分及び女性職員との接触を伴う業務の制限が違法であると主張して、民法709条、715条の不法行為責任又は民法415条の債務不履行責任(職場の環境配慮義務違反)に基づき、慰謝料及びこれに対する遅延損害金の支払(請求8,9項)を求め、
(3)Y社の語学学校費用補助制度を利用できなかったことやY社から裁判期日への出席の際に有給休暇を取得するように指示されたことが違法であると主張して、民法709条の不法行為責任に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払(請求10項,11項)を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社がXに対して平成30年7月1日付けで行ったアソシエイト・ライトからアソシエイト・プライマリーへの降格が無効であることの確認を求める訴えを却下する。
 Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
 Y社がXに対して平成30年5月11日付けで行った諭旨免職の懲戒処分が無効であることを確認する。
 Y社は、Xに対し、平成31年3月から令和2年3月まで、毎月25日限り、36万1640円+遅延損害金を支払え。
 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、Y社から事情聴取を受けた際に、反省の弁を述べる一方で、被害女性が、入院したり、PTSDになったりはしておらず、普通に出勤しているのであるから問題はないのではないかなどといった被害女性への配慮を欠く発言をしていることからすると、Xが、本件ストーカー行為が被害女性に与えた精神的苦痛を十分に理解し、本件ストーカー行為を行ったことについて真に反省していたかは疑わしく、Y社において、Xには本件ストーカー行為を行ったことについて反省の態度が感じられないと判断したこと自体に問題があったとはいえない。
しかしながら、Xには、本件警告を受けた後も被害女性に対するストーカー行為を継続していたといった事情や、他の女性職員に対してストーカー行為に及ぶ具体的危険性があったといった事情までは認められない。また、Xには、本件ストーカー行為が発覚するまでに懲戒処分歴はなく管理職の地位にある者でもない。これらの事情を総合考慮すると、Xが本件ストーカー行為を行ったことについて真に反省していたかが疑わしい点を勘案したとしても、労働者たる地位の喪失につながる本件諭旨免職処分は、重きに失するものであったといわざるを得ない。そうすると、本件諭旨免職処分は、社会通念上相当であるとは認められない場合に当たる。

2 ①XとY社との間で令和元年度の目標設定が合意に至らなかったこと、②Xが、上司らに対し、質問事項を電子メールで繰り返し送信し、電子メールでの回答を要求することにより、上司らの業務に一定の支障が生じたこと、③Xが虚偽の内容を含む電子メールを上司らに送付したこと、④Xは、有給休暇を取得することなく、本件裁判期日に出席したことなどが認められ、これらのXの行為には問題があるといえるが、その内容や頻度、程度等に鑑みると、解雇せざるを得ないほどの重大な事由であるとまでは認めることができない。
以上によれば、Xの業務内容や勤務態度に問題があることは認められるが、すべてを総合考慮したとしても、解雇せざるを得ないほどの重大な事由があると認めることはできず、Xにつき、就業規則36条1項8号の「その他前各一号に準ずるやむを得ない事由があるとき」に該当する事由があるとはいえない。
・・・Xに就業規則所定の解雇事由は認められず、仮に解雇事由に該当する余地があったとしても、Xを解雇せざるを得ないほどの事由があるとまでは認めることができないから、本件普通解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできず、労働契約法16条により、解雇権を濫用したものとして無効である。

いつもながら相当性の判断はとても難しいです。

予見可能性は極めて低いため、訴訟リスクを考えると慎重にならざるを得ません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1158 ロジカル筋トレ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タイトルのとおり、体の構造上、論理的に正しい筋トレを行うことを推奨する本です。

この発想は、決して筋トレに限ったことではありません。

仕事、勉強、運動のあらゆる場面で論理的に考える癖をつけることが大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

毎日ハードな仕事をこなしながら筋トレでメリハリのあるボディをキープしていくには、さまざまなマネジメント力が問われることになる。忙しい中でトレーニング時間を捻出するにはかなりのタイムマネジメント力が必要だし、その時間をつくるには日中のビジネスを段取りよく進行させていくマネジメント力も必要だ。それに、健康体を維持していくには、筋トレだけでなく、日々の食事・睡眠・ストレスなどをしっかり管理してマネジメントしていく力も必要になってくるだろう。」(231頁)

まさにそのとおりです。

ジムに通っている人たちはみんな暇を持て余しているのでしょうか。

決してそんなことはありません。

忙しい中でもジムで体を鍛えるための時間を捻出しているのです。

どのような人生を送るかはすなわち、どのように日々の時間を使うかと同義です。

忙しい、時間がないと嘆いているうちに人生は終わります。

日々の生活をマネジメントできてこそ、自分の人生を送っているといえるのではないでしょうか。

不当労働行為266 限定正社員登用試験不受験の組合執行委員長の雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、限定正社員登用試験を受験しなかった有期雇用の組合執行委員長を雇止めとしたことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

日本コンセントリクスほか1社事件(沖縄県労委令和2年7月9日・労判1236号102頁)

【事案の概要】

本件は、限定正社員登用試験を受験しなかった有期雇用の組合執行委員長を雇止めとしたことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 労働契約法18条は、使用者がいかなる正社員登用制度をとるかについて規制するものではなく、Y1社が上記限定正社員制度を導入したことをもって、労働契約法18条に違反するとか、同条を潜脱する意図によるものであるとはいえない

2 Xは、Y1社による限定正社員登用試験の実施を確知しながら同試験を受けることなく、さらに、Y1社から再試験を希望するか尋ねられた際にも、その希望を示さなかったというのである。
そうだとすると、Y1社が、自らの意思で受験しなかったといえるXについては、合格の判定がされた事実が存在しない以上、同試験に合格したときと規定する本件労働契約の更新事由を充足しないと判断したことには、何ら不当・不合理という余地はない

上記判例のポイント1は非常に重要です。

もっとも、運用を恣意的に行うと不当労働行為となり得ますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1157 「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、産業医・経営コンサルタント・MBA取得者の方です。

これらの肩書からどのような本か推測することができますね。

帯には「良い人材が健全に定着する組織を科学的に作る方法」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人に関心を持ち、マイナス感情を生み出す課題を見つけたとしても、それを解消する施策を考える際、相手がどのような感情を持つのか『想像』できないと、的外れの施策を行ってしまい、新たなマイナス感情を生み出してしまう可能性があります。」(251頁)

著者は、「無関心」と「想像力の欠如」が組織を病に追い込むと主張しています。

いかなる仕事においても「想像力」は必要不可欠な力です。

まさに仕事ができる人とは、想像力のある人と定義づけていいのではないでしょうか。

視野の広さと言ってもいいと思います。

あらゆることについて先を見越した行動がとれる。

こういう人はたいてい何をやってもうまくいきます。