管理会社等との紛争11 部屋の改修工事により生じた問題に対する理事長の対応が不適切であることを理由とする慰謝料請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、部屋の改修工事により生じた問題に対する理事長の対応が不適切であることを理由とする慰謝料請求が棄却された事案(東京地判令和元年10月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らと被告が区分所有するマンションの管理組合の理事長であった被告が、原告らから、階下の部屋の改修工事により生じた問題について適切に対応してほしい旨懇願されたのに、これを不当に無視するなどしたと主張して、被告に対し、不法行為に基づいて、原告X1において慰謝料50万円+遅延損害金の支払を、原告X2において慰謝料100万円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

原告らは、当初、被告に対し、上記各損害賠償請求のほか、区分所有法25条2項に基づき理事長の解任を求めたが、平成31年3月16日の第23期通常総会をもって被告が理事長を任期満了により退任したため、同解任請求に係る訴えを取り下げた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告らは、被告が、8月26日の現場調査の際、原告らの被害の申立て等に面倒くさそうな顔をして、スケルトン工事にするとどのような工事になるのかと興味があったなどと述べたと主張し、原告X2の陳述中にそれに沿う部分がある。
しかし、仮に8月26日の現場調査の際に、被告が、原告らにとって面倒くさそうな顔をしたと感じるような表情をしたり、スケルトン工事がどのような工事になるのかと興味があったなどと述べたりしたとしても、被告においてそのような表情又は発言をしてはならないという義務を、「原告らとの関係で不法行為を発生させる」という意味での法的義務と評価したり、その違反行為をもって社会的相当性を逸脱する行為等と評価したりすることは、もともと著しく困難であり、8月26日の現場調査の際、同法的義務が発生したなどと認め得るような極めて特異な状況にあったことをうかがわせる証拠もない。
したがって、原告らの上記主張の行為をもって、違法行為に該当するということはできない。

2 原告らは、被告が、平成30年2月21日、原告X1に対し、「今後は自宅への来訪、携帯への連絡ではなく、全て書面でのやり取りを要請致します。」と記載した書面を508号室に投函するという、極めて理不尽で、狷介な行為に及んだと主張し、被告が、同日頃、原告X1に宛て、本件報告書をAに渡すことは法的に問題がなく、被告が責任を問われるものではないこと、同月15日及び同月17日の原告らの言動は容認することができるものではなく、弁護士に相談をしていること、今後は、自宅への来訪、携帯への連絡ではなく、全て書面でやり取りをすることを要請する旨を記載した書面を投函したことが認められる。
しかし、被告は、本件報告書をAに交付したことをめぐり、原告らから、平成30年2月15日午後10時頃、きつい言葉で、代わる代わる論難されつつ、本件報告書をすぐに回収し、写しが取られている場合には、一切口外しないという一筆を取るように求められ、更に同月17日の理事会の終了後、一筆は取れたのか、勝手に渡したことの責任を取れと詰め寄られ、そのやり取りの中で、原告X2がげた箱を叩いたり、書類の束を床に投げつけたりするという行為に及ばれたこと、また、2月21日の理事会において、原告らから理事会に対しての意見、要望については、書面で提出してもらうこととすることが決議されたことがそれぞれ認められる。
そうすると、このような状況の中、被告が上記の書面を原告X1に宛てて投函することをもって、極めて理不尽であるなどということはできず、その投函はやむを得ないものといわざるを得ない
したがって、原告らの上記主張の行為をもって、違法行為に該当するということはできない。

原告は、本件訴訟において、20を超える被告の対応が不適切であると主張しましたが、いずれも違法性は否定されています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。