管理組合運営22 監事が理事解任議案を議題として総会を招集することの適否(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、監事が理事解任議案を議題として総会を招集することの適否(前橋地決平成30年5月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの管理組合法人である債務者の理事の地位にあった債権者が、債務者の臨時総会においてなされた債権者を理事から解任する旨の決議が違法な手続によるものであるから無効であり、保全の必要性も認められるとして、債務者に対し、申立ての趣旨記載の仮処分を申し立てた事案である。

【裁判所の判断】

申立て却下

【判例のポイント】

1 債権者は、監事が理事解任議案を議題として提出して総会を招集することはできないというべきであると主張する。
確かに、法によると、監事については、理事の業務の執行の状況を監査し、財産状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告し、その報告のために必要があるときは、集会を招集すること等が職務とされ(50条3項)、監事が招集する集会における集会の目的たる事項(議題)としては報告に限られると考えられる。
しかし、上記法の規定は強行法規ではなく、各管理組合法人の規約において、これと異なる規定を置くことも許されると解されるところ、本件規約においては、監事は、管理組合法人の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならず、監事は、管理組合法人の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができるとされ(37条1項,2項)、監事が総会を招集することができる場合について、報告のために必要があるときに限定されていない
したがって、監事は、本件規約上、招集予定の総会において、自ら必要と考える理事解任の議案を提出し、その決議を求めることもできるというべきである。

2 仮に、法に定めるとおり、監事が招集する集会における議題が報告に限られるなど、B監事が債権者の理事解任議案を提出したことが手続上の瑕疵であるとしても、以下のとおり、本件決議を無効ということはできない
まず、B監事は、本件規約39条1項に基づき、本件総会の2週間以上前に、本件マンションの区分所有者全員に対し、本件総会の日時、場所及び債権者の理事解任議案を含む目的を通知するなどして本件総会を招集しており、予め債権者の理事解任議案について十分な検討をした上で本件総会に臨むことができるようにし、かつ組合員の議決権行使の機会を確保している
また、本件総会は、議決権総数373に対し、出席議決権総数が193(なお、本件決議の際の議決権総数は200)であり、本件決議における賛成票は合計159(出席22、委任66、議決権行使71)、反対票は合計26(出席16、委任0、議決権行使10)、棄権・その他は合計15(出席10、委任1、議決権行使4)であったことが一応認められ、これによれば、本件総会は本件規約43条1項の定足数を満たし、本件決議も本件規約43条2項の要件を満たしたものといえる。
さらに、上記のとおり、本件決議における賛成票は、そのうちの委任の数を控除しても93であり、議決権総数373の5分の1以上であるから、本件規約40条の規定に基づいて、債権者の理事解任の件を目的として臨時総会を招集することもでき、かかる手続を踏んで開催された臨時総会においても本件決議と同様の結果になったと考えられる。
以上の事情に照らせば、B監事が債権者の理事解任議案を提出したことが手続上の瑕疵であったとしても、本件決議を無効とするだけの重大な瑕疵があったということはできない

上記判例のポイント1は重要ですのでしっかり押さえておきましょう。

管理規約の内容がいかに重要かがよくわかりますね。

なお、本件事案は、抗告審(東京高決平成30年11月2日)でも結論が維持されています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。