おはようございます。
今日は、管理費等の滞納について管理会社の法的責任が問題となった事案(東京地判平成18年7月12日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本訴事件は、原告と被告との間のマンション管理委託契約に基づき、原告が被告に対して、未納管理委託費の支払いを請求する事案であり、これに対して、被告は、原告は管理委託業務を履行していないから管理費を支払う必要はないとしてこれを争うと共に、原告が未収金の回収業務を怠ったために、被告は、マンション入居者に対する管理費等の回収が不可能となって損害を被ったとして、回収不能になった管理費等の総額と被告の認める未納管理委託費とを対当額で相殺して、その残額を債務不履行に基づく損害賠償として請求する事案(反訴事件)である。
また、被告は、原告が契約当初から契約書に定められた業務を履行しておらず、管理委託費には大幅な減額要素があるとして、行っていない業務に対する対価としての管理委託費を余計に支出したことになり、これは原告の不当利得であると主張し、原告主張の未納管理費委託費と対当額で相殺する旨主張している
【裁判所の判断】
本訴被告は、本訴原告に対し、939万1095円+遅延損害金を支払え。
反訴原告の請求を棄却する。
【判例のポイント】
1 原告は、3条の仕様書に定める業務の内、「管理費等の収納業務を行うにあたって、被告の組合員に対して支払請求(内容証明郵便による支払請求)を行っても収納することができない場合、原告はその責を負わない。」「内容証明郵便による請求以後の取立については原告被告間で別途協議する。」との記載がある。
2 原告は、A氏に対して、随時未納管理費等の請求を行い、その金額等の状況について毎月被告に報告し、Dの問い合わせに応じて未納管理費等の回収方法等についてアドバイスするなどし、最終的には競落後の新所有者であるYに対して内容証明郵便で支払いを催促しているのであるから、本件管理委託契約書に定められた業務を履行していたものと認めることができる。
この点、未納管理費等の請求書について、原告は平成14年10月分から12月分しか提出しておらず、その他の時期においても同様の請求書がA氏に対して発送されたのか疑問の余地があるところではあるが、そもそも原告の未収金回収業務として、随時書面による督促を行うことまでは本件管理委託契約上の義務とはされていないのであるから、たとえ原告がこれを怠ったとしても、債務不履行と評価されることにはならないというべきである。
3 結局、未収金の回収業務につき原告に債務不履行の事実は認められないといわざるを得ず、かりに被告が1303万7239円の管理費等を回収できないことによる同額の損害を被ったとしても、原告はこれに対して責めを負わない。
もっとも、被告の原告に対する管理委託費の未払いは、A氏の区分所有部分の管理費等の未払いが原因であることについて、原告は十分に知悉していたのであるから、被告の管理委託費の未払額が拡大しないように、これを受領する立場にある自らも積極的な手立てを打つべきであったと指摘し得るところではあるが、そうであるとしても前記認定を左右するものではない。
裁判所は、管理委託契約書の記載内容及び実際の管理会社の対応内容等を検討し、管理会社の責任を否定しました。
組合員の長期滞納を漫然と放置していたような場合には、管理会社の善管注意義務違反が認められることも十分あり得ますのでご注意ください。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。