騒音問題7 騒音を理由とする上階の居住者に対する床材の変更(フローリング敷きからカーペット敷き)請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、騒音を理由とする上階の居住者に対する床材の変更(フローリング敷きからカーペット敷き)請求が棄却された事案(東京地判令和3年3月26日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、共同住宅、いわゆるマンションに居住する原告が、上階に居住する被告に対し、被告が原告居住建物に騒音を生じさせているのは、被告居住建物の床材が従前のカーペット敷きからフローリングに変更されたのが原因であるとして、人格権に基づき、被告居住建物の床材をカーペット敷きに変更することを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件の原告の請求は、被告所有建物からの騒音を理由として、人格権に基づいて、その防止措置として、床材をフローリングからカーペット敷きに変更することを求めるものと解される。
本件マンションのような共同住宅においては、各区分所有者ないし居住者は、それぞれの専有部分を起臥寝食、営業等の用に供しており、互いに一定の生活音を生じさせることは避けられないのが通常であるから、区分所有者ないし居住者が他の区分所有者、居住者の生活領域に対し、騒音を生じさせたとしても、直ちに不法行為責任が生じるということはできない。すなわち、区分所有者ないし居住者が、社会生活上受忍すべき限度を超えて、他の区分所有者、居住者の静謐な環境で生活する利益を侵害しているといえる場合に不法行為を構成すると評価すべきといえる。

2 本件において、原告は、原告の住居において、被告所有建物からの受忍限度を超える騒音が生じている旨主張し、自らの騒音の体験状況を記録した書面を証拠として提出している。
しかし、不法行為が成立するか否かの基準となる受忍限度を超えているかの判断は、個人の主観によるべきではなく、社会的に通用性のある客観的な基準によるべきである。
すなわち、騒音被害による一定の行為の差し止め又は是正措置の請求は、建物の所在する当該地域を対象とする条例等の騒音の規制基準を指標として、被害が生じているとされる空間に生じている音圧レベル・騒音値(db)の測定結果をこれに当てはめるなど、客観性のある基準、資料によってその是非を判断するのが相当といえる。
この点、原告提出の騒音について自らの主観的な評価を記録した上記証拠によっては、騒音が受忍限度を超えていることを認めることはできず、一方で、原告は、上記騒音の測定結果等の客観的な資料を証拠として提出していないから、受忍限度を超える被害を受けていることの的確な立証をしていないというべきである。

騒音問題に関する訴訟における重要なポイントが端的にまとめられており、大変参考になります。

訴訟前の準備として、騒音の原因及び存在に関する客観的な証拠を準備することがマストとなります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。