管理組合運営17 総会における損保保険料を管理費から支出する旨の決議の無効確認の訴えが却下された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会における損保保険料を管理費から支出する旨の決議の無効確認の訴えが却下された事案(東京地判令和2年2月20日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者であった原告らが、本件マンション管理組合である被告の臨時総会において、被告と損保ジャパン日本興亜株式会社との間でマンション総合保険に係る契約を締結し、その保険料を管理費から支出する旨の決議がされたことにつき、本件マンションの管理規約上は、管理費は共用部分直接費としての保険料にのみ充当するものとされているのに、上記保険契約には本件マンションの各専有部分に係る個人賠償責任保険特約が付されており、本件規約に違反する内容となっているから無効であると主張して、被告に対し、本件決議が無効であることの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

1 本件訴えの内容は、被告の臨時総会において可決された本件決議が無効であることの確認を求めるというものであるところ、原告らは、本件決議が無効とされれば、原告らが被告の組合員であった時に管理費から支出された保険料が返還され、本件マンションの管理費を充実させることができるのであり、被告との間の紛争が抜本的に解決されることから、本件訴えの確認の利益及び原告適格が認められると主張する。
しかし、本件規約上、被告の組合員は、被告に対し、既に納めた管理費の返還を求めることはできないと定められていることが認められる(61条4項)。
そうすると、仮に、原告が主張するように本件決議が無効であることを確認する旨の判決を得た上、原告らが被告の組合員であった時に本件マンションの管理費から支出された保険料が返還されたとしても、原告らに対して直接金員の返還がされることにはならない
そして、原告X1は令和元年6月28日に、原告X2は同年7月18日に、それぞれ各専有部分である区分所有建物を売却し、いずれも被告の組合員の資格を喪失しているのであって、本件マンションの管理費を上記返還金の分だけ充実させることについて、本件決議に関する原告らの不満等が緩和されることはあったとしても、原告ら自身の現在の法律上の利益ないし地位は何ら客観的・具体的な影響を受けるものではないというほかない。
その他、本件において、原告らが、本件決議の効力について格別の利害関係を有することをうかがわせる事情は見当たらず、本件訴えが、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切かつ必要な場合に当たると認めることはできない
以上のとおり、原告らにおいて、本件訴えによって本件決議が無効であることの確認を求めることについて、法律上の利益があるとはいえないから、本件訴えにつき確認の利益があると認めることはできない

意識していないと、被告(管理組合)としては、単に請求棄却を求めてしまいそうなところですので注意しましょう。

管理規約に「被告の組合員は、被告に対し、既に納めた管理費の返還を求めることはできない」旨が定められていることが多いため、是非、本件裁判例を参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。