同一労働同一賃金19 無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、無期労働契約転換後の労働者に、正社員の就業規則が適用されるべきとの主張が認められなかった裁判例を見てみましょう。

ハマキョウレックス(無期転換)事件(大阪地裁令和2年11月25日・労経速2439号3頁)

【事案の概要】

本件は、労契法18条1項に基づき有期労働契約から期間の定めのない労働契約に転換したXらが、転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して、Y社に対し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として、無期労働契約に転換した後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額(X1につき9万1012円、X2につき9万3532円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 前訴は、X1とY社との間で、有期の契約社員と正社員との労働条件の相違が労契法20条に違反する場合、当該有期の契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であるのに対し、本件訴訟は、XらとY社との間で、労契法18条に基づく無期転換後の無期契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であることが認められる。
そうすると、本件訴訟は、前訴と争点を異にするものであるから、本件訴訟におけるXらの主張に前訴におけるX1の主張と類似の趣旨のものがあったとしても、本件訴訟が前訴における紛争の実質的な蒸し返しに当たるということはできない。

2 X告らは、Y社の回答が上記のとおりであることを認識した上で、無期転換後の労働条件は契約社員就業規則による旨が明記された無期パート雇用契約書に署名押印してY社に提出しており、XらとY社との間には、無期転換後も契約社員就業規則が適用されることについて明示の合意があるというべきである。

3 Y社において、有期の契約社員と正社員とで職務の内容に違いはないものの、職務の内容及び配置の変更の範囲に関しては、正社員は、出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるほか、等級役職制度が設けられており、職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて、将来、被告の中核を担う人材として登用される可能性があるのに対し、有期の契約社員は、就業場所の変更や出向は予定されておらず、将来、そのような人材として登用されることも予定されていないという違いがあることが認められる。
そして、無期転換の前と後でXらの勤務場所や賃金の定めについて変わるところはないことが認められ、他方でY社が無期転換後のXらに正社員と同様の就業場所の変更や出向及び人材登用を予定していると認めるに足りない。
したがって、無期転換後のXらと正社員との間にも、職務の内容及び配置の変更の範囲に関し、有期の契約社員と正社員との間と同様の違いがあるということができる。
そして、無期転換後のXらと正社員との労働条件の相違も、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じた均衡が保たれている限り、労契法7条の合理性の要件を満たしているということができる。

この裁判例、そのまま読むと、無期転換後の社員と正社員との間においても同一労働同一賃金問題が生じるように読めます。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

ひとまず高裁、最高裁判決を待ちましょう。

本の紹介1151 +1cm(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える」です。

ほんの少し見方や考え方を変えるだけで、今よりも格段に幸せになるというお話です。

かわいらしい絵とともに参考になる考え方がたくさん盛り込まれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一瞬の怒り、一瞬のあやまち、一瞬の動揺、一瞬のあきらめ、一瞬の欲望・・・。
あなたを誘惑する悪魔がやってくるのは、いつもほんのわずかな時間だけ。
けれど、その一瞬を支配されることは全てを支配されることだ。
人は弱く、一瞬に惑わされて多くを失ってしまう。」(152頁)

これらの原因により一瞬にして人生を棒に振ることは意外とよくあります。

なお、これは犯罪行為に限った話ではありません。

一瞬の判断の結果、長期にわたって経済的・精神的な不自由を強いられるあらゆる行為を指します。

本当に一瞬の判断ミスにより莫大な代償を負うことを理解しなければなりません。

大袈裟ではなく、人生設計が大きく狂ってしまうので、気を付けましょう。

不当労働行為265 組合員の人事異動と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員をA郵便局第二集配営業部からB郵便局に人事異動したことが不当労働行為に当たらないとした初審命令が維持された事案を見ていきましょう。

日本郵便(人事異動)事件(中労委令和2年1月22日・労判1234号105頁)

【事案の概要】

本件は、組合員をA郵便局第二集配営業部からB郵便局に人事異動したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Xは勤続年数からみて、28年度の人事異動の対象となる候補者であった。また、B9支社管内における27年度及び28年度の人事異動に関しては、例年とほぼ同じ規模のもので、それぞれ30名又は40名以上の組合役員が異動になっており、そのうち執行委員は各年度20名以上、さらに支部外へ異動になった執行委員は10名以上であった。
このように、定期人事異動の際にX以外の組合の執行委員も多数異動になっていることからみて、会社が、定期人事異動を行うに当たり、対象者が組合の執行委員であることを考慮していることはうかがわれず、Xについてもこれと異なる事情は見いだし難い。
上記によれば、本件人事異動は、業務上の必要性がある上、その人選も不合理なものであったとはいえない。

組合員と非組合員に対する対応を区別していないことが立証できれば、不当労働行為には該当しません。

組合員に対する人事異動については、事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介1150 非常識に生きる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

表紙には「非常識に生きるとは、破天荒であれ、ということではない。誰のものでもない、自分の人生を生きることだ。」と書かれています。

必要なのは「働き方改革」ならぬ「生き方改革」です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

常識とは、あなたの身を守るルールではない。あなたを生きづらく縛り、活力を奪い、『みんなと一緒』の枠組みに押しこめて、偽物の安心感の共有を強いる、ズレた正義だ。」(213頁)

何百回とこのブログで触れてきたテーマです。

この窮屈で窒息しそうな社会において、いかに自由に、好きなように生きていくか。

世間の意味不明な「常識」や「同調圧力」の呪縛から自らを解放できるかどうか。

朝から晩までさまざまなことを我慢し、ノルマに押しつぶされ、気づけば1週間が終わっているような生活のどこが楽しいのでしょうか。

Just be yourself.

You only live once.

不当労働行為264 無許可ビデオ撮影を理由とした解雇と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員3名を、無許可ビデオ撮影等を理由に解雇したことを不当労働行為とした初審命令が維持された事案を見てみましょう。

木村建設事件(中労委令和2年7月1日・労判1234号102頁)

【事案の概要】

本件は、組合員3名を、無許可ビデオ撮影等を理由に解雇したことを不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合は、基本的に、団体交渉を申し入れる際は、動画を撮影する方針で臨んでおり、これは言った言わないという争いになる事態を避けるとともに、組合員の行動に規制をかけるために組合の内部資料として撮影しているとされるものである。この方針の目的に一定の合理性がないとまではいえない

2 7月30日付け申入れ後、会社による不当労働行為が度重なっており、組合員らは、更なる不当労働行為が更なる不当労働行為が行われる可能性のある状況において、これを警戒し、不当労働行為が行われた際の記録を残して自らの身を守ろうと考えて会話の秘密録音を行ったものであり、緊急避難的な対応としてやむを得ないものであったといえる。秘密録音は、会社の業務上の秘密を漏えいさせることを目的としたものではなく、実際に漏えいの事実はなく、そのおそれがあったともいえない。

ここまでこじれてしまうと日常業務もままならない状況ではないでしょうか。

動画撮影や秘密録音の問題に対する対処法は、個々の事案によって異なりますので、顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介1149 パンデミック後の世界 10の教訓(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タイトルのとおり、もう後戻りできない世界が今後、どのように進んでいくのかを知ることができます。

これから凄まじい勢いで世界が変化していくことがわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間は比類なきペースで社会を発展させ、前例のないスピードであらゆる領域へと手を広げている。たとえて言うなら、想像を超えた速度で走るレーシングカーを作り、それに乗って標識もない未知の土地を疾走しているのだ。だが、その車にエアバックを備えるという手間を、私たちは怠ってきた。保険もかけなかった。シートベルトすら装着せずに走ってきた。今やエンジンはだいぶ熱くなっている。」(43~44頁)

いかに非効率を受け入れる社会を作るかを考える必要があります。

便利になればなるほど地球環境に与える影響は大きくなります。

不便だけどサステナブルな生活に受け入れることは、決して後退ではありません。

便利になればなるほど、それが失われたときの不便さは大きくなります。

携帯電話が世の中に普及する前の社会は、今よりも不便だったでしょうか・・・?

インターネットが世の中に誕生する前の社会は、今よりも暮らしにくかったでしょうか・・・?

不当労働行為263 組合掲示板不貸与・休憩室の就業時間外の利用制限と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合掲示板の貸与及び休憩室の就業時間外の利用を認めない会社の対応が不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

グローバル事件(東京都労委令和元年9月17日・労判1232号104頁)

【事案の概要】

組合掲示板の貸与及び休憩室の就業時間外の利用を認めない会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 掲示板の貸与や休憩室の利用等の便宜供与は、労使合意に基づいて行われるものであり、使用者に便宜供与を行う義務があるわけではない
本件では、28年10月28日の団体交渉で、便宜供与に関する具体的な条件を会社が提出すると述べてはいたものの、その後の団体交渉も含め、便宜供与をするという合意には至っていない

2 Y社が、組合掲示板貸与及び休憩室の就業時間外の利用という便宜供与を実施することについて組合との合意に至らず、便宜供与を認めていないことが、便宜供与は労使合意に基づいて行われるものであることを踏まえた相当な対応といえる範囲を逸脱して組合を弱体化させる行為に当たるとまでいうことはできない

一度便宜供与を行うと、その後は、合理的理由なくそれをなくすことは不当労働行為に該当しますので注意は必要です。

だからこそ最初が肝心です。組合との協議、交渉の際は必ず顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1148 自由への手紙(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

著者は言わずと知れた台湾の最年少デジタル大臣です。

タイトルのとおり、あらゆることから自由であることを勧めています。

さまざまなしがらみの中で不自由を感じている方は多いと思います。

そのような方は、是非、読んでみましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

常識・ジェンダー・家族制度・格差・お金・仕事……。誰かが決めた『正しさ』には、もう、合わせなくていい。」(表紙)

このブログで幾度となく書いてきたことです。

本当に自分がそれを望んでいるのであればいいですが、世間体や周りの目や評価を気にするあまり、本当はやりたくもないことを我慢しながらやり続ける人生の何が楽しいのでしょうか。

我慢して我慢して一生を終えるなんて、死んでもいやです。

世の中にはたくさんの「べき論」が存在しますが、世間体や周りの目や評価を気にしない人たちは、それらの「べき論」から完全に解放されているため、本当に自由な生活をしています。

誰にどう思われようと心底どうでもいいと思っているのです(笑)

人生は一度きりしかなく、また、あっと言う間に終わってしまいます。

YOLO 自分が生きたいように生きればいいのですよ。

不当労働行為262 組合員の人事異動と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員を廃棄物の収集運搬をするコースドライバーから廃棄物の仕分業務に人事異動したことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

上田清掃事件(京都府労委令和元年9月18日・労判1232号102頁)

【事案の概要】

組合員を廃棄物の収集運搬をするコースドライバーから廃棄物の仕分業務に人事異動したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 A組合員は平成5年の入社以来コースドライバー業務に従事してきたことが認められ、このように長年同一の業務に従事してきた労働者を、それとは異質の業務に異動することは、それ自体不利益性を有すると認められるところ、本件人事異動後のA組合員の業務にはドライバー業務も含まれているが、これは、仕分後の資源物を近隣の回収業者に搬入するだけの業務であって、また、主たる業務は、コースドライバー業務とは異質なことが明らかな仕分作業であったと認められる。よって、本件人事異動には、不利益性が認められる。

2 本件人事異動は、Y社の中核的事業所における中核的業務から本社から離れたほとんど他に従業員がいない現場作業所での単純作業への異動であって、当該職場における従業員の一般的認識に照らして通常不利益なものと受け止められ、それによって当該職場における従業員の労働組合活動への意欲が委縮し、組合活動一般に対して制約効果が及ぶようなものであったと認めるのが相当である。

仮に業務内容が異なる場合でも、当該配置転換に合理的理由が存在すれば不当労働行為とは認定されません。

もっとも、一般論としては、業務内容が大きく異なる場合には、それ相応の理由を準備する必要があります。

理由の合理性の有無については判断が難しいので、顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介1147 私たちは成功者に何を学ぶべきか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

ナポレオン・ヒルさんの本です。

まさに私たちが成功者から学ぶべきことが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちは習慣に支配されている。一人の例外もなく全員である!習慣は、思考と行動の繰り返しによって定着する。したがって、私たちは自分の思考を支配する程度に応じて、運命と生き方を支配しているのである。だから、必要かつ適切な習慣を身につけるように、自分の思考を方向づけなければならない。」(167頁)

もはや誰も疑う余地のない真実です。

いかなる習慣を身に付けているかは、まさにいかなる人生を送るかと同義です。

日々のルーティン、時間の使い方の集積が今の自分です。

自分の価値を向上させる習慣に支配されるか、その逆か。

それだけの話です。