解雇340 代表者に対する暴行を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、代表者に対する暴行等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

モロカワ事件(東京地裁令和2年6月3日・労判ジャーナル104号40頁)

【事案の概要】

第1事件のうち本訴請求事件は、Y社で稼働していたXが、平成30年10月18日、Y社の代表者であるBに暴行を加えたなどとして、同年11月9日、同日付けで、Y社から普通解雇をされたところ、同解雇は無効であると主張して、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、②雇用契約に基づき、同年12月以降、本判決確定の日に至るまで毎月25日限り、月例賃金65万円の支払を求めるとともに、③雇用契約に基づき、平成28年12月25日支払分から平成30年10月25日支払分までの未払残業代875万6019円+確定遅延損害金51万3918円と翌20日から支払済みまで同様の割合による遅延損害金の支払並びに同月25日支払分の未払残業代10万0966円の支払を求め、さらに、④労基法114条に基づき、付加金885万6985円の支払、⑤不当な懲戒解雇による慰謝料請求として、不法行為に基づき、慰謝料100万円の支払をそれぞれ求めた事案である。

第1事件のうち反訴請求事件は、Y社が、Xに社宅として本件建物を賃貸していたところ、本件解雇により賃貸借契約が終了したとして、Xに対し、賃貸借契約終了に基づき、本件建物の明渡しと、債務不履行に基づき、賃貸借契約終了の日の翌日である平成30年11月10日から本件建物明渡しまで1か月当たり18万9500円の賃料相当損害金の支払を求めた事案である。

第2事件は、Y社の代表者であったBが、本件暴行によって負傷したとして、Xに対し、不法行為に基づき、治療費等の損害金100万9100円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

XはY社に対し建物を明け渡せ。

Xは、Y社に対し、平成30年11月17日から建物明渡済みまで1か月当たり5万4200円の割合による金員を支払え。

Xは、Bに対し、30万9100円+遅延損害金を支払え。

Xの本訴請求はいずれも棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Bに対し、暴行を加えたものであって、しかも、これにより、全治4週間を要する見込みの左肋骨骨折、左手足打撲の傷害を負わせたものである。しかも、Xは、暴行自体は認めつつも、Bが暴言を述べたからであるとか、Bが先に暴行をしてきたなどと主張し続けていたものであり、それ以上に適切な慰謝の措置を講じなかったものである。
しかも、Y社は、代表取締役であるBを中心に、その家族が枢要な役職を担って運営されてきた会社であって、その娘婿であるXも、そうした縁故の下、稼働してきたと推認することができる。しかるところ、本件暴行は、そうした企業活動の中心にあったBに対して行われたものであって、Y社が、これを背信行為であるとして重く見たとしても、それが不合理であるともいえない。
そうしてみると、本件暴行が酔余の所為であったことや、Xが長年Y社に勤務してきたことなど、Xに酌むことのできる事情を考慮するにしても、本件解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものであるとは認められない

2 Y社は、本件解雇の際、直ちに労基法20条1項本文所定の平均賃金(解雇予告手当)の支払をしておらず、その支払がなされたのは平成30年11月16日のことであると認められる。そして、所轄労働基準監督署長の除外認定を経た形跡があるとも認められず、同項ただし書所定の事由があったとまではたやすく認め難いところ、同条同項所定の措置を経ていない解雇の通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間を経過するか、又は通知の後に予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生じるものである(最高裁判所昭和35年3月11日第二小法廷判決参照)。本件において、Y社が即時解雇に固執する趣旨であったとみるべき事情は認められないから、本件解雇は、その支払時である平成30年11月16日をもって効力を生じたものと認めるのが相当である。

前記判例のポイント2は、初歩的な判例知識ですので、押さえておきましょう。

解雇事案は必ず事前に顧問弁護士に相談の上、冷静に対応することが求められます。

本の紹介1126 常識の1ミリ先を考える。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「あなたの着眼点を変える15講」です。

ヒット商品はいかにして生み出されているかがよくわかります。

業種を問わず、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕の周囲には、たくさんの若い人たちがいる。僕が多くの若者と接していて感じるのは、『自分で決められない人が本当に多い』ということだ。・・・重要なのは、『答えなんかない』と知ることだ。答えがないならば、『最善の選択をする』のではなく、『自分の選択を最善にする』しかない。だから、僕は選択の場面で『どれを選んでも同じ』と思い、さっさと決めてしまう。決断に時間をかけない。重要なのは、『何を選ぶか』ではなく、『選んだ後にどうするか』だからだ。『あの時、あっちを選んでおけばよかった』と後悔ばかりしている人は、結局、どれを選んでも、うまくいかない。」(109頁)

もちろん「何を選ぶか」も重要です。

できるだけ適切な選択をすべきです。

自らの選択を後に後悔してもしかたありません。

選んだ後は、自分の選択を最善にするしかできません。

いかなる場合も、後悔しても現状は1ミリも変わりません。

人生はそれほど長くありません。

有期労働契約102 自動車接触事故の不申告を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、自動車接触事故等の不申告を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日の丸交通足立事件(東京地裁令和2年5月22日・労判ジャーナル104号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社においてタクシー運転手として勤務し、定年退職後は有期の嘱託雇用契約を結んで稼働していたXが、平成31年4月18日をもって受けた雇止めは無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認+令和元年5月から本判決確定の日まで,毎月25日限り,雇止め直前3か月間の給与の平均額の一部である15万7418円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Y社は、日頃から、タクシー運転手にメモを配布したり、明番集会や出庫前点呼で問題事案の発生の機会を捉えて運転手への周知を徹底するなどして、運転手が救護義務違反や報告義務違反を起こさないよう指導していたことが認められるところ、それにもかかわらず、Xが、本件接触の際、すぐに、あるいは遅くとも乗客を降車させた直後に警察や営業所に連絡しなかったことは、自転車の運転者が、後日になって事故を申告する可能性があることを考慮すれば、Y社や他の従業員にとって重大な影響を与えるおそれのある不申告であって、Y社が、Xが起こした不申告事案に対し、厳しい態度で臨まなければならないと考えることも十分理解できる。
しかし、一方で、本件接触は、左後方の不確認という比較的単純なミスによるもので、接触した自転車の運転者は、ドライブレコーダーの記録から受け取れる限り、倒れた様子は見受けられず、接触後すぐに立ち去っていることから、本件接触及び本件不申告は、悪質性の高いものとまではいえない。後に事案を把握した警察においても、本件接触や本件不申告を道交法違反と扱って点数加算していないことも踏まえれば、本件接触及び本件不申告は、警察からも重大なものとは把握されていないことがうかがわれる
また、Xは、営業を終え、車体に痕跡を発見したことがきっかけではあるものの、自分から本件接触をD補佐に報告しており、本件接触を隠蔽しようとはしていないことが認められ、報告後、現場に戻って警察に連絡することや、本社面談を受けることなどの会社の指示に素直に従い、接触の原因や不申告の重大さなどについて注意、指導を受けた内容を記憶し、反省していることも認められる。加えて、Xの車両に何らかの修理や塗装が施されたことを示す的確な証拠はなく、Xが、タクシー運転手として三十数年間、人身事故を起こすことなく業務に従事し、何度も表彰されるなど、優秀なタクシー運転手であったこと、本件接触のような一見する限り怪我がないように見える接触の相手方が無言で立ち去ってしまった場合に、警察に報告しなければならないことが頭に浮かばなかったとしても、一定程度無理からぬものがあることも考慮すれば、本件接触及び本件不申告のみを理由に雇止めとすることは、重過ぎるというべきである。
したがって、本件接触及び本件不申告のみを理由とする本件雇止めは、客観的に合理的な理由があり、社会的通念上相当であるとは認められない

懲戒処分や解雇・雇止め等を行う場合に、当該処分や行為の相当性を判断することは本当に難しいです。

個人的には結論は妥当だと考えますが、非常に悩ましい事案です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1125 アイアンハート(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、言わずと知れたグッドウィルグループ創業者の方です。

現在は、起業家インキュベーターとして活躍されているそうです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

事業を進めている過程でも、大きな壁にぶつかって『しょせん、自分には無理だったか』と失望することがあるかもしれない。だが『仕方がない』とやめてしまったら、そこでジ・エンドだ。その失望を乗り越えて一歩前に進むためには、何よりも、自分の夢やビジョンを諦めないことが大切になる。夢は持つこと以上に、持ち続けることが重要なのだ。」(290~291頁)

「夢」という言葉を使うかどうかはさておき、言わんとしていることは全くそのとおりです。

負けたら終わりなのではなく、辞めたら終わり。

勉強も運動も仕事も全部そうです。

途中の小さな成功も失敗も、すべてはプロセスの一部にすぎません。

一喜一憂せずにやるべきことをやり続けるだけです。

私たち凡人が結果を出すためにできることは、唯一、継続することだけなのですから。

セクハラ・パワハラ63 休職期間満了後の復職時における対応と安全配慮義務違反(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、欠勤を理由とする懲戒処分等に関する裁判例を見てみましょう。

東菱薬品工業事件(東京地裁令和2年3月25日・労判ジャーナル103号94頁)

【事案の概要】

本件は、業務外の事由により欠勤していたY社の従業員Xが、Y社に対し、Y社が診断書の提出後に休職を命じたり、復職に当たって試用期間の設定をしたり、始末書の作成をさせたり、復職後にその職位を降格する懲戒処分等をしたことは、Xに対するハラスメントに当たるとして、Y社の不法行為責任、使用者責任ないし安全配慮義務違反による債務不履行に基づき、慰謝料等の支払、未払時間外手当等の支払、労基法114条に基づく付加金等の支払、本件懲戒処分が無効であるとして、役職手当の減額分等の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

慰謝料(30万円)等請求一部認容

未払賃金等請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社によるハラスメント(1)ないし(9)を理由とする従業員の損害賠償請求については、軽作業であれば復職可能である旨の診断書の提出にもかかわらず、Xが従事可能な業務について十分な配慮をせず、休職を命じたこと、復職に当たって始末書を提出させたこと及び無効な本件懲戒処分を行ったことについて、Y社には少なくとも過失が認められるから、これらの一連の行為に関し、Y社は不法行為責任ないし安全配慮義務違反による債務不履行責任に基づく損害を賠償する義務を負い、そして、本件懲戒処分が無効とされることにより、役職手当の減額分に関する経済的損失は回復されるといえるものの、Xの復職が遅れたことにより、無収入の期間が生じたこと、Xが適応障害を発症したこと等、本件に現れた一切の事情を考慮すると、Xが被った精神的苦痛の慰謝料としては30万円が相当である。

2 本件の事情の下では、Xが、本件請求期間において、Y社の指揮命令の下で、タイムカード上の退勤時刻まで労務を提供していたことの立証は尽くされていないというほかないから、未払時間外手当に関するXの主張は採用できず、時間外手当及び付加金の各請求はいずれも理由がない。

私傷病による休職期間満了時の対応を誤ると訴訟に発展することは比較的よくあります。

対応方法は、事案によって異なりますので、必ず顧問弁護士に相談しながら対応することが肝要です。

本の紹介1124 自尊心削られながら個性を出せって、どんな罰ゲームだよ?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

著者は、メイクアップアーティストの方です。

著者の日々の吐き出したい思いがまとめられた本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『できる』と信じてくれる人がいるのに『いやいや……』って尻込みしちゃうのって謙遜でも奥ゆかしさでもなく、失礼なんだ」(132頁)

もちろん断るのは自由です。

しかし、断ると、次はありません。

依頼する側は「あ、できると思ったけど、このレベルの仕事はできないんだ。」と思うからです。

「やったことありません」はいいです。

やったことないのにやったことあるというより100倍いいです。

こんなもの嘘ついたって、すぐばれますから。

「できません」は、詰まるところ「やりたくありません」と同義です。

管理監督者性45 タイムカードの打刻がない日の時間外労働時間はどう判断する?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、管理監督者該当性と未払割増賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

マツモト事件(東京地裁令和2年6月3日・労判ジャーナル104号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として稼働していたXが、①平成28年9月21日から退職日である平成30年10月18日までの間の労基法37条1項、4項所定の法定外時間外・深夜・休日労働の割増賃金に不払いがあるなどと主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、別紙1のとおり、本件請求期間の未払残業代463万7110円+確定遅延損害金24万0539円及び上記未払残業代のうち449万5360円+遅延損害金の支払を求め、併せ、②労基法114条に基づき、付加金400万1144円+遅延損害金の支払を求めた(同2)事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、297万4765円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金243万0603円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社においては、少なくとも本件請求期間当時、従業員にタイムカードを打刻させる方法により労務管理がされていたものであるところ、Y社の主張を踏まえても、タイムカードの打刻の信用性を疑わせる事情として的確なものは本件証拠上見出し難いから、Xのタイムカードに出勤及び退出の打刻があると認められる稼働日については、所定の休憩時間とされている1時間を挟んで、同時間帯、稼働があったものと推認するのが相当である。
他方、タイムカードに出勤又は退勤のいずれかの打刻しかない稼働日も数多く認められるところ、Xは、かかる稼働日についても別紙1労働時間集計表のとおりの労働時間を認めるべきである旨主張する。
しかし、被告は、上記Xの主張事実を否認しているところ、Xの主張事実を裏付ける的確な証拠はない。かえって、証拠からすると、深夜時間帯を過ぎた日中午前に稼働を開始した稼働日もまま認められるし、他方、午前11時台の時刻などX主張の退勤時刻(午後2時)より相当早い時刻に退勤している稼働日が相当数あることも認められる。この点、X本人は、X本人尋問において、闘病のため入院していた内妻に面会するため業務時間中に病院に行ったことはあるものの、その数は10回ほどにとどまるなどとも供述しているけれども、そもそもこれが10回にとどまる証拠は何らないし、タイムカードからうかがわれるところの稼働状況も以上のとおりであって、他に的確な裏付けのない以上、やはり前記Xの主張はたやすく採用し難いものといわなければならない。
以上のとおりであるから、タイムカードに出勤又は退勤のいずれかの打刻しかない稼働日については、X主張のような法定外労働時間があると認めることはできない

2 Y社は、Y社の株式譲渡前にあっては従業員6名程度、その後においてもXと訴外Dのほか事務方の従業員1名程度の極めて小規模な事業体であったものであり、そもそも、経営者の身代わり的存在を置いて、労働時間規制の枠組みを超えた労務管理をなさしめるべき必要性があるとはおよそ認め難い。
また、以上の点を措くとしても、Xの所定労働時間は一応1日8時間と定められてはいたところであって、およそ所定労働時間の稼働の有無や稼働の程度を随意にできたと認めることのできる証拠はない。かえって、Y社は、本件訴訟において、Xに無断欠勤があったなどと主張している。確かに、証拠によれば、Xのタイムカード上の始業時刻や終業時刻が区々となっている傾向は看取できるが、これも、所定始業・終業時刻が定時に定まっていなかったことの結果とみることもできるから、そのことから直ちにXに上記説示のような意味における出退勤の自由があったということはできない。結局、本件において、出退勤がXの自由に委ねられていたとは認め難い。
さらに、Xに対する待遇も前記前提事実記載の程度であって、基本給のほかは、役職給その他の支給項目による支給はなく、Xの基本給に労働時間規制を超えて労働をすることの対価が含意されていたと認めるに足りる証拠もない。平成30年3月支払分からの賃金増額分も、Y社主張のように、業績好転への寄与への期待から増額されたものとはいえても、管理監督者としての稼働に対する対価として増額されたと認めるべき的確な証拠はない。結局、Xに対し、労働時間規制の枠組みを超えた労務管理をなさしめることの対価としての十分な待遇がなされていたともたやすく認め難い
以上の次第であって、本件において、労働時間規制の枠組みを超えた労務管理をなさしめるべき必要性があるとは認め難い一方、Xに出退勤の自由や十分な待遇がなされていると認め難く、労働時間規制の枠組みを超えた稼働をさせたとしても労働者保護にかける嫌いがないとも評価し難いから、労基法41条2号が管理監督者について特に労働時間規制の例外を設けた趣旨にも鑑みると、そもそもXが管理監督者に該当すると認めることは困難である。

管理監督者性についてはいつものとおり、否定されております。

上記判例のポイント1は非常に参考になります。

タイムカードの打刻がない日について、他の日の労働時間から推認させないために、いかなる主張立証をするかによって勝敗を決します。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1123 無駄な仕事が全部消える 超効率ハック(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

仕事が遅い人、どれだけ仕事をしても一向に仕事が減らない人は是非読んでみましょう。

効率のいい人が当たり前のようにやっていることがまとめられています。

特に目新しい内容ではありませんが、詰まるところ、やるかやらないかです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんなに時短テクニックを駆使しても、その作業自体が必要のない作業だったとしたら意味がありません。しなくてもいいことを効率的に行うことほど、無駄なことはないのです。仕事が早い人とは、作業スピードが速い人ではなく、必要のない作業を見極めて、やめてしまえる人です。」(56頁)

しなくてもいいことだらけの世の中です。

会社のルールなのでしかたなくやっている「作業」があふれかえっています。

働き方改革が始まってかれこれ経ちますが、霞が関に限らず、県庁も市役所もいまだに夜遅くまで電気がついています。

これからますます労働力が減り、その反面、コンプライアンスの名の下に作業量は増える一方です。

時間がいくらあっても足りませんね。

解雇339 提訴時の記者会見は解雇事由となる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、育児休業取得妨害等に基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券事件(東京地裁令和2年4月3日・労判ジャーナル103号84頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていた原告が、①Y社から育児休業取得の妨害、育児休業取得を理由とする不利益取扱いをされたとして、不法行為による損害賠償請求権(不利益取扱いについては一部債務不履行による損害賠償請求権も根拠とする。)に基づき、損害賠償金+遅延損害金の支払を求めるとともに(損害賠償請求)、②Y社がXに対してした平成29年10月18日休職命令は無効であるとして、民法536条2項に基づき、平成29年10月分の未払賃金,同年11月分の未払賃金円+遅延損害金(休職期間賃金請求)、③Y社がXに対してした平成30年4月8日解雇は無効であるとして、民法536条2項に基づき、同年12月分から本判決確定の日までの賃金+遅延損害金(解雇後賃金請求)の支払を求め、④雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める(地位確認請求)事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに対し警告をしたにもかかわらず、本件訴訟において、Y社の内部文書である本件収益一覧表を顧客名等について黒塗りすることなく証拠として提出し、第三者による閲覧及び謄写が可能な状態に置いたことは「Y社及び取引先の経営情報、営業上の秘密、その他公表していない情報を他に漏らした場合」(戦略職就業規程70条3号)に当たる旨主張する。
しかしながら、Xが訴訟代理人弁護士を通じて本件収益一覧表を提出した先は裁判所であり、Y社は閲覧制限を申し立てる方法により閲覧の対象者は当事者に制限することができ、また実際にも申立てがされていて、第三者が閲覧及び謄写した事実はない(記録上明らかな事実)。そうすると、Xの行為は軽率のそしりは免れないとしても、本件収益一覧表を他に漏らした場合に当たるとまでは評価することができない。上記Y社の主張は失当であり採用することができない。

2 Xは、本件のような労使紛争において社内的な解決を図ることができない場合に、裁判所を通じた法的措置をとり、その際に世論の喚起及び支援を求めて記者会見をし、取材を通して自らが訴訟において主張する事実関係を述べることは一般的に行われており、このような行為は表現の自由として憲法上保障されているからXの前記各発言を原告の不利益に考慮することは許されない旨主張する。
Xが記者会見をして自らが訴訟において主張する事実関係を述べること自体は表現の自由によって保障されるものであることはもとよりであるが、表現の自由も他人の名誉権や信用など法律上保護すべき権利・利益との間で調整的な文脈での内在的制約に服さざるをえないというべきであって、記者会見における表現行為であるとの一事をもって、その内容がどのようなものであっても対第三者との間において許容されるべきことにはならないというべきである。かような観点からすれば、訴訟追行に必然的なものではない記者会見を通して広く不特定多数の人に向けて情報発信をした事実が客観的真実に反する事実により占められ、Y社の名誉や信用等を侵害する場合、これを解雇理由として考慮することが許されないと解することはできない。

3 Xは、育児休業から復帰した直後からハラスメントを受けたとし、B、D及びEが繰り返しXに対しXの誤解であることを説明したものの、かえってXは広く世間に対し同内容の主張を情報発信することを繰り返した。このようなXの言動は本件解雇に至るまで続いており、Xに改善の兆しは見られない。また、Xは、自らの担当顧客について「利益を生まないし、これからもそうはならないであろう」顧客などと指弾し、担当顧客の評価を不当に貶めるような発言をした。加えて、Y社では、Xの別紙の情報発信を理由として顧客取引の停止等の影響が実害として発生していることが認められる。そして、X自身も、平成29年11月2日記者会見において、Xによるハラスメントを訴えたことを理由に既にY社との取引を止めたという噂も耳にしている、この動きは広がる一方である旨述べていて、別紙の情報発信によりY社に与える打撃及び影響を十分に認識し認容しながら、Y社からの警告を受けてもなお、あえて情報発信を継続したと理解することができる。Xは、日本株及び日本株関連商品の営業業務の担当として高い職務実績をあげY社の当該業務の成果に大きく貢献することが期待され高額の給与が保証されている戦略職であり、別紙の一連の情報発信及び情報の拡散行為は、戦略職として求められている期待に著しく反するものであって、本件雇用契約上の信頼関係は修復不可能な状態になっているということができる。

上記判例のポイント2は注意が必要ですね。

提訴時の記者会見について裁判所の考え方が示されていますので参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1122 TRACTION(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「ビジネスの手綱を握り直す」(Get a Grip on Your Business)です。

帯には「翻訳を許されなかった『禁断の書』が、遂に完全日本語化」と書かれています。

「禁断の書」は明らかに誇張ですが、経営システムを考えるにはよい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成長のための成長は間違っている場合が多い。1億ドル規模の企業になることは、世間が言うほどすばらしいことではない。」(252頁)

業種や時代によっても異なるのだと思いますが、私は、拡大=成長だと考えることには否定的です。

自分の仕事が、スケールメリットを発揮しにくいと感じるにもかかわらず、拡大するのは、まさに成長のための成長です。

手段が目的化し、結果、不必要な固定費だけが増えていくのです。

売上ではなく利益を見たときに、どの程度の大きさが適切かということを冷静に考えることがとても重要です。