おはようございます。
今日は、漏水事故について上階の一室を所有する被告の管理上の過失が認められなかった事案(東京地判令和元年12月24日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告が所有し、鍼治療院に賃貸しているマンションの一室において発生した漏水事故は、同室の上階の一室を所有する被告の管理上の過失によるものであると主張して、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、修繕工事費等の損害合計409万3969円遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件漏水事故の当時、被告は501号室に居住しておらず、水を使用していなかったと認められる上、平成29年10月2日の時点で本件給水管が切断されたことにより、以後501号室への給水が完全に止められたと認められる。
それにもかかわらず、その後も406号室への漏水は続いていたことが認められる一方、本件ビルにおいては雨漏りが多発しており、4階でも複数の部屋において雨漏り被害が発生している。
そうすると、本件漏水事故の原因は、本件ビル自体の雨漏りによるものである可能性を否定することができず、むしろその蓋然性が高いというべきであり、本件給水管の劣化によるものとは認められない。
2 原告は、本件漏水事故は雨漏りによるものではないと主張し、その根拠として、平成29年9月にはさほど大きな雨が降っていないことや本件治療院から雨漏りによる水漏れ量の増減はないと言われていたことを挙げるが、平成29年9月20日の前後には一日50ミリメートル程度の雨が降っており、本件治療院からの報告内容を示す証拠は存在しないから、原告の主張を採用することはできない。
なお、原告は本件漏水事故後の大きな台風の時に漏水が発生していなかったとも主張するが、この主張によって本件漏水事故の原因が本件給水管の劣化によるものであることを積極的に根拠づけられることにはならないから、失当である。
漏水事故について責任を追及された場合に、被告としていかなる視点で反論すべきかというのは、まさに弁護士の腕の見せ所です。
裁判例を研究していくと、原告の立証が不十分であるという心証を裁判官に抱かせるための方法論がいろいろと見えてくると思います。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。